
含み損とは?含み益や実現損との違い・税金対策から対処法まで徹底解説
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公開:
2025.03.03
更新:
2025.08.13
株価が下がり、口座がマイナス表示になると不安になりますよね。「このまま保有していて大丈夫かな?」「損をする前に売った方がいい?」と悩んでしまう方は多いでしょう。しかし、実はこの「含み損」には正しい対処法があります。本記事では、初心者が戸惑いやすい含み損の意味、実際に損失が確定するタイミング、税金のメリットをやさしく解説。暴落時も慌てず行動できるコツをわかりやすくお伝えします。
サクッとわかる!簡単要約
この記事を読み終えるころには、口座のマイナス表示に必要以上に動揺しなくて済むようになるでしょう。含み損や含み益の仕組みが分かり、「今すぐ売るべきか」「追加購入をすべきか」を感情ではなく数字やルールに基づいて冷静に判断できるようになるからです。さらに、損益通算や繰越控除、NISA特有の注意点といった税制メリットを自分自身で活用できる力も身につきます。また、暴落相場が来ても慌てずに対応するための具体的な方法や、投資資金と生活資金を分けて安心感を保つ家計管理法も学べます。投資を始めたばかりでも、目先の損益に振り回されず、長期的に安定した資産形成を続けられる具体的な行動指針が手に入るでしょう。
含み損・含み益・評価損益の違い
まずは含み損や含み益、そして評価損益とは何か、それぞれの基本的な意味を確認しましょう。これらは投資の基本用語ですが、初心者の方にもわかるよう丁寧に定義していきます。
含み損(ふくみぞん)とは?購入時より価値が下がった「未確定の損失」のこと
保有している資産の現在の評価額が、購入時の価格よりも低くなっている状態を指します。たとえば、1株あたり1,000円で購入した株式が現在800円になっていれば、1株あたり200円の含み損が発生していることになります。重要なポイントは、含み損はまだ売却していない未確定の損失だということです。実際に売却しない限り損失は確定しません。
言い換えれば、その後株価が回復すれば含み損は解消する可能性もあります。評価額が下がっている状態であることから「評価損」と呼ぶこともありますが、意味は含み損とほぼ同じです。
含み益(ふくみえき)とは?購入時より価値が上がった「未確定の利益」のこと
含み損とは反対に、保有資産の現在の評価額が購入時の価格よりも上がっている状態を含み益といいます。例えば、1株1,000円で買った株式が現在1,200円になっていれば、1株あたり200円の含み益が出ている計算です。こちらもまだ売却していないため利益は確定していません。
実際に売却して初めて確定する利益のことを「実現益(じつげんえき)」と呼びます。したがって、含み益も市場の変動で日々増減する帳簿上の数字に過ぎないことを意識しておきましょう。
評価損益(ひょうかそんえき)とは?未確定の損益
評価損益とは、まだ資産を売却していない状態で、その時点の市場価格をもとに計算した損益のことです。つまり、含み損と含み益を合わせた評価上の損益を指す用語です。証券会社の口座画面や投資アプリでは「評価損益」という項目で、現在の含み損益がリアルタイムに表示されます。しかし大切なのは、この評価損益もあくまで現時点での参考値であり、資産を売却しない限り実際の損失や利益には確定しない点です。
評価損益の数字に一喜一憂して焦って売買してしまうと、結果的に利益を逃したり損失を拡大したりするリスクがあります。短期的に変動する評価損益に振り回されないようにしましょう。
含み損益と実現損益の違いは「確定済み」かどうか
投資における損益には、まだ確定していない「含み損益」と、売却などで利益や損失が確定した「実現損益」があります。含み損益はあくまで評価上の数字で、日々変動します。これがいつ、どのようにして実際の損益として確定するのか、その意味とタイミングの違いを理解することが重要です。
実現損益とは?資産を売却して「確定」した損益のこと
保有している資産の損益は、「含み損益」と「実現損益」の2種類に分けられます。
含み損益は「評価損益」とも呼ばれ、保有資産を現在の価格で評価した場合の、計算上の損益を指します。「もし今売却したらいくらか」を示す一時的な数字であり、売却しない限り実際の損益にはなりません。
一方、実現損益とは、資産を実際に売却したり現金化したりすることで「確定」した、最終的な損益のことです。一度確定すると、その後の価格変動による影響は受けません。
両者の関係は以下の通りです。
- 保有中:時価で評価した損益=含み損益(評価損益)
- 売却後:決済によって確定した損益=実現損益
いつ確定する?「売却」「分配金受取」「償還」の3つのタイミング
含み損益が実現損益に変わる、つまり損益が「確定」する主なタイミングは以下の通りです。
- 株式などを売却したとき 保有している株式や投資信託を市場で売却し、現金化したタイミングで損益が確定します。
- 分配金を受け取ったとき 投資信託などから分配金が支払われた場合、その利益を受け取った時点で所得として確定します。
- 償還(満期)を迎えたとき 債券や投資信託が満期を迎え、元本や最終的なお金が払い戻されるタイミングで損益が確定します。
このように、保有資産が何らかの形で現金やそれに準じるものに変わる時に、含み損益は実現損益へと変わります。
含み損と実現損の違いを比較
含み損と実現損(じつげんそん)は名前も意味も紛らわしく、初心者が混同しがちなポイントです。含み損は前述の通り未確定の損失、実現損は実際に売却して確定した損失のことです。主な違いを以下の表にまとめました。
含み損(未実現の損失) | 実現損(確定した損失) | |
---|---|---|
定義 | 資産の価格が購入時より下がっているが、まだ売却していないため未確定の損失 | 資産を売却することで確定した損失 |
損失が確定するタイミング | 保有中(価格変動中)。売却しない限り損失は確定しない | 売却時に損失が確定し、実際の損失額が確定する |
将来の変動による変化 | 株価や価格の回復により損失が減少・解消する可能性がある | 一度確定した損失は取り戻せない(別の取引で利益を出すしかない) |
税金面での扱い | 売却前の損失のため税務上は扱われない(損益通算不可) | 確定した損失のため税務上利用可能(他の利益と相殺や損失の繰越ができる※) |
このように、含み損と実現損では確定しているかどうかや税金上の扱いに大きな違いがあります。含み損はあくまで評価上の損失であり、慌てて売却しなければ実現損にはなりません。一方、実現損は実際の損失として確定するため、資金面・税金面で影響が出てくる点を押さえておきましょう。
含み損が発生したときに実際に売るべきか判断に迷われた際はQ&Aをご参照ください。
時価があるかどうかで含み損は変わる
含み損の考え方は、資産に時価(市場価格)があるかどうかによって変わります。
時価あり(株式、投資信託など) | 時価なし(非上場株式、不動産など) | |
---|---|---|
含み損の特徴 | 日々変動するため、すぐに把握できる | 売却しないと正確な評価が分からない |
損失確定の方法 | 売却すると実現損になる | 売却時の評価額で損益が確定 |
上場資産(時価あり)の場合
株式や投資信託など市場で価格がついている上場資産では、日々変動する時価にもとづいて評価損益が算出されます。証券口座の画面に表示される含み損益は、この時価を反映した評価損益です。
上場資産の場合、含み損益とは常に刻々と変わる市場評価額で計算される損益のことであり、前述した通り売却しない限り含み損・含み益が発生している状態です。時価があるため評価損益が明確に数値化され、日々「含み損が◯円」と把握できますが、その分、短期的な変動に一喜一憂しやすい面もあります。
非上場資産(時価なし)の場合
一方、市場価格が日々つかない非上場の資産(例:未公開株式、自分で経営している会社の持分、不動産など)は、明確な現在の評価額がわかりません。
こうした資産では日々の「評価損益」は算出できず、含み損益は表面化しにくいと言えます。評価額が定まらないため、含み損が出ているか含み益が出ているかは実際に売却や評価換えをしてみないと確定しないのが特徴です。
不動産などでは定期的な評価額の見直しがありますが、少なくとも株式市場のようにリアルタイムで評価損益が表示されることはありません。このため非上場資産の場合は、含み損があっても気づきにくく、基本的には売却して初めて損益が確定するという考え方になります。
要するに、日々時価が分かる資産では「評価損益」という概念が常に存在するのに対し、時価がわからない資産では日常的に含み損益を意識することは少ないでしょう。それぞれ性質が異なるため、自分が保有する資産の種類によって含み損の捉え方も変わってきます。
含み損と税金の関係:知らないと損する3つの仕組みと注意点
日本の税制では、投資の課税対象は「実現利益(確定利益)」に限られます。そのため、含み損の状態では税金は発生しません。
例えば、1株1,000円で購入した株が800円に値下がりし、含み損が出ている場合でも、売却しない限り損失は確定しないため、税金の影響はありません。
含み損を抱えたままの状態で税金がどうなるかについては以下Q&Aでも解説しています。
含み損のまま売却するとどうなる?
含み損が発生している資産を売却すると、損失が確定し「実現損」になります。この場合、利益が発生していないため、税金はかかりません。
さらに、この確定した損失(実現損)は、他の投資利益と損益通算が可能となり、税負担を軽減できる可能性があります。
損益通算とは?(確定損益に適用される)
損益通算とは、投資で確定した利益と損失を相殺し、最終的な課税額を減らすことができる仕組みです。
損益通算の具体例
損益通算をしない場合
株式の確定利益:+50万円
含み損(未売却):-20万円
→ 含み損は確定していないため、50万円に対して課税(税額:約10万円)
損益通算を活用した場合
株式の確定利益:+50万円
含み損の株を売却(損失確定):-20万円
→ 課税対象は30万円に減少(税額:約6万円)
このように、含み損を確定(実現損)させることで、税金を抑えることができます。ただし、損益通算を考える際は、「他の確定利益があるかどうか」を確認しましょう。
繰越控除とは?損失を最大3年間持ち越して税負担を軽くする制度
年間の損益がトータルでマイナス(損失超過)になった場合、確定申告を行うことでその損失を最長3年間繰り越すことができます(これを「損失の繰越控除」といいます)。例えば今年に50万円の損失が出て、翌年50万円の利益が出た場合、前年の損失と相殺して翌年の利益に対する課税をゼロにするといったことも可能です。ただし繰越控除を受けるには毎年確定申告が必要で、一度でも申告を怠ると残りの損失を繰り越せなくなる点に注意しましょう。
注意点:NISA口座の含み損は損益通算・繰越控除のどちらも利用不可
ここで注意したいのが、NISA口座やその他の非課税口座で発生した損失です。NISA(少額投資非課税制度)は利益に税金がかからない代わりに、損失が出ても他の利益との損益通算や繰越控除に利用することができません。つまり、NISA口座内で含み損が発生しても、それを実現損に変えて税金を減らすといったことはできないのです。この点は初心者が見落としがちなので覚えておきましょう。
含み損が出た場合の対応策
投資をしていると、含み損が発生することは珍しくありません。以下のような対応策を検討しましょう。
長期保有を検討する
投資対象が長期的に成長する見込みがあるなら、短期的な価格変動を気にせず、長期保有するのも選択肢の一つです。
ナンピン買い(追加購入)
価格が下がったタイミングで追加購入することで、平均購入価格を下げる手法です。ただし、投資対象の将来性を慎重に見極める必要があります。
ナンピン買いの有効性については、以下Q&Aもご参照ください。
損切り(売却)
投資方針やリスク管理の観点から、一定の損失が出た時点で売却する(損切り)ことも有効な戦略です。大きな損失を防ぐために、あらかじめ損切りのルールを決めておくとよいでしょう。
損益通算で節税
年間の投資利益がある場合、含み損を実現損に変えることで、損益通算(利益と損失を相殺)し、税負担を軽減することができます。例えば、50万円の投資利益があり、20万円の含み損がある場合、20万円分を売却し損失確定させれば、課税対象となる利益を30万円に減らすことができます。
事前に損切りルールを作るメリットとポイント
含み損を抱えた資産を売却する「損切り」は、将来の大きな損失を防ぐために不可欠ですが、感情が判断を鈍らせることも少なくありません。
「もう少し待てば価格が戻るかも」という期待から決断を先延ばしにし、かえって損失を拡大させてしまうのは避けたい事態です。そこで、冷静な判断を助ける自分だけの損切りルールを、あらかじめ作っておくことが重要になります。
損切りルールを決めるメリット
事前にルールを設けることで、主に3つのメリットが得られます。
メリット1:感情に左右されない判断ができる
明確な基準があれば、価格の下落に動揺しても「ルールに従って売る」という機械的な行動が可能です。判断のブレがなくなり、冷静に資産を守ることにつながります。
メリット2:損失の拡大を確実に防げる
「もう少し様子を見よう」という根拠のない先延ばしを防ぎ、損失が許容範囲を超えて膨らむ事態を回避できます。
メリット3:規律ある投資姿勢が身につく
決めたルールを守る行動を繰り返すことで、短期的な値動きに一喜一憂しない、長期的に安定した投資の習慣を養うことができます。
損切りルール作りのポイント
自分に合ったルールを作るために、以下の3つのポイントを具体的に決めておきましょう。
ポイント1:許容できる損失率を決める
「購入価格から10%下落したら売却する」のように、自分が精神的に耐えられる損失の割合を数字で明確に定めます。これがルールの土台となります。
ポイント2:生活資金と投資資金を完全に分ける
生活費とは別に投資資金を管理することで、「生活が苦しくなるかも」という焦りから不合理な判断を下すリスクを減らせます。
ポイント3:損切り後の資金の使い道を決めておく
売却して現金化した資金を次にどう使うか、あらかじめ計画しておきます。「より安定した銘柄に乗り換える」「インデックスファンドの積立に回す」など、次の計画があれば、売却後の後悔や心理的な負担を大きく軽減できます。
この記事のまとめ
含み損の仕組みや対処法を理解したら、次はあなた自身に適した資産運用のプランを立てることが重要です。資産運用には年齢や家族構成、収入、将来必要となるお金やリスク許容度など、それぞれの事情に応じた「自分らしい投資スタイル」を見つけることが大切だからです。今回学んだ損切りルールや積立投資の原則も、自分に合ったポートフォリオの中でこそ有効に機能します。もし自分だけで判断するのが難しいと感じる場合には、第三者の専門家に客観的なアドバイスを受けるのも一つの方法です。学んだことを実際に活用しながら、一歩ずつ確実に資産形成を進めていきましょう。

MONO Investment
投資のコンシェルジュ編集部は、投資銀行やアセットマネジメント会社の出身者、税理士など「金融のプロフェッショナル」が執筆・監修しています。 販売会社とは利害関係がないため、主に個人の資産運用に必要な情報を、正確にわかりやすく、中立性をもってコンテンツを作成しています。
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関連する専門用語
含み損益
含み損益とは、保有している資産をまだ売却していない段階で発生している、見かけ上の利益や損失のことを指します。たとえば、購入時よりも価格が上がっている株を持っていれば「含み益」、逆に価格が下がっていれば「含み損」となります。 これはあくまで現在の評価額と購入額の差であり、実際に売却して現金化しない限り、確定した損益とはなりません。そのため、「含み」とは「まだ確定していない」という意味を含んでいます。 投資判断をする際には、この含み損益をもとに、売却のタイミングや資産配分の見直しを検討することがあります。また、税金は原則として実際に売却して利益が確定した時点で課税されるため、含み益があるだけでは課税対象にはなりません。資産運用において、現在の状況を把握する重要な指標のひとつです。
実現損益
実現損益とは、株式・債券・投資信託・FX などの資産を売却や決済によって現金化した時点で確定する利益(実現益)または損失(実現損)のことです。評価損益(含み損益)が「保有中に価格変動で増減する未確定の数字」であるのに対し、実現損益は取引が完結しているため課税額やキャッシュフローに直ちに反映されます。 実現損益の計算は「売却(決済)価格 − 取得原価 − 取引コスト」で求めます。たとえば、100 株を 1 株 1,000 円(購入手数料 1,000 円)で取得し、その後 1,200 円(売却手数料 1,000 円)で売却した場合、実現益は 18,000 円です。投資信託で 10 万円を購入し、信託財産留保額 0.3%を差し引いて 12 万円で解約するケースでは、実現益は 19,640 円となります。 国内株式や公募投資信託の実現益には原則 20.315%(所得税・住民税・復興特別所得税)の譲渡益課税が課されます。損失が出た場合は年内の利益と相殺(損益通算)でき、相殺し切れない場合でも翌年以降 3 年間繰り越して控除することが可能です。NISA 口座での実現益は非課税ですが、その代わり損失は損益通算の対象外となる点に注意が必要です。 運用成績を評価するときは、含み益だけで判断せず、税引き後の実現損益を確認し、実際に手元に残るリターンを把握することが重要です。長期保有であっても出口を設計し、定期的な利確やポートフォリオのリバランスを行うことで、市場急変に伴う機会損失や想定外の税負担を防ぎやすくなります。
損益通算
投資で発生した利益と損失を相殺することで、課税対象となる利益を減らす仕組みのことです。たとえば、株式投資で50万円の利益が出た一方、別の取引で30万円の損失が発生した場合、損益通算を行うことで、課税対象となる利益は50万円から30万円を引いた20万円になります。この仕組みにより、納める税金を減らすことが可能です。 損益通算が適用されるのは、同じ「所得区分」の中でのみです。たとえば、株式や投資信託の譲渡損益や配当金などは「株式等の譲渡所得等」に分類され、この範囲内で損益通算が可能です。ただし、不動産所得や給与所得など、異なる所得区分間では基本的に通算できません。 さらに、株式投資の損失は、損益通算後も控除しきれない場合、翌年以降最長3年間繰り越して他の利益と相殺できます。これを「繰越控除」と呼び、投資初心者にとっても節税に役立つ重要なポイントです。
債券
債券(サイケン、英語表記:Bond)とは、発行者が投資家に対して将来一定の金額を支払うことを約束する金融商品です。 国や地方自治体、企業などが資金を調達する目的で発行し、投資家はこれを購入することで、定期的に利息(クーポン)を受け取ります。満期が来ると、投資した本金が返済されます。 債券はリスクが比較的低く、安定した収入を求める投資家に選ばれることが多いです。 また、市場で自由に売買が可能であるため、流動性も確保されています。債券市場は世界的にも広がりを見せており、多様な投資戦略に利用されています。
投資信託
投資信託は、多くの投資家から集めた資金を一つの大きな資金としてまとめ、運用の専門家が株式や債券などに投資・運用する金融商品です。運用によって得られた成果は、各投資家の投資額に応じて分配される仕組みとなっています。 この商品の特徴は、少額から始められることと分散投資の効果が得やすい点にあります。ただし、運用管理に必要な信託報酬や購入時手数料などのコストが発生することにも注意が必要です。また、投資信託ごとに運用方針やリスクの水準が異なり、運用の専門家がその方針に基づいて投資先を選定し、資金を運用していきます。
分散投資
分散投資とは、資産を安全に増やすための代表的な方法で、株式や債券、不動産、コモディティ(原油や金など)、さらには地域や業種など、複数の異なる投資先に資金を分けて投資する戦略です。 例えば、特定の国の株式市場が大きく下落した場合でも、債券や他の地域の資産が値上がりする可能性があれば、全体としての損失を軽減できます。このように、資金を一カ所に集中させるよりも値動きの影響が分散されるため、長期的にはより安定したリターンが期待できます。 ただし、あらゆるリスクが消えるわけではなく、世界全体の経済状況が悪化すれば同時に下落するケースもあるため、投資を行う際は目標や投資期間、リスク許容度を考慮したうえで、計画的に実行することが大切です。
アセットクラス(資産クラス)
資産クラスとは、性質やリスク・リターンの特性が似ている金融資産を分類するためのカテゴリーのことです。代表的な資産クラスには、以下のようなものがあります。 株式(国内株・外国株など) 債券(国債・社債など) 不動産(現物不動産・REITなど) 現金・預金(流動性資産) コモディティ(金、原油、農産物など) それぞれの資産クラスは異なる値動きをするため、特定の市場環境で上昇するものもあれば、下落するものもあります。この特性を活かし、複数の資産クラスを組み合わせることでリスクを分散し、安定的な運用成果を目指す方法が「アセットアロケーション(資産配分)」です。 資産運用において、資産クラスの特徴を理解することは、自分に適した投資スタイルやリスク許容度に合った運用戦略を組み立てるうえで欠かせません。投資初心者にとっても、資産クラスの考え方を知ることは、長期的な資産形成の出発点となります。
ポートフォリオ
ポートフォリオとは、資産運用における投資対象の組み合わせを指します。分散投資を目的として、株式、債券、不動産、オルタナティブ資産などの異なる資産クラスを適切な比率で構成します。投資家のリスク許容度や目標に応じてポートフォリオを設計し、リスクとリターンのバランスを最適化します。また、運用期間中に市場状況が変化した場合には、リバランスを通じて当初の配分比率を維持します。ポートフォリオ管理は、リスク管理の重要な手法です。
非上場株式(未公開株式/非公開株式)
非上場株式(未公開株式/非公開株式)とは、証券取引所に上場していない企業の株式を指します。 上場株式とは異なり、公の市場で自由に売買できず、流動性が低いのが特徴です。特に買い手を見つけるのが難しく、売却までに時間を要することが多いです。主にベンチャー企業や中小企業が発行しており、取得方法としてはベンチャーキャピタル(VC)、エンジェル投資家、投資ファンド、従業員持株会などを通じた投資が一般的です。 また、売却や譲渡には会社の承認が必要な場合が多く、定款や契約によって譲渡制限が設けられていることもあります。そのため、希望するタイミングで売却できるとは限りません。 投資家にとっては、企業の成長による大きなリターンを期待できる一方で、換金の難しさや情報の透明性の低さといったリスクもあります。未公開企業は決算情報や事業計画の開示義務がない場合もあり、投資判断が難しくなる可能性があるため、十分な調査が必要です。 さらに、非上場株式は相続や贈与の際の評価が難しいという課題もあります。相続税や贈与税の計算では、国税庁の「財産評価基本通達」に基づき、類似業種比準方式や純資産価額方式などの方法で評価されます。しかし、これらの方式による評価額は事業の業績や市場環境によって変動しやすく、納税額が予想以上に高くなることがあります。 また、非上場株式は市場での換金が難しいため、相続税の納税資金を準備するのが困難な場合があります。このようなリスクを避けるために、事前に事業承継対策や株式の分散を検討することが重要です。
損切り(ロスカット)
損切り(ロスカット)とは、投資で保有している資産の価格が下がり、これ以上損失を広げないために、その資産をあえて売却して損失を確定させる行為のことをいいます。多くの投資家は、含み損の状態で損を確定させることに心理的な抵抗を感じますが、損切りをしないまま価格がさらに下がると、より大きな損失につながる可能性があります。そのため、あらかじめ損失の許容範囲を決めておき、一定の価格に達したら機械的に売る「ルールとしての損切り」が資産を守る手段として重要です。また、FXや信用取引では、証拠金維持のために強制的にロスカットが行われることもあります。損切りは投資のリスク管理の基本のひとつです。
評価額
評価額とは、資産や企業の価値を金銭的に算定した金額のことである。市場価格が存在する場合はその価格を用いるが、不動産や非上場株式などの場合は、鑑定評価や財務分析を基に算出される。税務や会計、投資判断の場面で重要な指標となり、資産売却や企業のM&Aの際にも適正な価格を判断するために用いられる。評価額は算出方法によって異なることがあり、状況に応じた適切な評価が求められる。
市場価格
市場価格とは、金融商品や商品が市場で取引される際の実際の価格を指す。株式や債券、商品などの資産は、需要と供給のバランスによって日々価格が変動する。市場価格は、投資判断や企業の財務評価において重要な指標となる。特に金融市場では、リアルタイムで価格が更新され、経済情勢や投資家の心理によって変動するため、資産価値を把握する際の基準として活用される。
リスク管理
リスク管理とは、資産運用において損失のリスクを抑えながら安定したリターンを得るための戦略や手法を指します。市場の変動や経済環境の変化により、投資資産の価値は常に変動するため、適切なリスク管理を行うことが重要です。具体的には、異なる資産クラスに分散投資することでリスクを分散させる、投資対象の信用力や市場環境を定期的に見直す、ストップロス(損切り)ルールを設定するなどの方法があります。また、長期的な視点でリスク許容度を考慮しながらポートフォリオを調整することも有効です。適切なリスク管理を行うことで、市場の急変動時にも冷静に対応し、資産の保全と成長のバランスを取ることが可能になります。
税制優遇措置
税制優遇措置とは、政府が特定の経済活動や投資を促進するために、税負担を軽減する制度のことを指す。具体的には、法人税の減税、所得控除、減価償却の特例などが含まれる。例えば、中小企業やスタートアップに対する税制優遇、特定の産業への投資促進策などがある。これにより、企業や個人は資金負担を抑えつつ、事業成長や投資の拡大を図ることができる。政策目的に応じて適用範囲や内容が変わるため、適用条件の確認が重要である。
ナンピン
ナンピンとは、すでに保有している資産の価格が下がったときに、追加で同じ銘柄を買い増すことで、平均購入単価を下げようとする投資手法のことをいいます。たとえば、1株1,000円で買った株が800円に下がったときにもう1株買うと、平均購入価格は900円になります。 これにより、価格が少し戻るだけでも損失を回収しやすくなるメリットがありますが、一方で下落が続くと損失がさらに膨らむリスクもあるため注意が必要です。ナンピンは資金に余裕があり、冷静にリスクを判断できる中・上級者向けの戦略とされることが多く、初心者が無計画に行うと損失拡大につながることがあります。適切な資金管理とリスク管理が欠かせない投資行動です。