
米国のストリップス債とは?仕組みやリスク・税金やメリット・デメリットを徹底解説
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公開:
2025.08.08
更新:
2025.08.08
米国ストリップス債は、利息を受け取らず満期時に元本と利息相当分を一括で得る特殊な債券です。「確定利回りを狙いたい」「安全資産で外貨運用をしたい」という理由で注目されていますが、「実際の仕組みや具体的なリスクはよく分からない」と感じる投資初心者も少なくありません。特に、デュレーションの長さから金利変動の影響を強く受ける点は見逃されがちです。本記事を読むことで、ストリップス債の基本から利付債との違い、運用時に気をつけるべきリスクまで明確に理解できます。
サクッとわかる!簡単要約
この記事を読むと、米国ストリップス債の基本的な仕組み、具体的なメリット・デメリット、そして投資判断のポイントが初心者でもすぐに理解できます。利息がない代わりに割引価格で購入し、満期時に元本が確実に返済される仕組みを、利付債との違いを交えて丁寧に解説しています。また、デュレーションの長さゆえに起こりやすい価格変動リスクや為替変動リスク、流動性の注意点まで具体的に整理しているため、安全に活用できる運用法が明確になります。
米国ストリップス債とは?ゼロクーポン債との違いや仕組みを解説
ストリップス債とは、米国財務省発行の利付国債(トレジャリーノート/ボンド)の元本と利子を分離し、それぞれを個別のゼロクーポン債として再構成した金融商品です。クーポン(金利)がない代わりに割引価格で購入し、満期日に額面金額を受け取ることで、その差額(償還差益)が利益となります。
正式名称は “Separate Trading of Registered Interest and Principal Securities” で、その頭字語がSTRIPSの由来です。米国政府の信用力に裏付けられた極めて安全性の高い資産ですが、金利や為替の変動リスクも存在します。
ストリップス債とは、利付国債の「元本」と「利子」を分離して作られる債券のこと
ストリップス債はどのようにして生まれたのでしょうか。その歴史的背景と、金融市場のニーズから制度化されるまでの過程、そして具体的な作られ方について見ていきましょう。
民間の金融商品が先行し、1985年に米国財務省が公式プログラムを開始
ストリップス債は、もともと市場のニーズに応える形で1980年代に米国財務省が制度化したものです。1980年代初頭、メリルリンチ社のTIGRsやソロモン社のCATSといった民間金融機関が米国債のクーポン部分を切り離してゼロクーポン債化する商品を提供し始め、長期固定利回りを求める投資家から注目を集めました。
これを受け、1985年に米国財務省が公式にSTRIPSプログラムを開始し、当初は残存期間10年以上の国債を対象にクーポンと元本の分離が認められました。翌1986年には分離した利息・元本を再度結合して元の利付債に戻す“再構成(Reconstitution)”も可能となり、市場の利便性が向上しています。
政府が直接発行するのではなく、流通市場で既発債を分離して作られる
当初は10年物および30年物国債が対象でしたが、市場の人気を受けて対象範囲は拡大し、1997年にはすべての償還期間の米国債でストリップ化が可能になりました。
現在では5年債も含め、発行後すぐに分離・再構成ができる体制が整っています。ストリップス債は政府が直接新規発行する債券ではなく、財務省の電子登録システム上で既発行債券を分離して作成されるため、投資家が財務省から直接購入することはできません。購入は後述するように証券会社等の金融機関を通じた既発債の買付(セカンダリーマーケット取引)という形になります。
途中の利払いがない「割引債(ゼロクーポン債)」である点が通常の利付国債との最大の違い
ストリップス債は通常の利付国債と具体的に何が違うのでしょうか。ここでは「利払いと税金」「価格変動の大きさ」「流動性と買い方」という3つの観点からその違いを比較します。
定期的な利払いがなく、税金の課税タイミングも満期時のみ
最大の違いは利払いの有無です。通常の米国国債は半年ごとにクーポン(金利)が支払われますが、ストリップス債は満期まで一切の利払いがなく、投資家は割引購入による償還差益で利回りを得ます。
この構造上、税金の課税タイミングも異なります。利付債は利息を受け取る都度課税されますが、ストリップス債では満期償還時に利益に対して一度だけ課税されます。これにより、課税が繰り延べられ、複利効果が高まるメリットがあります。
金利変動に対する価格の変動幅(デュレーション)が大きくなる
ストリップス債は、通常の国債より価格変動の感応度(デュレーション)が大きい点にも留意が必要です。利付債は途中で利息を受け取るぶん元本の平均回収期間が短くなりますが、ストリップス債は利息がないためデュレーションが残存期間とほぼ同じになります。
その結果、同じ満期でもストリップス債の方が金利変動による価格の上下動が大きくなる傾向があります。
新規発行では買えず、通常の国債より流動性が低い場合がある
最後に流動性や取引面での相違点です。利付国債は新規発行(オークション)でも購入できますが、ストリップス債は新発では買えず、流通している既発債を証券会社経由で買う形になります。
主要な米国債は世界で最も流動性の高い市場ですが、ストリップス債は発行量が限られるため、希望の銘柄が常に入手できるとは限りません。「欲しい条件の債券が翌日には売り切れていた」ということもあり得ます。
米国ストリップス債に投資する3つのメリット
ストリップス債への投資には、長期の資産運用計画において大きな魅力があります。特に、2025年現在のような金利が高い局面では、その恩恵を最大限に享受できる可能性があります。ここでは、ストリップス債が持つ具体的なメリットを3つのポイントに分けて詳しく解説します。
債券投資一般の仕組みについては以下記事で詳しく解説しています。
メリット1:購入時点で将来の受取額と利回りが確定する
ストリップス債最大の魅力は、将来の値動きを心配することなく、購入時にリターンを確定できる安心感にあります。具体的な仕組みを見ていきましょう。
ストリップス債は購入時に決まった利回り(最終利回り)で割引発行されるため、一度購入すれば満期までのリターンが確定的になります。満期まで保有すれば購入時に計算された利回り通りの最終的なリターンが得られるので、途中の金利変動に惑わされず計画通りの資産形成が可能です。この点は、満期がなく価格が常に変動する債券ETFや投資信託にはない、個別債券ならではの魅力です。
メリット2:将来の円安に備えるドル建て資産として保有できる
日本の投資家にとって、資産の一部を米ドルで持つことは円資産だけのリスクを分散する上で重要です。ストリップス債がその有効な手段となる理由を解説します。
資産を米ドルで保有し、円の価値下落リスクに備える
ストリップス債は米ドル建て資産であるため、日本の投資家にとっては為替面での分散効果も期待できます。円だけで運用する場合と比べ、資産の一部を外貨(米ドル)で保有することで、円の価値下落(インフレや円安)のリスクに備えることができます。
近年は円安基調もあって為替差益も含めたリターンを狙い、米国債券への投資に注目する動きがあります。ストリップス債は満期に額面ドルが戻ってくるので、仮に投資期間中に円安ドル高が進行すれば、為替差益も加わり円ベースのリターンが向上します。
為替リスクを避ける「為替ヘッジ」は、現在コストが高く利点が薄い
もっとも、外貨建て資産には常に為替変動リスクが伴います。為替リスクを回避したい場合、為替ヘッジ(為替先物予約等により円とドルのレートを固定すること)を行うことも考えられます。ただし、為替ヘッジにはコストがかかる点に注意が必要です。一般に、為替ヘッジコストは対象通貨と円の金利差によって決まります。
現在のように米ドルの金利が日本円より大幅に高い局面では、その金利差がヘッジコストとして投資家の負担になり、ヘッジ後の利回りを大きく押し下げます。現状では為替ヘッジなしで外貨リスクを取るか、ヘッジして利回り低下を受け入れるかのトレードオフとなっています。
為替ヘッジについては以下のQ&Aでも詳しく説明しています。
自身のリスク許容度に応じて、ヘッジの有無や投資比率を判断する
以上を踏まえると、ストリップス債を為替分散に活用する際には、自身の為替見通しやリスク許容度に応じてヘッジの有無を決定することが重要です。
例えば「円安が進む可能性が高い」と考えるならヘッジなし運用で為替差益も狙う戦略がありえますし、「為替リスクを取りたくない」場合はコスト覚悟でヘッジする、あるいは最初から外貨資産への投資比率を抑えるといった対応が考えられます。
メリット3:教育資金など「使う時期」に合わせて満期日を選べる
将来の特定の時期に必要な資金を、計画的に準備したいニーズにもストリップス債は応えます。豊富な満期日のラインナップが、柔軟な資産計画を可能にします。
ライフイベントに合わせた満期設定で計画的な資産準備が可能
ストリップス債は満期日が細かく選べるため、必要となるタイミングに合わせた資金計画が立てやすいという利点もあります。満期日のラインナップが豊富なので、自分の将来の資金需要(例えば何年何月に何ドル必要、等)に合致する償還日を持つ債券を選択でき、特定の目標に備えた運用がしやすいのです。
米国政府保証の高い信用力と相まって、将来の教育資金や老後資金の確保といった目的でストリップス債の活用を検討するケースも増えています。
満期前の価格変動は大きいため、途中売却には注意が必要
一方で、ストリップス債は価格の金利感応度(デュレーション)が非常に大きい点に注意が必要です。金利が変動すると満期までの途中価格が大きく上下するため、評価額ベースではボラティリティ(変動性)が高くなります。
例えば残存20年程度のストリップス債では、市場金利が1%動くだけで理論価格が概ね15から20%近く変動する計算となります。ただし、この価格変動リスクは満期まで保有すれば実現損益には影響しません。途中で売却せず満期償還まで持ち切る限り、購入時に確定した利回りが予定通り確保されます。
従って、ストリップス債のメリットを最大限享受するには、満期保有を前提とした長期運用が望ましいと言えるでしょう。
ストリップス債のデメリット:投資をする前に知っておきたい3つの注意点
ストリップス債への投資には多くのメリットがある一方、その裏側にあるデメリットや注意点もしっかり理解しておく必要があります。
ここでは「価格変動」「税金」「為替」という3点について、具体的なポイントを解説します。
注意点1.価格変動リスク:金利が上がると、途中売却時に元本割れの可能性
ストリップス債の最大のリスクが、金利変動による価格のブレです。その仕組みと、投資家が取るべき対策について具体的に見ていきましょう。
なぜ価格変動が大きいの?利子がないことによる「デュレーション」の長さ
ストリップス債の価格変動リスクは、通常のクーポン債に比べて大きくなります。
これはストリップス債にクーポンがない分だけデュレーション(期間リスク)が長く、市場金利の変動に対する価格感応度が高いためです。
具体的には、金利が上昇局面では価格下落幅が大きく、金利低下局面では逆に価格上昇幅が大きくなる傾向があります。例えば、残存期間20年のストリップス債では金利が1%上昇すると価格が約15~20%下落する、といった具合です。
途中売却は要注意、元本確保には満期保有が原則
満期前の価格変動リスクが大きいため、途中で売却を検討する際には注意が必要です。
購入後に金利上昇局面が訪れると評価額が大きく目減りし、一時的に元本割れ状態になる可能性もあります。
逆に金利が低下すれば評価益が膨らみますが、いずれにせよ価格変動のボラティリティは他の債券より高い点を認識しておくべきです。購入後にどうしても資金が必要になり途中売却する場合、利益が出ることもあれば損失が出ることもあるため、「基本は満期まで保有する」という前提で投資することが大切です。
注意点2.税金:償還差益(利益)に20.315%の税金がかかる
利益が出た場合に、いつ、どのくらいの税金がかかるのか。日本の投資家が知っておくべき税金のルールを、課税の仕組みから非課税制度との関係まで解説します。
償還差益は20.315%の申告分離課税、特定口座なら源泉徴収
日本の個人投資家がストリップス債を購入した場合、償還差益(満期時に受け取る額面と購入額の差額)に対して税金が課されます。
税率は20.315%(所得税15%、復興特別所得税0.315%、住民税5%)の申告分離課税となります。
多くの証券会社ではストリップス債を特定口座(源泉徴収あり)で取り扱えるため、その場合は満期償還時に差益部分から自動的に税金が源泉徴収され、確定申告は不要です。
日本の税制に準拠している外貨建て債券のメリットについては以下Q&Aで解説しています。
課税は売却・償還時のみ、損失は他の公社債と損益通算が可能
課税タイミングは、売却時または満期償還時です。期間中の利息支払いがないため保有期間中は課税が繰り延べとなります。
逆に途中売却で損失が出た場合、同一年内であれば他の公社債等の利子・譲渡益との損益通算が可能です。ただし、株式など他の種類の所得とは通算できません。
米国での源泉徴収はなく、NISA(非課税制度)の対象外
なお、ストリップス債の償還差益に対して米国で源泉徴収税が課されることは基本的にありません。米国財務省証券の利子は非居住者について源泉免除の対象であり、二重課税の心配は不要です。
ただし、新NISAなどの非課税制度では個別債券は原則対象外のため、ストリップス債をNISA枠で保有することはできません。投資は課税口座で行うことになります。
注意点3.為替リスク:円高が進むとドルでの利益が円換算で目減りする
米ドル建て資産である以上、為替変動のリスクは避けて通れません。円換算でのリターンにどう影響するのか、またその対策とコストについて整理します。
ドル建て資産のため、円高・円安が円換算リターンを大きく左右する
日本から米国ストリップス債に投資する場合、満期時や売却時に円貨換算した価値は、その時々のドル円相場に左右されます。
投資時より円高(ドル安)が進行すると円換算リターンは目減りし、逆に円安(ドル高)になれば増加します。極端なケースでは、為替変動によって債券のドルベース利益が相殺されてしまうこともあり得ます。
為替ヘッジは可能だが、日米金利差によりヘッジコストが高騰
この為替変動リスクを抑える手段として為替ヘッジがあります。為替ヘッジを行えばドル円レートを実質的に固定できますが、その代償としてヘッジコストが発生します。
現在のように日米の金利差が大きい場合にはヘッジコストが利回りをほぼ相殺してしまう点に注意が必要です。米国の金利が高い局面では、ヘッジ後の利回りは大幅に低下します。
為替リスクを取るか、ヘッジコストを払うかの判断が必要
このように、為替リスクを取るかヘッジコストを負担するかは一長一短です。投資家自身の見通しとリスク許容度に応じて方針を決めましょう。
為替ヘッジは個人で行うのは難易度が高いため、為替ヘッジ付きの投資信託やETFを利用するのも選択肢です。また、ポートフォリオ全体で「外貨資産への投資比率」を調整し、為替リスク量を管理することも有効です。
米国ストリップス債投資が向いている人・向いていない人は?
ここまで解説してきた特徴を踏まえ、米国ストリップス債はどのような投資家にとって有効な選択肢となるのでしょうか。ご自身の投資目的やリスク許容度と照らし合わせ、最適な判断を下すための材料としてご活用ください。
ストリップス債が向いている人
ストリップス債の持つ「確定利回り」や「満期日の指定」といった特徴は、以下のような投資目的や考え方を持つ方に特にフィットします。
1.将来の明確な目標のために、計画的に資産を準備したい人
「15年後の子どもの大学入学資金として10万ドル」「20年後のリタイア時に使う5万ドル」のように、将来の特定の時期に必要な資金額が決まっている場合に、ストリップス債は最適です。購入時点で満期日に受け取れるドル建ての金額が確定するため、ゴールから逆算して計画的に資産を準備できます。
2.米ドルベースでの元本確保を最優先し、満期まで保有できる人
途中の価格変動は気にせず、満期までしっかり保有することで、投資した元本を米ドルベースで確実に回収したいと考える方に向いています。米国政府の信用力という裏付けがあるため、発行体のデフォルトリスクを極力避けつつ、安全に資産を守りたいというニーズに応えます。
3.資産の一部を米ドルで保有し、為替リスク分散や円安に備えたい人
資産のすべてを日本円で持つことにリスクを感じ、ポートフォリオの一部を外貨、特に基軸通貨である米ドルで保有したいと考える方に適しています。将来的に円安が進行すると考えれば、満期時の為替差益も期待できます。
4.シンプルな長期運用をしたい人
通常の利付債のように、半年ごとに利息を受け取ってそれを再投資に回す、といった手間をかけたくない方にも向いています。一度購入すれば、満期まで何もせず保有しているだけで、複利効果を含んだリターンが最終的に得られるシンプルな商品性も魅力です。
ストリップス債が向いていない、慎重に判断すべき人
一方で、商品の特性がご自身の投資スタイルや資金の性質と合わない場合もあります。次のような方は、投資を慎重に判断することをおすすめします。
1.短期的な資金が必要になる可能性がある人
ストリップス債は、金利変動による途中価格の変動が非常に大きい商品です。数年以内に使う可能性のある資金で投資してしまうと、いざ必要な時に金利が上昇して価格が下落し、元本割れで売却せざるを得ない状況に陥るリスクがあります。短期での売買には不向きです。
2.投資から定期的なインカム(利息収入)を得たい人
ストリップス債は満期まで一切利息が支払われません。リタイア後の生活費など、資産運用から得られる定期的なキャッシュフローを重視する方には不向きです。このようなニーズの場合は、利付の米国国債や他の高配当商品などを検討する方が合理的です。
3.途中の価格変動(評価損)に心理的に耐えられない人
「満期まで持てば大丈夫」と頭では理解していても、保有資産の評価額が購入時より20%、30%と大きくマイナスになる状況に、心理的なストレスを感じてしまう方にはお勧めできません。長期保有が前提とはいえ、評価損に耐えられず狼狽売りしてしまう可能性も考慮すべきです。
4.今後の円高を予想し、為替リスクを許容できない人
ドル建ての資産であるため、円高は円換算でのリターンを目減りさせる直接的な要因となります。将来的に円高が進むと強く考えている方や、為替の変動による元本割れリスクを一切許容できない方は、投資を慎重に判断するか、コストを払ってでも為替ヘッジを行う必要があります。
この記事のまとめ
米国ストリップス債は、満期時の受取金額が購入時に確定するため、長期的な資産運用や教育資金の準備に適した債券です。ただし、途中売却時には金利変動による価格変動リスクや為替リスクが伴います。購入を検討する際は、デュレーションの長さ、為替ヘッジのコスト、流動性の低さ、課税タイミングなどを総合的に評価し、自身のリスク許容度や運用期間に合致しているかを慎重に確認しましょう。必要に応じて専門家に相談するのも選択肢です。

MONO Investment
投資のコンシェルジュ編集部は、投資銀行やアセットマネジメント会社の出身者、税理士など「金融のプロフェッショナル」が執筆・監修しています。 販売会社とは利害関係がないため、主に個人の資産運用に必要な情報を、正確にわかりやすく、中立性をもってコンテンツを作成しています。
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米国ストリップス債(STRIPS)
米国ストリップス債(STRIPS)とは、アメリカの国債から利払い部分と元本償還部分を分離して、それぞれを個別のゼロクーポン債として販売する仕組みのことです。 利息部分と元本部分が別々の証券として取引されるため、投資家は満期日に受け取る金額があらかじめ決まっており、定期的な利払いはありません。通常の債券よりも価格変動の影響を受けやすいですが、信用力が高い米国財務省が発行しているため、信用リスクは極めて低いとされています。 長期的な金利変動を見込んだ運用や将来の特定の支出資金を確保する目的で利用されることが多いです。
ゼロクーポン債
ゼロクーポン債とは、利息の支払いが一切なく、額面よりも安い価格で購入し、満期時に額面金額を受け取るタイプの債券です。「ゼロクーポン」という名前のとおり、通常の債券のように定期的に利息(クーポン)を受け取ることはありません。その代わりに、割引された価格で買い、満期まで保有することで、その差額が実質的な利益となります。たとえば、額面が100万円のゼロクーポン債を90万円で購入し、満期に100万円を受け取れば、10万円が利回りとなります。利息の再投資を考える必要がなく、運用がシンプルであることから、将来の資金用途が明確な場合や、確定した金額を一定期間後に受け取りたい場合に適しています。ただし、金利の変動による価格の変化が大きいため、途中で売却する場合にはリスクがあることも理解しておくことが大切です。
償還
償還とは、債券の満期到来時に発行体が投資家に対して元本を返済することを指します。例えば、10年満期の債券であれば、10年後に元本が返金されます。債券の発行元が満期までの間に利息を支払い、償還時に元本を返済することで投資家は利息収益と元本の返金を得ます。ただし、償還には発行体の信用力が影響し、デフォルトリスクが存在する場合があります。
デュレーション
デュレーションは、債券価格が金利変動にどれほど敏感かを示す指標で、同時に投資資金を回収するまでの平均期間を意味します。 一般に「Macaulay デュレーション」を年数で表し、金利変化率に対する価格変化率を示す「修正デュレーション」は Macaulay デュレーションを金利で割って算出します。 数値が大きいほど金利 1 %の変動による価格変動幅が大きく(例:修正デュレーション 5 年の債券は金利が 1 %上昇すると約 5 %値下がり)、金利リスクが高いと判断できます。一方で金利が低下すれば同じ倍率で価格は上昇します。デュレーションを把握しておくことで、ポートフォリオ全体の金利感応度を調整したり、将来のキャッシュフローと金利見通しに応じて保有債券の残存期間やクーポン構成を選択したりする判断材料になります。特に金利の変動が読みにくい局面や長期安定運用を重視する場面では、利回りだけでなくデュレーションを併せて確認することが重要です。
利付国債
日本が発行している国債の一つ。償還期限まで半年に1度、年に2回のペースで利子を受け取ることの出来る国債。満期償還時に額面の全ての金額が戻る。利率は一定の利払いがある固定利付債と、金融情勢によって利率が変化し利払いがその都度に変わる変動利付債の2種類がある。
二次市場(セカンダリーマーケット)
ニジシジョウ(セカンダリーマーケット)とは、すでに発行された株式や債券などの金融商品を、投資家同士が売買する取引のことを指します。たとえば、証券取引所で株式を売買するのはすべてセカンダリー取引にあたります。これに対して、企業が新しく株式や債券を発行して資金を集める取引は「プライマリー取引」と呼ばれます。セカンダリー取引は、投資家がいつでも資金を現金化できる流動性を確保する重要な役割を果たしています。資産運用においては、こうした市場の動きや流動性を理解することが、適切な投資判断を行ううえで大切です。
為替ヘッジ
為替ヘッジとは、為替取引をする際に、将来交換する為替レートをあらかじめ予約しておくことによって、為替変動のリスクを抑える仕組み。海外の株や債券に投資する際は、その株や債券の価値が下がるリスクだけでなく、為替の変動により円に換算した時の価値が下がるリスクも負うことになるので、後者のリスクを抑えるために為替ヘッジが行われる。
ヘッジコスト
ヘッジコストとは、為替や金利などの市場変動リスクを抑えるために先物取引やスワップ取引などでポジションを置き換える際に発生する費用の総称です。たとえば外貨建て資産を円で評価する投資家が為替リスクを避けるために為替ヘッジをかける場合、将来の円・外貨交換レートを予約する代わりに金利差や手数料に基づくコストが発生します。 このコストは通貨間の金利差が大きいほど高くなり、投資収益の差し引き後リターンに直接影響します。資産運用の成果を正しく評価するには、表面的な収益だけでなくヘッジコストを加味してネットリターンを把握することが大切です。
申告分離課税
申告分離課税とは、特定の所得について他の所得と分離して税額を計算し、確定申告を通じて納税する方式です。 主な対象となる所得は以下の通りです: - 譲渡所得: 土地や建物、株式などの譲渡による所得。 - 山林所得: 山林の伐採や譲渡による所得。 - 先物取引による所得: FXや商品先物取引による所得。 例えば、株式の譲渡所得については、他の所得と合算せずに分離して課税されます。また、上場株式等の配当所得についても、申告分離課税を選択することができます。
特定口座
特定口座とは、投資家の税金計算を簡便にするための口座形式です。証券会社が運用益や損益を自動計算し、年間取引報告書を発行します。特定口座には「源泉徴収あり」と「源泉徴収なし」の2種類があり、「源泉徴収あり」を選択すれば、税金が取引時点で自動的に納付されます。これにより、確定申告が不要になるため、多くの投資家に利用されています。ただし、損益通算や損失の繰越控除を行う場合は確定申告が必要です。
NISA
NISAとは、「少額投資非課税制度(Nippon Individual Saving Account)」の略称で、日本に住む個人が一定額までの投資について、配当金や売却益などにかかる税金が非課税になる制度です。通常、株式や投資信託などで得られる利益には約20%の税金がかかりますが、NISA口座を使えばその税金がかからず、効率的に資産形成を行うことができます。2024年からは新しいNISA制度が始まり、「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の2つを併用できる仕組みとなり、非課税期間も無期限化されました。年間の投資枠や口座の開設先は決められており、原則として1人1口座しか持てません。NISAは投資初心者にも利用しやすい制度として広く普及しており、長期的な資産形成を支援する国の税制優遇措置のひとつです。
最終利回り
最終利回りとは、債券を現在の市場価格で購入し、満期まで保有した場合に得られる年間平均の利回りを示す指標です。この利回りには、定期的に受け取る利息だけでなく、購入価格と満期時に返ってくる額面金額との差も含まれています。 たとえば、額面が10万円の債券を9万5千円で購入して満期に10万円が返ってくる場合、その差額も収益として利回り計算に組み込まれます。表面利率だけではわからない、実際の投資収益を正しく把握できるため、債券投資を検討する際の比較基準としてとても重要です。資産運用では、利回りをきちんと把握して投資対象の選定を行うことで、リスクとリターンのバランスを整えることができます。