個人向け国債は買ってはいけない?やめとけと言われる理由を解説
難易度:
執筆者:
公開:
2024.06.19
更新:
2024.12.06
個人向け国債は、国にお金を一定期間貸すことで利息を得られ、また銀行の普通預金・定期預金より利率の高い安定資産として注目されています。
巷では「個人向け国債を買うのはやめとけ」という旨の声が見られます。個人向け国債に興味を持っているものの、ネガティブな意見を聞くと不安になってしまいますよね。
こちらの記事では、個人向け国債はやめとけと言われる理由や基本的な特徴、購入するメリットなどを解説します。安全資産として個人向け国債の購入を検討している方に役立つ内容となっているので、参考にしてみてください。
個人向け国債が「やめとけ」と言われる理由とデメリット
個人向け国債は国が破綻しない限り元本保証の安全資産でメリットも多く存在しますが、以下のように「やめとけ」と意見する声も散見されます。
- 株式投資ほどのリターンが得られずインフレに弱い
- 購入と解約に手間がかかり購入後1年間は解約できない
- キャンペーンにつられると金融機関から商品の勧誘を受ける
なぜ「やめとけ」と言われるのか、理由を解説します。
株式投資ほどのリターンが得られずインフレに弱い
資産運用と聞いて、株式投資や投資信託を最初に思い浮かべる人が多いでしょう。株式投資や投資信託への投資を行っている人たちにとって、個人向け国債はお金を寝かせているように見えるようです。
個人向け国債は、株式投資ほどのリターンが得られません。株式投資では、年利5%以上のリターンを見込める可能性もある一方で、個人向け国債の年利は1%程度です(2024年5月現在)。
収益性では、個人向け国債は株式投資よりも劣ってしまいます。投資経験者からするとリターンが物足りないため、「大して利益が出ないからやめとけ」と言われることが推測されます。
さらに、個人向け国債の金利では、インフレに対応できません。総務省の資料によると、直近の物価上昇率は前年同期比+2.8%でした(総合指数)。
個人向け国債の期待リターンは物価上昇率よりも低く、実質的な資産の購買力が下がってしまうことから「やめとけ」という声が聞かれるのでしょう。
解約に手間がかかり購入後1年間は解約できないから
個人向け国債は、解約に手間がかかるうえに購入後1年間は原則として解約できません。そのため、急にお金が必要になっても株式のようにすぐに売却して現金化することが難しいです。
「手間がかかる割には、大して儲からない」「必要なときに引き出せないから不便」という考えから、やめとけと意見する人もいると推測されます。
個人向け国債の販売窓口となっているのは金融機関です。解約する際には、郵便局・銀行・信用金庫などの窓口に行ったり、証券会社で口座を開設したりする必要があります。
解約にあたって手間がかかることから、「面倒だからやめとけ」という声が聞かれるものと推測されます。
キャンペーンにつられると金融機関から商品の勧誘を受けるから
個人向け国債の販売窓口となっている金融機関では、「購入金額100万円ごとに1,000円キャッシュバック」のように、購入金額に応じたキャンペーンを行っています。
キャンペーンにつられて個人向け国債を購入すると、金融機関から商品の勧誘を受ける可能性があります。しつこい営業を受けた経験を持つ人が「勧誘を断るのが面倒だからやめとけ」と意見しているケースも推測できるでしょう。
金融機関としても、個人向け国債の購入をきっかけに、顧客を取り込みたい意向があります。そのため、利用した金融機関から何らかの営業を受けるのは、ある程度は致し方ありません。
お得なキャンペーンを活用するのは有意義ですが、キャンペーンだけに踊らされるのは避けるべきです。もし営業を受けても、不要と感じたらきっぱりと断るか、今後は連絡が不要である旨を伝えるとよいでしょう。
ただし、ネット証券で個人向け国債を購入すれば、営業を受けるリスクを抑えられます。そのため、「営業を受けるのが嫌」というあなたは、対面窓口ではなくネット証券で購入することをおすすめします。
個人向け国債は3種類!仕組みと利率を解説
個人向け国債には「固定3年」「固定5年」「変動10年」の3種類があります。それぞれの特徴をまとめると、以下のとおりです。
固定3年 | 固定5年 | 変動10年 | |
---|---|---|---|
金利変動 | なし | なし | あり |
金利設定方法 | 基準金利-0.03% | 基準金利-0.05% | 基準金利×0.66 |
固定3年,固定5年,変動10年共通 | |
---|---|
最低金利 | 0.05% |
元本割れリスク | なし |
利子の受け取り | 半年毎に年2回 |
購入単位 | 最低1万円から1万円単位 |
中途換金 | 発行後1年経過すれば、いつでも中途換金が可能(直近2回分の各利子相当額が差し引かれる) |
いずれの個人向け国債も、元本割れリスクがありません。変動10年は適用される金利が変動するものの、最低金利として0.05%が保証されているため、元本割れは起きません。
発行後1年が経過すればいつでも中途換金が可能なので、資金ニーズにも対応しやすいでしょう。満期前に中途換金した場合でも、直近2回分の各利子相当額が差し引かれるだけなので、元本割れは起きません。
個人向け国債にはメリットも多い
個人向け国債は「やめとけ」というネガティブな意見が見られる一方で、メリットも多くあります。
ネガティブな声だけに惑わされることなく、メリットについても把握しましょう。
元本保証で銀行預金以上の金利が適用される
個人向け国債は、元本保証でありながらも銀行預金以上の金利が適用されています。2024年4月現在、募集中の個人向け国債に適用される金利は以下のとおりです。
- 固定3年:0.18%
- 固定5年:0.36%
- 変動10年:0.5%
参考:財務省「個人向け国債窓口」
なお、三菱UFJ銀行・三井住友銀行・みずほ銀行・りそな銀行の普通預金金利は0.02%です。定期預金は預入額によって差があるものの、最大0.3%です(2024年4月現在)。
例えば、メガバンクの3年ものの定期預金は0.15%でした(2024年4月現在)。同じ預入期間の場合、定期預金よりも個人向け国債のほうが高金利となっています。
変動10年は金利上昇に伴って受け取れる利息が増える
個人向け国債変動10年は、半年ごとに金利が見直されます。購入後に、昨今のような金利上昇局面を迎えると、受け取れる利息が増えるという恩恵を受けることが可能です。
一方で、銀行の定期預金は預入時の金利が固定されます(銀行によっては変動金利定期預金があります)。金利上昇に伴って、受け取れる利息が増える恩恵を受けられるのは個人向け国債変動10年のメリットです。
逆に金利が下がったとしても、0.05%が最低保証されています。元本割れのリスクがなく、金利上昇の恩恵を受けられる点は、銀行預金にはない強みといえるでしょう。
国(日本政府)が発行しているため信用リスクが非常に低い
個人向け国債を買うということは、国にお金を貸すことです。国債は国が発行しているため、株式や社債と比べるとデフォルトリスクが非常に低いというメリットがあります。
仮に大不況や恐慌がきたとして、大不況や恐慌で金融機関に危機的状況が訪れたとしても、日本政府が揺らいだことはありません。つまり、個人向け国債は金融商品の中でも、トップクラスの安全性を誇ります。
1万円から購入できるため始めるまでのハードルが低い
個人向け国債は、1万円から購入可能です。「投資(特に債券投資)」と聞くと大金が必要になるイメージを持つ方がいるかもしれませんが、個人向け国債は気軽な金額から始められます。
少額から購入できるため、「まずは資産運用の経験を積みたい」と考えている方にもおすすめです。
なお、購入から1年が経過すれば、1万円単位で解約できます。解約した際には直近2回分の利息が差し引かれますが、元本割れするわけではありません。
購入時・保有中・中途換金時に手数料がかからない
個人向け国債は、購入時・保有中・中途換金時のいずれのタイミングでも手数料がかかりません。金融商品によっては、購入時と中途換金時に売買手数料(信託財産留保額)や、保有中に信託報酬(投資信託・ETFの場合)という手数料がかかります。
しかし、個人向け国債では一連の手数料が発生しません。余計な手数料を負担することなく購入でき、保有し続けられる点は個人向け国債の魅力といえるでしょう。
個人向け国債を有効活用する方法とおすすめの人
個人向け国債は安全性が高く、満期を迎えると確実に元本が受け取れるという強みがあります。一方で、株式投資や投資信託ほどのリターンは見込めない弱みがある点が特徴です。
そのため、以下のような人に向いています。
- まとまったお金が必要になるタイミングが把握できている方
- まずはリスクのない方法で資産運用を始めてみたい方
- ペイオフで保護されないお金の安全な置き場所を探している方
以下で、詳しく解説していきます。
1.まとまったお金が必要になるタイミングが把握できている方
例えば、子どもが現在7~8歳で大学入学資金を用意したいときは、変動10年を購入して保有し続けるとよいでしょう。安全に元本を確保しつつ、保有期間中は半年に1回利息を受け取れます。
特に、教育資金は必要になるタイミングがある程度予測できます。教育資金を用意するうえで、個人向け国債は好相性といえるでしょう。
2.まずはリスクのない方法で資産運用を始めてみたい方
資産運用の経験がなく、とにかく元本割れは避けたい方や元本割れを起こすとパニックになってしまう可能性がある方も、個人向け国債の購入が向いています。
個人向け国債は元本保証の安全資産です。資産運用に興味がありつつも、手始めにリスクのない方法で試したいという方にもおすすめです。
3.ペイオフで保護されないお金の安全な置き場所を探している方
1,000万円以上の現預金がある方の場合、ペイオフで保護される範囲を超えています。ペイオフとは、預金している金融機関が破綻したとき、元本1,000万円までと破綻日までの利息が保護される仕組みです。
ペイオフで保護されない分のお金を安全に預けられる先を探している方にとって、個人向け国債は有力な選択肢となるでしょう。国(日本政府)が発行している以上、安全なお金の置き場所といえるでしょう。
まとめ:個人向け国債は一概に「やめとけ」とは言えない!安全に運用したいときの有力な選択肢
個人向け国債は「リターンが低いから」「解約に手間がかかるから」「金融機関からしつこい営業を受けるから」など、さまざまな理由からやめとけと言われることがあります。
しかし、個人向け国債は安全資産として優れた金融商品です。銀行預金よりも安全性が高く、まとまったお金が必要になるタイミングを見越して運用できます。
さらに、変動10年は元本割れのリスクがほとんどないうえに金利上昇の恩恵を受けられるため、銀行預金にはない強みを持っています。個人向け国債に興味がある方は、「やめとけ」という声に惑わされることなく、メリットとデメリットをバランスよく評価しましょう。
柴田充輝
金融系ライター
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1,000記事以上の執筆実績あり。
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1,000記事以上の執筆実績あり。
関連記事
関連する専門用語
国債
発行体が各国中央政府の債券を国債といいます。発行目的や利払い方式などで種類が分別されます。中央政府に資金需要が発生した際に、国債を発行して資金の調達を行うことがあります。 投資家は国債を購入することで、発行体である中央政府へ資金を提供し、その見返りとして半年に1回などのペースで、中央政府から利子を受け取ります。償還期限までに中央政府の財政が悪化するなど、債務が履行されない状況に陥らなければ、満期には額面どおりの金額が投資家へ償還される仕組みです。 国債には、固定利付国債、変動利付国債、物価連動国債などがあります。
個人向け国債
国が発行する個人の方を対象とした債券のこと
有価証券
証券市場での売買の対象として金融商品取引法に列挙されている証券。国債、地方債、社債や株券、投資信託の受益証券などが代表的なもの。
円貨建て債券
債券のうち、利払い及び償還が円貨で行われるもの。