投資用不動産で賃料収入が多いと節税が難しい理由は?
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2025/01/20 18:58
男性
60代
投資用不動産を運用しています。不動産投資では賃料収入が高いほど節税効果が得にくいと言われますが、その理由と具体的な対策について教えてください。
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
賃料水準が高い物件はキャッシュフローこそ潤沢ですが、家賃総額に比べて経費・減価償却費の比率が相対的に低いため、不動産所得が黒字化しやすく課税ベースを削り切れません。建物は法定耐用年数に従って直線的に償却され、借入金利は年々減少します。さらに高収益物件ほど借入依存度を抑えて購入するケースが多く、利息控除の“減税効果”も限定的です。結果として実効税負担が上昇し、手取り利回りが目減りする構造になります。
実務上取り得る主な対策
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土地・建物按分の最適化
取得時に鑑定評価書を活用して建物比率を高めれば、同じ物件でも償却費を前倒し計上でき、早期に税負担を抑制できます。
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計画的な資本的支出の経費化
エアコン交換や外壁塗装などを「修繕費」として短期費用化しやすいタイミングで実施し、減価償却と合わせて経費額を平準化します。
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保有スキームの法人化
青色申告特別控除(最大65万円)、役員報酬・退職金、家族への給与分散により可処分所得を調整し、個人の累進税率を回避します。
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ポートフォリオ・オフセット
減価償却が厚い築古RCや太陽光発電設備を組み合わせ、赤字部分と損益通算して所得全体を抑えます。
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長期保有+キャピタル戦略
5年超での譲渡は長期譲渡税率(20.315%)が適用され、インカム課税より軽減される場合があります。キャッシュフローを成長させつつ将来の売却益で総合利回りを最大化する発想です。
もっとも、高賃料物件の核心的な魅力は「税メリット」ではなく、安定した収益力と都市部の資産価値向上ポテンシャルにあります。税金はコストとして適切に管理しつつ、取得前シミュレーションから出口戦略までを一貫させたトータルリターン志向のプランニングこそが、高収益物件を活かす最善策と言えます。
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総合課税
総合課税は、給与や年金、事業収入、不動産収入、利子、配当など、1年間に得たさまざまな所得を合算し、その合計額に累進税率を適用して所得税を計算する方式です。 所得が増えるほど税率が高くなるため、高所得者ほど税負担が大きくなる点が特徴です。一方、金融所得には総合課税以外の課税方法を選択できる場合があります。 たとえば、株式譲渡益や先物取引益などは「申告分離課税」を選ぶことで、ほかの所得と区分して一律20.315%(所得税15%、復興特別所得税0.315%、住民税5%)で申告できます。 また、預貯金利息や一部の公社債利子などは、支払元が税金を源泉徴収する「源泉分離課税」となり、原則として確定申告は不要です。配当や利子のように課税方式を選択できるケースでは、ご自身の所得水準や控除の有無、損益通算の可能性を踏まえ、総合課税・申告分離課税・源泉分離課税のどれを採用するかを検討することが、最終的な税負担を抑えるうえで重要になります。
経費計上
経費計上は、事業や投資活動に関連する支出を収益から差し引き、課税所得を減らす処理です。減価償却費や修繕費などが含まれ、適切な計上が節税に直結します。
実質利回り
実質利回りとは、資産運用において、名目上の利回りから運用コストや税金、インフレの影響を差し引いた後の、実際に得られる利益率を示す指標です。金融資産や不動産など、さまざまな資産運用の分野で活用され、投資の収益性をより正確に評価するために重要な役割を持ちます。 金融資産においては、債券や定期預金などの固定利回りの金融商品では、インフレ率が名目利回りを上回ると実質利回りがマイナスになり、資産価値が目減りするリスクがあります。そのため、投資家は名目利回りだけでなく、インフレ調整後の実質利回りを確認することで、資産の購買力を維持しながら運用することができます。 不動産投資では、実質利回りは単なる表面利回りとは異なり、賃貸収入から管理費、修繕費、固定資産税、ローンの利息などのコストを差し引いた後の利益をもとに算出されます。さらに、インフレによって家賃が上昇すれば実質利回りが向上する一方で、維持費の増加によって利回りが低下する可能性もあります。そのため、不動産投資では、地域の経済成長や賃料の上昇余地を考慮しながら、実質利回りを長期的に評価することが求められます。 資産運用全体において、実質利回りを考慮することで、単なる表面上の収益ではなく、実際に資産を増やすための正確な指標を得ることができます。運用コストや税金、インフレといった要素を踏まえて投資判断を行うことが、資産の成長と保全のために不可欠です。
課税所得
課税所得とは、個人や法人が一定期間内に得た収入から、法律に基づいて認められた各種控除や必要経費を差し引いた後の金額を指します。この金額に対して所得税や法人税などの税率が適用され、実際に納税すべき税額が計算されます。課税所得の計算方法は国や地域によって異なるため、具体的な控除項目や税率もそれに応じて変わります。 課税所得を計算する際には、まず総収入から非課税所得を除外します。その後、必要経費や特定の控除(例えば、標準控除、医療費控除、教育費控除など)を適用して課税対象となる所得を求めます。これにより、公正かつ実情に即した税額を算出し、納税者が収入に見合った税金を支払うことが可能となります。 課税所得の正確な把握と計算は、個人や企業の税務管理において非常に重要です。税法の変更に応じて控除額や計算方法が更新されることが多いため、適切な税務知識を持つこと、または専門の税理士などの助けを借りることが望ましいです。これにより、適切な税金の納付を確実に行い、法的な問題を避けることができます。
累進課税
累進課税とは、所得が高くなるほど税率が上がる仕組みのことを指します。この制度は、所得の多い人ほど高い税率で税金を負担し、所得の低い人の負担を軽減することで、公平性を確保することを目的としています。 代表的な累進課税制度には、所得税や相続税があります。所得税は、課税所得に応じて税率が変わり、日本では5%から45%までの7段階の税率が設定されています。例えば、課税所得が195万円以下の場合の税率は5%ですが、4,000万円を超えると税率は45%となります。このように、所得が増えるにつれて税負担も増える仕組みになっています。 相続税も同様に累進課税が適用され、相続財産が多いほど高い税率がかかります。たとえば、相続財産が1,000万円以下の場合の税率は10%ですが、6億円を超えると55%の税率が適用されます。 累進課税は、所得の再分配を促し、経済的格差を是正する効果がある一方で、高所得者層の税負担が大きくなりすぎると、節税対策や海外移住の増加につながる可能性も指摘されています。そのため、税率のバランスを保つことが重要とされています。