投資の利益にも税金がかかると聞きました。どんな仕組みや違いがあるのでしょうか?
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2025/07/15 08:39
男性
30代
株や投資信託で利益が出た場合、税金がかかると聞きました。そうした金融商品で得た利益には、どんな税の仕組みがあるのでしょうか?「総合課税」「申告分離課税」「源泉分離課税」などがあると聞きますが、それぞれ何が違い、どのようなケースで使われるのか、税率や申告の必要性なども含めて教えてください。
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
日本で投資による収益が発生した場合、その課税方法は主に3つの方式に分かれます。それぞれの仕組みや適用対象が異なるため、投資家は基本的な違いを押さえておくことが大切です。
1つ目は「総合課税」です。これは、仮想通貨の売却益や、店頭FX(いわゆる証拠金取引)で得た利益、海外預金の利子などが該当します。これらは給与や年金など他の所得と合算され、所得額に応じて5%から最大45%までの累進税率が適用されます。所得が多くなるほど税率が高くなるため、利益が大きい場合はかなりの税負担となることがあります。また、損失が出た場合でも他の所得と通算できないケースが多く、翌年以降に繰り越すことも原則できません。
2つ目は「申告分離課税」です。これは、上場株式やETF(上場投資信託)、REIT(不動産投資信託)などの売却益や配当、または特定の公社債からの利子収入、先物取引やオプション取引などが対象です。この方式では、他の所得とは切り離して、所得税15%と住民税5%、復興特別所得税をあわせた約20%の税率が一律で適用されます。証券口座で「特定口座(源泉徴収あり)」を選んでいれば、通常は確定申告の必要はありません。ただし、複数の証券会社で損益を通算したい場合や、損失を翌年以降に繰り越して節税に活かしたい場合には、確定申告を行う必要があります。
3つ目は「源泉分離課税」です。これは銀行の預金利子や一部の債券投資信託の分配金などが該当します。これらは収益が発生した時点で、銀行や証券会社があらかじめ約20%の税金を自動的に差し引いて納税を完了させる仕組みです。原則として確定申告は不要で、他の所得と合算されることもありません。損益通算や損失繰越もできないため、節税の余地はあまりないのが特徴です。
このように、日本の投資収益に対する課税は、「どの金融商品でどんな利益が出たか」によって適用される課税方式が変わります。それぞれの仕組みを理解したうえで、必要に応じて確定申告や口座の使い分けを行うことで、税負担を抑えた効率的な資産運用が可能になります。
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総合課税
総合課税は、給与や年金、事業収入、不動産収入、利子、配当など、1年間に得たさまざまな所得を合算し、その合計額に累進税率を適用して所得税を計算する方式です。 所得が増えるほど税率が高くなるため、高所得者ほど税負担が大きくなる点が特徴です。一方、金融所得には総合課税以外の課税方法を選択できる場合があります。 たとえば、株式譲渡益や先物取引益などは「申告分離課税」を選ぶことで、ほかの所得と区分して一律20.315%(所得税15%、復興特別所得税0.315%、住民税5%)で申告できます。 また、預貯金利息や一部の公社債利子などは、支払元が税金を源泉徴収する「源泉分離課税」となり、原則として確定申告は不要です。配当や利子のように課税方式を選択できるケースでは、ご自身の所得水準や控除の有無、損益通算の可能性を踏まえ、総合課税・申告分離課税・源泉分離課税のどれを採用するかを検討することが、最終的な税負担を抑えるうえで重要になります。
申告分離課税
申告分離課税とは、特定の所得について他の所得と分離して税額を計算し、確定申告を通じて納税する方式です。 主な対象となる所得は以下の通りです: - 譲渡所得: 土地や建物、株式などの譲渡による所得。 - 山林所得: 山林の伐採や譲渡による所得。 - 先物取引による所得: FXや商品先物取引による所得。 例えば、株式の譲渡所得については、他の所得と合算せずに分離して課税されます。また、上場株式等の配当所得についても、申告分離課税を選択することができます。
源泉分離課税
源泉分離課税は、所得の支払い時に所得税が源泉徴収され、その時点で納税が完了する方式です。個人が確定申告を行う必要はありません。 主な対象となる所得は以下の通りです - 利子所得: 預貯金の利子や公社債の利子など。 - 割引債の償還差益: 割引債の償還時に得られる利益。 - 金融類似商品の利益: 定期積金の給付補てん金や外貨建預貯金の為替差益など。 源泉分離課税の税率は、通常20.315%(所得税15.315%+住民税5%)です。
特定口座
特定口座とは、投資家の税金計算を簡便にするための口座形式です。証券会社が運用益や損益を自動計算し、年間取引報告書を発行します。特定口座には「源泉徴収あり」と「源泉徴収なし」の2種類があり、「源泉徴収あり」を選択すれば、税金が取引時点で自動的に納付されます。これにより、確定申告が不要になるため、多くの投資家に利用されています。ただし、損益通算や損失の繰越控除を行う場合は確定申告が必要です。
損益通算
投資で発生した利益と損失を相殺することで、課税対象となる利益を減らす仕組みのことです。たとえば、株式投資で50万円の利益が出た一方、別の取引で30万円の損失が発生した場合、損益通算を行うことで、課税対象となる利益は50万円から30万円を引いた20万円になります。この仕組みにより、納める税金を減らすことが可能です。 損益通算が適用されるのは、同じ「所得区分」の中でのみです。たとえば、株式や投資信託の譲渡損益や配当金などは「株式等の譲渡所得等」に分類され、この範囲内で損益通算が可能です。ただし、不動産所得や給与所得など、異なる所得区分間では基本的に通算できません。 さらに、株式投資の損失は、損益通算後も控除しきれない場合、翌年以降最長3年間繰り越して他の利益と相殺できます。これを「繰越控除」と呼び、投資初心者にとっても節税に役立つ重要なポイントです。
復興特別所得税
復興特別所得税は、2011 年の東日本大震災からの復興財源を確保するために創設された上乗せ課税で、正式名称は「所得税に対する復興特別所得税」です。2013 年1月以降の各年分の所得税額に対し 2.1% を乗じて計算され、課税期間は現行法では 2037 年(令和 19 年)までと定められています。適用対象は給与・事業・年金などの総合課税所得だけでなく、株式譲渡益や配当・利子といった申告分離課税の金融所得も含まれ、源泉徴収時には所得税 15%と合わせて 0.315%(15×2.1%)が控除されるため、住民税 5%と合算した実効税率は 20.315% となります。たとえば所得税額が 10 万円なら復興特別所得税は 2,100 円、金融所得 100 万円であれば 20 万 3,150 円が源泉徴収される計算です。投資の損益計算やキャッシュフローを見積もる際は、この上乗せ分も含めた手取り利回りを把握しておくことが重要です。