
NISAはデメリットしかない?そう言われる理由と賢い活用法を徹底解説
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公開:
2025.05.05
更新:
2025.05.05
「NISAはデメリットしかない」「やめとけ」といった意見を見かけて、心配になっていませんか?せっかく投資に興味を持ったのに、ネガティブな情報ばかり目につくと不安ですよね。実はNISAは「デメリットしかない」のではなく、制度の仕組みを誤解したまま利用して失敗する人が多いのです。この記事では、金融知識がなくても理解できるよう、初心者が陥りやすい失敗例や本当のデメリットと、上手な活用法をわかりやすく解説します。
サクッとわかる!簡単要約
この記事を読み終える頃には、NISAのデメリットに関する漠然とした不安が解消し、「これなら自分もNISAを使って資産形成できそう」と思えるようになります。難しい金融知識はなくても大丈夫。ありがちな誤解や失敗例についてわかり易く丁寧に説明します。また、「損切り」や「出口戦略」などの難しそうなポイントも、やさしい言葉でわかりやすく説明。無理なく資産形成をスタートできるよう、実際の運用前に必要な準備や生活資金の目安まで、具体的にイメージできるようになります。
なぜ「NISAはデメリットしかない」と言われるのか?情報がネガティブに偏る3つの理由
SNSでは「NISAはデメリットばかり」「損をした」というネガティブな体験談が目立ちますが、これは制度自体の欠点というより情報が偏って伝わることが原因です。
本章では、①暴落時の体験談が拡散しやすい心理的要因、②制度改正が頻繁に行われていて複雑に感じられる点、③「非課税=元本保証」という誤解が広まっている背景、の3つを解説し、「デメリットばかり」という誤解の根本原因を整理します。
暴落時に拡散する「損した」体験談のインパクト
投資の心理として、利益を得たときよりも損失を被ったときの方が感情的な印象が強く残ります。SNSでは「○百万円損した」「大損した」というネガティブな投稿ほど注目を集めやすく、拡散されます。このため、「NISA=危険、デメリットばかり」という誤ったイメージが定着しやすくなります。しかし、これはNISA特有の問題ではなく、投資全般に共通するリスクです。
制度改正の頻度が高く「複雑で面倒」と感じてしまう
NISAは制度導入以降、「つみたてNISA」「新NISA」など、何度も改正が繰り返されてきました。その結果、特に初心者は新しい用語やルールを「難しそう」「また改悪か?」と感じ、制度への不信感を抱きやすくなっています。実際には、制度はシンプルになってきていますが、頻繁な改正が混乱を生み、誤解を広げてしまっています。
「非課税=元本保証」という誤った認識が広がっている
NISAの最大の特徴は、「運用益にかかる税金が非課税になる」ことです。しかし、この非課税という言葉が「元本保証」と誤解されることがあります。実際は、投資には市場変動による価格変動リスクがあり、元本が保証されるわけではありません。初心者がこの誤解のまま投資を始めてしまうと、元本割れが起きたときに大きく失望し、ネガティブな情報発信をしてしまう原因になります。
NISAの仕組みを基礎から整理:誤解を解くための3つのポイント
NISAは税制優遇制度ですが、誤解されやすい点もあります。
この章では①利益に対して具体的にどのような税金が非課税になるのか、②投資枠の種類とそれぞれの活用法、③非課税制度の限界と注意点について解説します。正しく理解することで、NISAを効果的に利用する基礎知識が身につきます。
なお、旧NISAと現行のNISAの制度の違いや、現行のNISAの詳しい仕組みは以下の記事で説明しています。
NISAとは?株式や投資信託の利益が非課税になる制度
NISAは、株式や投資信託で得た利益(売却益・配当金)に通常かかる約20%の税金が非課税になる国の制度です。日本に住む18歳以上の方なら誰でも無料で利用可能です。ただし、非課税になるのはあくまで利益部分のみで、投資自体には市場変動のリスクがあります。つまり元本が保証される制度ではありません。この仕組みを正しく理解することが、NISAを有効活用するための第一歩となります。
2種類の投資枠「つみたて投資枠」と「成長投資枠」
NISAには2つの投資枠があります。
つみたて投資枠:年間120万円まで、指定された低コストな投資信託を積み立て可能。長期間かけて安定的な資産形成を目指す方向けです。
成長投資枠:年間240万円まで、株式やETFなど幅広い商品に投資可能。積極的に資産を増やしたい方向けです。
自分のリスク許容度や投資スタイルに合わせてどちらの枠を活用するか、選択することが重要です。どちらの枠も、保有資産を売却すると、売った分だけ非課税枠が復活します。
非課税枠の復活については、以下Q&Aでも解説しています。
非課税でも元本保証ではない:リスクは課税口座と同じ
NISA口座は利益への課税がゼロですが、市場リスク自体がなくなるわけではありません。投資した商品が値下がりすれば、元本割れする可能性があります。また、NISA口座で発生した損失は特定口座の利益と損益通算できないため、損失がそのまま残ります。NISAを最大限に活用するためには、市場リスクを正しく認識した上で、長期的な運用計画を立てることが大切です。
NISA活用時の損益通算の注意点は以下Q&Aでも解説しています。
見落としがちなNISAのデメリット7選――利用前に必ず確認しよう
NISAには明確なメリットがある一方で、見落とすと後悔するデメリットも存在します。特に初心者ほどこれらのデメリットを知らずに投資を始め、想定外の損失に直面してしまいます。
NISAのデメリット
- 損益通算ができない
- 元本割れリスクがある
- 金融機関変更・口座開設の制限
- 投資枠と対象商品の制限
- 非課税期間が無期限で売却タイミングが難しい
- 海外転居するとNISA口座が使えなくなる
- 旧制度資産の新NISAへの移管不可
本章では、NISAを利用する前に必ず確認しておきたい上記7つのポイントをそれぞれ詳しく解説します。
損益通算・繰越控除ができないため、損失はそのまま残る
特定口座では損失が出た場合、他の利益と相殺(損益通算)や翌年以降への繰越控除が可能ですが、NISA口座ではそれが一切できません。つまり、損失が出た場合は税務上のメリットがなく、その損失はそのまま残ります。
元本割れする可能性がある
NISAは、通常利益にかかる税金が免除される制度ですが、投資をした商品の値段が下がると、自分が預けたお金(元本)が減る可能性があります。「NISAなら安心」と誤解していると、値段が下がったときに大きく動揺してしまうことも。投資する際は、価格が上がることも下がることも、どちらもあることを理解して、様々な対象に分けて分散投資するなどの工夫が必要です。
金融機関変更は年1回、口座開設は1人1つのみと制限がある
NISA口座は1人につき1つしか持てず、金融機関を変更できるのも年に1回だけです。そのため、最初に選ぶ金融機関が非常に重要になります。金融機関選びに失敗すると、変更できるまで投資のチャンスを逃すこともあります。口座を開設する前に、サービス内容や使いやすさをよく比較しましょう。
NISA口座を作る金融機関の選び方や口座開設・変更の手続きについては以下記事で詳しく説明していますのでご参照ください。
投資枠も対象商品も制限がある
NISAには、年間の投資金額に上限があり、投資できる商品にも制限があります。「つみたて投資枠」では月10万円(年間120万円)を上限とし、金融庁が指定した長期的に積み立てるタイプの投資信託しか購入できません。「成長投資枠」では、より多くの商品が選べますが、年間240万円までです。自分が投資したい商品が対象となっているかを事前に確認すること、それぞれの枠をどのように活用するか検討することが重要です。
非課税期間が無期限になり、売却タイミングが難しくなった
現行のNISAは非課税期間が無期限であるため、「いつでも売却可能」と安心しがちです。売却のタイミングを決めずに投資を続けると、利益が出ているのに売り時を逃し、後から値段が下がってしまうことで、本来得られていた利益を失ってしまうこともあります。売るタイミングをあらかじめ決めておくことが大切です。
海外転居するとNISA口座が使えなくなる
海外へ引っ越しをするとNISA口座は使えなくなり、口座にある資産は通常の口座に移されてしまいます。移された後は、そこから出る利益に税金がかかります。海外で暮らす可能性がある人は、このような仕組みを理解しておくことが重要です。
海外赴任時など、海外転居時の資産運用の注意点は以下記事で詳しく解説しています。
旧制度(旧NISA・旧つみたてNISA)資産は新NISAへそのまま移せない
旧NISAや旧つみたてNISAで持っている資産を新しいNISA制度にそのまま移すこと(ロールオーバー)はできません。非課税期間が終わると、通常の口座に移すか、一度売って再度新しく投資する必要があります。通常の口座に移した後は利益に税金がかかりますので、移行する際は事前に計画を立てることが重要です。
数字で検証!NISAのデメリットを上回る長期投資のメリット──実際にシミュレーションして確認
「NISAはデメリットばかり」と感じる方は、短期間の損失や制度の一部だけを見て判断している可能性があります。しかし、NISAの非課税メリットは長く運用すればするほど大きくなり、デメリットをカバーできます。
本章では、実際の数字を用いたシミュレーションを通じて、「NISAは本当に損なのか?」という疑問に具体的にお答えします。
シミュレーション前提と比較条件:20年後の資産はどう変わる?
わかりやすく現実的なシナリオを設定するために、以下のような条件を設定しました。
項目 | 設定条件 |
---|---|
年間投資額 | 毎年120万円(毎年末に積み立て) |
運用期間 | 20年間 |
想定利回り | 年平均3%(複利運用) |
比較口座 | NISA口座(非課税)と課税口座(売却時の利益に20.315%課税) |
この条件をもとに、以下の2つのシナリオで比較します。
シナリオ | 内容 |
---|---|
シナリオA(暴落なし) | 20年間順調に運用できた場合の理想的な場合 |
シナリオB(暴落あり) | 20年目(運用終了直前)に相場が20%下落してしまった場合 |
シナリオBを設定した理由は、「NISAは暴落すると損をする」という不安を持つ方の疑問にもお応えするためです。
シナリオA(暴落なし)の結果:NISAなら約167万円お得
まずは20年間順調に年3%で運用した場合です。
項目 | 課税口座 | NISA口座 |
---|---|---|
積立総額 | 2,400万円 | 2,400万円 |
20年後の評価額(税引前) | 約3,224万円 | 約3,224万円 |
売却益にかかる税金(約20%) | 約167万円 | 0円(非課税) |
最終手取り額 | 約3,057万円 | 約3,224万円 |
NISA口座なら、税金がかからないことで約167万円多く手元に残ります。長期間、安定して投資を続けるなら、NISAのメリットは非常に大きくなります。
シナリオB(暴落あり)の結果:NISAは暴落後でも約36万円お得
次に、20年目に株価が20%暴落したケースです。
項目 | 課税口座 | NISA口座 |
---|---|---|
積立総額 | 2,400万円 | 2,400万円 |
暴落直前の評価額 | 約3,224万円 | 約3,224万円 |
暴落後の評価額 | 約2,580万円 | 約2,580万円 |
売却益にかかる税金(約20%) | 約36万円 | 0円(非課税) |
最終手取り額 | 約2,543万円 | 約2,580万円 |
暴落が起きた最悪のタイミングでも、NISA口座では約36万円分の税負担が軽減されます。この結果から、「暴落したからNISAは損」という考えは正しくないことがわかります。むしろ、暴落時でも課税口座より手元に多くのお金を残せるのがNISAの強みです。
結論:長期運用を続けるほどNISAがお得になる
シミュレーションで分かったことは以下2点です。
- 時間を味方にすると非課税効果が大きくなる:
投資期間が長いほど、払わずに済む税金が増えます。 - 相場が下がっても課税口座より手元に残る:
暴落後でさえ、税金ゼロの分だけ有利です。
「NISAは損」「暴落に弱い」という声の多くは短期目線や思い込みが原因です。5年、10年とコツコツ続ける限り、NISAのメリットはデメリットをしっかり上回ります。
数字で確かめた事実を知れば、不安は小さくなり、一歩踏み出す自信につながります。まずは無理のない金額で始め、時間を味方にして資産づくりを進めましょう。
毎月一定額を積み立てる「ドルコスト平均法」の仕組みやメリットについては以下記事で解説しています。
NISAのデメリットを最小限にするための3つの実践的対策法
NISAのデメリットを完全にゼロにするのは難しいですが、事前の準備によって損をするリスクを大きく軽減できます。ここでは、「損切りルールを設定する」「利益確定の計画を立てる」「生活防衛資金を確保する」の3つの具体的な対策法をご紹介します。初心者でもこれらを実践することで、より安心してNISAを利用することができます。
①「損切りルール」を事前に設定し、感情的にならず冷静に対応する
投資を始める前に、あらかじめ「価格が一定の割合(例えば25%)下がったら必ず売る」という『損切りルール』を決めましょう。初心者の多くは、値下がりした時に「もう少し様子を見よう」と損失確定をためらってしまい、結果的に損失を拡大させてしまうことがあります。しかし、明確な基準を最初に設定しておけば、感情に流されることなく冷静に対応でき、資産をしっかりと守れます。
②利益確定(出口戦略)のルールをあらかじめ決めておく
NISAは非課税期間が長いため、「いつ利益を確定するか」のタイミングが難しくなります。そのため、「投資元本から20%利益が出たら半分売却する」「毎年少しずつ売却して利益を確保する」など、出口戦略を最初に決めておくことが非常に重要です。あらかじめ利益確定のルールを設定することで、利益が出ている時に売り逃すリスクを減らし、心理的なストレスを軽減できます。
③生活防衛資金を最低でも6か月分確保し、投資とは分けて管理する
生活費など、急な支出や収入の減少に備えるために、最低でも家計支出の6か月分の生活防衛資金を現金で確保しましょう。この資金を投資とは完全に別に管理することで、投資したお金が一時的に値下がりしても焦って売却する必要がなくなります。生活に必要なお金と投資に回すお金をはっきり分けることが、長期的に安定してNISAを運用するための基本です。
この記事のまとめ
NISAには「損益通算ができない」など、初心者が見落としやすいデメリットがありますが、事前にきちんと理解し、適切な対策を立てれば安心して活用できます。特に「損切りルール」を決めること、非課税メリットを最大限生かす出口戦略を考えること、そして生活防衛資金を十分に確保することが重要です。より具体的で、自分のライフプランに合った運用をするために、一度プロの専門家に相談し、自分だけの資産形成プランを作成しましょう。

MONO Investment
投資のコンシェルジュ編集部は、投資銀行やアセットマネジメント会社の出身者、税理士など「金融のプロフェッショナル」が執筆・監修しています。 販売会社とは利害関係がないため、主に個人の資産運用に必要な情報を、正確にわかりやすく、中立性をもってコンテンツを作成しています。
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NISA
NISAとは、「少額投資非課税制度(Nippon Individual Saving Account)」の略称で、日本に住む個人が一定額までの投資について、配当金や売却益などにかかる税金が非課税になる制度です。通常、株式や投資信託などで得られる利益には約20%の税金がかかりますが、NISA口座を使えばその税金がかからず、効率的に資産形成を行うことができます。2024年からは新しいNISA制度が始まり、「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の2つを併用できる仕組みとなり、非課税期間も無期限化されました。年間の投資枠や口座の開設先は決められており、原則として1人1口座しか持てません。NISAは投資初心者にも利用しやすい制度として広く普及しており、長期的な資産形成を支援する国の税制優遇措置のひとつです。
成長投資枠
新NISAにおける成長投資枠とは、個別株や投資信託などの成長性の高い投資商品を購入できる非課税枠のことです。2024年に始まった新NISA制度では、年間最大240万円、累計1,200万円まで投資が可能で、売却しても枠が復活しない「一生涯の上限額」が設定されています。 成長投資枠では、主に上場株式やETF、アクティブ型の投資信託などが対象となり、比較的リスクを取りながら資産を増やしたい投資家向けの仕組みになっています。一方で、レバレッジ型や一部の毎月分配型投資信託など、一部のリスクが高い商品は対象外となるため注意が必要です。 つみたて投資枠と併用でき、両方を活用すれば年間最大360万円の投資が可能です。成長投資枠を活用することで、中長期的な資産形成を非課税で行うことができ、売却益や配当金に税金がかからないため、資産を効率的に増やす手段となります。
つみたて投資枠
つみたて投資枠とは、2024年から始まった新しいNISA制度の中で、少額から長期的に資産形成を行うことを目的として設けられた非課税投資の枠組みです。 この枠では、一定の条件を満たした投資信託などの商品に対して、年間最大120万円までの投資額が非課税の対象となります。毎月コツコツと積み立てるスタイルの投資に向いており、長期的な資産形成を支援することが狙いです。つみたて投資枠を活用することで、運用益や分配金にかかる税金がかからず、複利の効果を最大限に活かしながら資産を増やしていくことができます。特に投資初心者にとっては、少額から手軽に始められ、長く続けることで将来の資金づくりに役立つ有効な制度です。
投資信託
投資信託は、多くの投資家から集めた資金を一つの大きな資金としてまとめ、運用の専門家が株式や債券などに投資・運用する金融商品です。運用によって得られた成果は、各投資家の投資額に応じて分配される仕組みとなっています。 この商品の特徴は、少額から始められることと分散投資の効果が得やすい点にあります。ただし、運用管理に必要な信託報酬や購入時手数料などのコストが発生することにも注意が必要です。また、投資信託ごとに運用方針やリスクの水準が異なり、運用の専門家がその方針に基づいて投資先を選定し、資金を運用していきます。
ETF(上場投資信託)
ETF(上場投資信託)とは、証券取引所で株式のように売買できる投資信託のことです。日経平均やS&P500といった株価指数、コモディティ(原油や金など)に連動するものが多く、1つのETFを買うだけで幅広い銘柄に分散投資できるのが特徴です。通常の投資信託に比べて手数料が低く、価格がリアルタイムで変動するため、売買のタイミングを柔軟に選べます。コストを抑えながら分散投資をしたい人や、長期運用を考えている投資家にとって便利な選択肢です。
課税口座
課税口座とは、投資によって得られた利益(配当金や売却益など)に対して通常どおり課税が行われる金融口座のことをいいます。たとえば、証券会社で開設する一般的な取引口座がこれにあたり、NISA(非課税口座)とは異なり、利益に対して約20%の税金(所得税および住民税)が自動的に差し引かれます。課税口座には、「特定口座(源泉徴収あり/なし)」や「一般口座」などがあり、取引の記録方法や納税方法に違いがあります。課税口座は税金がかかる一方で、損失が出た場合には「損益通算」や「繰越控除」といった制度を活用できるというメリットもあります。資産運用を行ううえでは、非課税口座と課税口座の特性を理解し、自分の投資目的に応じて使い分けることが大切です。
損益通算
投資で発生した利益と損失を相殺することで、課税対象となる利益を減らす仕組みのことです。たとえば、株式投資で50万円の利益が出た一方、別の取引で30万円の損失が発生した場合、損益通算を行うことで、課税対象となる利益は50万円から30万円を引いた20万円になります。この仕組みにより、納める税金を減らすことが可能です。 損益通算が適用されるのは、同じ「所得区分」の中でのみです。たとえば、株式や投資信託の譲渡損益や配当金などは「株式等の譲渡所得等」に分類され、この範囲内で損益通算が可能です。ただし、不動産所得や給与所得など、異なる所得区分間では基本的に通算できません。 さらに、株式投資の損失は、損益通算後も控除しきれない場合、翌年以降最長3年間繰り越して他の利益と相殺できます。これを「繰越控除」と呼び、投資初心者にとっても節税に役立つ重要なポイントです。
繰越控除
繰越控除とは、特定の損失や控除額を翌年度以降に持ち越し、将来の所得から控除できる税制上の仕組みを指す。代表的なものとして、青色申告の純損失の繰越控除があり、一定期間内に発生した損失を翌年以降の利益から差し引くことができる。これにより、赤字企業でも将来の黒字化に伴い税負担を軽減できるメリットがある。ただし、適用には一定の要件があり、期限内に申告する必要がある。
利回り
利回りとは、投資によって得られる収益を「投資金額に対する割合」で示したものです。ここでいう収益は利息だけでなく、投資商品を売却したときの損益(キャピタルゲインやキャピタルロス)なども含まれます。一般的には、1年間を基準とした「年利回り」として表されることが多いです。 また、利回りには大きく分けて「単利」と「複利」があります。単利は元本に対してのみ利息がつくのに対し、複利は再投資を前提とするため、同じ利率でも長期運用すると結果に大きな違いが出る可能性があります。
元本割れリスク
元本割れリスクとは、投資した資金(元本)の価値が減少し、最終的に投資額を下回る可能性があるリスクを指します。株式や投資信託、債券、不動産などの金融商品は市場環境や企業業績、金利動向などの影響を受けるため、価格が変動し、元本を下回ることがあります。特に、株式市場の暴落や景気後退時には元本割れのリスクが高まります。 このリスクを抑えるためには、分散投資や長期投資を活用し、リスク許容度に応じた運用を行うことが重要です。また、定期預金や個人向け国債などの元本保証型の商品と、リスク資産を組み合わせることで、資産全体のリスクを軽減することが可能です。投資を行う際には、元本割れリスクを十分理解し、自身のリスク許容度に合った商品選びを行うことが求められます。
非課税枠
非課税枠とは、税金が課されない金額の上限を指し、様々な税制に適用される制度。 例えば相続税では基礎控除額として「3,000万円+600万円×法定相続人数」が非課税枠となる。贈与税では年間110万円までの贈与が非課税。また、NISA(少額投資非課税制度)では年間の投資上限額に対する運用益が非課税となる。 このような非課税枠は、税負担の軽減や特定の政策目的(資産形成促進など)のために設定されており、納税者にとって税金対策の重要な要素となっている。
ロールオーバー
ロールオーバーとは、ある金融取引や契約の期限が到来したときに、それを終了させずに、同じ条件または新しい条件で継続することを指します。資産運用の分野では、特にFXや先物取引、投資信託、債券などでよく使われる言葉です。 たとえば、FXではポジションを翌日に持ち越すことで金利差調整額(スワップポイント)が発生することがあり、これもロールオーバーに含まれます。また、確定拠出年金などでは、満期になった資産を再び同じような運用先に自動的に移す場合にもこの用語が使われます。ロールオーバーは、資産運用を長期で続ける際に知っておくべき重要な仕組みのひとつです。
ドルコスト平均法
ドルコスト平均法とは、一定の金額を定期的に投資する方法です。価格が高いときは少なく、価格が低いときは多く買えるため、購入価格が平均化され、リスクを分散できます。市場のタイミングを読む必要がないため、初心者に最適な方法とされています。長期投資で効果を発揮し、特に投資信託やETFで利用されることが多い手法です。
ロスカット
ロスカットとは、投資対象の価格が下落し、損失が一定の水準に達した際に、それ以上の損失拡大を防ぐために保有資産を売却し、損失を確定させる仕組みです。特に、FX(外国為替証拠金取引)やCFD取引などのレバレッジ取引では、証拠金維持率が一定の水準を下回ると、強制的にポジションが決済される「ロスカット・ルール」が適用されます。これは、投資家が証拠金不足によってさらなる損失を被らないようにするための安全装置の役割を果たします。 ロスカットと混同されやすい「損切り」は、投資家自身の判断で損失を確定させる行為を指します。一方、ロスカットは証券会社やFX業者の設定するルールに基づき自動的に実行されるものであり、投資家の意思に関係なく強制的に決済される点が特徴です。そのため、ロスカットの水準に達すると、想定外の価格で決済され、大きな損失を被る可能性があります。 ロスカットは損失拡大を防ぐための仕組みですが、あくまで最後の手段であり、投資家自身が適切にリスク管理を行うことが重要です。事前に損切りラインを決め、意図しないロスカットを避けること、レバレッジを適切に抑えて証拠金維持率を高めに保つこと、相場の急変時に備えて資金管理を徹底することなどが有効な対策となります。特に、ハイレバレッジで取引を行う場合、急激な相場変動によってロスカットが発動し、資産が大幅に減少するリスクがあるため、慎重な資金管理が求められます。
分散投資
分散投資とは、資産を安全に増やすための代表的な方法で、株式や債券、不動産、コモディティ(原油や金など)、さらには地域や業種など、複数の異なる投資先に資金を分けて投資する戦略です。 例えば、特定の国の株式市場が大きく下落した場合でも、債券や他の地域の資産が値上がりする可能性があれば、全体としての損失を軽減できます。このように、資金を一カ所に集中させるよりも値動きの影響が分散されるため、長期的にはより安定したリターンが期待できます。 ただし、あらゆるリスクが消えるわけではなく、世界全体の経済状況が悪化すれば同時に下落するケースもあるため、投資を行う際は目標や投資期間、リスク許容度を考慮したうえで、計画的に実行することが大切です。
特定口座
上場株式等の譲渡益に対する所得税、住民税の納税を簡易な納税申告手続きで完了することができる制度。 特定口座には源泉徴収ありと源泉徴収なしの2種類あり、源泉徴収ありを選択した場合には、金融機関が所得税・住民税を源泉徴収し、代行して納付するため原則確定申告が不要となる。
出口戦略
出口戦略とは、投資を始めたあとに、いつ、どのようにして投資を終えるか、つまり資金を回収するかをあらかじめ考えておく計画のことです。投資は始めること以上に、終わらせ方が重要になる場面があります。 たとえば、株式をいつ売却するか、不動産をいつ手放すか、または事業に出資したお金をどのタイミングで回収するかなどが該当します。市場が好調なときに利益を確定するのか、損失を小さく抑えるために早めに撤退するのかといった判断も含まれます。投資初心者の方でも、感情に流されずに冷静に判断できるように、事前に出口戦略を立てておくことが大切です。