劣後債のデメリットについて教えてください。
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2025/07/07 12:39
男性
30代
債券投資を検討しており、劣後債への投資に関心があります。高い利回りが魅力的に見えますが、実際に投資する前に劣後債のデメリットや特に注意点や問題点があれば教えて下さい
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
劣後債の最も大きなデメリットは、発行体が破綻した場合に、通常の債券(シニア債)よりも返済順位が低く設定されているため、元本や利息が戻ってこないリスクが高い点です。特に銀行や保険会社が発行する劣後債(Tier1債、Tier2債)には、財務状況が悪化した際に元本削減や利息の停止、株式への強制転換といった「損失吸収条項」が設けられていることがあります。2023年にはクレディ・スイスのAT1債が実際に全額減価し、多くの投資家が大きな損失を被りました。
また、劣後債は利回りが高い分、価格変動が大きくなる傾向があり、市場の信用不安が高まった際には流動性が急激に低下します。そのため、売却を望んでも適正な価格で売れない可能性があることにも注意が必要です。さらに、残存期間が長く設定されることが多いため、金利が上昇する局面ではデュレーション(残存期間)リスクが高まり、時価が大幅に下落するリスクも伴います。
劣後債への投資では、これらのデメリットを理解した上で、発行体の財務健全性や信用格付け、損失吸収条項の内容、市場流動性を十分に確認することが重要です。
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劣後債
劣後債とは、企業や金融機関が資金調達のために発行する債券の一種で、通常の社債(シニア債)よりも弁済順位が低い(劣後する)債券のことです。発行体が破綻した場合、一般の債券や他の債権者への支払いが優先され、劣後債の保有者への弁済はその後に行われるため、元本や利息の支払いリスクが相対的に高くなります。 このリスクの高さを補うため、劣後債は通常の社債よりも利回りが高めに設定されており、リスクプレミアムが反映されたハイリスク・ハイリターンの投資対象として位置づけられます。劣後債には、シニア劣後債とジュニア劣後債があり、ジュニア劣後債の方がさらに弁済順位が低いため、リスクが高くなる傾向にあります。 特に、金融機関が発行する劣後債の一部(例:AT1債やTier 2債)は、国際的な銀行規制であるバーゼル規制に基づき、一定の条件を満たせば自己資本として算入できるため、自己資本比率を向上させる手段として利用されています。ただし、AT1債(追加的Tier 1債)は発行体の財務状況によって利息の支払いが停止される可能性もあるため、リスクが高くなります。 投資家にとっては、高い利回りの魅力がある一方で、発行体の信用リスクや市場環境を十分に考慮した慎重な判断が求められる金融商品です。また、流動性が低く、満期前に売却が難しい場合がある点にも注意が必要です。
シニア債
シニア債とは、企業が発行する債券の一種で、会社の借金の順番が最も早い「最優先の債券」です。企業がもし倒産してしまった場合、シニア債の持ち主は他の債権者より先にお金を返してもらえる権利を持っています。この安全性の高さから、一般的に他の債券よりもリスクが低く、その分得られる利息(利回り)も少し低めに設定されています。 企業はシニア債を発行して、新しい設備を買ったり、日々の運営資金を確保したり、または過去の借金を整理したりします。投資家にとっては、比較的安定した収入が期待できる投資先となり、株式など他の資産と組み合わせることで、資産運用の安定性を高める役割を果たします。
格付け(信用格付け)
格付け(信用格付け)とは、取引をする際に参考にされる基準の一つで、取引の相手側の信用度を確認するために支払い能力や財務状況、安全性などを総合的にランク付けしたものである。アルファベットや数字で表されるのが一般的である。 (例)格付投資情報センター(https://www.r-i.co.jp/index.html) による発行体格付の定義 AAA:信用力は最も高く、多くの優れた要素がある。 AA:信用力は極めて高く、優れた要素がある。 A:信用力は高く、部分的に優れた要素がある。 BBB:信用力は十分であるが、将来環境が大きく変化する場合、注意すべき要素がある。 BB:信用力は当面問題ないが、将来環境が変化する場合、十分注意すべき要素がある。 B:信用力に問題があり、絶えず注意すべき要素がある。 CCC:発行体の金融債務が不履行に陥る懸念が強い。 CC:発行体の金融債務が不履行に陥っているか、その懸念が極めて強い。 C:発行体のすべての金融債務が不履行に陥っているとR&Iが判断する格付。
流動性
流動性とは、資産を「現金に変えやすいかどうか」を表す指標です。流動性が高い資産は、短時間で簡単に売買でき、現金化しやすいという特徴があります。例えば、上場株式や国債は市場で取引量が多く、いつでも売買できるため、流動性が高い資産とされています。 一方、不動産や未上場株式のように、売買相手を見つけるのが難しかったり、取引に時間がかかったりする資産は、流動性が低いといえます。 投資をする際には、自分が必要なときに資金を取り出せるかを考えることが重要です。特に初心者は、流動性が高い資産を選ぶことで、急な資金需要にも対応しやすく、リスクを抑えることができます。
デュレーション
デュレーションは、債券価格が金利変動にどれほど敏感かを示す指標で、同時に投資資金を回収するまでの平均期間を意味します。 一般に「Macaulay デュレーション」を年数で表し、金利変化率に対する価格変化率を示す「修正デュレーション」は Macaulay デュレーションを金利で割って算出します。 数値が大きいほど金利 1 %の変動による価格変動幅が大きく(例:修正デュレーション 5 年の債券は金利が 1 %上昇すると約 5 %値下がり)、金利リスクが高いと判断できます。一方で金利が低下すれば同じ倍率で価格は上昇します。デュレーションを把握しておくことで、ポートフォリオ全体の金利感応度を調整したり、将来のキャッシュフローと金利見通しに応じて保有債券の残存期間やクーポン構成を選択したりする判断材料になります。特に金利の変動が読みにくい局面や長期安定運用を重視する場面では、利回りだけでなくデュレーションを併せて確認することが重要です。