除斥(じょせき)期間の定義と資産保護への影響を教えて下さい
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2025/05/28 14:08
男性
60代
除斥期間は、ある権利が生じてから一定時間が経過すると行使の有無にかかわらず権利そのものが消える制度と聞きました。投資や相続で知らないうちに期限を過ぎると損害賠償や資産回復が不可能になるといいますが、実際にはどのようなケースがあり、私たちは何を心得るべきでしょうか?
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
除斥期間(じょせききかん)は、時効と違い相手の主張や中断措置に関係なく満了と同時に権利が失われる絶対期限です。典型例は民法724条後段(不法行為20年)や遺留分侵害額請求10年で、投資詐欺・横領・名義預金の返還請求でも適用されます。
被害の発覚が遅れやすい金融取引では、資料収集に手間取るうちに期限を迎え、泣き寝入りとなるケースが後を絶ちません。防衛策として、取引契約書や口座履歴を年月日付きで保存し、家族信託や相続対策では発生日をカレンダーに登録しておくことが肝要です。
疑わしい損失や名義変更を察知したら、速やかに専門家へ相談し、内容証明郵便や仮差押えで権利を現実化してから交渉に臨みましょう。期限を自動通知するリマインダーやクラウド保管を活用し、「権利の時計」が動き出す前提で管理することが資産を守る最短の近道です。
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除斥期間
除斥期間とは、ある権利が成立してから一定の期間が過ぎると、たとえその権利を行使しようとしなくても自動的に消滅してしまう期間のことです。似たような概念に「時効」がありますが、除斥期間は時効のように「主張しないと消えない」のではなく、期間が過ぎれば当然に効力がなくなるという点で大きく異なります。たとえば、不法行為による損害賠償請求権は、発生から20年が経過すると除斥期間により行使できなくなります。この制度は、いつまでも不確定な権利関係が残ることを防ぎ、法律上の安定性や公平性を保つために設けられています。資産運用や相続の分野でも、請求権の有効性を確認するうえで知っておくべき重要な考え方です。
時効
時効とは、一定の期間が経過することで、法律上の権利が消滅したり、逆に新たに取得されたりする制度のことです。 これは、長いあいだ権利を行使しなかった場合や、反対に長期間にわたって安定的に事実関係が続いた場合に、法的な区切りをつけるために設けられています。 代表的なものとして、以下の2つがあります。 - 消滅時効:たとえば、お金を貸していたとしても、一定期間請求しないままでいると、その請求する権利が消滅してしまうことがあります。 - 取得時効:他人の土地を長年にわたって平穏に、かつ継続して使い続けていた場合には、その土地の所有権を取得できることがあります。 このように時効制度は、社会の秩序や公平性を保つために重要なルールです。 権利や財産の状態をいつまでも不安定なままにせず、一定のタイミングで「けじめ」をつける仕組みといえます。 資産運用や相続の場面でも、債権の管理や財産の引き継ぎにおいて影響を及ぼす可能性があるため、基本的なしくみを理解しておくことが大切です。
遺留分侵害額請求
遺留分侵害額請求とは、相続人の最低限の取り分である「遺留分(いりゅうぶん)」を侵害された場合に、その不足分に相当する金銭の支払いを求める手続きのことを指します。たとえば、遺言によって特定の相続人だけに多くの財産が渡され、他の相続人が本来もらえるはずの遺留分を受け取れなかったときに、侵害された相続人が他の相続人や受遺者に対してその差額を金銭で請求することができます。 この制度は、相続人間の不公平を防ぎ、一定の相続権を保護するために設けられています。2019年の民法改正により、かつては「遺留分減殺請求」として行われていたものが、現在は金銭による支払いを求める「遺留分侵害額請求」となりました。資産運用や相続の場面では、遺言によって財産の分け方を自由に決める一方で、遺留分という法律上の制約を理解し、トラブルを防ぐための知識として非常に重要です。
内容証明郵便
内容証明郵便とは、いつ・誰が・誰に対して・どんな内容の文書を送ったのかを、日本郵便が証明してくれる特別な郵便のことです。たとえば、お金の返済を正式に請求したり、契約の解除を通知したりする場合に使われます。普通の手紙とは違い、郵便局が内容を記録・保管し、あとから「確かにこの文書を送りました」と証明してくれるため、トラブルが起きたときに自分の主張を裏付ける証拠として使えます。資産運用や相続の場面でも、貸付金の返還請求や相続放棄の意思表示など、法的に重要なやりとりを確実に記録に残したい場合に活用されることがあります。慎重に相手に伝えたい意思があるときに、非常に役立つ手段です。
家族信託
家族信託とは、ご自身の財産を信頼できる家族に託し、その管理や運用を契約で定めた目的に沿って行ってもらう仕組みです。委託者さまは公正証書で信託契約を締結し、現金や不動産、株式などを信託財産として受託者名義に移転します。これにより、たとえ将来認知症を発症されても資産が凍結されず、受益者さまへ生活費や医療費を継続して届けられる点が大きなメリットです。相続発生後は受益権そのものが相続対象となるため、遺産分割協議を簡素化できる効果も期待できます。 もっとも、家族信託には手続きと費用が伴います。不動産を組み入れる場合は信託登記が必要となり、登録免許税や司法書士報酬、公証人手数料が発生いたします。また、受託者さまは信託口座の開設、収支報告書の作成、信託財産とご自身の財産の分別管理など、煩雑な事務を担う義務があります。税務面では契約締結時に贈与税が課税されることは原則ございませんが、信託財産を売却した際の譲渡所得税や信託終了時の相続税は避けられません。そのため、成年後見制度や遺言信託と比較しながら、費用対効果や家族の負担を総合的に検討することが大切です。
不法行為
不法行為とは、他人に損害を与えるような違法な行為を指し、その結果として被害を受けた人が加害者に対して損害賠償を請求できる法律上の根拠となるものです。たとえば、交通事故で他人をけがさせた場合や、虚偽の情報を流して誰かの名誉を傷つけた場合などが不法行為にあたります。 不法行為が成立するためには、加害者に故意または過失があること、損害が発生していること、そしてその行為と損害との間に因果関係があることが必要です。民法では、被害者が不法行為に基づく損害賠償を請求できる期間(時効)も定められています。資産運用の文脈では、たとえば金融機関が説明義務を怠って損失を招いた場合などに、不法行為として責任を問われるケースがあります。初心者にとっても、自分の権利を守るために重要な基本的な法律概念の一つです。