社債への投資で、元本は保証される?
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2025/05/23 18:10
男性
60代
社債は満期まで持てば額面で戻ってくると聞きましたが、元本割れのリスクがあると知り心配です。具体的にどのような状況で元本割れする可能性があるのでしょうか?
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
社債は満期まで保有すれば原則として額面で償還される仕組みですが、「元本保証」ではありません。企業への貸付という性質上、発行体に何らかの問題が生じた場合、元本が戻らないリスク(=信用リスク)を常に伴います。
もっとも典型的なリスクは、発行体の業績悪化や経営破綻によるものです。たとえ購入時点で高い信用格付けを有していても、その後の経営環境の変化により格付けが引き下げられ、最終的に元利金の支払いが停止される(デフォルト)可能性はゼロではありません。特に無担保社債の場合、資産の裏付けがなく、会社が破綻した場合の回収見込みは限定的です。また、劣後債のように返済順位が低い社債では、破綻時の弁済で後回しにされるため、元本の大部分を失うこともあります。
さらに注意すべきは、価格変動リスクです。満期前に社債を売却する場合、市場金利の上昇によって保有中の社債価格が下がったり、発行体の信用不安や格下げによって価格が大きく下落することがあります。このようなケースでは、満期を待たずに売却すれば、取得価格を下回る金額でしか売れず、結果的に元本割れとなる可能性があります。
リスクを軽減するには、まず発行体の信用格付けや財務内容を定期的にチェックすることが基本です。また、満期までの運用が前提か、それとも途中売却の可能性があるのか、自身の資金計画に応じて保有スタンスを明確にすることが重要です。そのうえで、複数の業種や通貨に分散投資し、一つの発行体や銘柄に偏りすぎないよう心がけましょう。
利回りが高い社債には相応のリスクが含まれていることが一般的です。見た目の利回りだけにとらわれず、発行体の信用力や市場全体の動向を踏まえて総合的に判断することが求められます。不安がある場合や判断に迷う場合は、経験豊富な専門家に相談しながら、自分のリスク許容度に合った投資判断をされることをおすすめします。
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元本保証
元本保証とは、投資や預金において、満期まで保有すれば最低でも投資した元本が保証される仕組みを指します。銀行預金や一部の保険商品などが該当し、元本が減るリスクを抑えられるため、安全性を重視する人に向いています。しかし、元本保証がある商品は一般的に利回りが低く、インフレによる実質的な購買力の低下を考慮する必要があります。
信用リスク
信用リスクとは、貸し付けた資金や投資した債券について、契約どおりに元本や利息の支払いを受けられなくなる可能性を指します。具体的には、(1)企業の倒産や国家の債務不履行(いわゆるデフォルト)、(2)利払いや元本返済の遅延、(3)返済条件の不利な変更(債務再編=デット・リストラクチャリング)などが該当します。これらはいずれも投資元本の毀損や収益の減少につながるため、信用リスクの管理は債券投資の基礎として非常に重要です。 この信用リスクを定量的に評価する手段のひとつが、格付会社による信用格付けです。格付は通常、AAA(最上位)からD(デフォルト)までの等級で示され、投資家にとってのリスク水準をわかりやすく表します。たとえば、BBB格付けの5年債であれば、過去の統計に基づく累積デフォルト率はおおよそ1.5%前後とされています(S&Pグローバルのデータより)。ただし、格付はあくまで過去の情報に基づいた「静的な指標」であり、市場環境の急変に即応しにくい側面があります。 そのため、市場ではよりリアルタイムなリスク指標として、同年限の国債利回りとの差であるクレジットスプレッドが重視されます。これは「市場に織り込まれた信用リスク」として機能し、スプレッドが拡大している局面では、投資家がより高いリスクプレミアムを求めていることを意味します。さらに、クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)の保険料率は、債務不履行リスクに加え、流動性やマクロ経済環境を反映した即時性の高い指標として、機関投資家の間で広く活用されています。 こうしたリスクに備えるうえでの基本は、ポートフォリオ全体の分散です。業種や地域、格付けの異なる債券を組み合わせることで、特定の発行体の信用悪化がポートフォリオ全体に与える影響を抑えることができます。なかでも、ハイイールド債や新興国債は高利回りで魅力的に見える一方で、信用力が低いため、景気後退時などには価格が大きく下落するリスクを抱えています。リスクを抑えたい局面では、投資適格債へのシフトやデュレーションの短縮、さらにCDSなどを活用した部分的なヘッジといった対策が有効です。 投資判断においては、「高い利回りは信用リスクの対価である」という原則を常に意識する必要があります。期待されるリターンが、想定される損失(デフォルト確率×損失率)や価格変動リスクに見合っているかどうか。こうした視点で冷静に比較検討を行うことが、長期的に安定した債券運用につながる第一歩となります。
無担保
無担保とは、お金を借りる際に不動産や株式などの資産を「担保」として差し出さずに借りることを意味します。つまり、借り手がもし返済できなくなった場合でも、貸し手は差し押さえる資産があらかじめ用意されていない状態のことです。 担保がないため、貸す側にとってはリスクが高く、その分、金利が高く設定される傾向があります。たとえば、無担保ローンや無担保社債などは、信用力のある個人や企業に対して発行されることが多く、借り手の信用に基づいて取引が行われます。資産運用においては、無担保の債券や貸付はリスクとリターンのバランスを見極めることが重要になります。
劣後債
劣後債とは、企業や金融機関が資金調達のために発行する債券の一種で、通常の社債(シニア債)よりも弁済順位が低い(劣後する)債券のことです。発行体が破綻した場合、一般の債券や他の債権者への支払いが優先され、劣後債の保有者への弁済はその後に行われるため、元本や利息の支払いリスクが相対的に高くなります。 このリスクの高さを補うため、劣後債は通常の社債よりも利回りが高めに設定されており、リスクプレミアムが反映されたハイリスク・ハイリターンの投資対象として位置づけられます。劣後債には、シニア劣後債とジュニア劣後債があり、ジュニア劣後債の方がさらに弁済順位が低いため、リスクが高くなる傾向にあります。 特に、金融機関が発行する劣後債の一部(例:AT1債やTier 2債)は、国際的な銀行規制であるバーゼル規制に基づき、一定の条件を満たせば自己資本として算入できるため、自己資本比率を向上させる手段として利用されています。ただし、AT1債(追加的Tier 1債)は発行体の財務状況によって利息の支払いが停止される可能性もあるため、リスクが高くなります。 投資家にとっては、高い利回りの魅力がある一方で、発行体の信用リスクや市場環境を十分に考慮した慎重な判断が求められる金融商品です。また、流動性が低く、満期前に売却が難しい場合がある点にも注意が必要です。
価格変動リスク
価格変動リスクとは、株式や債券などの金融商品の価格が、経済状況や金利動向、企業業績などの影響で上下する可能性のことです。株式は企業業績の悪化や市場不安で急落するリスクがあります。 一方、債券の場合、発行時の固定利率と市場金利との差が変動するため、市場金利が上昇すると既発債の魅力が薄れ、途中売却時に購入時より低い価格で取引されるリスクが生じます。ただし、満期まで保有すれば額面通りに償還されるため、長期保有によってこのリスクを回避できます。
分散投資
分散投資とは、資産を安全に増やすための代表的な方法で、株式や債券、不動産、コモディティ(原油や金など)、さらには地域や業種など、複数の異なる投資先に資金を分けて投資する戦略です。 例えば、特定の国の株式市場が大きく下落した場合でも、債券や他の地域の資産が値上がりする可能性があれば、全体としての損失を軽減できます。このように、資金を一カ所に集中させるよりも値動きの影響が分散されるため、長期的にはより安定したリターンが期待できます。 ただし、あらゆるリスクが消えるわけではなく、世界全体の経済状況が悪化すれば同時に下落するケースもあるため、投資を行う際は目標や投資期間、リスク許容度を考慮したうえで、計画的に実行することが大切です。