相続財産の評価額を減らす評価減特例にはどのようなものがありますか?
回答受付中
0
2025/06/25 09:54
男性
60代
将来の相続について考えていますが相続税が心配です。財産の評価額を下げることで相続税を減らせる評価減特例という制度があると聞きました。具体的にはどのような種類の特例があるのでしょうか。また誰でも使えるものなのか、利用する際の注意点や条件があれば教えてください。
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
評価減特例とは財産の評価額を直接減額することで相続税負担を実質的に軽減する制度です。
主要な特例は3つあります。まず小規模宅地等の特例は、被相続人が居住用や事業用、貸付用として使用していた宅地について一定面積まで評価額を最大80パーセント減額できます。都市部の高額不動産では遺産総額を基礎控除以下に抑える効果が期待できますが、相続人の居住継続や事業継続など厳格な要件があり期限内申告が必須です。
次に事業承継税制は、中小企業の後継者が自社株式を相続する際に相続税の納税を最大100パーセント猶予し要件を満たせば免除される制度です。事業継続性確保が目的ですが事前認定申請や5年間の事業継続、毎年の報告など厳しい条件があります。
最後に農地等の納税猶予は、相続人が農地を引き継いで農業を継続する場合に相続税納税が猶予され最終的に免除される制度です。20年間の農業継続が原則条件で中断や転用があると猶予税額が課税されます。
これらの特例は強力な節税効果がありますが適用には厳格な手続きと要件の継続的充足が求められるため専門家への相談が不可欠です。
関連記事
関連質問
関連する専門用語
相続税
相続税とは、人が亡くなった際に、その人の財産を配偶者や子どもなどの相続人が受け継いだときに課される税金です。対象となる財産には、預貯金や不動産、株式、貴金属、事業用資産などが含まれ、相続財産の合計額が一定の基準額を超えると課税対象となります。 相続税には、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算される基礎控除があり、この範囲内であれば原則として税金はかかりません。しかし、資産規模が大きい場合や相続人の数が少ない場合には、課税対象となり、10%〜55%の累進税率が適用されます。 さらに、相続税にはさまざまな非課税枠や控除制度が設けられており、これらを適切に活用することで税負担を抑えることが可能です。代表的な制度には以下のようなものがあります。 - 生命保険金の非課税枠:法定相続人1人あたり500万円まで非課税 - 死亡退職金の非課税枠:生命保険と同様に1人あたり500万円まで非課税 - 債務控除:被相続人に借入金などの債務があった場合、その金額を控除可能 - 葬式費用の控除:通夜・葬儀などにかかった費用は、相続財産から差し引くことができる また、配偶者には配偶者の税額軽減(1億6,000万円または法定相続分まで非課税)が認められており、適切に遺産分割を行えば、税額を大幅に減らすことができます。 相続税は、財産の種類や分割の仕方、受け取る人の立場によって税額が大きく変動するため、生前からの対策が非常に重要です。生命保険や不動産の活用、資産の組み替えなどを通じて、相続税評価額をコントロールすることが、家族への負担を減らし、スムーズな資産承継を実現するための鍵となります。
評価減特例
評価減特例とは、相続や贈与の際に対象となる財産の評価額を一定の条件下で減額できる制度のことです。これにより、課税対象となる財産の金額が抑えられ、相続税や贈与税の負担を軽減することができます。 代表的な例として、自宅の土地について「小規模宅地等の特例」があり、一定の要件を満たせば最大80%の評価減が認められます。また、非上場株式の事業承継における特例や、貸付事業用資産に対する特例などもあります。これらの制度は、被相続人の生活や事業の継続を保護し、過度な納税による資産の分断を防ぐ目的で設けられています。適用には要件や手続きがあるため、事前の確認と計画が重要です。
基礎控除
基礎控除とは、所得税の計算において、すべての納税者に一律で適用される控除のことを指す。一定額の所得については課税対象から除外されるため、納税者の負担を軽減する役割を持つ。所得に応じて控除額が変動する場合もあり、申告不要で自動適用される。
小規模宅地等の特例
小規模宅地等の特例とは、相続が発生した際に、被相続人が居住や事業に使用していた土地について、一定の条件を満たせば、その土地の相続税評価額を大幅に減額できる制度です。主な目的は、相続税負担によって自宅や事業用不動産を手放すことを防ぎ、円滑な資産承継を支援することにあります。 たとえば、亡くなった方の自宅に配偶者や同居していた親族が引き続き居住する場合、その宅地の評価額を最大で80%まで減額できる可能性があります。事業用地や貸付事業に用いられていた土地についても、50%〜80%の減額が認められるケースがあります。この減額によって相続税の課税対象となる財産の価額が抑えられるため、納税資金の負担が軽減され、不動産を売却せずに相続を完了できる事例も多く見られます。 ただし、この特例の適用には、居住や事業の継続に関する要件、土地の面積制限(最大330㎡まで)など、細かな条件を満たす必要があります。また、相続税申告期限内に適用を受ける旨を申告することが必須であり、準備不足や誤解によって適用を逃すケースもあるため注意が必要です。 自宅や事業用不動産を含む資産を次世代に円滑に引き継ぐ上で、この特例は極めて重要な制度のひとつです。早めに対策を講じ、制度の内容を正しく理解したうえで、税理士など専門家のサポートを受けながら計画的に進めることが求められます。
事業承継税制
事業承継税制とは、中小企業の経営者が後継者に自社株式などの事業用資産を引き継ぐ際にかかる相続税や贈与税の負担を、大幅に軽減するための特例制度です。通常、自社株式の相続や贈与には高額な課税が伴いますが、本制度を活用すれば、一定の条件下でこれらの税金の納税が猶予され、最終的に免除される可能性もあります。 この制度の目的は、経営者の高齢化が進む中で、後継者への円滑な事業承継を支援し、中小企業の継続的な成長や地域経済の安定を確保することにあります。特に、長年にわたり地域や雇用を支えてきた企業にとっては、承継時の税負担が事業継続の大きな壁となるケースもあり、本制度はその打開策として注目されています。 制度の適用には、事業承継計画の策定や、都道府県への認定申請など、事前の準備と継続的な要件の遵守が求められます。適用条件も多岐にわたるため、税理士や行政書士などの専門家の支援を受けながら、計画的に取り組むことが重要です。 資産運用の一環として事業を所有している方や、将来的に経営権を譲渡する予定がある方にとって、本制度は事業と資産の両面を守るための有力な選択肢といえるでしょう。
納税猶予
納税猶予とは、一定の条件を満たすことで、すぐに税金を支払わずに済み、将来にわたって支払いを延期できる制度のことを指します。たとえば、相続税や贈与税において、事業を継続する後継者が自社株式などを引き継いだ場合、その税金の支払いを一定期間猶予してもらえる制度があります。これは、事業の資金繰りを圧迫しないように配慮した措置であり、猶予中は原則として利子税がかかりますが、条件を守り続ければ最終的に免除されることもあります。納税猶予を受けるには、事前の申請や継続的な報告義務などがあり、要件を満たさないと猶予が打ち切られて一括納税が求められることもあるため、制度の正確な理解と計画的な対応が重要です。資産承継や中小企業の経営において、事業の継続性を保つ手段として活用されています。