年金繰上げ・繰下げの「損益分岐点」を教えてください。
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2025/07/04 17:12
男性
60代
年金を60歳で繰上げるか70歳まで繰下げるか検討していますが、「損益分岐点」が具体的に何を示すのか分かりません。どの年齢まで生きれば総受給額が65歳開始を上回るのか、計算方法と注意点を教えてください。どのように判断すればよいでしょうか?
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
損益分岐点とは、繰上げ・繰下げで選んだ受給開始年齢が総受給額の面で65歳開始と並ぶ時点を示します。
繰上げ受給では0.4%(一部世代0.5%)の終身減額が続くため、どの年齢で始めても「開始後20年10か月」で累計額が65歳開始とほぼ同額になります。たとえば、60歳開始なら80歳10か月、64歳開始なら84歳10か月が目安です。それ以降に長生きすれば65歳開始の方が得になります。
繰下げ受給は0.7%の終身増額があるため「開始後10年11か月」で累計が逆転します。70歳開始なら80歳11か月、75歳開始なら85歳11か月以降は、繰下げ受給のほうが有利になる計算です。
計算は額面ベースで、所得税・住民税・健康保険料の差や厚生年金保険料負担、繰下げ中の生存リスクは反映されません。手取りで見ると分岐年齢が前後するため、ねんきんネットで試算し、退職金・iDeCoなど他資金と合わせたキャッシュフローを作成して判断しましょう。長寿リスクに備えるなら繰下げ、早期資金確保や健康不安があるなら繰上げが目安になります。
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繰上げ受給
繰上げ受給とは、公的年金を本来の支給開始年齢より早く受け取り始める制度で、日本では原則65歳からの老齢基礎年金や老齢厚生年金を60歳から前倒しで請求できます。早く受け取る代わりに、受給額は繰上げた月数に応じて永久的に減額される仕組みになっており、減額率は請求月ごとに定められています。長く受給するメリットと生涯受取額が減るデメリットを比較し、健康状態や生活資金の必要度、就労の予定などを踏まえて選択することが大切です。また、一度繰上げを行うと原則として取り消しや遅らせることはできないため、将来のライフプランを十分検討したうえで判断する必要があります。
繰下げ受給
繰下げ受給とは、本来65歳から支給される公的年金(老齢基礎年金や老齢厚生年金など)の受け取り開始を自分の希望で後ろ倒しにする制度です。66歳以降、最大75歳まで1か月単位で繰り下げることができ、遅らせた月数に応じて年金額が恒久的に増えます。 増額率は1か月当たり0.7%で、10年(120か月)繰り下げた場合にはおよそ84%の上乗せとなるため、長生きするほどトータルの受取額が増えやすい仕組みです。ただし、繰下げた期間中は年金を受け取れないため、その間の生活資金や健康状態、就労収入の見通しを踏まえて慎重に検討することが大切です。
損益分岐点
損益分岐点とは、売上と費用がちょうど同じになり、利益も損失も出ない境目の売上金額のことを指します。つまり、これ以上売上が増えれば利益が出て、これより少なければ赤字になるという基準点です。企業の経営や事業の採算性を判断するうえで非常に重要な指標です。投資の場面では、企業の収益構造を理解するために損益分岐点を確認することで、どれくらいの売上規模で利益が出るのかを把握できます。また、新しく事業を始める際にも、どのくらい売上を確保すれば黒字になるかを考える材料として使われます。投資判断や事業計画を立てるうえで欠かせない基本的な概念です。
額面
額面とは、金融商品に記載されている公式な金額のことを指します。主に債券や株式などで使われる用語で、たとえば債券であれば、満期時に発行体が投資家に返済する元本の金額、株式であれば、1株あたりの発行価額(旧来の額面株式)を意味します。 債券においては、償還金額や利息の計算基準となる重要な金額であり、市場価格(実際に売買される価格)とは異なる点が特徴です。たとえば、額面100円の債券が市場で95円で取引されていれば「アンダーパー」、105円であれば「オーバーパー」と呼ばれます。 資産運用においては、額面を基準に利回りや価格変動を評価することが多く、特に債券投資や定期預金、仕組債の設計において欠かせない基礎概念です。額面と市場価格の差異を理解することは、投資判断やリスク評価に直結します。