四季報でバリュー株を探す際にPERを参照する理由を教えて下さい
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2024/09/09 20:52
男性
40代
個別株の投資に関心を持ち始めたので友人に相談したところ、「株式投資をするなら四季報を読んでバリュー株を発掘しろ」「バリュー株を探すにはPERが低い企業をピックアップすることが大事」といわれました。<br>なぜPERの低い企業がバリュー株と結びつくのでしょうか?教えて下さい。
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
PER(株価収益率)は「株価 ÷ 1株当たり当期純利益(EPS)」で算出され、投資家が企業の利益1円をいくらで買っているかを示す指標です。利益という“稼ぐ力”に対して株価が十分に低く評価されていれば、業績が維持・拡大したときに株価が本来の水準へ修正される余地が大きく、これがバリュー株発掘でPERが重視される根拠となります。
四季報の株価指標欄には「実績PER」と「予想PER」が掲載されています。予想PERが低い場合は「来期予想利益に株価が追い付いていない」可能性が示唆されますが、一時的な特別利益や景気循環のピークが含まれていないかを必ず検証しましょう。業績コメントや過去数期の推移を確認し、利益の質が高いかどうかを見極めることが欠かせません。
次に、同業他社や業界平均との比較が重要です。たとえば自動車部品業界の平均PERが12倍のなかで、構造改革に成功している企業が8倍で放置されていれば相対的な割安感が際立ちます。逆に、業界そのものが構造的低成長で低PERにとどまる場合は「低PER=割安」とはならないため、事業環境と競争優位の持続性を俯瞰的に確認してください。
低PERの背景が「市場から成長期待を失っている」だけなら、それは割安ではなく“バリュートラップ”である可能性があります。営業利益率やフリーキャッシュフロー、ROEの推移、さらには財務安全性(自己資本比率やネットキャッシュなど)を併せて点検し、低PERが正当化されない強みを企業が備えているかを検証しましょう。
四季報には【会社予想】と独自取材による【四季報予想】が並記されます。両者に乖離がある場合は、保守的な会社計画を市場がまだ十分に織り込んでいないケースや、逆にリスクシナリオを四季報が先読みしているケースもあります。乖離の要因を読み解くことで、PERだけでは捉えきれない情報優位を得られます。
最後に、PERは景気敏感株で周期的に変動します。好況期は利益が膨らみPERが低下し、不況入り後は利益急減でPERが跳ね上がるため、タイミング次第で指標の見え方が一変します。売上高の安定成長力や事業ポートフォリオの競争優位、株主還元方針(配当・自社株買い)なども総合的に確認したうえで判断しましょう。四季報を起点にPERを多面的に読み解けば、本当に「価値より安い」企業を効率良く絞り込むことができます。
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会社四季報とは、日本の全上場企業約4,000社の株価や業績に関する情報を1冊にまとめたデータ本で、東洋経済新報社発刊です。「四季報」という言葉の通り、毎年3、6、9、12月と年に4回発売されています。国内の全上場企業の情報が1冊でコンパクトにまとまっている出版物は海外ではあまり見られず、日本特有のものとして評価されています。
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バリュー投資とは、本来の価値よりも株価が割安になっていると判断される企業に投資をする方法です。企業の財務状況や業績、将来性などをしっかりと分析し、その企業が持つ本来の価値に比べて株価が低いと考えられる場合に株を購入します。そして、時間の経過とともに株価が本来の価値に近づくことを期待して利益を得ようとする考え方です。市場の流れに左右されず、じっくりと資産を育てたい人に向いている投資手法です。