相続放棄が認められなくなる「NG行為」について教えてください
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2025/07/25 08:31
男性
30代
最近親族が亡くなりました。多額の負債を抱えていたことが判明したため、相続放棄を考えています。相続放棄を検討している旨を知人に話したところ相続放棄をできなくなるNG行為があるから注意してと言われびっくりしました。相続放棄のNG行為とはどんなものでしょうか?
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
相続放棄が認められなくなる主なNG行為は、以下のように整理できます。
1.相続財産の処分
たとえば故人名義の預貯金を引き出す、不動産や自動車の名義変更を行う、形見分けと称して遺品を持ち帰る、配当金や家賃収入を受け取るなど、相続財産を「処分した」と判断される行為は、原則として放棄が認められなくなります。
2.故人の債務や公共料金の支払い
借金、未払いの税金、電気・ガス代などを一部でも支払った場合、「相続を承認した」とみなされる可能性が高く、放棄は困難となります。
3.財産の隠匿・消費・使途不明金の発生
故意に遺産を隠す、現金を使ってしまう、所在が不明になるなどの行為は、家庭裁判所の判断で放棄の効力が否定されることがあります。たとえ第三者に善意で譲渡した場合でも、証拠がなければ問題とされる可能性があります。
4.架空の債務を申告する行為
遺産額を減らす目的で虚偽の借金や支払い義務を主張するなど、詐欺的な申告が行われた場合、放棄そのものが取り消される危険があります。
5.熟慮期間(3か月)を過ぎてしまうこと
相続放棄は、「自分が相続人であることを知った日」から3か月以内に家庭裁判所へ申述しなければなりません。期間経過後は、原則として放棄は認められません。
なお、以下のような行為は、一般的に放棄と両立し得るとされています。
- 故人の葬儀費用や病院代など、社会通念上の範囲内での支払い
- 住居の施錠、相続財産の一時的保全、目録作成のための調査など、「保存行為」や「事務手続き」にとどまるもの
ただし、これらも具体的な状況や金額、記録の有無によっては判断が分かれるため、レシートやメモ、写真などの証拠を残すことが重要です。
判断が難しいケースも少なくありません。特に「相続人としての立場で動いたかどうか」は裁判所の判断に影響するため、少しでも不安がある場合は、早めに弁護士や司法書士に相談することが確実です。
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関連する専門用語
相続放棄
相続放棄とは、亡くなった人の財産を一切受け取らないという意思を家庭裁判所に申し立てて、正式に相続人の立場を放棄する手続きのことです。相続には、プラスの財産(預貯金や不動産など)だけでなく、マイナスの財産(借金や未払い金など)も含まれるため、全体を見て相続すると損になると判断した場合に選ばれることがあります。 相続放棄をすると、その人は最初から相続人でなかったものとみなされるため、借金の返済義務も一切負わなくて済みます。ただし、相続があったことを知ってから3か月以内に家庭裁判所に申し立てる必要があり、その期限を過ぎると原則として相続を受け入れたとみなされてしまいます。したがって、放棄を検討する場合は早めの判断と手続きが重要です。
単純承認
単純承認とは、相続が発生した際に、被相続人(亡くなった方)の財産をそのまま全て受け継ぐと決める手続きのことをいいます。この場合、預貯金や不動産といったプラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産もすべて引き継ぐことになります。単純承認は特別な手続きをしなくても、相続人が財産を使ったり処分したりすると自動的に成立することが多いため、慎重な判断が必要です。 たとえば、被相続人に多額の借金があった場合、それも自分が返済する責任を負うことになりますので、相続を受ける前には、財産の内容をよく調べることが大切です。
熟慮期間
熟慮期間とは、相続人が相続を「する」「しない」を決めるために与えられている法的な猶予期間のことです。具体的には、相続が開始されたことを知った日から3か月以内に、相続するかどうかを決めて家庭裁判所に申し出る必要があります。 この3か月の間に、亡くなった方の財産や借金の状況を確認し、自分にとって相続が得か損かを見極めることが求められます。もし期間内に何も手続きをしなければ、法律上は「相続する」と判断され、自動的にすべての財産と負債を引き継ぐことになります。資産運用の観点からは、負の遺産を回避するための重要な判断期間であり、財産の内容を冷静に分析する時間でもあります。
財産処分
財産処分とは、自分が持っている財産を売ったり、譲ったり、破棄したりする行為全般を指します。たとえば、不動産を売却することや、株式を第三者に譲渡すること、または価値のないものを処分することも含まれます。相続や離婚、債務整理などの場面で重要になることが多く、どの財産をどう扱ったかが、後々の法的な手続きや分配に大きな影響を与えることがあります。 また、亡くなる直前の財産処分については「遺産隠し」などの疑いが生じることもあるため、適正な手続きと記録が必要になります。
相続財産管理人
相続財産管理人とは、相続人がまったくいない、または全員が相続放棄をした場合に、家庭裁判所が選任する第三者の専門職です。弁護士などが就くことが多く、被相続人の遺産を調査して財産目録を作成し、債権者への弁済や遺産の換価処分、残余財産の国庫帰属といった手続きを公正に進めます。 相続人不在で放置されれば権利関係が不透明になりかねない土地や預貯金などを適切に処理し、利害関係人の保護と社会的な秩序を維持する役割を担う点が大きな特徴です。
相続放棄申述書
相続放棄申述書とは、相続人が「相続を放棄します」という意思を正式に表すために、家庭裁判所に提出する書類のことです。この書類を提出することで、相続人は被相続人の財産や負債を一切引き継がないという選択を法的に行うことができます。相続放棄をするには、被相続人が亡くなったことを知ってから3か月以内に、この申述書を家庭裁判所へ提出しなければなりません。 申述書には、放棄する理由や自分が相続人であることの確認情報などを記載します。借金などのマイナスの財産を抱えたくない場合に用いられる重要な書類ですので、記入ミスや提出期限に注意する必要があります。