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物価水準の財政理論(FTPL)とはどのような考え方?

解決済み

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2025/05/14 10:42


男性

60代

question

インフレは金融政策だけで決まるのでしょうか? 巨額債務国では財政が物価を動かすとは一体どういう仕組みなのでしょう? 財政と物価を結び付けるFTPLはどのように機能し、国債投資や通貨の実質価値を判断するうえでどんな手掛かりを与えてくれるのでしょうか?


回答

佐々木 辰

株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長

物価は「マネーの量」だけではなく、政府債務を最終的に誰が負担するかという信認によっても左右されます。物価水準の財政理論(FTPL)は、名目国債残高と将来の財政黒字(増税・歳出削減)の現在価値がつねに一致するという政府の予算制約を出発点に、物価を決定する枠組みです。市場が「黒字で帳尻を合わせられる」と見れば、中央銀行が流動性を供給しても実質債務は目減りせず、物価は安定します。逆に増税余地や歳出改革の政治的実行力が疑われれば、実質債務の縮小は物価水準の引き上げという形で行われ、インフレ期待が急騰します。したがって金融政策の効果は健全な財政運営という土台があって初めて持続します。国債や通貨に投資する際は、①ブレークイーブンインフレ率、②名目長期金利と名目GDP成長率の差(r-g)、③ソブリンCDSスプレッドなどを使い、市場が将来の財政黒字をどの程度織り込んでいるかを点検することが不可欠です。高齢化で潜在成長率が伸び悩む国ほど、これらの指標に変調が表れやすく、長期的な実質リターンの鍵を握るリスクシグナルになります。

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FTPL(物価水準の財政理論)

FTPL(物価水準の財政理論)とは、物価がどのように決まるかを、政府の財政状況を中心に説明する経済理論です。通常、物価の変動は中央銀行による金融政策、たとえば金利の操作や通貨供給量の調整によって左右されると考えられますが、FTPLでは、政府の借金や将来の税収・支出の見通しが物価に直接影響すると見なします。 この理論によれば、政府が過度に借金を増やし、それを将来返済できる見込みが薄い場合、人々はその通貨の価値が下がると考えるようになり、結果として物価が上昇するとされます。つまり、財政政策の信頼性がその国の通貨の価値やインフレ率に大きく関係しているという見方です。インフレが高まる理由や、金融政策だけでは物価を安定させられない状況を理解するうえで、FTPLは重要な理論のひとつです。

名目国債残高

名目国債残高とは、国が発行している国債のうち、返済時に支払うべき元本の総額を、物価の変動を考慮せず「名目」で示したものです。つまり、実質的な購買力の変化やインフレの影響を除いた、額面通りの金額を意味します。たとえば、インフレによってお金の価値が下がっても、名目国債残高そのものは変わりません。 これは、政府の債務規模を単純に把握するための基本的な指標として用いられます。一方で、経済の規模や物価水準の変化を考慮せずにこの数字だけを見ると、実際の債務の重さを誤解する可能性があるため、GDP比や実質ベースでの分析と組み合わせて評価されることが一般的です。資産運用の観点では、国の財政状況を把握し、将来の金利やインフレ動向を予測する手がかりとして、名目国債残高の動きに注目することが重要です。

ブレークイーブンインフレ率(BEI)

ブレークイーブン・インフレ率(BEI)は、同じ残存期間の固定利付国債(名目債)の利回りから物価連動国債(実質債)の利回りを差し引いた値で、市場が織り込む平均インフレ率を示す“温度計”です。たとえば10年債で名目2.0%、実質0.8%ならBEIは1.2%となり、「今後10年間で年平均1.2%の物価上昇」が示唆されます。代表年限は5年と10年で、短期・長期の水準差を見るとインフレ期待の強弱が読み取れます。 BEIが上昇するとインフレ懸念が強まり、物価連動債やコモディティ、REITなど実物資産が相対的に有利になる可能性があります。逆に低下、あるいはマイナス圏入りはデフレ懸念を映し、長期固定債やキャッシュ比率を高める判断材料になり得ます。ただし流動性の乏しさやインフレリスクプレミアムの影響で、BEIは純粋な期待インフレ率から数十bp乖離することもあります。米国TIPS、欧州ILB、日本JGBiの水準を横比較し、中央銀行の見通しや原油価格と併せて確認すると、より立体的にインフレ動向を把握できます。

名目金利

名目金利とは、金融市場で表示される利率のことで、インフレ率を考慮しない金利を指します。例えば、銀行の預金金利やローンの利率、国債のクーポン利回りなどが該当します。名目金利は、一般的に市場の需給や中央銀行の金融政策によって決まり、経済活動に大きな影響を与えます。 一方、実質金利は、名目金利からインフレ率を差し引いたもので、資産の購買力の変化を示します。例えば、名目金利が5%でインフレ率が3%の場合、実質金利は2%となります。インフレが高いと、名目金利が高くても実質的な利回りは低くなるため、投資や貯蓄の意思決定に影響を与えます。 したがって、名目金利だけでなく、実質金利やインフレ率も考慮することが、金融市場や経済の動向を正しく理解する上で重要です。

スプレッド(Spread)

スプレッド(Spread)とは、金融商品の売値(ビッド:Bid)と買値(アスク:Ask)の差のことをいいます。主に外国為替市場や債券市場、株式市場などで使われる用語です。 ビッド(Bid)は投資家がその商品を「売るときに受け取れる価格」、アスク(Ask)は「買うときに支払う価格」を指します。スプレッド(Spread)が広いほど、投資家にとっての取引コストが高くなるため、売買のタイミングには注意が必要です。 一般的に、流動性の低い市場や銘柄ではスプレッドが広がりやすく、反対に、取引が活発な市場ではスプレッドが狭くなる傾向があります。そのため、スプレッドの大きさは、市場の流動性や取引コストを判断する一つの指標となります。

CDSスプレッド

CDSスプレッドは、クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)の保証料を年率で示した指標で、1ベーシスポイント(bp)は0.01%を表します。たとえばスプレッドが150 bpなら、名目元本100万ドルに対して年間1万5,000ドルの保険料を支払う契約条件になります。理論的には、スプレッドは「デフォルト確率 ×(1 − リカバリー率)」で近似できるため、悪化する信用リスクが直ちに数値に反映される仕組みです。 実務では残存期間5年の契約がベンチマークとされ、投資適格社債で50〜150 bp、ハイイールド債や一部新興国では数百 bpまで拡大するのが目安です。スプレッドは株価や債券利回りより先行して動くことが多く、拡大は財務不安やマクロショックへの警戒シグナル、縮小は信用改善や資金流入を示唆します。ICE Data ServicesやS&P Global Market Intelligence(旧Markit)の日次公表値、またはCDX/iTraxxといったCDSインデックスを参照すると、主要銘柄の最新動向を把握できます。 投資家は債券利回りとの差(ベーシス)を利用した裁定取引や、ポートフォリオ全体のクレジットリスク管理にスプレッドを活用します。一方で、取引が薄い名義では気配値だけが大きく動く場合や、短期的に投機要因が交錯して本来の信用力を正確に映さない局面もあるため、流動性と市場環境を併せて確認することが欠かせません。 CDSスプレッドは、現物債券のオプション調整スプレッド(OAS)、新興国債券指数(EMBIスプレッド)、市場のボラティリティ指標(VIX)などと並ぶ主要なリスク指標の一つです。複数の指標を組み合わせて総合的に判断することで、企業や国家の信用度合いをより立体的に読み解くことができます。

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