減価償却費の税制上のメリット、デメリットを知りたいです
減価償却費の税制上のメリット、デメリットを知りたいです
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2025/01/20 18:53
男性
60代
減価償却費は節税に有効と言われますが、税負担を先送りにしているだけという意見もあります。減価償却による節税の仕組みと節税効果の実態について教えてください。
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
減価償却費は、実際のキャッシュアウトを伴わずに経費として認められるため、当期の課税所得を圧縮し、所得税・住民税を節税できる仕組みです。最高税率が55%に達する高所得層ほど節税インパクトは大きく、手元資金を早期に厚くできる点が最大のメリットです。
もっとも、帳簿上の資産価額(簿価)が減ることで将来の譲渡益は増え、売却時には分離課税20.315%(長期譲渡の場合)がかかります。このため「税負担の先送りにすぎない」とも言われます。しかし、①減価償却で得たキャッシュを運用して複利効果を享受できる、②適用税率が高い現在に経費計上し、売却時の譲渡税率が相対的に低い——という二点がそろえば、純粋な税率差益が生じます。たとえば45%課税ゾーンの個人が毎期100万円を償却すると、当期の税負担は45万円減少します。10年後に同額が譲渡益として課税されても税率20.315%なら納税は約20万円で済み、差額約25万円が最終的な節税額になります。
留意すべきリスクは、短期譲渡(5年以内)では最大39%課税と負担が跳ね上がること、累積償却で金融機関の担保評価が低下しうること、そして将来の税制改正や税率変動による不確実性の三つです。減価償却が「単なる先送り」になるか「キャッシュ創出と税率差益の源泉」になるかは、保有期間・売却タイミング・運用方針を踏まえた長期シミュレーション次第です。個人・法人いずれの場合も、税理士と試算を行い、最適な償却ペースと出口戦略を設計しましょう。
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関連する専門用語
減価償却
減価償却とは、固定資産の購入価格をその使用可能年数にわたって経済的に分配する会計処理の方法です。企業が機械や建物、車両などの固定資産を購入した際に、これらの資産は使用することで徐々に価値を失います。減価償却を行うことで、資産のコストをその寿命にわたって費用として計上し、その結果として企業の財務報告が実態に即したものになることを目指します。 減価償却には様々な方法がありますが、一般的なものに直線法、定率法、数字和法があります。直線法はもっとも単純で、資産の耐用年数にわたって均等に費用を計上します。定率法は残存価値を基に毎年一定の割合で費用を計上し、数字和法では耐用年数の初年度に最も多くの費用を計上し、年数が経過するにつれてその額を減らしていきます。 減価償却は税務上も重要で、企業は減価償却費を経費として計上することで課税所得を減少させることができます。このため、適切な減価償却方法の選択と計算は、企業の税負担の管理にも直接関連しています。
課税所得
課税所得とは、個人や法人が一定期間内に得た収入から、法律に基づいて認められた各種控除や必要経費を差し引いた後の金額を指します。この金額に対して所得税や法人税などの税率が適用され、実際に納税すべき税額が計算されます。課税所得の計算方法は国や地域によって異なるため、具体的な控除項目や税率もそれに応じて変わります。 課税所得を計算する際には、まず総収入から非課税所得を除外します。その後、必要経費や特定の控除(例えば、標準控除、医療費控除、教育費控除など)を適用して課税対象となる所得を求めます。これにより、公正かつ実情に即した税額を算出し、納税者が収入に見合った税金を支払うことが可能となります。 課税所得の正確な把握と計算は、個人や企業の税務管理において非常に重要です。税法の変更に応じて控除額や計算方法が更新されることが多いため、適切な税務知識を持つこと、または専門の税理士などの助けを借りることが望ましいです。これにより、適切な税金の納付を確実に行い、法的な問題を避けることができます。
所得税
所得税は、個人が1年間に得た所得に対して課される税金です。給与所得や事業所得、不動産所得、投資による利益などが対象となります。日本では累進課税制度が採用されており、所得が高いほど税率が上がります。給与所得者は源泉徴収により毎月の給与から所得税が差し引かれ、年末調整や確定申告で精算されます。控除制度もあり、基礎控除や扶養控除、医療費控除などを活用することで課税所得を減らし、税負担を軽減できます。
簿価
簿価(帳簿価額)とは、資産を取得した時点で会計帳簿に記録した価額、あるいは取得後に減価償却や評価替えを行った後の帳簿上の残存価額を指します。株式や債券の取得原価、不動産や設備の償却後残高など、資産の「会計上の基準点」となる数値であり、企業の財務諸表では貸借対照表(B/S)の資産項目に表示されます。 簿価は取得原価主義を前提とするため、市場価格(時価)とは乖離する場合があります。たとえば100万円で購入した上場株式の帳簿価額がそのまま100万円で残っていても、現在の市場価格が150万円なら50万円の含み益、70万円なら30万円の含み損が生じている計算です。この差は売却して初めて実現損益として確定しますが、運用状況の把握や税務計算の前提として簿価を基準にすることが多い点は押さえておきましょう。 実務上、簿価が変動する代表例は二つあります。一つ目は減価償却で、建物や設備など耐用年数のある固定資産は会計期間ごとに計画的に簿価を減らします。二つ目は簿価切り下げ(評価損)で、時価の大幅下落などによって資産価値の回復が見込めないと判断されると、簿価を減額処理するケースがあります。いずれの場合も、財務指標や利益計算に影響を与えるため、投資家は簿価と時価の双方を意識して企業の財務健全性や投資パフォーマンスを評価する必要があります。 個人投資の観点では、簿価は「取得原価=税務上のコスト」と同義となることが多く、売却益に対する課税額を計算する際のベースになります。長期保有資産ほど時価との乖離が大きくなりやすいことから、簿価と時価の差を定期的に確認し、含み益・含み損の管理やリバランス、損益通算などの税務戦略に生かすと効果的です。



