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日本型オペレーティングリース(JOLCO)とは?JOLとの違いや仕組み・メリット・注意点を徹底解説

日本型オペレーティングリース(JOLCO)とは?JOLとの違いや仕組み・メリット・注意点を徹底解説

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公開:

2025.07.03

更新:

2025.07.03

航空機や船舶へのリース投資で初年度に最大70〜80%の損金計上が可能なJOLCOは、節税を目的とする企業経営者の間で注目が高まっています。しかし、「元本回収が確実」とのイメージの陰に、残価リスクや借り手の信用リスク、2005年税制改正以降の損金算入制限といった、知られざる注意点も潜んでいます。本記事ではJOLとの違いや仕組み、導入事例を丁寧に図解し、制度改正後の課税繰延べを安全に活用する具体策を示します。

サクッとわかる!簡単要約

本記事を読み進めることで、JOLCOの「損金計上70〜80%」という節税メリットの実態が具体的に理解できます。また、JOLとの比較を通じて、コールオプションが元本回収を安定化させる仕組みや、残価リスクがどのように低減されるかを明確に把握できるようになります。さらに、2005年税制改正以降の損金算入制限や、契約上のリスクを踏まえた導入ポイントを図解・表解付きで整理しているため、初めての方でも安心して投資判断が行えるようになります。

目次

JOLCOとは?購入選択権が付いた日本型オペレーティングリース

JOLCOの定義:レッシー(借り手)が資産を買い取れる仕組み

JOLとの根本的な違いは「コールオプション」の有無

主な対象資産と関係者双方のメリット

JOLCOの仕組み:匿名組合を利用した節税と投資のスキーム

資金の流れ:投資家からSPCを経由し、資産をリースする

節税の仕組み:減価償却費で損失を作り出し、課税を繰り延べる

ノンリコースローンが基本だが追加出資リスクもあることに注意

JOLとJOLCOの決定的違いは「残価リスク」の所在

JOLは投資家が「残価リスク」を直接負う

JOLCOはオプション行使で「残価リスク」を軽減

自社の目的に合わせて最適なスキームを選択

JOLCO投資の4つの主要メリット

メリット1:出資額の70〜80%を初年度損金にできる「課税繰延べ効果」

メリット2:レバレッジ効果で少額の自己資金でも大きな減価償却

メリット3:納税を先送りし、手元資金の運用効率を最大化

メリット4:コールオプションにより元本回収の確実性が高く安定的

JOLCOに潜む5つの主要リスクと注意点

リスク1:レッシー(借り手)の倒産・経営悪化による「信用リスク」

リスク2:コールオプション不行使時に発生する「残存価値リスク」

リスク3:外貨建て取引に伴う「為替リスク」

リスク4:税制改正や法改正による「制度変更リスク」

リスク5:原則中途解約できない「流動性リスク」

JOLCOを理解するための法律・税務のポイント

税務のポイント:損金算入は「出資額」が上限、出口戦略が重要

法律のポイント:匿名組合スキームと金融商品取引法

JOLCOはどのような資産に活用されている?

航空機リース:大手航空会社の新造機調達ファイナンス

船舶・コンテナリース:大手海運会社の輸送資産ファイナンス

国内事業への応用:太陽光発電などへの展開も模索段階

JOLCOとは?購入選択権が付いた日本型オペレーティングリース

JOLCOとは、借り手が資産を買い取れる「購入選択権」が付いたリース取引です。この章ではJOLCOの基本的な定義から、従来のJOLとの決定的な違い、そしてどのような資産で活用され、誰にメリットがあるのかを解説します。

JOLCOの定義:レッシー(借り手)が資産を買い取れる仕組み

JOLCO(ジョルコ)とは、「Japanese Operating Lease with Call Option」の略称で、日本語では「購入選択権付日本型オペレーティング・リース」と呼ばれるスキームです。

JOLCOはリース期間中または終了時にレッシー(借り手)がリース物件を事前に取り決めた価格で購入できるオプション(コールオプション)が付与されたリース形態を指します。もともと日本型オペレーティングリース(JOL=Japanese Operating Lease)は、日本の税制を活用して大型資産の減価償却による利益圧縮効果を投資家が享受できるよう工夫された投資手法です。

JOLとの根本的な違いは「コールオプション」の有無

JOLでは投資家が匿名組合を通じて航空機や船舶等の大型資産リース事業に出資し、リース期間中の損益配分を受けることで課税所得の一部を繰り延べる効果を得ます。リース満了時には資産売却益が投資家に分配されます。

一方、JOLCOはJOLにコールオプションが付いただけのものであり、基本的な枠組みは同じですが、リース事業終了時の資産処分方法に違いがあります。つまりJOLCOとは、リース終了時(または途中)に借り手が当該資産を買い取る権利が契約上組み込まれた日本型オペレーティングリースです。

主な対象資産と関係者双方のメリット

なおJOLおよびJOLCOは一般に航空機や船舶、コンテナなど大規模資産のリースに活用されてきました。近年では航空業界を中心に利用されており、航空会社にとっては100%近い機体取得資金を確保できる有利なリース手段であり、投資家にとっては税務上の優遇とリース料収入を享受できるスキームとなっています。

JOLCOの仕組み:匿名組合を利用した節税と投資のスキーム

JOLCOは「匿名組合」という枠組みを利用して、投資家に節税メリットをもたらします。本章では、投資家から航空会社へとお金が流れる具体的な仕組みと、減価償却を利用して課税を繰り延べるカラクリ、注意すべき点を解説します。

匿名組合については、以下記事で詳しく説明しています。

資金の流れ:投資家からSPCを経由し、資産をリースする

JOLCOの基本的な仕組みは、日本の商法に基づく匿名組合契約を用いたストラクチャーで構成されています。具体的には、組成会社(オリジネーター)であるリース事業者等がSPC(特別目的会社)を設立し、投資家と当該SPC(営業者)との間で匿名組合契約を締結します。投資家は匿名組合出資という形で資金を拠出し、営業者はその出資金と金融機関からのノンリコースローン(借入金)を合わせて航空機や船舶、コンテナ等のリース資産を購入します。購入された資産は航空会社や海運会社(レッシー)にリースされ、レッシーからリース料が営業者に支払われます。

節税の仕組み:減価償却費で損失を作り出し、課税を繰り延べる

リース期間中、営業者(SPC)はリース料収入を得る一方で、リース資産について減価償却費を計上します。減価償却には一般に定率法(加速度的償却)が用いられるため、リース期間前半は減価償却費による損失がリース料収入を上回り、匿名組合の損失として投資家に分配されます。

この損失配分により、投資家は自社の会計上の利益を圧縮し、課税を後年度へ繰り延べる効果(節税効果)を得ることができます。リース満了時には、営業者がリース資産を中古市場で売却し、その売却益を投資家へ分配します(この売却益は投資家の益金となり課税対象)。JOLCOの場合は、満了時または契約で定めた時期に借り手があらかじめ合意した価格で資産を買い取る(コールオプション行使)ケースが加わります。

減価償却で実現する節税についてはこちらのQ&Aもご参照ください。

ノンリコースローンが基本だが追加出資リスクもあることに注意

以上がJOLCOの典型的なストラクチャーです。

要約すると「投資家⇒(匿名組合出資)⇒SPC/営業者⇒(リース)⇒航空会社等、リース料⇒SPC⇒投資家」という資金の流れになっています。

また銀行からの融資は当該リース資産および将来のリース料を担保としたノンリコースローンであり、原則として投資家個人・法人への遡及(リコース)は限定的です。ただし契約上、最終的に資産売却や為替変動の結果損失が出資額を超過する場合には追加出資を求められる可能性もある点には留意が必要です。

JOLとJOLCOの決定的違いは「残価リスク」の所在

JOLとJOLCOの最大の違いは、借り手が資産を買い取るコールオプション(購入選択権)の有無です。この一点の違いが、投資家が負うリスクと期待できるリターンの性質を根本から変えます。

まずは、両者の特徴を一覧できる以下の比較表で、全体像を掴みましょう。

比較項目JOL(標準型)JOLCO(購入選択権付)
スキームの概要購入選択権が付かない標準的なオペレーティングリース。借り手が、あらかじめ決めた価格で資産を購入できる権利(コールオプション)が付いたリース。
購入選択権なし。リース終了後は中古市場で資産を売却する。あり。借り手は期間中または終了時に資産を買い取れる。
残価リスクの所在投資家。市場価格の下落リスクを直接負う。借り手。オプション行使が前提のため、投資家の残価リスクは大幅に軽減される。※
市場価格上昇時の収益市場価格に応じて青天井に利益を得られる可能性がある。オプション価格で固定されるため、利益は限定的。
税務メリット減価償却による損金算入で課税を繰り延べる。JOLと同様の税効果。元本回収のタイミングが読みやすく、出口戦略を立てやすい。
借り手側のメリットリース終了後は資産を返却するだけでよい。将来の購入価格を固定しつつ、100%の事業資金を調達できる。
契約上の主な焦点リース満了時の資産処分方法と、残価リスクの配分。コールオプションの行使価格や条件の妥当性。
市場での主流過去には主流だったが、現在はJOLCOの比率が高まり相対的に減少。現在の新規案件の大多数を占め、市場の中心的スキーム。
JOLとJOLCO比較一覧表

※ただし、借り手がオプションを行使しない場合は、JOLと同様に投資家が市場で資産を売却するリスクを負います。

JOLは投資家が「残価リスク」を直接負う

JOLは購入選択権が付いていないため、リース期間満了後は、原則としてリース資産を中古市場で売却します。

したがって、投資家の最終的なリターンは売却価格次第となり、大きな変動に晒されます。

  • メリット:予定より高値で売却できれば、大きなキャピタルゲインを得られる可能性がある。
  • デメリット:逆に、市場価格が低迷した場合は元本割れの損失が発生し得る。

このように、投資家が資産の残存価値リスク(残価リスク)を直接負うため、ハイリスク・ハイリターンな性質を持ちます。

JOLCOはオプション行使で「残価リスク」を軽減

JOLCOは、借り手である航空会社などに購入選択権(コールオプション)が付与されています。

リース期間の終了時などにこの権利が行使されると、事前に合意した価格で借り手が資産を買い取るため、投資家のリターンは安定します。

  • メリット:投資家の出資元本が予定通り回収される確率が高く、残価リスクが大幅に低減される。
  • デメリット:中古市場の価格が値上がりしても、売却価格が固定されているため、JOLのような大きなアップサイド(上振れ利益)は期待できません。

元本回収の確実性が重視されるため、実務上はJOLCO案件が圧倒的に多く、近年の新規案件の90%以上はJOLCOが占めるとも言われています。

自社の目的に合わせて最適なスキームを選択

JOLとJOLCOの本質的な違いをまとめると、以下のようになります。

  • JOL=オプションなし(残価リスクは投資家負担→ハイリスク・ハイリターン)
  • JOLCO=オプションあり(残価リスクを軽減→ローリスク・ローリターン)

ただし、最も重要な注意点は「コールオプションは権利であって義務ではない」という点です。万が一、借り手の経営破綻などでオプションが行使されない場合は、JOLCOであっても投資家が残存資産を市場で処分するリスクを負うことになります。

どちらが優れているかではなく、自社が「大きなリターンを狙いたいのか」あるいは「元本保全性を重視し安定的な節税効果を得たいのか」という目的に応じて、最適なスキームを選択することが重要です。

JOLCO投資の4つの主要メリット

JOLCOは中堅・中小企業の決算対策やオーナー企業の節税スキームとして広く利用されています。ただし、「税金の支払いを先送りするだけ」である点や、出資額に対する利回り自体は決して高くない点(税効果を除けば低リスク商品であるため)も踏まえ、総合的に検討する必要があります。

それらを支えている4つの主なメリットを整理します。

メリット1:出資額の70〜80%を初年度損金にできる「課税繰延べ効果」

JOLCO最大の特徴は損金計上による利益繰延べ効果です。大型償却資産を取得したのと同様の減価償却を享受できるため、例えば出資額の2〜4倍もの資産を取得した場合に相当する減価償却費を計上できる商品設計も可能です。

実際、初年度に出資額の70〜80%を損金算入できる案件も一般的で、ある年度に偶発的に膨らんだ利益を翌期以降に繰り延べる節税対策として有効です。ただし後述するように、税制上、組合損失の損金算入額には制限があるため、出資額を超える損失部分は将来利益と相殺する仕組みになっています。

メリット2:レバレッジ効果で少額の自己資金でも大きな減価償却

JOLCO(日本型オペレーティング・リース)では、投資家の出資金に加え、金融機関からの借入を組み合わせて航空機などの高額な資産を取得します。たとえば1億円の出資に対して、総額3~4億円のリース案件に参画することが可能です。

この仕組みのポイントは、資産の取得金額全体に対して減価償却費が計上されることにあります。つまり、出資額を大きく上回る減価償却費(例:3〜4億円相当)が匿名組合(TK)の会計上で発生し、その結果、当初数年間は大きな赤字(会計上の損失)が生じます。

ただし、投資家自身がその赤字を自社の損金として計上できるのは、自らの出資額の範囲内までに限られています。出資額を超える分の赤字については、その場で損金にはできませんが、将来、そのリース事業から得られる利益と相殺する形で活用される(税務上は「繰延処理」される)ため、税金の支払いを後ろ倒しにする効果(繰延効果)が得られるのです。

このように、JOLCOのスキームでは、レバレッジによって自己資金以上の減価償却効果を享受でき、一定期間の税負担を軽減する構造となっています。

メリット3:納税を先送りし、手元資金の運用効率を最大化

損金算入によって当期課税を繰り延べできるため、その分のキャッシュアウト(税金支払)を後回しにできます。繰り延べによって手元に残った資金を他の事業投資に回すなど、資金効率の向上が図れます。

言い換えれば、JOLCOは「一時的な黒字資金を将来の必要資金にタイミングよく付け替える」手段とも言え、将来の設備投資や役員退職金支払いなど大口支出に備える目的で活用する例もあります。

メリット4:コールオプションにより元本回収の確実性が高く安定的

JOLCOではコールオプションによって出資元本の回収確率が高い点も魅力です。多くの案件ではリース期間終了時に借り手が資産を買い取ることが想定されており、契約上も購入価格はローン返済残高をカバーできる水準に設定されます。

そのため、予定通りオプションが行使されれば投資家は元本相当額を確実に回収でき、当初見込んだ内部収益率(IRR)で安定したリターンを得られます。特に投資家の主目的が税効果(損金算入)にある場合、配当収入の多寡よりも元本回収の確実性が重視されるため、JOLCOはニーズに合致した商品と言えます。

JOLCOに潜む5つの主要リスクと注意点

JOLCOは低リスク商品とはいえ様々なリスク要因があります。投資を検討する際は、利回りや節税効果だけでなく最悪の場合のシナリオ(例えば借り手破綻による資産引き取り・処分や追加出資の可能性)まで念頭に置いて、十分なリスク分析を行うことが大切です。

主なリスク要因を以下に整理します。

リスク1:レッシー(借り手)の倒産・経営悪化による「信用リスク」

リース先である航空会社や船舶運航会社の経営悪化リスクです。借り手が業績不振や財務破綻に陥り、リース料の支払い不能・遅延となる可能性があります。実際、2020年前後の新型コロナウイルス感染症拡大時には航空需要の急減で航空会社が経営危機に陥り、JOLCO案件でも一部で航空会社の破産により機体がリース契約ごと破棄される事態が生じました。借り手の信用力は投資成果に直結するため、高格付けの優良企業か、業績動向を十分見極めることが重要です。

リスク2:コールオプション不行使時に発生する「残存価値リスク」

リース期間終了時に資産を当初見込みの価格で売却できないリスクです。JOLCOではコールオプション行使によりある程度カバーされますが、借り手がオプションを行使しない場合、結局はJOL同様に中古市場で売却せざるを得ません。

その際、市況の変動により資産価格が低迷していると、売却額がローン残債や出資元本に満たず損失が生じる可能性があります。航空機やコンテナの中古市場はグローバルに形成され比較的流動性が高いとされますが、金融危機・戦争・大規模テロなどにより一時的に価格が急落した例もあります。JOLCO投資家も資産の種類や市場動向に関する知識と注意が必要です。

リスク3:外貨建て取引に伴う「為替リスク」

リース資産が航空機や船舶の場合、その取引は外貨建て(主に米ドル建て)で行われるケースが多々あります。この場合、投資家は出資から償還までの為替変動リスクを負います。円安・円高の振れ次第では当初見込みを超える損失が出る可能性もあります。

特に近年の急激な円安局面では、為替ヘッジを行わない外貨建て投資は注意が必要です。為替リスクは為替予約やデリバティブ等である程度ヘッジすることも検討すべきでしょう。

為替リスクの影響についてはこちらのQ&Aもご参照ください。

リスク4:税制改正や法改正による「制度変更リスク」

JOL/JOLCOの根幹には税法上の減価償却や組合損失の取り扱いがあります。税制改正などで減価償却ルールが変更されたり、損金算入範囲の制限強化やリース税制の見直しが行われたりすれば、期待していた節税効果が減殺されるリスクがあります。

実際、過去には平成17年度税制改正で組合損失の損金算入に上限が設けられたほか、近年はIFRS16(リース会計基準)の導入により借り手側の会計上のメリットが縮小するなど環境変化も起きています。

法規制面でも、JOLCO案件は金融商品取引法上「第二種金融商品」に該当し提供者に登録が求められる等、各種規制の変更リスクがあります。投資スキームを取り巻く制度変更には常にアンテナを張っておく必要があります。

リスク5:原則中途解約できない「流動性リスク」

JOLCOへの出資は基本的に中途解約や換金ができない長期投資です。リース期間中に資金需要が生じても出資持分をすぐに現金化することは困難で、譲渡には他の出資候補者探しや営業者・レンダーの同意などハードルが高いです。

また一度契約すると、リース料や期間など主要条件を途中変更することも難しく、借り手との交渉や他の匿名組合出資者全員の同意が必要になるなど柔軟性に欠ける面があります。このため、投資期間中は計画通りの資金拘束が続く前提で臨むべきです。

JOLCOを理解するための法律・税務のポイント

JOLCOのメリットを最大限に活かすには、法律と税務の理解が不可欠です。本章では、損金算入のルールや出口戦略といった「税務上の注意点」と、匿名組合や金融商品取引法が関わる「法的な枠組み」を解説します。

税務のポイント:損金算入は「出資額」が上限、出口戦略が重要

JOLCOの最大の魅力である税務メリットは「課税の繰延べ」です。しかし、損金算入額には出資額という上限があります。繰延べた税負担が将来発生するため、計画的な出口戦略を立てることが極めて重要になります。

税務メリットの仕組み

前述の通り、JOLCOでは匿名組合を通じて投資家にリース事業の損益が分配されますリース期間前半は減価償却費による損失超過により投資家側で損失(税務上は損金)が発生し、後半・期末に売却益が発生します。

この損失と利益を異なる期に配分することで、投資家は当期課税を減少させ(損金算入)、将来期に課税を移転させています。言い換えれば「減価償却を利用した課税の繰延べ」がJOL/JOLCOの核となる税効果です。

損金算入額の制限

もっとも、税務上は無制限に損失を計上できるわけではありません。2005年度(平成17年)の税制改正で、匿名組合契約等から生じる損失のうち損金算入できる額は出資額が上限と定められました。

例えば初年度に匿名組合損失が出資額を超えて発生した場合でも、超過部分は当期には損金計上できず、将来その案件で利益が出た時に相殺する(繰越控除する)形になります。このため、JOLCOでは初年度の損金算入割合は出資額程度に収まるよう設計されるのが一般的です。

また法人税法上、匿名組合損失以外にも一定の制限(例えば金利の控除制限やリース取引に係る細目規定)があるため、具体的な節税効果は各社の状況によって異なります。税効果の試算にあたっては税理士等専門家の確認が推奨されます。

出口戦略と税務

繰延べた税金はリース期間終了時にまとめて顕在化します。売却益やオプション行使対価が益金(課税所得)となり、一時的に大きな利益計上・納税が発生します。このタイミングに、例えば減価償却費の大きな設備投資を予定するなど、計画的に相殺できると理想的です。

逆に言えば、出口時に繰延べた利益のみが突出すると結局納税が先送りされただけになってしまいます。したがってJOLCOを導入する際は、自社の中長期の利益見通しや将来の資金需要を踏まえ、繰延べた利益をどのように受け止めるかまで含めたシミュレーションが重要です。

法律のポイント:匿名組合スキームと金融商品取引法

JOLCOは商法の「匿名組合」を利用したスキームで、投資家の責任は出資額に限定されます。一方、金融商品取引法の規制対象でもあるため、登録業者から契約内容やリスクについて十分な説明を受ける必要があります。

匿名組合により、投資家の責任は原則「出資額」に限定

JOLCOは日本商法に規定された匿名組合契約を利用します。匿名組合出資者(投資家)は営業者(SPC)の営業に出資し、その営業から生じる利益配当を受ける一方、出資額を限度として責任を負うのが原則です。

営業者側は投資家に対し損益分配義務を負いますが、投資家は経営に表立って関与せず匿名性が保たれます。この枠組みにより、投資家はリース資産を直接保有せず間接的に権利を持つ形となります。ゆえに投資家は資産の所有者としてではなく匿名組合契約上の地位として権利を主張することになります。

匿名組合出資は流動性が低い反面、投資家の損失リスクは本来的に出資額までに制限されます(ただし前述のように追加出資契約がある場合は別途注意)。

第二種金融商品取引業の登録業者のみが取り扱い可能

匿名組合出資持分は金融商品取引法では「みなし有価証券」に該当し、第二種金融商品取引業の規制対象です。JOLCO商品を組成・販売する事業者は、内閣総理大臣の登録を受けた第二種金融商品取引業者として営業しなければなりません。

実際、本記事で紹介したようなオペレーティングリース組成各社(リース会社や商社系金融子会社など)は、金融商品取引業の登録番号を開示し協会に加入しています。投資家は商品提供者が適切な登録・許認可を有するか確認し、契約締結前交付書面や重要事項説明など所定の手続きを経て出資を行います。

また契約形態上、JOLCO出資は一口あたりの金額も大きく設定される(数千万円単位の最低出資額が一般的)ため、不特定多数の個人投資家が気軽に買える商品ではなく、主に一定の資金力を持つ法人顧客向けに私募形式で提供されます。勧誘・販売時には適合性の原則に則り、投資家の財務状況や知識に照らして適切な商品提供が行われます。

契約前に重要事項説明書などの確認が必須

JOLCO契約には、リース期間、リース料、コールオプションの行使条件・価格、オプション非行使時の資産処分方法、保険や担保の手当、レンダー(金融機関)の優先権など、複雑な条項が含まれます。特にコールオプション条件は投資家のリスクテイク範囲を決定づけます。

例えば「オプション行使価格=ローン残高+優先リターン」のように設定されるのが通常ですが、その水準が妥当か、行使期限や通知方法に不利な点がないか等を確認する必要があります。また税務上の前提(減価償却方法や税法適用見込)も契約や開示資料に明示されますので、専門家の助言を得つつ読み解くことが重要です。

JOLCOはどのような資産に活用されている?

JOLCOは主に航空機リースを中心に実績を積み重ねてきましたが、船舶やコンテナなど他の大型資産分野にも応用されています。ここでは、公表されている範囲でいくつかの導入事例を紹介します。

航空機リース:大手航空会社の新造機調達ファイナンス

数多くの航空機ファイナンスにJOLCOが活用されています。例えばルフトハンザドイツ航空のA350-900型機やKLMオランダ航空のB787-10型機のリース案件では、日本の投資家がJOLCOスキームを通じて出資参加した事例があります。航空会社にとっては実質的な自社買い取りオプション付きリースとなるため、新造機の調達に際してJOLCOを活用するケースが増えています。

船舶・コンテナリース:大手海運会社の輸送資産ファイナンス

海運業界でもJOLCOスキームが利用されています。例として、ハパグロイド社のコンテナ船(TaymaExpress号)のファイナンスでJOLCOが組成されたケースや、CMA-CGM社向けのコンテナボックス投資へのJOLCO適用例があります。これらは航空機に次いで高額な輸送資産であり、減価償却による節税メリットを求める日本の投資家ニーズと、資産調達コストを抑えたい海外事業者のニーズが合致した事例と言えるでしょう。

国内事業への応用:太陽光発電などへの展開も模索段階

国内の太陽光発電設備や大型機械設備に対して、JOL/JOLCO類似のスキーム(匿名組合を用いたオペレーティングリース)を適用しようという動きもあります。ただし航空機ほど中古市場が確立していない資産では残価リスク評価が難しく、また減価償却期間の問題もあるため、現在のところ主流はやはり輸送用資産です。オペレーティングリースの発展形として、不動産や他のインフラ資産への展開も模索されていますが、それぞれ法制度や市場環境の検討課題があります。

よくある質問(FAQ)

この記事のまとめ

JOLCOは減価償却費を活用し最大70〜80%の損金算入が可能な節税投資スキームであり、コールオプションによる元本回収の確実性も備えています。ただし、借り手破綻時の残価リスクや為替変動リスク、2005年以降の税制改正による損金算入制限など、注意すべきポイントも明確に存在します。

導入時には、節税効果だけに目を奪われることなく、リスクシナリオや出口戦略までをしっかりとシミュレーションし、税務・法務の専門家に具体的に相談することが重要です。

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日本型オペレーティングリース(JOLCO)

日本型オペレーティングリース(JOLCO)は、主に飛行機や船舶などの大型設備を対象に、日本のリース会社がこうした高額な資産を海外の利用者にリース(賃貸)する際に用いるスキームです。日本の機体を日本円で購入し、それを海外の航空会社などに賃貸し、リース料を通じて収益を得る構造です。 リース満了後には、海外利用者が資産を買い取るケースや、再リース、日本国内に戻すなどの選択が可能です。投資家やリース会社にとっては、長期的な安定収益や為替ヘッジの効果が期待できる反面、資産の減価償却や為替変動リスクなども伴うため、仕組みの詳細をよく理解することが重要です。

JOL(ジョル)

JOLは、2021年に登場した「Jolofcoin(ジョロフコイン)」という名称の仮想通貨で、独自のブロックチェーン上でProof of Work(PoW)方式により運用されています。Jolofcoinは、StellarやEthereumのような既存ネットワークに依存しない独立性が高い設計で、主に西アフリカでの通貨代替や金融包摂を目的に開発されました。最大供給量は約13.4億JOLと決められ、その名にもある通り、アフリカの人口(2020年時点:約13.4億人)に合わせたトークン設計が特徴です。市場流通量は報告上ほぼゼロで、現状は流動性が非常に低く、価格は「実質取引なし・ほぼ0ドル」という状態が続いています。ネットワークにはデスクトップやウェブ、モバイル向けウォレットが存在し、マイニングプールやブロックチェーンエクスプローラーも整備されています。 ただし、価格や流動性だけでなく、プロジェクトそのものが成熟段階にあるかどうかは不透明であり、投資対象として検討する際は技術・開発状況や流通エコシステムを慎重に確認することが重要です。

レッシー(Lessee)

レッシーとは、リース契約において物件を借りる側、すなわち「借手」を意味します。企業が設備や機器などを購入せずにリース会社などから一定期間借りる場合、この企業がレッシーとなります。レッシーは契約期間中、リース料を支払うことで物件を使用でき、その間の保守・管理や固定資産税などの責任範囲は契約によって異なります。 ファイナンス・リースであれば、実質的に資産を所有しているのと同様に扱われ、貸借対照表にリース資産と負債を計上する必要があります。オペレーティング・リースであれば、使用権の範囲内で費用として処理されるケースもあります。資産運用においては、資金を固定資産に縛らず柔軟な設備投資を可能にする手段として重要な選択肢となります。

コールオプション

コールオプションとは、「ある資産を、将来のあらかじめ決められた価格(行使価格)で購入することができる権利」のことを指します。これは金融派生商品(デリバティブ)の一種で、主に株式や指数などを対象に取引されます。 この権利は「オプション(選択権)」であり、権利を買った側(買い手)は、将来のある時点でその権利を行使するかどうかを自由に決めることができます。一方で、売り手は買い手が行使を望んだ場合、必ず応じなければなりません。なお、権利を買うためには「プレミアム」と呼ばれるオプション料を支払う必要があります。 たとえば、ある株式が現在100円で取引されているとします。このとき、1か月後にその株を100円で買えるコールオプションを10円のプレミアムで購入したとしましょう。1か月後、もしその株価が150円に上がっていれば、コールオプションを行使することで100円で買い、すぐに市場で150円で売ることで、差額の50円が利益となります。ここからプレミアムの10円を差し引けば、最終的な利益は40円となります。 一方で、もし1か月後に株価が90円に下がっていた場合、その株をわざわざ100円で買う意味はないため、コールオプションは行使されず、買い手は10円のプレミアムを失うだけで済みます。このように、コールオプションの最大損失はプレミアムに限定される一方で、株価が大きく上昇すれば利益は大きくなり得るため、リスク限定・リターン無限大の投資手法とされます。 資産運用の観点から見ると、コールオプションは次のような活用法があります。 まず、「値上がりが見込まれる銘柄に対し、小額で投資したい」場合に有効です。実際に株を購入せず、オプションの形でその値上がり分を狙うことができます。また、すでに株を保有している場合、その株に対してコールオプションを売ることで、追加の収益を得る「カバードコール戦略」などもあります。 ただし、オプションは満期(期限)がある商品であり、時間の経過とともに価値が減少する「タイムディケイ」という特性も持っています。また、価格は原資産の価格だけでなく、市場の変動性(ボラティリティ)、金利、残存期間など様々な要因によって決まるため、仕組みを理解せずに取引を行うと、思わぬ損失を被る可能性もあります。 したがって、コールオプションを活用する際は、まずはその基本的な仕組みやリスク特性をしっかりと理解したうえで、少額から始める、シミュレーションで練習するなど、段階的なアプローチが重要です。 コールオプションは、資産運用の幅を広げる有効な手段の一つです。株式や投資信託などの伝統的な商品に加え、このようなオプション取引を適切に活用することで、より柔軟で戦略的なポートフォリオ構築が可能になります。

匿名組合(TK投資)

匿名組合(TK投資)は、事業者が資金を集めるために使う仕組みの一つで、投資家が出資をしても経営には関与せず、利益の分配のみを受け取る形の契約です。投資家は「匿名組合員」として名前を表に出さずに出資し、出資先の事業が成功すれば利益を受け取りますが、損失が出た場合には出資金の範囲内で損をします。 この仕組みは不動産や飲食店、ソーシャルレンディングなどでよく利用されており、投資家は経営リスクを負わずに事業の収益をシェアすることができます。ただし、元本保証はなく、情報開示も限定的な場合があるため、内容をよく理解したうえで投資判断をすることが大切です。

SPC(特別目的会社)

SPC(特別目的会社)とは、ある特定の事業や取引だけを行うために設立される会社のことをいいます。主に資産の流動化や証券化など、金融取引を効率的かつリスクを限定して行う目的で使われます。たとえば、不動産やローンなどの資産を切り出して、SPCに移してから証券化することで、投資家がその資産に対して投資できるようにする仕組みが一般的です。SPCは、通常の事業会社とは異なり、活動内容が限定されており、倒産リスクを本体企業から切り離す役割も果たします。これにより、投資家や関係者がより安心して取引に参加できるようになります。資産運用や金融商品の構造を理解するうえで、非常に重要な概念です。

減価償却

減価償却とは、固定資産の購入価格をその使用可能年数にわたって経済的に分配する会計処理の方法です。企業が機械や建物、車両などの固定資産を購入した際に、これらの資産は使用することで徐々に価値を失います。減価償却を行うことで、資産のコストをその寿命にわたって費用として計上し、その結果として企業の財務報告が実態に即したものになることを目指します。 減価償却には様々な方法がありますが、一般的なものに直線法、定率法、数字和法があります。直線法はもっとも単純で、資産の耐用年数にわたって均等に費用を計上します。定率法は残存価値を基に毎年一定の割合で費用を計上し、数字和法では耐用年数の初年度に最も多くの費用を計上し、年数が経過するにつれてその額を減らしていきます。 減価償却は税務上も重要で、企業は減価償却費を経費として計上することで課税所得を減少させることができます。このため、適切な減価償却方法の選択と計算は、企業の税負担の管理にも直接関連しています。

定率法

定率法とは、固定資産の減価償却を計算する方法の一つで、毎年一定の償却率を資産の帳簿価額(残存価額を引いた取得価額ではなく、毎年の残高)にかけて費用を計上する方式です。この方法では、初年度に最も多くの償却費を計上し、年を追うごとに徐々に償却額が少なくなるという特徴があります。これは、資産の価値が使用初期に急激に減少すると見なす考え方に基づいています。 たとえば、パソコンや車両など使用頻度が高く陳腐化しやすい資産に適用されることが多く、企業の損益において早期に費用を反映させる効果があります。会計上または税務上の減価償却方法の選択肢の一つとして、定額法とともによく使われています。

損金算入

損金算入とは、企業が支払った経費のうち、税務上の所得計算において課税対象から控除できる金額のことです。例えば、事業活動に必要な経費や接待交際費の一部は損金算入の対象となります。損金算入により、企業の課税所得が減少し、納める法人税が軽減されます。

課税繰延

課税繰延とは、本来なら利益が出た時点で支払うべき税金の負担を、制度や仕組みによって将来に先送りできるしくみです。代表例には、確定拠出年金(iDeCo・企業型DC)や個人年金保険、不動産の減価償却、事業用資産の買換え特例などがあり、運用中の利益に税金がかからないことで、資産を効率よく成長させることができます。 また、株式や投資信託の含み益についても、売却するまでは課税されないため、制度によらず**結果的に繰延効果が生じるケース**もあります。ただしこれらは税制上の特例ではなく、一般的な課税のタイミングに基づくものです。 課税繰延を活用することで、複利効果を最大限に引き出しつつ、将来の税負担をコントロールすることが可能になります。ただし、いずれ課税される前提で、出口戦略を意識した計画的な運用が求められます。

ノンリコースローン

ノンリコースローンとは、借入者が返済不能になった場合でも、貸し手が担保物件以外の資産に対して返済を請求できないタイプの融資のことです。つまり、返済の責任は担保に限定されており、万が一ローンを返せなくなっても、借入者の他の財産には影響が及ばない仕組みです。 このようなローンは主に不動産投資やプロジェクトファイナンスなどで用いられ、投資家にとってはリスク限定型の資金調達手段とされています。一方、貸し手側にとっては回収リスクが高まるため、通常は担保評価を厳しく行い、金利もリコースローンに比べて高めに設定される傾向があります。資産運用においては、リスクとリターンをどう分配するかという視点から重要な意味を持つローン形態です。

残価リスク

残価リスクとは、リースやローンなどの契約終了時において、対象資産の市場価値(残価)が当初見積もっていた金額を下回る可能性に伴うリスクのことです。たとえば、自動車のリース契約において、契約終了後に車両を再販または返却する際、予想よりも価値が低ければ、その差額は貸し手や保証者が負担することになります。 企業が設備投資でリースを活用する場合にも、リース会社が引き取った機械などの価値が下がっていれば損失が生じるため、リース料にこのリスクが反映されることがあります。残価リスクは、資産の陳腐化スピードや市場変動、技術革新、利用状況などに左右されるため、金融・投資判断において注意すべき評価要素の一つです。

信用リスク(クレジットリスク)

信用リスクとは、貸し付けた資金や投資した債券について、契約どおりに元本や利息の支払いを受けられなくなる可能性を指します。具体的には、(1)企業の倒産や国家の債務不履行(いわゆるデフォルト)、(2)利払いや元本返済の遅延、(3)返済条件の不利な変更(債務再編=デット・リストラクチャリング)などが該当します。これらはいずれも投資元本の毀損や収益の減少につながるため、信用リスクの管理は債券投資の基礎として非常に重要です。 この信用リスクを定量的に評価する手段のひとつが、格付会社による信用格付けです。格付は通常、AAA(最上位)からD(デフォルト)までの等級で示され、投資家にとってのリスク水準をわかりやすく表します。たとえば、BBB格付けの5年債であれば、過去の統計に基づく累積デフォルト率はおおよそ1.5%前後とされています(S&Pグローバルのデータより)。ただし、格付はあくまで過去の情報に基づいた「静的な指標」であり、市場環境の急変に即応しにくい側面があります。 そのため、市場ではよりリアルタイムなリスク指標として、同年限の国債利回りとの差であるクレジットスプレッドが重視されます。これは「市場に織り込まれた信用リスク」として機能し、スプレッドが拡大している局面では、投資家がより高いリスクプレミアムを求めていることを意味します。さらに、クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)の保険料率は、債務不履行リスクに加え、流動性やマクロ経済環境を反映した即時性の高い指標として、機関投資家の間で広く活用されています。 こうしたリスクに備えるうえでの基本は、ポートフォリオ全体の分散です。業種や地域、格付けの異なる債券を組み合わせることで、特定の発行体の信用悪化がポートフォリオ全体に与える影響を抑えることができます。なかでも、ハイイールド債や新興国債は高利回りで魅力的に見える一方で、信用力が低いため、景気後退時などには価格が大きく下落するリスクを抱えています。リスクを抑えたい局面では、投資適格債へのシフトやデュレーションの短縮、さらにCDSなどを活用した部分的なヘッジといった対策が有効です。 投資判断においては、「高い利回りは信用リスクの対価である」という原則を常に意識する必要があります。期待されるリターンが、想定される損失(デフォルト確率×損失率)や価格変動リスクに見合っているかどうか。こうした視点で冷静に比較検討を行うことが、長期的に安定した債券運用につながる第一歩となります。

為替リスク

為替リスクとは、異なる通貨間での為替レートの変動により、外貨建て資産の価値が変動し、損失が生じる可能性のあるリスクを指します。 たとえば、日本円で生活している投資家が米ドル建ての株式や債券に投資した場合、最終的なリターンは円とドルの為替レートに大きく左右されます。仮に投資先の価格が変わらなくても、円高が進むと、日本円に換算した際の資産価値が目減りしてしまうことがあります。反対に、円安が進めば、為替差益によって収益が増える場合もあります。 為替リスクは、外国株式、外貨建て債券、海外不動産、グローバルファンドなど、外貨に関わるすべての資産に存在する基本的なリスクです。 対策としては、為替ヘッジ付きの商品を選ぶ、複数の通貨や地域に分散して投資する、長期的な視点で資産を保有するなどの方法があります。海外資産に投資する際は、リターンだけでなく、為替リスクの存在も十分に理解しておくことが大切です。

流動性リスク

流動性リスクとは、資産を売却したいときに市場で買い手が見つからず、希望する価格で売却できないリスクのことを指します。特に市場が混乱した場合や、取引量の少ない資産では、このリスクが顕著になります。例えば、不動産や未上場株式、流動性の低い債券などは、売却に時間がかかることが多く、想定よりも低い価格での取引を余儀なくされる場合があります。金融機関や企業にとっては、必要な資金を調達できずに支払いが滞る可能性があることを意味し、経済危機や市場の急激な変動時には特に注意が必要です。投資ポートフォリオを構築する際には、資産の換金しやすさを考慮し、現金や流動性の高い資産とのバランスを取ることが重要とされます。

みなし有価証券

みなし有価証券とは、法律上は有価証券とは明記されていないものの、実質的に有価証券と同様の性質を持ち、金融商品取引法などの規制対象となる金融商品を指します。たとえば、合同会社の社員権や匿名組合出資持分などがこれに該当し、投資家から資金を集めて運用する仕組みでありながら、通常の株式や債券のように証券化されていないケースです。 こうした金融商品は、有価証券として登録や開示義務を免れる目的で使われることがあるため、投資家保護の観点から、金融庁などの監督当局は「みなし」として規制対象に含めています。これにより、詐欺的スキームや情報非対称性のリスクを低減し、公正な投資環境を整える役割を果たしています。

第2種金融商品取引業

第2種金融商品取引業とは、金融商品取引法に基づく金融商品取引業の区分の一つで、主に未公開ファンド(私募ファンド)や信託受益権、集団投資スキーム持分などの、やや専門性の高い金融商品を扱う業者を指します。第1種金融商品取引業が株式や公社債といった一般的な有価証券を取り扱うのに対し、第2種はより限定された市場向けの商品を扱うことが特徴です。 この業務を行うには、金融庁や財務局への登録が義務づけられており、適切な情報開示、商品説明、リスクの通知、顧客との契約管理など、一定のルールに則って運営する必要があります。第2種の商品は複雑でリスクも高めであるため、金融庁は販売方法や対象顧客の適格性についても特に厳しく監督しています。 個人投資家にとっては馴染みが薄い場合もありますが、高利回りをうたう商品や限定販売型の金融商品などでこの業種の関与がある場合は、業者が第2種の登録を持っているかを確認することが、リスク管理の第一歩になります。

IRR(Internal Rate of Return)

IRRとは、投資によって得られる将来のキャッシュフローを現在価値に割り引いたとき、その合計が初期投資額と等しくなる割引率のことを指します。日本語では「内部収益率」とも呼ばれ、投資の収益性を評価する代表的な指標の一つです。この指標が高ければ高いほど、その投資案件は高い利回りが見込めるとされます。 たとえば、不動産投資やベンチャーキャピタルなど、長期間にわたるキャッシュフローが見込まれる事業では、IRRを基準に投資判断が行われることがあります。IRRが資本コスト(期待利回り)を上回る場合、その投資は価値があると判断されます。ただし、キャッシュフローの変動が大きいとIRRが複数存在したり、直感に反する結果になることもあるため、NPV(正味現在価値)など他の指標と併用することが望ましいです。

出口戦略

出口戦略とは、投資を始めたあとに、いつ、どのようにして投資を終えるか、つまり資金を回収するかをあらかじめ考えておく計画のことです。投資は始めること以上に、終わらせ方が重要になる場面があります。 たとえば、株式をいつ売却するか、不動産をいつ手放すか、または事業に出資したお金をどのタイミングで回収するかなどが該当します。市場が好調なときに利益を確定するのか、損失を小さく抑えるために早めに撤退するのかといった判断も含まれます。投資初心者の方でも、感情に流されずに冷静に判断できるように、事前に出口戦略を立てておくことが大切です。

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