厚生年金と社会保険の違いを教えてください
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2025/09/16 08:44
男性
50代
厚生年金と社会保険はよく一緒に語られることが多いですが、実際にはどのように異なる制度なのでしょうか?どちらも給与から天引きされている印象はありますが、仕組みや役割が重なる部分もあれば違う部分もあると思いますので教えてください。
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
結論から言うと、厚生年金は「社会保険」を構成する制度の一つです。社会保険は狭い意味では「健康保険(+40~64歳は介護保険)と厚生年金保険」の総称を指し、広い意味では雇用保険や労災保険まで含めて呼ばれることもあります。この用語の使われ方の違いが、混乱を招きやすいポイントです。
カバーするリスクの違いは明確です。厚生年金は老後・障害・死亡に備えた長期的な所得補償を担います。一方で、健康保険は病気やけが、出産などに伴う医療費や短期的な所得補償を担い、介護保険は要介護となったときのサービス費用を支えます。つまり、厚生年金は長期の生活保障、健康・介護保険は医療や介護費用への支援という役割分担になっています。
加入対象は、会社員や公務員などの被用者です。正社員はもちろん、一定の条件を満たせばパートやアルバイトも対象になります。一方、自営業やフリーランスは厚生年金や健康保険の対象外で、国民年金と国民健康保険に加入します。転職や退職時には資格の切り替えが必要になるため、手続きに注意が必要です。
保険料の仕組みも重要です。厚生年金や健康保険(介護保険を含む)は、給与や賞与に所定の保険料率をかけ、会社と従業員が折半して負担します。給与明細には「健康保険」「厚生年金」「介護保険」などとして天引きされており、社会保険料という名称でまとめて表示されることもあります。
家計への影響という点では、厚生年金に加入していると老後の年金額が国民年金だけの人よりも多くなります。また、健康保険には「被扶養者」制度があり、条件を満たせば家族が保険料負担なしで医療を受けられます。年金面では、厚生年金加入者の配偶者が国民年金の第3号被保険者となり、将来の基礎年金を受け取れる仕組みがあるのも特徴です。
実務的には、まず自分がどの制度に加入しているのかを把握することが大切です。その上で、給与明細で保険料の内訳や標準報酬月額を確認し、扶養家族の扱いや退職・転職時の手続きに注意しましょう。資産形成の観点では、会社員は厚生年金を土台に、企業年金・iDeCo・NISAなどを活用して老後資金を積み上げると安心です。
まとめると、「厚生年金は社会保険の一部であり、年金を担う制度」「社会保険は健康・介護・年金の総称」という位置づけを理解することが重要です。加入条件や給付内容、保険料の仕組みを知ることで、家計の見通しや老後の準備がより明確になります。
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社会保険
社会保険とは、国民の生活を支えるために設けられた公的な保険制度の総称で、健康保険、厚生年金保険、雇用保険、介護保険などが含まれます。労働者や事業主が保険料を負担し、病気や高齢による収入減少、失業時の経済的支援を受けることができます。社会全体でリスクを分担し、生活の安定を図る仕組みです。 また、社会保険は万が一の備えとして機能し、資産運用においては「公的保障の不足分をどのように補うか」を考える前提となる存在です。
厚生年金
厚生年金とは、会社員や公務員などの給与所得者が加入する公的年金制度で、国民年金(基礎年金)に上乗せして支給される「2階建て構造」の年金制度の一部です。厚生年金に加入している人は、基礎年金に加えて、収入に応じた保険料を支払い、将来はその分に応じた年金額を受け取ることができます。 保険料は労使折半で、勤務先と本人がそれぞれ負担します。原則として70歳未満の従業員が対象で、加入・脱退や保険料の納付、記録管理は日本年金機構が行っています。老後の年金だけでなく、障害年金や遺族年金なども含む包括的な保障があり、給与収入がある人にとっては、生活保障の中心となる制度です。
健康保険
健康保険とは、病気やけが、出産などにかかった医療費の自己負担を軽減するための公的な保険制度です。日本では「国民皆保険制度」が採用されており、すべての人が何らかの健康保険に加入する仕組みになっています。 会社員や公務員などは、勤務先を通じて「被用者保険」に加入し、自営業者や無職の人は市区町村が運営する「国民健康保険」に加入します。保険料は収入などに応じて決まり、原則として医療費の自己負担は3割で済みます。また、扶養されている家族(被扶養者)も一定の条件を満たせば保険の対象となり、個別に保険料を支払わなくても医療サービスを受けられる仕組みになっています。健康保険は日常生活の安心を支える基本的な社会保障制度のひとつです。
介護保険
介護保険とは、将来介護が必要になったときに備えるための保険で、民間の保険会社が提供している商品です。公的介護保険制度とは別に、要介護・要支援と認定された場合に、一時金や年金形式で保険金を受け取れるのが特徴です。 この保険の目的は、公的制度だけではまかないきれない介護費用を補い、自分自身や家族の経済的な負担を軽減することにあります。 特に高齢化が進む現代社会において、老後の安心を支える備えとして注目されている保険のひとつです。 なお、保険の保障内容や保険金の受け取り条件は商品ごとに大きく異なります。加入を検討する際には、補償の範囲や条件をしっかり確認することが重要です。
被扶養者
被扶養者とは、健康保険に加入している人(被保険者)に生活の面で養われていて、自分では保険料を払う必要がない家族のことを指します。 一般的には、配偶者、子ども、親などが該当しますが、その人の年収が一定額以下であることなど、いくつかの条件を満たす必要があります。たとえば、専業主婦(または主夫)や収入の少ない学生の子どもなどが典型的な例です。 被扶養者は、自分で健康保険に加入していなくても、扶養している被保険者の健康保険を通じて医療を受けることができ、医療費の一部負担で済みます。 この仕組みによって、家族全体の保険料負担が軽減されるメリットがあります。ただし、就職などで収入が増えた場合には扶養から外れ、自分自身で保険に加入する必要があります。
第3号被保険者
第3号被保険者とは、日本の公的年金制度において、20歳以上60歳未満で会社員や公務員の配偶者(主に専業主婦・主夫など)として扶養されている人を指します。具体的には、第2号被保険者(厚生年金に加入している人)に扶養されている配偶者で、自分自身は収入が一定額以下で厚生年金などに加入していない人が対象です。 この制度の特徴は、自ら保険料を納めなくても、国民年金(基礎年金)の加入者として扱われ、将来的に年金を受け取る権利がある点です。制度的には、配偶者の厚生年金保険料に含まれる形で保険料が負担されている仕組みです。結婚や就労状況の変化によって資格を失うこともあるため、制度内容の正しい理解が重要です。年金やライフプランを考えるうえで、特に家庭内の役割分担や働き方に関連して注目される制度です。