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企業価値と時価総額、株主価値の違いはなんですか?

企業価値と時価総額、株主価値の違いはなんですか?

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2025/08/07 08:00


男性

40代

question

企業価値・時価総額・株主価値の違いがよくわかりません。たとえば企業価値は借金も含むと聞きますが、時価総額や株主価値とは何がどう違うのでしょうか?投資やM&Aでの使われ方も含めて、簡単に教えてください。


回答

佐々木 辰

株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長

企業価値(エンタープライズ・バリュー/EV)は、事業そのものが生み出す価値を債権者と株主の両方の観点から捉えた指標です。具体的には 「時価総額(株主が保有する株式の市場価値)」に 「有利子負債」を加え、手元の余剰資金(現預金など)を差し引いて算出します。買収を考える側は、株式を取得するだけでなく負債も引き受けるため、企業価値で取引価格を検討します。

時価総額は、発行済み株式数に株価を掛けて得られる「株主が保有する持分の時価」です。株主視点ではもっとも直感的な評価額であり、株価変動に応じて日々上下しますが、負債や現金の多寡は考慮されません。したがって、同じ時価総額でも負債が多い企業ほど企業価値は大きくなります。

株主価値は、広義には株主が将来受け取る配当やキャピタルゲインの現在価値を示し、狭義には時価総額を指す場合もあります。経営学的には「株主価値を高める」とは、配当・自社株買い・投資戦略などを通じて株主リターンを最大化することを意味しますが、評価の際は時価総額を便宜的な目安に用いるのが一般的です。

投資判断では、株価が企業価値(EV)に対して割安かどうかをEV/EBITDAなどのマルチプルで比較し、M&Aでは買収総額(EV)が対象企業のキャッシュフローで回収可能かをシミュレーションします。一方、株主還元策や資本コストは株主価値の議論に直結し、経営のKPIとして活用されます。こうした視点を区別すると、株式投資では主に時価総額や株主価値、企業買収や業界比較では企業価値が重視される理由が明確になります。

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企業価値

企業が将来生み出すキャッシュフローや利益、ブランド力、技術力、顧客基盤などを総合的に評価して算定される価値を指します。 M&Aや投資の意思決定では、ディスカウント・キャッシュ・フロー(DCF)などの手法を用いて将来の収益予測を現在価値に割り引いて見積もることが多いです。 企業価値は株主のみならず従業員や取引先、社会などのステークホルダーにも関わるため、近年はESG(環境・社会・ガバナンス)視点も加味される傾向があります。企業価値の向上を図る施策は、市場での信用力や株価形成にも大きく影響します。

時価総額

時価総額、株式時価総額とは、ある上場企業の株価に発行済株式数を掛けたものであり、企業価値や規模を評価する際の指標。 時価総額が大きいということは、業績だけではなく将来の成長に対する期待も大きいことを意味する。

有利子負債

有利子負債とは、利息を支払う義務がある借入金や社債などの負債のことを指します。企業が銀行からお金を借りたり、社債を発行して資金調達を行った場合、その借金には利息を支払う必要があり、これが有利子負債にあたります。資産運用の場面では、企業の財務の健全性を判断するために有利子負債の額や返済能力が注目されます。借金が多すぎる企業は、景気の悪化時に財務リスクが高まる可能性があるため、投資判断において注意が必要です。

キャピタルゲイン(売却益/譲渡所得)

キャピタルゲインとは、株式や不動産、投資信託などの資産を購入した価格よりも高く売却したことによって得られる利益のことです。一般的な経済用語としては「売却益」と呼ばれ、資産運用における収益のひとつとして広く使われています。日本の税法においては、このキャピタルゲインは「譲渡所得」として分類され、確定申告などで所得として扱われます。つまり、経済的な意味ではキャピタルゲインと譲渡所得は同様の概念を指しますが、前者が広義の利益、後者が課税対象としての所得という違いがあります。投資の成果を判断したり、税金を計算したりするうえで、両者の使われ方を正しく理解することが大切です。

EV/EBITDA(イーブイ・イービットディーエー)

EV/EBITDA(イーブイ・イービットディーエー)は、企業の価値を評価する際に使われる指標の一つで、企業の全体価値(EV=Enterprise Value)を、営業活動から得られるキャッシュフローの指標であるEBITDA(利払い・税引き・償却前利益)で割って算出されます。簡単に言えば、「企業の価値が稼ぐ力に対してどれくらい高いか(または安いか)」を示す比率です。 この指標は、業種や会計基準の違いによる影響を受けにくく、企業間の比較がしやすいのが特徴です。特にM&A(企業買収)や国際的な投資分析でよく使われており、PER(株価収益率)と並んで、企業の割安度を測るツールとして重視されています。数値が低ければ、企業価値に対して利益が大きく、割安とされる傾向があります。 初心者にとってはやや専門的に感じられるかもしれませんが、「企業がどれくらいの価値を持ち、どれだけ稼げているか」を判断するための有効な指標として、将来的に活用できる知識です。

マルチプル(multiple)

マルチプル(multiple)とは、企業の株価や企業価値が「どれだけ割安か、あるいは割高か」を評価するために使われる指標のことです。一般的には、株価や企業価値を、その企業の利益・売上・EBITDA(利払い・税引き・償却前利益)などと比較して算出される「倍率(比率)」を指します。 代表的なマルチプルの一つが「PER(株価収益率)」で、株価を1株あたりの利益(EPS)で割ることで求められます。PERが高いと「利益に対して株価が割高」、低いと「割安」と評価される傾向があります。 マルチプルは利益以外の指標を使って計算されることも多く、たとえば売上に対するP/S(株価売上高倍率)や、EBITDAに対するEV/EBITDA(企業価値倍率)などが代表例です。どのマルチプルを使うかは、業界の特性や企業のビジネスモデル、成長ステージによって異なります。 投資初心者にとっては、マルチプルは企業を「相対的に比較するためのものさし」として理解しておくと便利です。ただし、単に数字の高低を見るだけではなく、業界平均や過去水準、将来の成長性といった文脈を踏まえて判断することが大切です。マルチプルはあくまで投資判断の補助材料であり、他の情報と組み合わせて使うことが重要です。

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