金積立はやめとけと言われましたがなぜでしょうか?
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2025/07/31 08:17
男性
40代
最近金投資に関心があり、コツコツ積み立てる金積立を検討しています。しかし、知人に話したところ、金積立はやめたほうがいいといわれました。しかし理由がピンときませんでした。金投資をやめたほうがいい理由を教えて下さい。
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
金積立は「インフレヘッジになる安全資産」として人気がありますが、他の運用手段と比べたときに見落とされがちなデメリットがいくつかあります。資産運用初心者が金積立を検討する際に特に注意すべきポイントを、順を追って解説します。
まず大きなポイントは、コスト負担の重さです。金積立サービスでは、毎月の積立金額に対して1.5〜3%前後の手数料がかかる場合が多く、さらに年会費や口座管理料も発生することがあります。とくに小口の積立では、手数料の比率が高くなり、実質利回りを長期的に圧迫する恐れがあります。
次に、金にはインカムゲイン(利息や配当)が存在しない点も重要です。株式や債券のように保有しているだけで収益を生むわけではなく、利益は値上がり益(キャピタルゲイン)だけに依存します。そのため、金価格が横ばいの期間が長いと、資産運用効果が限定的になります。
また、価格変動リスクも見過ごせません。金は「安全資産」と言われますが、実際には市場環境によって大きく価格が動きます。たとえば、地政学リスクが高まると価格が急騰する一方で、緊張が和らげば急落することもあります。積立投資であっても、高値圏で長期的に積み立ててしまうとリターンが伸びにくくなります。
さらに、為替リスクも金積立に内在する要素です。日本で提供されている金積立サービスは円建て価格で表示されていますが、実際には「米ドル建ての金価格 × 円ドル為替レート」で価格が決まっています。つまり、円高になれば、金価格が上がっていても日本円ベースでは利益が出にくくなるということです。
税制面でも注意が必要です。金の売却益は譲渡所得として総合課税されるため、所得に応じた税率が適用されます。年間50万円の特別控除はあるものの、株式・投資信託のように損益通算やNISAのような非課税制度が使えないため、長期的には税コストで不利になることがあります。
加えて、流動性や保管の面でも制約があります。多くの積立サービスでは、一定量に達しないと現物の引き出しができず、引き出す際には手数料がかかることもあります。また、現物金を売却する場合は、買取業者とのやり取りや真贋チェックなどが必要となり、思ったより手間とコストがかかることがあります。
こうした理由から、「金積立はやめとけ」と言われることがあるのです。しかし、金にはインフレ耐性や有事の資産保全という側面もあり、全否定する必要はありません。重要なのは、全体の資産配分の中での位置づけです。たとえば、資産の5〜10%程度を目安に、低コストのETFなどを活用しながら分散投資の一部として取り入れるのが現実的です。
初心者の方は、まずNISAやiDeCoなどの制度を優先的に活用し、手数料や税制に配慮したうえで、自分の投資目的に合った使い方ができるかを見極めましょう。金積立を行うにしても、期待しすぎず、リスクとメリットを理解したうえで慎重に判断することが大切です。
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インカムゲイン(インカム)
インカムゲイン(インカム)とは、株式や債券、不動産などの資産を保有していることで定期的または継続的に得られる収益のことを指します。具体的には、株式の配当金、債券の利息、不動産の家賃収入などが代表的な例です。一方で、資産の売買差益から生まれるキャピタルゲインとは異なり、保有し続けることで一定のペースで収入を得る点が特徴です。 インカムゲインを重視する投資では、安定したキャッシュフローを得られることが大きな魅力となります。例えば、株式の配当金は企業の利益から支払われますが、企業の業績や配当方針に応じて増減があるため、定期的なチェックが必要です。債券の利息は発行体の信用力や金利情勢に大きく左右され、金利が上昇すると既存債券の価格が下落するリスクがあります。不動産投資では家賃収入がインカムゲインとなりますが、空室が続いたり修繕費がかさんだりするリスクがあるほか、売却時の価格も景気や立地に左右されるため、投資額の回収が遅れる可能性があります。 これらのリスクを考慮する一方で、インカムゲインには安定性というメリットがあります。資産を保有しているだけでも定期的に資金が手に入り、再投資や生活費に回すことで資産形成を円滑に進めやすい面があります。また、いざ急に資金が必要になった場合には、すぐに売却しなくても配当金や利息で一定の収入を得られる可能性があるため、心理的な安心感につながることもあります。 ただし、インカムゲインを得ようとするあまり、高配当や高利回りをうたう投資商品ばかりに偏ると、発行体の信用リスクや価格変動リスクが高まるケースも考えられます。特に、株式の配当は企業の業績が悪化すれば減配や無配となる恐れがあり、債券の場合でも発行体の破綻リスクや金利上昇リスクが存在します。不動産投資では物件管理の手間や費用が大きく、地方物件などでは買い手が少なく流動性リスクも高くなるため、分散投資の観点で他の資産とバランス良く組み合わせるのが望ましいでしょう。 総じて、インカムゲインは、投資から生まれる継続的な収益を得るための有力なアプローチです。特に、キャピタルゲインだけに頼らず、配当や利息、家賃収入などの定期的な収入源を得ることでリスクを分散しながら安定した資産運用を目指すことができます。ただし、投資対象の選定やリスク管理は欠かせないポイントであり、投資する資金やライフプラン、リスク許容度に応じて最適なバランスを見極める必要があります。
キャピタルゲイン(売却益/譲渡所得)
キャピタルゲインとは、株式や不動産、投資信託などの資産を購入した価格よりも高く売却したことによって得られる利益のことです。一般的な経済用語としては「売却益」と呼ばれ、資産運用における収益のひとつとして広く使われています。日本の税法においては、このキャピタルゲインは「譲渡所得」として分類され、確定申告などで所得として扱われます。つまり、経済的な意味ではキャピタルゲインと譲渡所得は同様の概念を指しますが、前者が広義の利益、後者が課税対象としての所得という違いがあります。投資の成果を判断したり、税金を計算したりするうえで、両者の使われ方を正しく理解することが大切です。
為替リスク
為替リスクとは、異なる通貨間での為替レートの変動により、外貨建て資産の価値が変動し、損失が生じる可能性のあるリスクを指します。 たとえば、日本円で生活している投資家が米ドル建ての株式や債券に投資した場合、最終的なリターンは円とドルの為替レートに大きく左右されます。仮に投資先の価格が変わらなくても、円高が進むと、日本円に換算した際の資産価値が目減りしてしまうことがあります。反対に、円安が進めば、為替差益によって収益が増える場合もあります。 為替リスクは、外国株式、外貨建て債券、海外不動産、グローバルファンドなど、外貨に関わるすべての資産に存在する基本的なリスクです。 対策としては、為替ヘッジ付きの商品を選ぶ、複数の通貨や地域に分散して投資する、長期的な視点で資産を保有するなどの方法があります。海外資産に投資する際は、リターンだけでなく、為替リスクの存在も十分に理解しておくことが大切です。
NISA
NISAとは、「少額投資非課税制度(Nippon Individual Saving Account)」の略称で、日本に住む個人が一定額までの投資について、配当金や売却益などにかかる税金が非課税になる制度です。通常、株式や投資信託などで得られる利益には約20%の税金がかかりますが、NISA口座を使えばその税金がかからず、効率的に資産形成を行うことができます。2024年からは新しいNISA制度が始まり、「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の2つを併用できる仕組みとなり、非課税期間も無期限化されました。年間の投資枠や口座の開設先は決められており、原則として1人1口座しか持てません。NISAは投資初心者にも利用しやすい制度として広く普及しており、長期的な資産形成を支援する国の税制優遇措置のひとつです。
インフレヘッジ
インフレヘッジとは、物価が上昇する「インフレーション」の影響から資産の価値を守るための対策や投資方法のことをいいます。インフレが進むと、お金の価値が下がり、同じ金額でも買えるモノやサービスの量が減ってしまいます。そうした状況でも資産の実質的な価値を保つために、物価と一緒に価値が上がりやすい資産、たとえば不動産や金(ゴールド)、インフレ連動債などに投資するのが一般的です。インフレヘッジは、将来のお金の価値が目減りするリスクに備えるための重要な考え方です。