国債の表面利率とはなんですか?どんな決め方をされますか?
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2025/08/06 08:16
男性
60代
国債の「表面利率(クーポン)」とは具体的にどのような意味でしょうか?また、日本国債においてはその表面利率はどのような基準やプロセスで決定されているのですか?市場金利との関係や、発行時の経済状況、財務省の裁量など、利率決定に影響を与える要素についても教えてください。
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
国債の「表面利率(クーポン)」というのは、その国債を持っていると毎年どれだけの利子(利息)を受け取れるかを示す数字です。たとえば、表面利率が2%の国債であれば、額面100円あたり年に2円の利子がもらえます(通常は年2回に分けて1円ずつ支払われます)。この金額は、国債を最後まで持っている限りずっと変わりません。
ただし、国債の値段は市場で日々動いています。そのため、購入価格によって実際の利回り(どれくらい得か)は変わります。たとえば、表面利率が2%でも、90円で買えたなら利回りはもっと高くなり、逆に105円で買えば利回りは下がります。これが「利回り」と「表面利率」の違いです。
日本の国債の表面利率は、財務省が国債を発行する直前の市場金利を見ながら、0.1%刻みで仮決めします。そのうえで、証券会社や銀行などが参加する入札で価格が決まり、それを見ながら最終的に利率を調整します。基本的には、新しく出す国債が「ちょうど額面100円前後で売れるように」利率を設定する仕組みになっています。利率が中途半端だと価格が大きく上下し、投資家が買いにくくなるためです。
入札の直前には「WI取引(発行日前取引)」と呼ばれる先物のような取引があり、ここで取引されている利回りが、実際の入札の目安になります。たとえば2025年7月には、2年満期の国債がWI市場で0.88%で取引されていたことを踏まえ、財務省は表面利率を0.9%と設定しました。
とはいえ、すべて市場任せというわけではありません。財務省は国債の発行量やスケジュールを調整して、市場にいっぺんに出しすぎないようにしたり、特定の期間の国債が足りなくならないように配慮したりしています。また、同じ利払いの仕組みでも、変動金利型や物価に連動するタイプの国債は、利率の決め方が少し異なります。
まとめると、表面利率は「発行時点の金利状況をそのまま反映した固定の利子率」であり、発行後はどれだけ世の中の金利が動いても変わりません。個人投資家にとっては、安定した利子収入がある一方で、市場金利の変化には価格や利回りで対応するという点を理解しておくことが大切です。
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関連する専門用語
国債
発行体が各国中央政府の債券を国債といいます。発行目的や利払い方式などで種類が分別されます。中央政府に資金需要が発生した際に、国債を発行して資金の調達を行うことがあります。 投資家は国債を購入することで、発行体である中央政府へ資金を提供し、その見返りとして半年に1回などのペースで、中央政府から利子を受け取ります。償還期限までに中央政府の財政が悪化するなど、債務が履行されない状況に陥らなければ、満期には額面どおりの金額が投資家へ償還される仕組みです。 国債には、固定利付国債、変動利付国債、物価連動国債などがあります。
表面利率
表面利率とは、債券にあらかじめ設定されている年あたりの利息の割合を指し、通常は額面金額に対して何パーセントの利息が支払われるかを示します。たとえば、額面が100万円で年に5万円の利息が支払われる債券なら、表面利率は「5%」となります。この利率は債券を発行する時点で決められ、満期まで変更されることはありません。投資家はこの利率を基に、定期的に利息を受け取ることができます。ただし、債券の市場価格が変動するため、購入価格に対する実際の利回り(YTM)とは異なる場合があります。資産運用においては、債券の収益性を考えるうえで、この表面利率を基本として他の指標とあわせて判断することが大切です。
市場金利
債券市場や銀行間取引で決定される金利のこと。市場金利が上昇すると、既発債の価格は下落し、逆に市場金利が低下すると債券価格は上昇する。物価連動債の価格にも影響を与える要因となる。
WI取引(発行日前取引)
WI取引(発行日前取引)とは、債券などが正式に発行される前の段階で、すでにその証券を売買できる仕組みのことです。正式な発行日よりも前に取引が成立するため、取引の受け渡しは実際の発行日以降になります。 この制度により、投資家は発行価格や市場の需給動向を見ながら柔軟に売買のタイミングを図ることができます。主に国債などで活用され、特に入札によって価格が決まる債券においては、発行後の市場価格を事前に予測する手段としても使われています。 ただし、実際の証券がまだ存在しない段階での取引であるため、信用リスクや価格変動リスクに注意する必要があります。
物価連動国債
物価連動国債は、元本を全国消費者物価指数(コアCPI)に連動させ、実質固定利率を調整後元本に掛けて利息を計算する国債です。たとえば表面利率0.2%の10年債なら、物価が2%上昇して元本が102円に増えれば利息も0.204円に増えます。逆にデフレが進んでも元本は額面100円を下回らないフロアが設けられており、元本毀損は限定的です。ただしCPIは公表にタイムラグがあり、発行から利払いまで概ね3か月遅れて反映されるため、急激なインフレ局面では追随がやや遅れます。 税制上は名目利息に加え、元本調整で増えた分も利子所得として課税されるため、実質利回りより手取り利回りが低くなる傾向があります。また日本の物価連動国債市場は発行量が少なく流動性が限られるため、価格が振れやすい点にも注意が必要です。 投資判断では、同じ年限の名目国債利回りとの差で算出するブレークイーブン・インフレ率を確認し、市場が織り込むインフレ期待と照らして割高・割安を見極めます。インフレヘッジの有力手段である一方、指数ラグや流動性、税務コストも踏まえ、ポートフォリオ全体の資産配分を検討することが大切です。
変動利付国債
市場金利の変動に応じて利率(クーポン)が変動する国債。一定期間ごとに利率が再設定され、金利上昇時には利払い額が増加するが、金利が低下すると利払い額も減少する。