ハイイールド債に投資可能なETFはどんなものがありますか?
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2025/09/08 09:09
男性
30代
ハイイールド債に投資できるETFについて知りたいです。米国や欧州など海外市場を中心に、分散投資できる商品があると聞きましたが、どのようなETFがあるのか教えていただけますか?
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
ハイイールド債とは、投資適格未満の格付けを持つ企業が発行する社債を指します。一般的に高い利回りが期待できますが、その分信用リスクや価格変動リスクも大きいという特徴があります。そのため、ETFを通じて分散投資を行うことで、個別銘柄に投資するよりもリスクを抑えながら利回りを狙うことができます。
代表的なハイイールド債ETFにはいくつかあります。
まず、米ドル建てのハイイールド社債に幅広く投資できる iShares iBoxx $ High Yield Corporate Bond ETF(HYG) は、流動性が高く、世界的に利用者が多い最大級のETFです。
次に、SPDR Bloomberg High Yield Bond ETF(JNK) は米国を中心としたハイイールド債に投資するETFで、HYGと並んで代表的な商品です。コストや流動性の点で比較対象にされやすいETFです。
また、Vanguard High Yield Corporate Fund(VWEHX/ETFではVWEHも関連) は、低コストで分散性が高いことが強みです。さらに、米ドル建てだけでなく、ユーロ建てのハイイールド債に投資できる iShares Euro High Yield Corporate Bond ETF のような欧州市場の商品もあります。為替や地域分散を意識する投資家にとっては選択肢のひとつです。
リスクについても押さえておくことが大切です。景気後退局面や金利上昇局面では価格が下落しやすく、特に信用力の低い発行体ではデフォルトリスクが高まります。一方で、利回りは通常の投資適格社債や国債よりも高いため、リスクを取ってリターンを狙いたい投資家には魅力的です。
初心者がハイイールド債ETFを利用する場合には、まず投資先がしっかりと分散されている大型ETFを選ぶことが重要です。また、為替リスクを理解すること、景気サイクルによる影響を意識することも欠かせません。ポートフォリオ全体のバランスを考え、その一部として組み入れるのが望ましいでしょう。
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ハイイールド債
ハイイールド債とは、投機的格付けに分類される債券のことであり、信用リスクが高い分、高い利回りを提供する債券である。ジャンク債とほぼ同義で使われるが、「ハイイールド債」という表現は投資戦略の観点から用いられることが多い。高リスク・高リターンの投資対象として、投資家は市場環境や発行体の信用力を慎重に分析する必要がある。景気拡大期には価格が上昇しやすいが、景気後退期には価格が急落する可能性もある。
投資適格
投資適格とは、信用格付け機関が企業や債券の信用力を評価する際に、一定以上の安全性があると認定された格付けを指す。S&Pの格付けではBBB-以上、ムーディーズではBaa3以上が投資適格とされる。これらの債券はデフォルトのリスクが低く、機関投資家を中心に安定的な投資対象とされる。一方で、投資適格債はリスクが低い分、利回りも低くなる傾向がある。金融市場では、投資適格と投機的格付けの境界を意識した投資判断が重要とされる。
信用リスク(クレジットリスク)
信用リスクとは、貸し付けた資金や投資した債券について、契約どおりに元本や利息の支払いを受けられなくなる可能性を指します。具体的には、(1)企業の倒産や国家の債務不履行(いわゆるデフォルト)、(2)利払いや元本返済の遅延、(3)返済条件の不利な変更(債務再編=デット・リストラクチャリング)などが該当します。これらはいずれも投資元本の毀損や収益の減少につながるため、信用リスクの管理は債券投資の基礎として非常に重要です。 この信用リスクを定量的に評価する手段のひとつが、格付会社による信用格付けです。格付は通常、AAA(最上位)からD(デフォルト)までの等級で示され、投資家にとってのリスク水準をわかりやすく表します。たとえば、BBB格付けの5年債であれば、過去の統計に基づく累積デフォルト率はおおよそ1.5%前後とされています(S&Pグローバルのデータより)。ただし、格付はあくまで過去の情報に基づいた「静的な指標」であり、市場環境の急変に即応しにくい側面があります。 そのため、市場ではよりリアルタイムなリスク指標として、同年限の国債利回りとの差であるクレジットスプレッドが重視されます。これは「市場に織り込まれた信用リスク」として機能し、スプレッドが拡大している局面では、投資家がより高いリスクプレミアムを求めていることを意味します。さらに、クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)の保険料率は、債務不履行リスクに加え、流動性やマクロ経済環境を反映した即時性の高い指標として、機関投資家の間で広く活用されています。 こうしたリスクに備えるうえでの基本は、ポートフォリオ全体の分散です。業種や地域、格付けの異なる債券を組み合わせることで、特定の発行体の信用悪化がポートフォリオ全体に与える影響を抑えることができます。なかでも、ハイイールド債や新興国債は高利回りで魅力的に見える一方で、信用力が低いため、景気後退時などには価格が大きく下落するリスクを抱えています。リスクを抑えたい局面では、投資適格債へのシフトやデュレーションの短縮、さらにCDSなどを活用した部分的なヘッジといった対策が有効です。 投資判断においては、「高い利回りは信用リスクの対価である」という原則を常に意識する必要があります。期待されるリターンが、想定される損失(デフォルト確率×損失率)や価格変動リスクに見合っているかどうか。こうした視点で冷静に比較検討を行うことが、長期的に安定した債券運用につながる第一歩となります。
債務不履行(デフォルト)
債務不履行(デフォルト)とは、企業や国などの債務者が、借入金や債券などの元本や利息の支払いを、契約どおりに履行できなくなる状態を指します。利払いの遅延や元本返済の停止が発生した時点で、デフォルトとみなされます。 債務不履行が発生すると、債券を保有している投資家は、予定されていた利息や元本の一部または全額を受け取れないリスクに直面し、損失を被る可能性があります。特に、国による債務不履行(ソブリン・デフォルト)は、為替市場や株式市場にも連鎖的な影響を与え、国際的な金融不安を引き起こす要因となることがあります。 また、支払いの一時的な遅延や手続上の不備によって形式的に契約違反が生じる「テクニカル・デフォルト」というケースも存在します。これは即時の経済的破綻を意味するわけではありませんが、発行体の信用力に対する警戒が強まるきっかけとなり得ます。 投資においては、こうしたデフォルトの可能性(デフォルトリスク)をあらかじめ評価し、債券の発行体の財務状況や格付、市場環境を踏まえてリスク管理を行うことが重要です。
為替リスク
為替リスクとは、異なる通貨間での為替レートの変動により、外貨建て資産の価値が変動し、損失が生じる可能性のあるリスクを指します。 たとえば、日本円で生活している投資家が米ドル建ての株式や債券に投資した場合、最終的なリターンは円とドルの為替レートに大きく左右されます。仮に投資先の価格が変わらなくても、円高が進むと、日本円に換算した際の資産価値が目減りしてしまうことがあります。反対に、円安が進めば、為替差益によって収益が増える場合もあります。 為替リスクは、外国株式、外貨建て債券、海外不動産、グローバルファンドなど、外貨に関わるすべての資産に存在する基本的なリスクです。 対策としては、為替ヘッジ付きの商品を選ぶ、複数の通貨や地域に分散して投資する、長期的な視点で資産を保有するなどの方法があります。海外資産に投資する際は、リターンだけでなく、為替リスクの存在も十分に理解しておくことが大切です。
景気サイクル(景気循環)
景気サイクル(景気循環)とは、経済が「好況(成長)→後退→不況→回復」といった段階を周期的に繰り返す現象のことです。 各局面では、企業の売上や利益、消費者の支出、雇用状況などが大きく変化します。たとえば、好況期には企業の投資や雇用が活発になり、消費も増えます。一方、不況期には企業の利益が減少し、失業率が上昇するなど経済全体が縮小傾向になります。 景気の動きは、中央銀行の金融政策(利上げ・利下げ)や、政府の財政政策(公共投資や減税など)にも大きな影響を与えます。政策は通常、景気を安定させる方向で調整されます。 また、景気サイクルは資産運用においても重要な判断材料となります。たとえば、回復期〜好況期には株式市場が上昇しやすく、後退期〜不況期には債券やディフェンシブ銘柄が注目されやすくなります。投資家は景気の局面を見極めながら、ポートフォリオを調整することが求められます。 景気サイクルの長さやタイミングは一定ではなく、外部要因(戦争、金融危機、パンデミックなど)によっても左右されますが、長期的にはこの波を繰り返す傾向があります。