iDeCo(イデコ)を60歳から始める場合、どんなデメリットがありますか?
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2025/10/27 09:46
男性
50代
60歳からiDeCo(イデコ)を始めようと考えていますが、老後資金を効率よく準備できるのか不安です。注意すべきデメリットがあれば具体的に知りたいです。
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
60歳からiDeCoを始める場合の最大のデメリットは、拠出できる期間が短く、受け取りも65歳以降にしか開始できない点です。制度上、加入期間が10年以上ないと60歳から受給できず、60歳で初めて加入した場合は最短でも65歳からしか引き出せません。そのため、老後資金を早く使いたい人には向きません。
さらに、拠出期間が5年程度に限られるため、iDeCoの本来のメリットである「長期積立・複利効果」を十分に活かせません。短期での運用は相場の変動に大きく左右されやすく、株式などのリスク資産で損をするリスクも相対的に高くなります。一方で、元本確保型商品を選べばリスクは抑えられますが、運用益もほとんど期待できません。
加入要件にも注意が必要です。60歳以降にiDeCoへ加入するには、公的年金の被保険者資格が必要です。会社員として厚生年金に加入していれば問題ありませんが、退職して国民年金の任意加入をしていない人は、そのままでは加入できません。
手数料の負担も無視できません。iDeCoは加入時に約2,800円、運用期間中も毎月171円程度の固定手数料が発生します。短期間しか積み立てられない場合、手数料が運用益を上回ることもあり、コスト効率が悪くなります。
また、節税効果も小さくなりやすいです。掛金は全額所得控除になりますが、60歳時点で退職している場合や所得が少ない場合には控除による税金の減額効果が限定的です。
現役時代に比べて「節税メリット」が感じにくくなります。さらに、受け取り時に退職所得控除や公的年金控除を利用する際、退職金などと同じ年に受け取ると控除額が減り、課税されるリスクもあります。
もう一つのデメリットは、流動性の低さです。iDeCoの資産は原則として受給開始年齢に達するまで引き出せません。60~64歳の間に生活費や医療費が必要になっても、iDeCoの資金を取り崩すことはできません。このため、iDeCo以外に一定の預貯金や流動資産を確保しておくことが重要です。
総じて、60歳からのiDeCoは「節税メリット」「運用効果」「流動性」の3点で制約が大きい制度です。ただし、65歳まで安定した収入があり、所得控除を活かせる人や、退職金の受け取り時期をずらして税負担を抑えられる人にとっては、老後資金の積み増し手段として有効な選択肢になり得ます。
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関連する専門用語
iDeCo(イデコ/個人型確定拠出年金)
iDeCo(イデコ)とは、個人型確定拠出年金の愛称で、老後の資金を作るための私的年金制度です。20歳以上65歳未満の人が加入でき、掛け金は65歳まで拠出可能。60歳まで原則引き出せません。 加入者は毎月の掛け金を決めて積み立て、選んだ金融商品で長期運用し、60歳以降に年金または一時金として受け取ります。加入には金融機関選択、口座開設、申込書類提出などの手続きが必要です。 投資信託や定期預金、生命保険などの金融商品で運用し、税制優遇を受けられます。積立時は掛金が全額所得控除の対象となり、運用時は運用益が非課税、受取時も一定額が非課税になるなどのメリットがあります。 一方で、証券口座と異なり各種手数料がかかること、途中引き出しが原則できない、というデメリットもあります。
公的年金
公的年金には「国民年金」と「厚生年金」の2種類があり、高齢者や障害者、遺族が生活を支えるための制度です。この制度は、現役で働く人たちが納めた保険料をもとに、年金受給者に支給する「世代間扶養」の仕組みで成り立っています。 国民年金は、日本に住む20歳以上60歳未満のすべての人が加入する制度です。保険料を一定期間(原則10年以上)納めると、65歳から老齢基礎年金を受け取ることができます。また、障害を負った場合や生計を支える人が亡くなった場合には、障害基礎年金や遺族基礎年金を受け取ることができます。 厚生年金は、会社員や公務員が対象の制度で、国民年金に追加で加入する形になります。保険料は給与に応じて決まり、支払った分に応じて将来の年金額も増えます。そのため、厚生年金に加入している人は、国民年金だけの人よりも多くの年金を受け取ることができ、老齢厚生年金のほかに、障害厚生年金や遺族厚生年金もあります。 公的年金の目的は、老後の生活を支えるだけでなく、病気や事故で障害を負った人や、家計を支える人を亡くした遺族を支援することにもあります。財源は、加入者が納める保険料と税金の一部で成り立っており、現役世代が高齢者を支える「賦課方式」を採用しています。しかし、少子高齢化が進むことで、この仕組みを今後も維持していくことが課題となっています。公的年金は、すべての国民が支え合い、老後の安心を確保するための重要な制度です。
厚生年金
厚生年金とは、会社員や公務員などの給与所得者が加入する公的年金制度で、国民年金(基礎年金)に上乗せして支給される「2階建て構造」の年金制度の一部です。厚生年金に加入している人は、基礎年金に加えて、収入に応じた保険料を支払い、将来はその分に応じた年金額を受け取ることができます。 保険料は労使折半で、勤務先と本人がそれぞれ負担します。原則として70歳未満の従業員が対象で、加入・脱退や保険料の納付、記録管理は日本年金機構が行っています。老後の年金だけでなく、障害年金や遺族年金なども含む包括的な保障があり、給与収入がある人にとっては、生活保障の中心となる制度です。
国民年金
国民年金とは、日本に住む20歳以上60歳未満のすべての人が原則として加入しなければならない、公的な年金制度です。自営業の人や学生、専業主婦(夫)などが主に対象となり、将来の老後の生活を支える「老齢基礎年金」だけでなく、障害を負ったときの「障害基礎年金」や、死亡した際の遺族のための「遺族基礎年金」なども含まれています。毎月一定の保険料を支払うことで、将来必要となる生活の土台を作る仕組みであり、日本の年金制度の基本となる重要な制度です。
所得控除
所得控除とは、個人の所得にかかる税金を計算する際に、特定の支出や条件に基づいて課税対象となる所得額を減らす仕組みである。日本では、医療費控除や生命保険料控除、扶養控除などがあり、納税者の生活状況に応じて税負担を軽減する役割を果たす。これにより、所得が同じでも控除を活用することで実際の税額が変わることがある。控除額が大きいほど課税所得が減少し、納税者の手取り額が増えるため、適切な活用が重要である。
退職所得控除
退職所得控除とは、退職金を受け取る際に税金を軽くしてくれる制度です。長く働いた人ほど、退職金のうち税金がかからない金額が大きくなり、結果として納める税金が少なくなります。この制度は、長年の勤続に対する国からの優遇措置として設けられています。 控除額は勤続年数によって決まり、たとえば勤続年数が20年以下の場合は1年あたり40万円、20年を超える部分については1年あたり70万円が控除されます。最低でも80万円は控除される仕組みです。たとえば、30年間勤めた場合、最初の20年で800万円(20年×40万円)、残りの10年で700万円(10年×70万円)、合計で1,500万円が控除されます。この金額以下の退職金であれば、原則として税金がかかりません。 さらに、退職所得控除を差し引いた後の金額についても、全額が課税対象になるわけではありません。実際には、その半分の金額が所得とみなされて、そこに所得税や住民税がかかるため、税負担がさらに抑えられる仕組みになっています。 ただし、この退職所得控除の制度は、将来的に変更される可能性もあります。税制は社会情勢や政策の方向性に応じて見直されることがあるため、現在の内容が今後も続くとは限りません。退職金の受け取り方や老後の資産設計を考える際には、最新の制度を確認することが大切です。





