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確定拠出年金は転職したらどうする?iDeCo・企業型DCのポータビリティと移換手続きをケース別に解説
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公開:
2025.01.21
更新:
2026.09.23
転職・退職の際は、勤務先の変更に伴い、企業型DCやiDeCoの手続きが必要になることがあります。必要な対応は転職先の企業年金制度や加入状況によって異なり、会社に任せておけばすべて完了するとは限りません。手続きを放置すると、資産が自動移換され、運用できないまま手数料がかかる場合もあります。この記事では、状況別の移換先やiDeCoの継続条件から、手続きの期限・必要書類・手数料、自動移換後の対処法までを具体的に解説します。
確定拠出年金のポータビリティとは?転職・退職時に資産を持ち運べる仕組み
確定拠出年金のポータビリティとは、転職や退職をしたときに、それまで積み立てた年金資産を別の制度へ持ち運べる仕組みです。「移換」とも呼ばれ、手続きをすれば運用を途切れさせずに老後資金づくりを継続できます。ここでは、制度の違いと移換できる組み合わせ、期限を整理します。
企業型DCとiDeCoの違い
確定拠出年金には、会社が実施する企業型DCと、個人が任意で加入するiDeCoの2種類があります。どちらも掛金を自分で運用し、その結果で受け取る金額が決まる点は共通していますが、実施主体や掛金を出す人が異なります。
| 項目 | 企業型DC | iDeCo |
|---|---|---|
| 実施主体 | 事業主(会社) | 国民年金基金連合会 |
| 加入対象者 | 制度を実施する会社の従業員 | 公的年金に加入する人(加入できない人を除く) |
| 掛金を出す人 | 原則として会社(本人の上乗せ=マッチング拠出も可) | 本人(iDeCo+を実施する会社は会社も上乗せ可) |
| 運営管理機関 | 会社が選ぶ | 本人が選ぶ |
| 加入者数の目安 | ― | 約403.7万人(2026年7月末) |
確定拠出年金は老後資金を目的とした制度のため、原則として60歳になるまで引き出せず、途中で解約もできません。企業型DCは退職金制度の一部として導入されていることも多く、転職や退職で加入資格を失ったときは、資産を別の制度に移す手続きが必要になります。
出典:国民年金基金連合会「iDeCo(個人型確定拠出年金)の加入者数等について(2026年7月)」
移換できる制度の組み合わせ一覧
確定拠出年金とDBの間では、条件を満たせば相互に資産を移せます。DBへ移す場合は、移換先のDBの規約で資産を受け入れる旨が定められていることが条件です。
DBから移す場合は、本人の申し出により、脱退一時金相当額が移換の対象になります。企業型DCから企業年金連合会の通算企業年金への移換は、2022年5月1日以降に資格を喪失した人から利用できるようになりました。
出典:国民年金基金連合会「iDeCo加入者で転職・退職された方へ」/企業年金連合会「企業型確定拠出年金から企業年金連合会への個人別管理資産の移換」
移換の期限は制度によって異なる
ポータビリティには期限があり、移換元の制度によって長さが違います。とくに企業型DCは6か月と短いため、転職が決まった時点で準備を始めるのが安心です。
| 移換元 | 期限 | 期限を過ぎた場合 |
|---|---|---|
| 企業型DC | 資格を喪失した日の翌月から6か月以内 | 国民年金基金連合会に自動移換される |
| DB | 資格を喪失した日から1年以内 | 脱退一時金として受け取るなど、移換はできなくなる |
| 企業年金連合会(iDeCoへ移す場合) | iDeCoの加入資格を取得してから3か月以内 | iDeCoへの移換はできなくなる |
出典:国民年金基金連合会「iDeCo加入者で転職・退職された方へ」/企業年金連合会「年金資産の持ち運び(ポータビリティ)」
【ケース別】確定拠出年金は転職したらどうする?移換先の選び方
転職時に企業型DCの資産をどこへ移すかは、転職先の企業年金制度と、退職後の働き方で決まります。まず自分がどのケースに該当するかを、次の表で確認しましょう。
| 転職先・退職後の状況 | 主な移換先 | 相談先 |
|---|---|---|
| 転職先に企業型DCがある | 転職先の企業型DC(iDeCoや通算企業年金も選択可) | 転職先の人事・総務担当 |
| 転職先にDBだけがある | 転職先のDB(規約で受入れ可の場合)またはiDeCo | 転職先の担当者/iDeCoの運営管理機関 |
| 転職先に企業年金がない | iDeCo(または通算企業年金) | 自分で選んだiDeCoの運営管理機関 |
| 自営業・フリーランスになる | iDeCo(または通算企業年金) | 自分で選んだiDeCoの運営管理機関 |
| 専業主婦(夫)になる | iDeCo(または通算企業年金) | 自分で選んだiDeCoの運営管理機関 |
| 公務員になる | iDeCo(または通算企業年金) | 自分で選んだiDeCoの運営管理機関 |
出典:企業年金連合会「年金資産の持ち運び(ポータビリティ)」
転職先に企業型DCがある場合
転職先にも企業型DCがあれば、前の会社の資産をそのまま転職先の企業型DCへ移すのが一般的です。転職先の人事・総務担当者に「前職の企業型DCの資産がある」と伝えれば、移換に必要な書類を案内してもらえます。
- 運営管理機関が変わると、選べる運用商品も変わります。移換後は資産がいったん現金や指定の商品で受け入れられるため、転職先の商品一覧をもとに配分を決め直しましょう。
なお、企業型DCについては、こちらの記事もあわせて参考にしてみてください。
転職先にDBだけがある場合
転職先にDBしかない場合、DBの規約で確定拠出年金の資産を受け入れると定めていれば、DBへ移すこともできます。ただし、受け入れを認めていないDBも多いため、まず転職先の担当者に確認が必要です。
DBへ移せない場合や、自分で運用を続けたい場合はiDeCoに移します。DBに加入しながらiDeCoに掛金を出すことも可能です。
転職先に企業年金がない場合
転職先に企業型DCもDBもない場合は、iDeCoへ移すのが基本です。iDeCoの運営管理機関(証券会社や銀行などの金融機関)を自分で選び、口座開設と移換の手続きを申し込みます。
運営管理機関によって、運用商品の品ぞろえや口座管理手数料が異なります。毎月の手数料を抑えたい場合は、運営管理機関手数料が無料のネット証券などを比較するとよいでしょう。
自営業・フリーランス・専業主婦(夫)になる場合
退職して自営業者やフリーランス(国民年金の第1号被保険者)、専業主婦(夫)(第3号被保険者)になる場合も、企業型DCには加入し続けられないためiDeCoへ移します。
- iDeCoに移したあとは、掛金を出し続ける「加入者」になるか、掛金を止めて運用だけ続ける「運用指図者」になるかを選ぶ形です。国民年金保険料の免除を受けている人など、iDeCoに加入できない人は運用指図者として運用を続けることになります。
運用指図者に関しては、こちらの記事もあわせて参考にしてみてください。
公務員になる場合
公務員には企業型DCがないため、会社員から公務員に転職した場合もiDeCoへ移します。共済組合に加入する公務員もiDeCoで掛金を出せるため、移換とあわせて加入の手続きをすれば、老後資金づくりを続けられます。
通算企業年金に移すという選択肢もある
ど企業型DCの資産は、所定の要件を満たせば、企業年金連合会の「通算企業年金」に移すこともできます。自分で運用する必要がなく、連合会が運用して将来は年金として受け取る仕組みです。
対象は原則として2022年5月1日以降に企業型DCの加入資格を喪失した人ですが、60歳以上で退職等により企業型DCの運用指図者となった人などは対象外です。年齢や資格喪失の理由によって扱いが異なるため、移換元の担当窓口で確認しましょう。
申し出の期限は、企業型DCの資格を喪失した日の翌月から6か月後の月末までです。自分で運用商品を選ぶのが負担に感じる人の選択肢になりますが、移換後は運用方法を選べなくなるため、iDeCoと比べて判断しましょう。
出典:企業年金連合会「企業型確定拠出年金から企業年金連合会への個人別管理資産の移換」
企業型DCからiDeCoへ移換する手続きと手数料
企業型DCからiDeCoへの移換は、転職時にもっとも多い手続きです。手順と必要書類、かかる手数料、移換中の注意点を順に確認しましょう。
移換手続きの流れ
企業型DCからiDeCoへの移換手続きは、次の流れで進めます。
企業型DCからiDeCoへの移換手続き
- 運営管理機関を選ぶ:iDeCoを取り扱う金融機関の中から、商品や手数料を比べて1社を選びます。
- 書類を取り寄せる:選んだ運営管理機関に連絡し、移換と加入の書類を請求します。オンライン受付に対応している機関もあります。
- 移換依頼書を提出する:「個人別管理資産移換依頼書(K-003)」を運営管理機関に提出します。
- 掛金を出す場合は加入申出書も出す:「個人型年金加入申出書(K-001)」を提出します。会社員が給与天引きを希望する場合は、事業主の証明書(K-109A)も必要です。
- 移換後に運用商品を選ぶ:移換完了の通知が届いたら、運用商品と配分を指定します。
手続きでは基礎年金番号の記入を求められることが多いため、年金手帳や基礎年金番号通知書を手元に用意しておくとスムーズです。移換の申し込みから資産がiDeCoに届くまでには、一般に数か月かかります。企業型DCの資産はいったん現金化されて移されるため、その間は運用されません。
出典:国民年金基金連合会「iDeCo加入者で転職・退職された方へ」
移換にかかる手数料
企業型DCからiDeCoへ移すときは、国民年金基金連合会に2,829円の手数料を支払います。運営管理機関によっては、別途手数料が発生する場合もあるでしょう。
iDeCoに加入して掛金を出す場合は、毎月の口座管理手数料もかかります。国民年金基金連合会に支払う手数料は、2027年1月の引き落とし分から、掛金を出すたびに105円から月額120円に変わる予定です。
移換後は運用商品を選び直す
iDeCoへの移換後に運用商品を指定しなかった場合の扱いは、運営管理機関によって異なります。「指定運用方法」が設定されている場合は、所定の期間を経て、その商品が購入される仕組みがあります。設定されていない場合もあるため、自動的に運用されるとは考えず、移換時に運用商品と配分を確認・指定しましょう。
指定運用方法には定期預金などの元本確保型が設定されていることが多く、積極的に資産運用したい人にとっては機会損失になりかねません。
年齢やリスク許容度次第では、元本保証型も選択肢の一つです。詳しくは、こちらの記事を参考にしてみてください。
掛金を出さない運用指図者も選べる
iDeCoに資産を移したあと、必ずしも掛金を出し続ける必要はありません。家計に余裕がない時期は、掛金の拠出を停止して運用だけ続ける運用指図者になる方法もあります。
ただし、運用指図者の期間も口座管理手数料はかかります。月々の掛金は全額が所得控除の対象になるため、無理のない範囲で拠出を続けるかどうか検討しましょう。
iDeCo加入者が転職したときの手続き
iDeCoは個人の口座のため、転職しても資産を移す必要はありません。ただし、国民年金の被保険者の種別や勤務先の企業年金の有無が変わると掛金の上限額が変わるため、運営管理機関への変更手続きが必要です。
| 状況 | 提出する書類 |
|---|---|
| 会社員・公務員になった/勤務先の企業年金の加入状況が変わった | 加入者登録情報変更届(第2号被保険者用)(K-032) |
| 転職先で掛金の納付方法を給与天引き(事業主払込)にしたい | 事業主払込(登録・納付方法変更等)に関する証明書(K-109A) |
| 転職先の企業型DCへiDeCoの資産を移す | 加入者資格喪失届(K-015) |
| 自営業者等(第1号被保険者)になった | 加入者被保険者種別変更届(第1号被保険者用)(K-010A) |
| 専業主婦(夫)等(第3号被保険者)になった | 加入者被保険者種別変更届(第3号被保険者用)(K-010C) |
| 国民年金の任意加入被保険者になった | 加入者被保険者種別変更届(任意加入被保険者用)(K-010D) |
自営業者や専業主婦(夫)としてiDeCoに加入していた人が、厚生年金保険の適用事業所に就職して会社員になった場合も、K-032の提出が必要です。届出を忘れると、転職後の掛金が上限を超えてしまったり、納付方法の切り替えが間に合わなかったりする可能性があります。掛金を年単位拠出にしている人は、転職で上限が変わると拠出の計画も見直しが必要です。
- 転職先に企業型DCがある場合は、iDeCoの資産を企業型DCに移す方法と、iDeCoを続けながら企業型DCに加入する方法のどちらも選べます。2022年10月からは、企業型DCの規約の定めがなくても原則としてiDeCoを併用できるようになりました。ただし、企業型DCでマッチング拠出を利用している人はiDeCoに加入できません。
企業型DCとiDeCoを併用する方法に関しては、こちらの記事をご覧ください。
出典:国民年金基金連合会「iDeCo加入者で転職・退職された方へ」/厚生労働省「令和4(2022)年10月から企業型DC加入者がiDeCoを利用しやすくなります」
企業年金(DB)から移換する場合の手続き
確定給付企業年金(DB)や厚生年金基金の加入者が転職した場合も、条件を満たせば資産を他の制度へ移せます。DBは会社が運用する制度のため、移換の対象になるのは本人が受け取れる脱退一時金相当額です。
- 転職先の企業型DCやDBへ移す場合は、転職先の担当者に手続きを確認します。iDeCoへ移す場合は、iDeCoの加入者になったうえで、DBの脱退後1年以内に移換元のDBへ申し出ることが条件です。「厚生年金基金・確定給付企業年金移換申出書(K-025)」に移換元の証明を受け、運営管理機関に提出します。
DBの資産は、企業年金連合会の通算企業年金へ移すこともできます。
また、脱退一時金として受け取る方法もあります。退職に伴う受け取りは原則として退職所得に該当しますが、退職所得控除などにより税金がかからない場合もあります。受取後も老後資金として運用できますが、受け取った一時金をそのまま年金資産として他制度へ移換することはできなくなるため、受け取りと移換を比較して判断しましょう。
出典:国民年金基金連合会「iDeCo加入者で転職・退職された方へ」
自動移換とは?国民年金基金連合会の役割と自動移換の仕組み
転職時の手続きを調べると、必ず目にするのが「自動移換」と「国民年金基金連合会」です。ここでは、自動移換の仕組みと、国民年金基金連合会が果たす役割を整理します。
自動移換とは6か月以内に手続きしなかった資産が自動的に移される仕組み
自動移換とは、企業型DCの加入者だった人が転職や退職で加入者資格を失い、6か月以内に移換などの手続きをしなかった場合に、資産が自動的に国民年金基金連合会へ移される仕組みです。確定拠出年金法第83条にもとづく取り扱いで、本人の希望とは関係なく行われます。
自動移換の対象になるのは、企業型DC(企業型年金)の資産です。iDeCoの加入者が転職しても、iDeCoの資産が自動移換されることはありません。
国民年金基金連合会とは?iDeCoの実施主体
国民年金基金連合会は、国民年金法にもとづいて設立された団体で、iDeCoの実施主体です。iDeCoの規約の作成、加入資格の確認、掛金の収納、掛金の上限管理などを担っています。
もう1つの重要な役割が、自動移換された資産の管理です。実際の記録管理や問い合わせ対応は、特定運営管理機関である日本インベスター・ソリューション・アンド・テクノロジー(JIS&T)が委託を受けて行っています。
自動移換されたままの人は約149万人
国民年金基金連合会の統計によると、自動移換者は2026年7月末時点で1,492,193人です。iDeCo加入者約403.7万人の3分の1を超える規模で、2025年度の1年間だけでも新たに151,757人が自動移換されました。
この人数には、資産がなく記録だけが管理されている人も含まれます。2026年3月末時点では、自動移換者のうち資産のない人が43.9%でした。裏を返せば、半数以上の人は資産が運用されないまま置かれている状態です。
出典:国民年金基金連合会「iDeCo(個人型確定拠出年金)の加入等の概況(2026年7月)」
自動移換されるとどうなる?4つのデメリット
移換の手続きをしないまま6か月が過ぎると、資産は国民年金基金連合会に自動移換されます。自動移換にはメリットがなく、次の4つのデメリットがあります。
資産が運用されず無利息の現金で保管される
自動移換されると、それまで保有していた投資信託などはすべて現金化され、無利息のまま保管されます。運用の指図はできないため、その後に株価が上がっても資産は増えません。
- 確定拠出年金の大きな魅力は、運用益に税金がかからない点です。自動移換されている間は運用そのものが止まるため、この税制優遇をまったく活かせなくなります。
手数料が差し引かれ資産が減り続ける
自動移換されると、移される時点と保管されている間に手数料がかかります。2026年4月から管理手数料が引き上げられ、保管中の負担は月98円になりました。
| 手数料の種類 | 特定運営管理機関 | 国民年金基金連合会 | 合計 |
|---|---|---|---|
| 自動移換される際 | 3,300円 | 1,048円 | 4,348円 |
| 自動移換されている間(月額) | 58円 | 40円 | 98円 |
| iDeCoへ移換するとき | 550円 | 2,829円 | 3,379円 |
| 企業型DC・DBへ移換するとき | 550円 | ― | 550円 |
| 脱退一時金・死亡一時金を受け取るとき | 4,180円 | ― | 4,180円 |
管理手数料は、自動移換された月の4か月後から発生し、毎年3月末に1年分がまとめて資産から差し引かれます。月98円なら年間1,176円で、10年放置すれば約1.2万円です。運用されないまま手数料だけが引かれるため、資産は確実に目減りしていきます。
出典:国民年金基金連合会「iDeCo加入者で転職・退職された方へ」/国民年金基金連合会「自動移換にかかる手数料改定のお知らせ」
60歳から受け取れなくなる場合がある
確定拠出年金の老齢給付金を60歳から受給するには、加入者や運用指図者だった期間の合計(通算加入者等期間)が10年以上必要です。自動移換されている期間はこの通算加入者等期間に含まれないため、受け取りを始められる年齢が遅れるおそれがあります。
| 通算加入者等期間 | 受給を開始できる年齢 |
|---|---|
| 10年以上 | 60歳 |
| 8年以上10年未満 | 61歳 |
| 6年以上8年未満 | 62歳 |
| 4年以上6年未満 | 63歳 |
| 2年以上4年未満 | 64歳 |
| 1か月以上2年未満 | 65歳 |
たとえば企業型DCに3年加入したあと自動移換されたまま放置すると、通算加入者等期間は3年のままです。この場合、老齢給付金を受け取れるのは早くても64歳からになり、60歳から受け取るつもりだった資金計画が崩れてしまいます。
一時金で受け取るときの退職所得控除が小さくなる
確定拠出年金を一時金で受け取る場合は、退職金と同じく退職所得控除の対象です。この控除額は掛金を出した期間をもとに計算されるため、自動移換で掛金を出していない期間が長いほど、控除額は小さくなります。
- 控除が小さくなれば、受け取り時にかかる税金は増えてしまうでしょう。自動移換は、運用・手数料・受け取り時期・税金の4つの面で不利になる状態といえます。
退職金や企業年金を受け取る際には、税金や社会保険料を加味しなければなりません。詳しくは、こちらの記事を参考にしてみてください。
国民年金基金連合会に移管されたらどうする?自動移換後の手続き
すでに国民年金基金連合会に自動移換されていても、手続きをすれば資産を確定拠出年金に戻して運用を再開できます。まずは自動移換されているかを確かめ、状況に合った手続きを選びましょう。
自動移換されているか確認する方法
自動移換されると、国民年金基金連合会(特定運営管理機関)から自動移換の通知が郵送され、その後も定期的に通知が届きます。心当たりのある人は、まず手元の郵便物を確認しましょう。
通知が見当たらない場合や、通算加入者等期間を確認したい場合は、自動移換者専用コールセンターに問い合わせできます。引っ越しで住所が変わった人は、専用の届出書を印刷して記入し、特定運営管理機関に郵送で届け出てください。住所変更をしないままだと、定期通知や法改正のお知らせが届かなくなる可能性があります。
状況別にとれる4つの手続き
自動移換された人がとれる手続きは、現在の働き方や勤務先の制度によって次の4つです。
もし自動移換されたら
- iDeCoへ移換する:iDeCoの運営管理機関で加入または運用指図者の手続きをして、資産と加入の記録を移します。
- 勤務先の企業型DCへ移換する:お勤め先に企業型DCがあり、加入者または運用指図者であれば、資産と加入の記録を移せます。
- 勤務先のDBへ移換する:DBの規約で受け入れが認められている場合に限り、移せます。
- 脱退一時金を受け取る:下記の要件をすべて満たす場合のみ、一時金として請求できます。
勤務先に企業年金がない会社員や、自営業者、専業主婦(夫)の人は、iDeCoへの移換が現実的な選択肢です。移換手続きをしても、自動移換されていた期間が通算加入者等期間に算入されるわけではない点には注意しましょう。
iDeCoに加入すると自動で資産が移される
自動移換者を減らすための取り組みとして、自動移換の状態で新たにiDeCoの加入者になったことが確認できた人は、移換の申し出をしなくても資産がiDeCoへ移されるようになりました。企業型DCの資格喪失後6か月以内にiDeCoの加入者になった人も同様です。
ただし、移換されたあとは運用商品を自分で指定する必要があります。指定しなければ指定運用方法で運用されるため、iDeCoに加入したら運用商品の設定まで済ませましょう。
出典:国民年金基金連合会「iDeCo加入者で転職・退職された方へ」
脱退一時金を受け取れるのは要件を満たす人だけ
自動移換された資産を脱退一時金として受け取れるのは、一定の要件をすべて満たす人に限られます。自動移換後の資産を脱退一時金として受け取るには、原則としてiDeCoに加入できないことなど、所定の要件をすべて満たす必要があります。
一方、企業型DCの資格喪失から6か月以内で、資産額が1万5,000円以下、かつ企業型DC・iDeCoの加入者や運用指図者ではない場合には、企業型DCの記録関連運営管理機関へ脱退一時金を請求できる別の仕組みがあります。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 年齢 | 60歳未満であること |
| iDeCoに加入できない人であること | 国民年金保険料の免除を受けている人、日本国籍がなく海外に住む人など |
| 企業型DCの加入者でないこと | 現在、企業型DCに加入していないこと |
| 障害給付金の受給権者でないこと | 確定拠出年金の障害給付金を受け取れる人でないこと |
| 期限 | 最後に企業型DCの資格を喪失した日から2年以内であること |
| 期間・資産額 | 通算拠出期間が5年以下、または資産額が25万円以下であること |
会社員や自営業者、専業主婦(夫)など、iDeCoに加入できる人は脱退一時金を受け取れません。多くの人にとっては、iDeCoなどへ移して運用を再開するのが基本の対応になります。
転職時に自動移換を防ぐための3つの注意点
自動移換は、手続きの期限を知らなかったり、転職前後の忙しさで後回しにしたりして起きるケースがほとんどです。次の3点を意識すれば、自動移換は防げます。
退職前に移換先を決めておく
6か月の期限は、資格を喪失した日の翌月から数えます。転職が決まった段階で、転職先の企業年金制度を確認し、移換先を決めておきましょう。iDeCoへ移す場合は、退職前から運営管理機関を比較しておくと、退職後すぐに書類を請求できます。
会社からの案内を必ず確認する
2026年4月から、会社が自動移換について説明する時期が「資格喪失時」から「資格喪失が見込まれるとき」に前倒しされました。退職前に受け取る企業型DCの案内資料には、移換の方法や期限が書かれています。読み飛ばさずに内容を確認し、不明点は在職中に担当者へ質問しておくと安心です。
移換の完了まで見届ける
書類を提出しても、記入漏れや添付書類の不足があると手続きが止まり、期限を過ぎてしまうおそれがあります。提出後は運営管理機関からの連絡を確認し、移換完了の通知が届くまで見届けましょう。
2026年の制度改正で転職時に知っておきたいこと
確定拠出年金は、2025年6月に成立した年金制度改正法にもとづき、2026年に大きな改正が続きます。転職や退職の時期によっては手続きや掛金の上限に影響するため、主な変更点を確認しておきましょう。
| 時期 | 内容 |
|---|---|
| 2026年4月1日 | 会社が自動移換について説明する時期を「資格喪失時」から「資格喪失が見込まれるとき」に前倒し |
| 2026年4月1日 | 企業型DCのマッチング拠出で「事業主掛金以下」という制限を撤廃 |
| 2026年4月1日 | 自動移換中の管理手数料を月52円から月98円に、移換手数料を1,100円から550円に改定 |
| 2026年12月1日 | iDeCoの加入可能年齢を70歳未満に引き上げ(60歳以上は一定の条件あり) |
| 2026年12月1日 | iDeCoの掛金上限を引き上げ(会社員は企業年金と共通で月6.2万円、自営業者は月7.5万円) |
| 2027年1月引き落とし分〜 | iDeCoの国民年金基金連合会手数料を、拠出1回105円から月額120円に変更 |
とくに2026年12月からは、60歳以上70歳未満の人もiDeCoに加入しやすくなります。60歳前後で退職し、企業型DCの資産をiDeCoに移して運用を続けたい人にとっては選択肢が広がる改正です。今後も制度の見直しは続くため、転職のタイミングで最新の情報を確認しましょう。
iDeCoの仕組みについてくわしく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてみてください。
出典:厚生労働省「2025年の制度改正」/国民年金基金連合会「自動移換にかかる手数料改定のお知らせ」
相談現場でよくある誤解3つ
転職時の確定拠出年金の手続きでは、制度の誤解から損をしているケースが少なくありません。相談現場でとくに多い3つの誤解を整理します。
誤解1:「会社が手続きしてくれるから何もしなくてよい」
企業型DCから転職先の企業型DCへ移す場合でも、本人が転職先に申し出なければ手続きは始まりません。iDeCoへ移す場合は、運営管理機関選びから本人が行う必要があります。退職した会社が移換まで代行してくれるわけではないため、自分から動くことが大切です。
誤解2:「自動移換されたら資産は没収される」
自動移換されても資産がなくなるわけではなく、国民年金基金連合会で保管されています。手続きをすればiDeCoや企業型DCへ移して運用を再開できます。ただし、保管中は運用されず手数料も引かれ続けるため、気づいた時点ですぐに手続きしましょう。
誤解3:「少額なら脱退一時金で引き出せる」
資産が少なくても、会社員や自営業者などiDeCoに加入できる人は、原則として脱退一時金を受け取れません。現在の要件は、iDeCoに加入できないことが前提です。「少額だから引き出して使おう」と考えて放置すると、自動移換で手数料だけがかかり続けます。
この記事のまとめ
転職・退職時の確定拠出年金の手続きは、現在の加入状況と転職先の制度によって異なります。企業型DCでは移換先と期限の確認が重要で、iDeCoを継続する場合も、働き方や企業年金の加入状況に応じた届出が必要です。まずは前職の案内資料と転職先の制度を確認し、勤務先の担当者や運営管理機関に必要書類を問い合わせましょう。書類の提出後も完了通知を確認し、移換後は運用商品の設定まで進めることが大切です。自動移換に気づいた場合も、早めに移換手続きを始めましょう。

金融系ライター
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1,000記事以上の執筆実績あり。
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1,000記事以上の執筆実績あり。







