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個人事業主が年金を増やす方法は?厚生年金の代わりとなる7つの制度を解説

個人事業主が年金を増やす方法は?厚生年金の代わりとなる7つの制度を解説

個人事業主が年金を増やす方法は?厚生年金の代わりとなる7つの制度を解説

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執筆者:

公開:

2025.11.17

更新:

2025.11.17

個人年金公的年金iDeCo

個人事業主として働くなかで、将来の年金に不安を感じている方は少なくありません。会社員と異なり、個人事業主が加入できる公的年金は国民年金のみで、将来受け取れる年金額は会社員の半分以下になってしまいます。令和5年度のデータでは、国民年金の平均受給月額は約5.8万円に対し、厚生年金は約14.7万円と大きな格差があります。この格差を放置すれば、老後の生活に深刻な影響を及ぼしかねません。

サクッとわかる!簡単要約

個人事業主が年金を増やすには、国民年金基金・付加年金・iDeCo・小規模企業共済・個人年金保険という5つの制度を活用できます。これらの制度は掛金が全額または一部所得控除の対象となり、節税しながら老後資金を準備できる仕組みです。本記事では、各制度の特徴や掛金上限、税制優遇の違いを比較表で整理し、20代から60代まで年齢別の加入優先順位を解説します。読了後は、個人事業主でも会社員に劣らない年金設計ができるようになり、老後の不安を解消するための具体的な行動計画を立てられます。

目次

個人事業主が厚生年金に加入できない理由

会社員と異なる年金制度

個人事業主の年金はいくら?

高齢者世帯の家計状況

個人事業主が老後の年金を増やす5つの方法

国民年金基金:終身年金を用意できる

付加年金:掛金が手頃で利用しやすい

iDeCo(個人型確定拠出年金):税制優遇が大きい

小規模企業共済:リスクを抑えた運用と節税メリットを活かせる

民間の個人年金保険:受取方法や受取期間を自由に決められる

個人事業主が活用すべき制度と投資手法

年金の繰下げ受給:受給額を最大84%増やす

高配当株投資:安定収入を確保

年齢別の加入優先順位

20代〜30代の場合

40代〜50代の場合

60歳以降の対策

マイクロ法人を設立すれば厚生年金に加入できる

マイクロ法人とは

法人化で厚生年金に加入するメリット

マイクロ法人設立の注意点

国民年金を確定申告で控除する方法

社会保険料控除の仕組み

確定申告での手続き

前納・まとめ払いでお得に

個人事業主が厚生年金に加入できない理由

個人事業主が厚生年金に加入できないのは、厚生年金が「会社などの事業所に勤める人」を対象とした制度だからです。

日本の年金制度は二階建て構造になっており、一階部分の国民年金はすべての国民が加入します。一方、二階部分の厚生年金は、会社員や公務員など第2号被保険者のみが加入できる仕組みです。

  1. 個人事業主は第1号被保険者に分類されるため、国民年金のみの加入となります。これにより、会社員と比較して将来受け取れる年金額に大きな差が生まれてしまうのです。

会社員と異なる年金制度

日本の公的年金制度は、被保険者の種別によって加入できる年金が異なります。

年金は「3階建て」構造とされ、1階が国民年金、2階が厚生年金などの公的年金、3階がiDeCoや企業型DC、個人年金保険などの任意加入の私的年金で構成されます。

個人事業主は第1号被保険者に該当するため、厚生年金には加入できません。会社員が国民年金と厚生年金の二階建てで年金を積み上げるのに対し、個人事業主は一階部分の国民年金のみとなります。

この制度の違いが、将来受け取れる年金額の格差につながっているのです。

個人事業主の年金はいくら?

個人事業主が受け取れる国民年金は、40年間満額で保険料を納めた場合、月額69,308円(令和7年度)です。

令和5年度のデータによると、国民年金と厚生年金では、受け取れる年金額に約2.6倍もの差があります。

年金の種類平均受給月額
国民年金(個人事業主)57,700円
厚生年金(会社員)※147,360円
国民年金と厚生年金の平均

※厚生年金には国民年金を含む

会社員の年金が約14.7万円であるのに対し、個人事業主は約5.8万円です。この差額は月額で約9万円、年間では約108万円にもなります。

仮に65歳から85歳まで20年間年金を受け取ると仮定すると、生涯で約2,160万円もの差が生まれる計算です。この大きな格差を埋めるために、個人事業主は国民年金以外の制度を活用する必要があります。

高齢者世帯の家計状況

年金だけでは老後の生活費を賄えない現実が、総務省の家計調査で明らかになっています。

項目月額
可処分所得(手取り収入)約222,000円
消費支出(生活費)約257,000円
不足額約34,000円
65歳以上の夫婦世帯(無職)の家計収支(2024年平均)
項目月額
可処分所得(手取り収入)約121,000円
消費支出(生活費)約149,000円
不足額約28,000円
65歳以上の単身世帯(無職)の家計収支(2024年平均)

出典:総務省「家計調査報告家計収支編2024年(令和6年)平均結果の概要」

夫婦世帯では月3.4万円、単身世帯では月2.8万円の赤字が発生しています。年間にすると夫婦で約41万円、単身で約34万円の不足です。

この不足分を貯蓄で補うと仮定した場合、65歳から85歳までの20年間で必要な金額は以下のとおりです。

  • 夫婦世帯:約816万円
  • 単身世帯:約672万円

これはあくまで平均的な生活費を想定した金額です。医療費の増加や介護費用、住宅のリフォームなど予期せぬ出費を考えると、さらに余裕を持った資金準備が必要になります。

国民年金のみに頼る個人事業主にとって、この現実は極めて厳しいものです。だからこそ、現役時代から計画的に年金を増やす対策を講じる必要があります。

なお、独身世帯に必要な老後資金については、こちらのQ&Aを参考にしてみてください。

個人事業主が老後の年金を増やす5つの方法

個人事業主が年金を増やすには、国民年金基金、付加年金、iDeCo、小規模企業共済、民間の個人年金保険という5つの制度が活用できます。

制度主な対象掛金・上限税制優遇
国民年金基金国民年金第1号被保険者(20〜60歳)月額上限はiDeCoと合算で6万8,000円掛金全額が所得控除/受取時は公的年金等控除
付加年金国民年金第1号被保険者月400円上乗せ(国民年金に付加)(国民年金保険料として取扱い)
iDeCo(個人型確定拠出年金)20〜65歳の国民年金加入者月上限は国民年金基金と合算で6万8,000円掛金全額所得控除+運用益非課税+受取時控除
小規模企業共済個人事業主(常時従業員20人以下 等)月1,000円〜7万円(500円単位)掛金全額所得控除/受取時は退職所得控除等
民間の個人年金保険保険会社の募集年齢内(例:18〜65歳)保険料を任意設定(商品による)個人年金保険料控除(最大4万円/年)
個人事業主が老後の年金を増やす方法

それぞれの制度には特徴があり、加入条件や掛金の上限、受取方法が異なります。自分の収入や年齢、ライフプランに合わせて複数の制度を組み合わせることで、会社員と同等かそれ以上の年金を準備することが可能です。

国民年金基金:終身年金を用意できる

国民年金基金は、個人事業主と会社員の年金格差を解消するために創設された公的な年金制度です。

国民年金に上乗せして掛金を支払うことで、将来受け取れる年金額を増やせます。最大の特徴は、掛金が全額所得控除の対象となり、受取時も公的年金等控除が適用される点です。

項目内容
加入対象国民年金第1号被保険者(20歳以上60歳未満)
掛金月額6万8,000円まで(iDeCoと合算)
税制優遇掛金全額が所得控除
受取開始65歳または60歳(選択したプランによる)
国民年金基金の概要

国民年金基金には複数のプランがあり、終身年金型と確定年金型を組み合わせて設計できます。終身年金型は生きている限り年金を受け取れるため、長生きリスクに備えられます。

内容
メリット掛金が全額所得控除になり節税効果が高い
確定給付型のため将来受け取る年金額が確定している
死亡時には遺族に一時金が支払われる
デメリット一度加入すると原則として脱退できない
インフレリスクに対応できない(金額が固定)
付加年金との併用ができない
国民年金基金のメリットとデメリット

国民年金基金は、安定した収入があり長期的に掛金を支払える個人事業主に適しています。ただし、事業の収益が不安定な場合は、掛金の減額はできても脱退できない点に注意が必要です。

国民年金基金について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

付加年金:掛金が手頃で利用しやすい

付加年金は、月額400円の保険料を上乗せし、将来の年金を増やす制度です。

国民年金保険料に付加保険料を加えて納付すると、「200円×納付月数」の年金が終身で上乗せされます。コストパフォーマンスが極めて高く、2年間受給すれば元が取れる計算です。

付加年金の仕組み

  1. 月額保険料:400円
  2. 年金増額:200円×納付月数(毎年)
  3. 受取期間:終身(一生涯)

20年間納付した場合、納付総額は「400円×240ヶ月=96,000円」で、増額する年金は「200円×240ヶ月=48,000円」です。

この場合、2年間受給すれば96,000円を回収でき、3年目以降は純粋な利益となります。65歳から85歳まで20年間受給すると、総額96万円の年金増額となり、投資効率は高いといえます。

内容
メリット月額400円という少額で始められる
納付額に対する受給額の割合が非常に高い
申込や変更が簡単(いつでも開始・停止可能)
デメリット国民年金基金との併用ができない
増額される年金額は比較的少額
受給前に死亡すると掛金が戻らない
付加年金のメリットとデメリット

付加年金は手軽に始められるため、まず最初に検討すべき制度です。ただし、国民年金基金に加入すると付加年金には入れなくなるため、どちらを選ぶか慎重に判断しましょう。

付加年金は、こちらの記事で詳しく解説しています。あわせて参考にしてみてください。

iDeCo(個人型確定拠出年金):税制優遇が大きい

iDeCoは、自分で掛金を拠出し運用する私的年金制度です。

掛金は全額所得控除の対象となり、運用益も非課税、受取時も退職所得控除または公的年金等控除が適用されるという三重の税制優遇があります。投資信託や定期預金など、自分で運用商品を選べる点が特徴です。

項目内容
加入対象20歳以上65歳未満の国民年金加入者
掛金上限月額6万8,000円(国民年金基金と合算)
税制優遇掛金全額所得控除、運用益非課税、受取時控除
受取開始60歳以降
iDeCoの基本情報

年収500万円の個人事業主が月額3万円(年36万円)を拠出した場合の節税額を計算してみましょう。

  • 所得税率:20%
  • 住民税率:10%
  • 年間節税額:36万円×30%=10万8,000円

30年間継続すると、節税額だけで324万円になります。これに運用益が加わるため、老後資金を効率的に準備できます。

内容
メリット三重の税制優遇で節税効果が非常に高い
運用次第で大きく資産を増やせる可能性がある
掛金額を月5,000円から設定でき柔軟性が高い
デメリット原則60歳まで引き出せない
運用リスクがあり元本割れの可能性がある
口座管理手数料などのコストがかかる
iDeCoのメリットとデメリット

iDeCoは長期的な資産形成に適していますが、流動性が低い点に注意が必要です。事業資金として必要になる可能性がある資金は、iDeCo以外の方法で確保しておきましょう。

なお、付加年金とiDeCoを併用する場合、iDeCoで拠出できる掛金の上限は付加年金の400円分を差し引いた額です。1,000円単位で設定するため、上限が月67,000円となる点に注意しましょう。

iDeCoに関しては、こちらの記事でも詳しく解説しています。あわせて参考にしてみてください。

小規模企業共済:リスクを抑えた運用と節税メリットを活かせる

小規模企業共済は、個人事業主のための退職金制度です。

独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営する公的な制度で、事業を廃業したときや退職時にまとまった資金を受け取れます。掛金は全額所得控除の対象となり、受取時も退職所得控除または公的年金等控除が適用されます。

項目内容
加入対象常時使用する従業員が20人以下の個人事業主
掛金月額1,000円〜7万円(500円単位)
税制優遇掛金全額が所得控除
受取方法一括、分割、併用から選択可能
小規模企業共済の基本情報

年収600万円の個人事業主が月額7万円(年84万円)を掛けた場合の節税額は以下のとおりです。

  • 所得税率:20%
  • 住民税率:10%
  • 年間節税額:84万円×30%=25万2,000円

20年間継続すると、節税額だけで504万円になります。さらに共済金には予定利率による運用益が付加されるため、実質的な利回りは高くなります。

内容
メリット掛金が全額所得控除で節税効果が高い
低金利の貸付制度を利用できる
受取方法を一括・分割から選べる
デメリット加入期間が短いと元本割れする可能性がある
任意解約すると受取額が大幅に減る
掛金の上限が月7万円と制限がある
小規模企業共済のメリットとデメリット

小規模企業共済は、長期的に事業を続ける予定の個人事業主に最適です。最低でも20年以上加入することで、元本割れのリスクを避けられます。

小規模企業共済に関して詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてみてください。

民間の個人年金保険:受取方法や受取期間を自由に決められる

民間の個人年金保険は、生命保険会社が提供する私的年金です。

契約時に定めた年齢まで保険料を支払うと、一定期間または一生涯にわたって年金を受け取れます。iDeCoと異なり、運用リスクが低く安定した受取額が確保できる点が特徴です。

項目内容
加入年齢保険会社により異なる(一般的に18歳〜65歳)
保険料自由に設定可能
税制優遇個人年金保険料控除(最大4万円)
受取方法確定年金、終身年金、有期年金など
個人年金保険の基本情報
比較項目個人年金保険iDeCo
元本保証あり(商品による)なし
中途解約可能(解約返戻金あり)原則不可
所得控除最大4万円全額
運用保険会社が運用自分で運用
iDeCoとの違い

個人年金保険は元本保証型の商品が多く、確実に老後資金を準備したい方に適しています。一方、所得控除額がiDeCoより少ないため、節税効果は限定的です。

内容
メリット元本保証型なら安定した資産形成が可能
中途解約ができ流動性がある
保険会社が運用するため手間がかからない
デメリット所得控除額が年間最大4万円と少ない<brインフレに弱く実質的な価値が目減りする可能性がある
途中解約すると元本割れするケースがある
個人年金保険のメリットとデメリット

個人年金保険は、iDeCoや小規模企業共済の上限まで掛金を拠出したあとに、さらに老後資金を積み増したい場合の選択肢として検討するとよいでしょう。

個人年金保険の特徴や仕組みについて詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

個人事業主が活用すべき制度と投資手法

年金制度だけでなく、年金の繰下げ受給や高配当株投資を組み合わせることで、より充実した老後資金を準備できます。

年金の繰下げ受給は、受給開始を遅らせるだけで年金額を最大84%増やせる制度です。一方、高配当株投資は配当金という安定した収入源を確保でき、年金を補完する役割を果たします。

年金の繰下げ受給:受給額を最大84%増やす

年金の繰下げ受給とは、本来65歳から受け取る年金の受給開始時期を遅らせることで、年金額を増やす制度です。

受給開始を1ヶ月遅らせるごとに年金額が0.7%増額され、最大75歳まで繰り下げると84%の増額となります。一度増額された年金額は一生涯変わらないため、老後生活における安心感を高められるでしょう。

受給開始年齢増額率月額年金額の例(満額69,308円の場合)
65歳(通常)0%69,308円
66歳8.4%75,130円
70歳42%98,417円
75歳84%127,527円
繰下げ受給による増額率
内容
メリット年金額を最大84%増やせる
増額された金額が一生涯続く
個人事業主は定年がないため働きながら繰り下げやすい
デメリット繰下げ期間中は年金を受け取れない
早期に亡くなった場合は総受給額が減る
社会保険料や税金が増える可能性がある
繰下げ受給のメリットとデメリット

個人事業主は会社員と異なり定年がないため、65歳以降も事業を継続しながら年金を繰り下げるという選択がしやすい立場にあります。健康に自信があり、長く働く意欲がある方には非常に有効な戦略です。

年金の繰下げに関しては、こちらの記事でも解説しています。あわせて参考にしてみてください。

高配当株投資:安定収入を確保

高配当株投資は、配当利回りの高い株式に投資することで、定期的な配当金収入を得る投資手法です。

年金だけでは不足する老後資金を、配当金という安定したキャッシュフローで補えます。特に日本の高配当株は年2回の配当が一般的で、銀行預金よりはるかに高い利回りを期待できます。

配当利回りとは、株価に対する年間配当金の割合です。たとえば、株価1,000円で年間配当金が40円の場合、配当利回りは4%となります。

現在の日本の高配当株では、配当利回り3〜5%の銘柄が多く存在します。仮に1,000万円を配当利回り4%の株式に投資すると、年間40万円の配当収入が得られる計算です。

投資金額配当利回り年間配当収入月額換算
500万円4%20万円約16,700円
1,000万円4%40万円約33,300円
1,500万円4%60万円5万円
具体的な投資例

高齢者世帯では月3.4万円の赤字が発生していることを考えると、1,000万円程度の高配当株投資でその不足分を補える可能性があります。

内容
メリット定期的な配当収入で年金を補完できる
インフレに強い(企業が増配する可能性がある)
NISA活用で配当金を非課税にできる
株価上昇による資産増加も期待できる
デメリット株価変動リスクがある
減配や無配になる可能性がある
個別株選びには知識と経験が必要
元本保証がない
高配当株投資のメリットとデメリット

高配当株投資の魅力は、株価が日々上下動しても、企業が支払う配当金は比較的安定している点にあります。例えば株価が3割下落しても、業績が堅調な企業なら配当は維持されるケースも少なくありません。

この特性により、定期的な現金収入を得られるため、老後の年金だけでは不足する生活費を補う収入源として活用できます。売却タイミングに悩まず、保有し続けるだけで定期収入が得られる仕組みです。

高配当株に関して詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてみてください。

年齢別の加入優先順位

年齢によって残された積立期間が異なるため、優先すべき制度は変わってきます。

20代〜30代の場合

若い世代は時間を味方につけられるため、長期的な資産形成に適した制度を優先しましょう。

優先順位

  1. iDeCo
  2. 付加年金
  3. 小規模企業共済
  4. 国民年金基金

20代〜30代は運用期間が30年以上あるため、iDeCoで投資信託を選んで長期運用すれば大きな資産を築ける可能性があります。複利効果を最大限に活かせる年代です。

30年間積み立てた場合のシミュレーション

  • 積立元本:720万円
  • 運用益:約555万円
  • 最終資産:約1,275万円

事業が軌道に乗ってきたら小規模企業共済を追加し、退職金代わりの資産を積み上げます。

国民年金基金は確定給付型で運用リスクがない反面、途中脱退できません。事業の先行きが見えにくい若い世代は、まず流動性の高い制度を優先し、事業が安定してから検討するとよいでしょう。

過去に納付猶予や免除を受けている場合、追納をして将来の年金額を増やしましょう。詳しくは、こちらの記事もご覧ください。

40代〜50代の場合

中年期は収入が安定する一方、老後までの時間が限られてきます。バランスを重視した組み合わせが重要です。

優先順位

  1. 小規模企業共済
  2. 国民年金基金
  3. iDeCo
  4. 付加年金

40代〜50代は事業が安定し、収入も増えている時期です。小規模企業共済で退職金を準備しながら、国民年金基金で確実な年金の上乗せを図りましょう。

この年代では、iDeCoの運用期間が10〜20年と短くなるため、リスクを抑えた運用が適しています。株式100%ではなく、債券やバランス型ファンドを組み入れることで安定性を高めます。

20年間積み立てた場合のシミュレーション

  • 積立元本:1,200万円
  • 運用益(予定利率1%想定):約130万円
  • 退職金:約1,330万円

また、この年代は住宅ローンや教育費の負担が重い時期でもあります。無理に上限まで拠出するのではなく、家計とのバランスを考えながら掛金を設定することが大切です。

教育費に関しては、こちらの記事で解説しています。あわせて、参考にしてみてください。

60歳以降の対策

60歳を過ぎると国民年金への加入義務はなくなりますが、まだ老後資金を増やす方法はあります。

60歳以降でも活用できる制度

  1. iDeCo(65歳まで加入可能)
  2. 小規模企業共済(事業を続けている限り加入可能)
  3. 国民年金の任意加入(65歳まで)
  4. 年金の繰下げ受給
  5. 高配当株投資

60歳時点で国民年金の納付期間が40年に満たない場合は、任意加入で満額に近づけることができます。月額17,510円の保険料で年金を増やせるため、検討する価値があります。

また、iDeCoは2022年の法改正で65歳まで加入できるようになりました。60歳以降も事業を続ける予定があれば、引き続き掛金を拠出して節税しながら資産形成が可能です(今後、さらに引き上げが行われる予定)。

60代で最も効果的なのは、年金の繰下げ受給です。65歳で受け取らず70歳まで繰り下げれば42%、75歳まで繰り下げれば84%も年金が増額されます。

個人事業主は定年がないため、健康であれば65歳以降も事業を続けられます。事業収入がある間は年金を繰り下げ、75歳から増額された年金を受け取るという戦略が非常に有効です。

さらに、それまでに積み立てた小規模企業共済やiDeCoの資産を取り崩しながら生活し、年金繰下げ期間を乗り切る方法もあります。総合的な資金計画を立てることで、より豊かな老後を実現できるでしょう。

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マイクロ法人を設立すれば厚生年金に加入できる

個人事業主でも法人を設立すれば、厚生年金に加入できます。

マイクロ法人とは、社長一人または少人数で運営する小規模な法人のことです。法人を設立して自分自身に役員報酬を支払えば、社会保険(厚生年金・健康保険)に加入する義務が生じ、会社員と同じように厚生年金を受け取れます。

マイクロ法人とは

マイクロ法人とは、社長一人または家族など少数のメンバーで運営する株式会社または合同会社のことです。

正式な法律用語ではありませんが、近年フリーランスや個人事業主の間で広まっている概念です。事業規模が小さくても法人格を持つことで、社会保険への加入や信用力の向上といったメリットを得られます。

項目内容
従業員数0〜数名(社長のみも可能)
主な形態株式会社または合同会社
設立費用株式会社:約25万円、合同会社:約10万円
マイクロ法人の特徴

マイクロ法人を設立する主な目的は、社会保険への加入です。法人の役員として自分自身に報酬を支払うことで、厚生年金と健康保険に加入できます。

法人化で厚生年金に加入するメリット

マイクロ法人を設立して厚生年金に加入すると、大きく3つのメリットがあります。

年金受給額が増える

厚生年金に加入することで、将来受け取れる年金額が増加します。

加入期間国民年金のみ厚生年金(月額報酬8万円)差額
20年69,308円/月(令和7年度)約90,000円/月+約22,000円
30年69,308円/月(令和7年度)約105,000円/月+約37,000円
40年69,308円/月(令和7年度)約122,000円/月+約54,000円
国民年金のみと厚生年金の受給額比較

※国民年金は満額、厚生年金は月額報酬8万円で計算した概算値

月額8万円という低い役員報酬でも、40年間加入すれば月5万円以上の年金増額が期待できます。これは国民年金基金やiDeCoに加入するよりも効率的なケースもあります。

65歳から85歳まで20年間受給すると仮定した場合の生涯受給額の差は以下のとおりです。

  • 40年加入:約1,296万円の増加
  • 30年加入:約888万円の増加
  • 20年加入:約528万円の増加

この増額分を考えれば、マイクロ法人の設立・維持コストは十分にペイできる計算になります。

社会保険料を抑えられる

社会保険料を抑える目的で、マイクロ法人を活用する事業主は少なくありません。個人事業主として、国民年金と国民健康保険に加入する場合と比較してみましょう。

項目個人事業主マイクロ法人(標準報酬88,000円)
年金保険料(月額)17,510円約7,300円
健康保険料(月額)※約40,000円約4,000円
合計(月額)約56,980円約11,300円

※国民健康保険料は年収500万円を想定した概算

マイクロ法人で低い報酬に設定することで、個人事業主として国民年金・国民健康保険に加入するよりも、大幅に保険料を削減できるケースがあります。

法人が負担する社会保険料は、全額を経費として計上できます。厚生年金保険料と健康保険料は、会社と従業員(役員)が折半で負担します。

報酬月額厚生年金保険料(月額)健康保険料(月額)合計(月額)
8万円約14,600円約8,000円約22,600円
うち会社負担約7,300円約4,000円約11,300円
うち個人負担約7,300円約4,000円約11,300円
マイクロ法人後の社会保険料例

※東京都の協会けんぽの料率で概算

会社負担分の月額約11,300円(年間約135,600円)は法人の経費となり、法人税の課税所得を減らせます。実質的な負担を軽減しながら、将来の年金を増やせる仕組みです。

配偶者や子どもを扶養に入れられる

厚生年金に加入すると、配偶者を社会保険の扶養に入れられます。

配偶者の年収が130万円未満であれば、第3号被保険者として扶養に入れることが可能です。この場合、配偶者は保険料を負担することなく、国民年金と健康保険の給付を受けられます。

配偶者が個人事業主として国民年金と国民健康保険に加入している場合と比較すると、年間で以下の金額を節約できます。

  • 国民年金保険料:約20.4万円/年
  • 国民健康保険料:約15万円/年(所得により変動)
  • 合計:約35万円/年の節約

さらに、配偶者も将来国民年金(老齢基礎年金)を満額受け取れるため、世帯全体の年金受給額が増加します。

配偶者を扶養に入れるには、以下の条件を満たす必要があります。

  • 配偶者の年収が130万円未満(60歳以上または障害者の場合は180万円未満)
  • 被保険者(社長)の年収の2分の1未満
  • 被保険者と同居している(別居の場合は仕送り額が扶養対象者の収入を上回ること)

個人事業主の配偶者が専業主婦(夫)または低収入の場合、マイクロ法人を設立して扶養に入れることで、世帯全体の社会保険料を大幅に削減できます。

年収の壁に関しては、こちらの記事でも解説しています。あわせて参考にしてみてください。

マイクロ法人設立の注意点

マイクロ法人にはメリットが多い一方で、いくつかの注意点もあります。

設立・維持コストがかかる

法人を設立するには初期費用がかかり、設立後も毎年維持費が必要です。

項目株式会社合同会社
定款認証手数料約50,000円不要
定款印紙代(電子定款は不要)40,000円40,000円
登録免許税150,000円60,000円
その他(印鑑作成など)約10,000円約10,000円
合計約25万円約11万円
設立時の費用

合同会社のほうが設立費用が安いため、マイクロ法人を設立する場合は合同会社を選ぶ方が多い傾向にあります。

項目年間費用
法人住民税均等割約7万円
税理士顧問料約10万円〜20万円
社会保険料(会社負担分)約13.6万円(報酬8万円の場合)
その他(会計ソフトなど)約2万円
合計約32.6万円〜42.6万円
年間維持費用

年間で30〜40万円程度の維持費がかかります。この費用を上回る節税効果や年金増額が見込めるかを慎重に検討する必要があります。

社会保険料の負担が増加する可能性がある

役員報酬を高く設定すると、社会保険料の負担が国民年金・国民健康保険より高くなる可能性があります。

月額報酬厚生年金保険料健康保険料合計(月額)年間負担
8万円約7,300円約4,000円約11,300円約13.6万円
15万円約13,700円約7,500円約21,200円約25.4万円
20万円約18,300円約10,000円約28,300円約34.0万円
報酬額別の社会保険料負担(個人負担分のみ)

※東京都の協会けんぽの料率で概算

役員報酬を高く設定すれば将来の年金は増えますが、現時点での社会保険料負担も増加します。事業の資金繰りやキャッシュフローを考慮して、適切な報酬額を設定することが重要です。

マイクロ法人を作るメリット・デメリットについて詳しく知りたい方は、こちらのQ&Aも参考にしてみてください。

国民年金を確定申告で控除する方法

個人事業主が支払った国民年金保険料は、全額を社会保険料控除として確定申告で控除できます。

社会保険料控除とは、1年間に支払った社会保険料を所得から差し引ける制度です。所得税と住民税の課税対象額が減るため、税金の負担を軽減できます。

社会保険料控除の仕組み

社会保険料控除は、その年の1月1日から12月31日までに支払った社会保険料を所得から差し引ける制度です。

控除対象となる社会保険料

  1. 国民年金保険料
  2. 国民健康保険料
  3. 後期高齢者医療保険料
  4. 介護保険料
  5. 国民年金基金の掛金

これらの保険料は支払った金額の全額を控除できます。上限額はなく、支払った分だけ所得控除が受けられる仕組みです。

生計を共にする家族の国民年金保険料を自分が支払った場合、その分も社会保険料控除の対象になります。

たとえば、大学生の子どもの国民年金保険料を親が支払っている場合、親の確定申告で控除できます。子ども自身に収入がなければ控除を受けても意味がないため、収入のある親が控除を受けたほうが節税効果が高くなります。

確定申告での手続き

社会保険料控除を受けるには、確定申告書に控除額を記入し、証明書類を添付または提示する必要があります。

確定申告書の「所得から差し引かれる金額」の欄にある「社会保険料控除」の項目に、その年に支払った国民年金保険料の合計額を記入します。

e-Tax(電子申告)を利用する場合、マイナポータルと連携すれば控除証明書のデータを自動取得できます。

手順は以下のとおりです。

  1. マイナンバーカードを用意
  2. マイナポータルにログイン
  3. e-Taxと連携
  4. 控除証明書を電子データで取得
  5. 確定申告書作成コーナーで自動入力

この方法なら、紙の控除証明書を添付する必要がなく、手続きが簡単になります。令和2年分の確定申告から、国民年金保険料の控除証明書が電子データで取得できるようになりました。

e-Taxで電子申告する場合、控除証明書のデータを送信すれば、書類の添付を省略できます。ただし、データを取得できない場合や紙で申告する場合は、控除証明書の原本を添付または提示する必要があります。

前納・まとめ払いでお得に

国民年金保険料は前納することで割引が受けられるため、手元資金の余裕がある場合は有効活用しましょう。なお、国民年金保険料には以下の前納制度があります。

前納期間納付方法割引額(令和7年度)
6ヶ月前納口座振替1,190円
1年前納口座振替4,400円
2年前納口座振替17,010円
6ヶ月前納現金・クレジット850円
1年前納現金・クレジット3,730円
2年前納現金・クレジット15,670円

最も割引率が高いのは、口座振替による2年前納で、約17,000円も安くなります。2年分の保険料は約40.8万円ですから、割引率は約4.2%です。

納付していない国民年金保険料がある場合は、追納も検討しましょう。詳しくは、こちらのQ&Aをご覧ください。

この記事のまとめ

個人事業主は会社員と異なり、国民年金のみの加入となるため、将来受け取れる年金額は大幅に少なくなります。

しかし、本記事で紹介した制度や投資手法を活用すれば、会社員以上の老後資金を準備することも可能です。重要なのは、できるだけ早く対策を始めることです。時間を味方につければ、複利効果や長期運用のメリットを享受できます。

重要なのは「今から始める」ことです。無理のない範囲で制度を組み合わせ、自分に合った年金プランを立てておくことで、将来の不安を大きく減らせるでしょう。

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柴田充輝

金融系ライター

厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1,000記事以上の執筆実績あり。

厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1,000記事以上の執筆実績あり。

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公的年金

関連する専門用語

第3号被保険者

第3号被保険者とは、日本の公的年金制度において、20歳以上60歳未満で会社員や公務員の配偶者(主に専業主婦・主夫など)として扶養されている人を指します。具体的には、第2号被保険者(厚生年金に加入している人)に扶養されている配偶者で、自分自身は収入が一定額以下で厚生年金などに加入していない人が対象です。 この制度の特徴は、自ら保険料を納めなくても、国民年金(基礎年金)の加入者として扱われ、将来的に年金を受け取る権利がある点です。制度的には、配偶者の厚生年金保険料に含まれる形で保険料が負担されている仕組みです。結婚や就労状況の変化によって資格を失うこともあるため、制度内容の正しい理解が重要です。年金やライフプランを考えるうえで、特に家庭内の役割分担や働き方に関連して注目される制度です。

第2号被保険者

第2号被保険者とは、日本の公的年金制度において、主に会社員や公務員として厚生年金保険に加入している人のことを指します。原則として20歳以上60歳未満の人が対象で、企業に勤めている正社員や一定の条件を満たすパート・アルバイトも含まれます。 第2号被保険者は、給与から毎月自動的に保険料が天引きされ、労使折半(従業員と会社が半分ずつ負担)で納付されます。この保険料は、将来の老齢厚生年金や障害厚生年金、遺族厚生年金の給付原資となります。 また、第2号被保険者に扶養されている配偶者(主に専業主婦・主夫など)は、自ら保険料を支払うことなく年金制度に加入できる**「第3号被保険者」**として扱われます。このように、第2号被保険者は日本の年金制度における中心的な役割を果たしており、年金制度の財政にも大きな影響を与える存在です。 資産運用や老後資金計画を立てる際には、自身がどの被保険者に該当するかを理解し、公的年金からの給付見込みをもとに私的年金や投資の必要性を判断することが重要です。

第1号被保険者

第1号被保険者とは、日本の公的年金制度において、20歳以上60歳未満の自営業者や農業従事者、フリーランス、無職の人などが該当する国民年金の加入者区分のひとつです。会社員や公務員などのように厚生年金に加入していない人が対象で、自分で国民年金保険料を納める義務があります。 保険料は定額で、収入にかかわらず同じ金額が設定されていますが、経済的に困難な場合には免除制度や納付猶予制度を利用できることがあります。将来の年金受給の基礎となる制度であり、自分でしっかりと手続きや納付を行う必要があります。公的年金制度の中でも、自主的な加入と負担が特徴の区分です。

国民年金基金

国民年金基金とは、自営業者やフリーランスなどの国民年金第1号被保険者が、将来の年金額を上乗せするために任意で加入できる制度です。これは、国民年金(基礎年金)だけでは老後の生活費として不十分な場合に備えて、公的に用意された追加の年金制度です。加入者は自分の希望に合わせて受け取る年金の型や金額を選ぶことができ、掛金もそれに応じて決まります。終身で年金を受け取れる選択肢もあるため、長生きリスクへの備えとして有効です。また、支払った掛金は全額が所得控除の対象となるため、節税効果も得られます。資産運用の視点では、自分で備える年金制度の一つとして、iDeCoなどと並んで重要な選択肢となります。

付加年金

付加年金とは、国民年金に加入している人が、定額の保険料(月額400円)を上乗せして納めることで、将来の年金額を増やせる制度です。自営業者やフリーランスなどの第1号被保険者が対象で、支払った付加保険料に応じて、老齢基礎年金に上乗せして受け取ることができます。 受け取り額は、付加保険料を納めた月数に200円をかけた金額が年金に加算される仕組みで、長生きするほどお得になるとされています。特に、iDeCoなどの他の自助努力型制度と併用することで、老後の年金対策に柔軟性を持たせることができます。資産運用の観点からは、少ない負担で将来の収入を増やす手段として、非常に効率的な選択肢の一つです。

国民年金

国民年金とは、日本に住む20歳以上60歳未満のすべての人が原則として加入しなければならない、公的な年金制度です。自営業の人や学生、専業主婦(夫)などが主に対象となり、将来の老後の生活を支える「老齢基礎年金」だけでなく、障害を負ったときの「障害基礎年金」や、死亡した際の遺族のための「遺族基礎年金」なども含まれています。毎月一定の保険料を支払うことで、将来必要となる生活の土台を作る仕組みであり、日本の年金制度の基本となる重要な制度です。

厚生年金

厚生年金とは、会社員や公務員などの給与所得者が加入する公的年金制度で、国民年金(基礎年金)に上乗せして支給される「2階建て構造」の年金制度の一部です。厚生年金に加入している人は、基礎年金に加えて、収入に応じた保険料を支払い、将来はその分に応じた年金額を受け取ることができます。 保険料は労使折半で、勤務先と本人がそれぞれ負担します。原則として70歳未満の従業員が対象で、加入・脱退や保険料の納付、記録管理は日本年金機構が行っています。老後の年金だけでなく、障害年金や遺族年金なども含む包括的な保障があり、給与収入がある人にとっては、生活保障の中心となる制度です。

老齢基礎年金

老齢基礎年金とは、日本の公的年金制度の一つで、老後の最低限の生活を支えることを目的とした年金です。一定の加入期間を満たした人が、原則として65歳から受給できます。 受給資格を得るためには、国民年金の保険料納付済期間、免除期間、合算対象期間(カラ期間)を合計して10年以上の加入期間が必要です。年金額は、20歳から60歳までの40年間(480月)にわたる国民年金の加入期間に応じて決まり、満額受給には480月分の保険料納付が必要です。納付期間が不足すると、その分減額されます。 また、年金額は毎年の物価や賃金水準に応じて見直しされます。繰上げ受給(60~64歳)を選択すると減額され、繰下げ受給(66~75歳)を選択すると増額される仕組みになっています。 老齢基礎年金は、自営業者、フリーランス、会社員、公務員を問わず、日本国内に住むすべての人が加入する仕組みとなっており、老後の基本的な生活を支える重要な制度の一つです。

繰下げ受給

繰下げ受給とは、本来65歳から支給される公的年金(老齢基礎年金や老齢厚生年金など)の受け取り開始を自分の希望で後ろ倒しにする制度です。66歳以降、最大75歳まで1か月単位で繰り下げることができ、遅らせた月数に応じて年金額が恒久的に増えます。 増額率は1か月当たり0.7%で、10年(120か月)繰り下げた場合にはおよそ84%の上乗せとなるため、長生きするほどトータルの受取額が増えやすい仕組みです。ただし、繰下げた期間中は年金を受け取れないため、その間の生活資金や健康状態、就労収入の見通しを踏まえて慎重に検討することが大切です。

iDeCo(イデコ/個人型確定拠出年金)

iDeCo(イデコ)とは、個人型確定拠出年金の愛称で、老後の資金を作るための私的年金制度です。20歳以上65歳未満の人が加入でき、掛け金は65歳まで拠出可能。60歳まで原則引き出せません。 加入者は毎月の掛け金を決めて積み立て、選んだ金融商品で長期運用し、60歳以降に年金または一時金として受け取ります。加入には金融機関選択、口座開設、申込書類提出などの手続きが必要です。 投資信託や定期預金、生命保険などの金融商品で運用し、税制優遇を受けられます。積立時は掛金が全額所得控除の対象となり、運用時は運用益が非課税、受取時も一定額が非課税になるなどのメリットがあります。 一方で、証券口座と異なり各種手数料がかかること、途中引き出しが原則できない、というデメリットもあります。

小規模企業共済

小規模企業共済とは、中小企業の経営者や役員、個人事業主の方のための退職金制度です。「小規模企業」という文言が含まれているとおり、一定の要件を満たす中小企業や個人事業主が対象です。 小規模企業共済制度は、独立行政法人中小企業基盤整備機構(以下、中小機構)が運営している「小規模企業共済法」という法令に基づいた共済制度です。 掛金は全額所得控除され、加入者は事業資金の借入れも可能です。 加入資格は、従業員が20人以下(商業・サービス業では5人以下)の個人事業主や会社役員などです。ただし、兼業で会社員をしているなど、給与所得を得ている場合は加入資格がないため注意が必要です。

個人年金保険

個人年金保険とは、公的年金だけでは不足しがちな老後資金を、自助努力で補うために設計された私的年金商品です。契約者が決められた期間にわたり保険料を払い込み、あらかじめ設定した開始年齢(60歳・65歳など)に達すると年金形式で受け取りが始まります。受取方法には、決められた年数だけ確実に受け取る「確定年金型」と、生存している限り終身で受け取れる「終身年金型」があり、どちらを選ぶかによって総受取額や万一の際の遺族保障の形が異なります。変額型や外貨建て型など、インフレ対応や為替分散を意識したバリエーションも登場しています。 大きな魅力の一つは税制優遇です。一定の要件(受取人が契約者本人または配偶者、払込期間が10年以上など)を満たす契約であれば、払込保険料は「個人年金保険料控除」として所得控除の対象になります。たとえば年間保険料が8万円の場合、所得税で最大4万円、住民税で最大2万8千円が控除され、課税所得を圧縮できるため実質負担を抑えながら老後資金を積み立てられる点がメリットです。 一方で注意すべき点もあります。途中解約時には元本割れが生じやすく、解約返戻金が払込総額を下回るケースが多いこと、固定利率型の商品ではインフレに追いつけない可能性があること、そして保険会社が破綻した場合でも保険契約者保護機構による補償は責任準備金の90%が上限となることです。また、税優遇制度としては個人型確定拠出年金(iDeCo)や新NISAも利用できるため、流動性・運用商品の自由度・掛金上限などを比較し、自分に合った組み合わせを検討する必要があります。 これらの特徴を踏まえると、個人年金保険は「計画的に積立を続け、税制メリットを生かしながら老後の生活費を補完したい」人に適した選択肢といえます。生活防衛資金や他の運用枠を確保したうえで長期的な資産形成の一環として活用すれば、老後のキャッシュフローに安定感をもたらす手段となるでしょう。

退職所得控除

退職所得控除とは、退職金を受け取る際に税金を軽くしてくれる制度です。長く働いた人ほど、退職金のうち税金がかからない金額が大きくなり、結果として納める税金が少なくなります。この制度は、長年の勤続に対する国からの優遇措置として設けられています。 控除額は勤続年数によって決まり、たとえば勤続年数が20年以下の場合は1年あたり40万円、20年を超える部分については1年あたり70万円が控除されます。最低でも80万円は控除される仕組みです。たとえば、30年間勤めた場合、最初の20年で800万円(20年×40万円)、残りの10年で700万円(10年×70万円)、合計で1,500万円が控除されます。この金額以下の退職金であれば、原則として税金がかかりません。 さらに、退職所得控除を差し引いた後の金額についても、全額が課税対象になるわけではありません。実際には、その半分の金額が所得とみなされて、そこに所得税や住民税がかかるため、税負担がさらに抑えられる仕組みになっています。 ただし、この退職所得控除の制度は、将来的に変更される可能性もあります。税制は社会情勢や政策の方向性に応じて見直されることがあるため、現在の内容が今後も続くとは限りません。退職金の受け取り方や老後の資産設計を考える際には、最新の制度を確認することが大切です。

高配当株

高配当株とは、企業が株主に支払う配当金の利回りが相対的に高い株式のことを指します。一般的に、配当利回り(1株当たりの年間配当金 ÷ 株価)が高い銘柄が高配当株とされ、安定したキャッシュフローを求める投資家に人気があります。特に、金融、エネルギー、インフラ関連など、景気の影響を受けにくい業種に多い傾向があります。 高配当株への投資は、定期的なインカムゲイン(配当収入)を得ることができるため、長期投資や老後資産形成にも適しています。ただし、企業の業績悪化や減配リスク、株価下落の可能性にも注意が必要です。配当だけでなく、企業の財務健全性や成長性を考慮しながら投資判断を行うことが重要です。

配当利回り

配当利回りは、株式を1株保有したときに1年間で受け取れる配当金が株価の何%に当たるかを示す指標です。計算式は「年間配当金÷株価×100」で、株価1,000円・配当40円なら4%になります。 指標には、実際に支払われた金額で計算する実績利回りと、会社予想やアナリスト予想を用いる予想利回りの2種類があります。株価が下がれば利回りは見かけ上上昇するため、高利回りが必ずしも割安や安全を意味するわけではありません。 安定配当の見極めには、配当性向が30~50%程度であること、フリーキャッシュフローに余裕があることが重要です。また、権利付き最終日の翌営業日には理論上配当金相当分だけ株価が下がる「配当落ち」が起こります。 日本株の配当は通常20.315%課税されますが、新NISA口座内で受け取る配当は非課税です。配当利回りは預金金利や債券利回りと比較でき、インカム収益を重視する長期投資家が銘柄や高配当ETFを選ぶ際の判断材料となります。

ETF(上場投資信託)

ETF(上場投資信託)とは、証券取引所で株式のように売買できる投資信託のことです。日経平均やS&P500といった株価指数、コモディティ(原油や金など)に連動するものが多く、1つのETFを買うだけで幅広い銘柄に分散投資できるのが特徴です。通常の投資信託に比べて手数料が低く、価格がリアルタイムで変動するため、売買のタイミングを柔軟に選べます。コストを抑えながら分散投資をしたい人や、長期運用を考えている投資家にとって便利な選択肢です。

インフレリスク

インフレリスクとは、物価の上昇が投資の実質的な価値や収益を減少させるリスクを指します。インフレが進行すると、通貨の購買力が低下し、同じ金額で以前よりも少ない商品やサービスしか購入できなくなります。このリスクは特に固定収益をもたらす投資、例えば債券や定期預金に顕著に現れます。債券のクーポン支払いや元本返済の実質的価値が、インフレによって目減りするためです。 投資家はインフレリスクを考慮に入れてポートフォリオを構築する必要があります。たとえば、インフレに対抗するために不動産や株式などのリアルアセットに投資する方法があります。これらの資産は、インフレの環境下で価値が上昇する傾向にあるため、インフレリスクから保護する効果が期待できます。また、インフレに連動する形で利息が上昇するインフレ連動債(TIPSなど)に投資することも、インフレリスクを管理する一つの手段です。 インフレリスクは、特に長期投資の計画において重要であり、経済全体の物価水準の変動を考慮に入れながら、資産を適切に配置し、リバランスを行うことが必要です。 さらに、異なる国や地域でのインフレ率の違いにも注意を払い、グローバルな視点からポートフォリオを見直すことも有効です。このように、インフレリスクを適切に理解し、対策を講じることで、投資の目標達成に向けた戦略的な判断が可能となります。

ポートフォリオ

ポートフォリオとは、資産運用における投資対象の組み合わせを指します。分散投資を目的として、株式、債券、不動産、オルタナティブ資産などの異なる資産クラスを適切な比率で構成します。投資家のリスク許容度や目標に応じてポートフォリオを設計し、リスクとリターンのバランスを最適化します。また、運用期間中に市場状況が変化した場合には、リバランスを通じて当初の配分比率を維持します。ポートフォリオ管理は、リスク管理の重要な手法です。

所得控除

所得控除とは、個人の所得にかかる税金を計算する際に、特定の支出や条件に基づいて課税対象となる所得額を減らす仕組みである。日本では、医療費控除や生命保険料控除、扶養控除などがあり、納税者の生活状況に応じて税負担を軽減する役割を果たす。これにより、所得が同じでも控除を活用することで実際の税額が変わることがある。控除額が大きいほど課税所得が減少し、納税者の手取り額が増えるため、適切な活用が重要である。

配当控除

配当控除とは、上場企業や一部の非上場企業から受け取る配当金に対して適用される税額控除の制度です。日本では、配当金には通常約20.315%(所得税15.315%+住民税5%)の税金が源泉徴収されますが、確定申告を行い「総合課税」を選択すると、配当控除を受けることで実際の税負担を軽減できます。 特に、所得税では配当金の最大10%(上場株式の場合)、住民税では最大2.8%が控除されるため、課税所得が一定水準以下の場合、総合課税を選ぶことで税負担が軽くなる可能性があります。ただし、所得が高い場合は累進課税により税率が上がるため、総合課税ではなく「申告分離課税」を選択したほうが有利になることもあります。どの課税方式を選ぶかは、個人の所得状況に応じて慎重に判断することが重要です。

社会保険料控除

社会保険料控除とは、健康保険、厚生年金、介護保険、雇用保険などの社会保険料を支払った場合に、その金額を所得から差し引くことができる所得控除の一種です。これは、納税者の生活を守る公的制度に協力しているという前提で、税負担を軽くするための仕組みです。 本人が支払った分だけでなく、配偶者や親族の保険料を本人が負担している場合にも控除の対象になります。会社員であれば給与から自動的に天引きされた社会保険料も対象となっており、年末調整や確定申告の際に自動的に反映されるケースが多いです。税額を計算する際の重要な調整要素となるため、税制の基本知識として知っておくと役立ちます。

公的年金等控除

公的年金等控除とは、年金を受け取っている人の所得税や住民税を計算する際に、年金収入から一定額を差し引ける控除制度です。これにより課税対象となる金額が減り、税負担を軽減できます。 対象となるのは、国民年金・厚生年金・共済年金などの「公的年金」に限られます。これらは所得税法上の「公的年金等」に分類され、控除の対象となります。 一方で、iDeCo(個人型確定拠出年金)や企業型DC、個人年金保険などは、たとえ年金形式で受け取ったとしても税法上は「公的年金等」に該当せず、公的年金等控除の対象外です。これらは「雑所得(その他)」として課税されます。 控除額は受給者の年齢と年金収入の額に応じて異なり、特に65歳以上の高齢者には手厚い控除が設けられています。 | 年齢 | 公的年金等の収入額 | 控除額 | | --- | --- | --- | | 65歳未満 | 130万円以下 | 60万円 | | | 130万円超〜410万円以下 | 収入額 × 25% + 37.5万円 | | | 410万円超〜770万円以下 | 収入額 × 15% + 78.5万円 | | | 770万円超 | 一律195.5万円 | | 65歳以上 | 330万円以下 | 110万円 | | | 330万円超〜410万円以下 | 収入額 × 25% + 27.5万円 | | | 410万円超〜770万円以下 | 収入額 × 15% + 68.5万円 | | | 770万円超 | 一律195.5万円 | たとえば、65歳以上で年金収入が250万円であれば、110万円の控除が適用され、課税対象となる所得は140万円に圧縮されます。

マイクロ法人

マイクロ法人とは、社長一人やごく少数の役員だけで運営される小規模な法人を指します。会社法上は通常の株式会社や合同会社と同じ法人格を持ちますが、実態としてはほとんど個人事業に近い形で運営されることが多いのが特徴です。個人事業主として活動する代わりに法人を設立することで、節税効果や社会保険料の軽減、取引先からの信用力向上などのメリットが得られる一方、法人の設立費用や維持コスト、決算や税務申告などの事務負担も発生します。資産運用の観点からは、個人と法人を組み合わせて収入や資産管理を最適化する方法として注目されており、特にフリーランスや小規模事業者に利用されやすい仕組みです。

e-Tax

e-Taxとは、国税庁が運営するインターネット上の税務手続きシステムで、所得税の確定申告や源泉所得税の納付などを自宅や職場からオンラインで行えるサービスです。 紙の申告書を税務署へ持参・郵送する必要がなくなり、24時間いつでも送信できるうえ、申告ミスの自動チェックや過去データの再利用といった利便性があり、手続き時間の短縮や控除額の自動計算による精度向上に役立ちます。 また、電子納税と連携すれば振替納税の手数料が不要となり、税金の支払いもスムーズになります。マイナンバーカードとICカードリーダー、あるいはスマートフォンの対応アプリを利用して本人認証を行うため、セキュリティ面でも高い安全性が確保されています。

社会保険料

社会保険料とは、健康保険や厚生年金保険、雇用保険など、社会保険制度を運営するために加入者が負担するお金のことです。会社員の場合は、給与から天引きされ、事業主と従業員が半分ずつ負担する仕組みになっています。 自営業者やフリーランスの場合は、国民健康保険や国民年金の保険料を自分で納めます。社会保険料は、病気やケガ、老後の生活、失業といった生活上のリスクに備えるためのもので、将来の給付を受けるための重要な拠出です。資産運用の観点からは、社会保険料は毎月のキャッシュフローに影響する固定費であり、長期的なライフプラン設計や可処分所得の把握に欠かせない要素です。

確定申告

確定申告とは、1月1日から12月31日までの所得を計算して翌年の2月16日から3月15日に申告し、納税する手続き。多くの会社では年末調整を経理部がしてくれるが、確定申告をすると年末調整では受けられない控除を受けることができる場合もある。確定申告をする必要がある人が確定申告をしないと加算税や延滞税が発生する。

役員報酬

役員報酬とは、企業の経営者や役員に支払われる報酬のことです。報酬内容は「基本報酬(固定給)」「業績連動報酬」「株式報酬」など多岐にわたり、企業の業績や本人の貢献度に応じて決められます。 特に経営者自身が自分の報酬を決める立場にある場合、適正な金額設定や報酬の構成は、税務や将来の資産形成にも大きく関わります。たとえば、株式報酬は中長期的な資産運用につながる手段としても注目されています。 また、役員報酬の決定には、企業統治(コーポレートガバナンス)の観点から透明性や合理性も重要視されており、社外取締役や報酬委員会の関与なども求められます。 将来的なFIRE(早期リタイア)や資産拡大を考えるなら、役員報酬をどう設計するかが、重要な資産戦略の一つになります。

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