損しない退職金の受け取り方は?年金か一時金と税金の関係も解説
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公開:
2024.03.29
更新:
2024.12.11
「退職金や企業年金のもらい方はいくつか方法があるって聞いたけど、一番得する方法を知りたい」このような疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
退職給付制度には「退職一時金制度」と「企業年金制度」があります。企業によっては、企業年金の受け取り方として「一時金」「年金」「一時金と年金の併用」という形で、複数用意しているところもあります。
企業年金は、もらい方によって所得の分類が異なります。税金や社会保険料への影響の仕方も異なるため、お得な受け取り方について理解しましょう。
こちらの記事では、退職金のもらい方や具体的な受取額のシミュレーション結果を解説します。最後まで読めば、得をする退職金のもらい方や自分に合った受取方法を把握できるでしょう。
特に定年退職を控えている50代の方に役立つ内容となっているので、ぜひ最後まで参考にしてみてください。なお、本記事では退職一時金と企業年金を総称して「退職金」という言葉を用いて解説します。
企業が導入する年金制度は確定拠出年金(企業型DC)と確定給付企業年金(DB)の2種
企業に導入されている年金制度は、確定拠出年金(企業型DC)と確定給付企業年金(DB)があります。どちらの年金制度を導入しているかは企業によって異なります。事前にご自身の会社の年金制度について確認しましょう。
確定拠出年金(企業型DC)とは、企業が社員のために掛金を拠出し、社員が自己の責任において金融商品を選択して運用する仕組みです。実際に受け取れる金額は運用成績によるため、勤続年数だけでなく選択する金融商品によっても変動します。
確定給付企業年金は、企業が将来の年金給付額を約束し、必要な掛金を企業が拠出する仕組みです。社員は運用責任を負わず、会社が運用責任を負う点が特徴です。
DBと企業型DCは運用方式に違いがありますが、受け取り方には特に違いがありません。そのため、本記事では特に断らない限り、DBと企業型DCの区別なくご説明します。
なお、確定拠出年金と確定給付企業年金の運用方式やその違いについては、こちらの記事で詳しく解説しているため、あわせて参考にしてみてください。
参考: 確定給付年金(DB)と確定拠出年金(企業版DC)はどっちが得?2つの違いとは?
企業年金の3つの受け取り方
企業年金のもらい方は、主に「一時金」「年金」「一時金と年金の併用」の3通りがあります。企業によってもらい方の選択肢は異なるため、事前に確認しておくとよいでしょう。
それぞれのメリットとデメリットをまとめると、以下の表のようになります。
一時金 | 年金 | 一時金+年金 | |
---|---|---|---|
使える控除 | 退職所得控除 | 公的年金等控除 | 退職所得控除 公的年金等控除 |
所得分類 | 退職所得で分離課税 | 雑所得で総合課税 | • 一時金の部分は退職所得で分離課税 • 年金の部分は雑所得で総合課税 |
メリット | • 退職所得控除額が大きい • まとまった現金を受け取れる • 社会保険料がかからない | • 公的年金の上乗せとして受け取れるため、老後資金を使い込むリスクが低い • 運用しながら受け取るため、受取総額は増える | • それぞれの控除を利用できる • ライフプランに合わせて柔軟に退職金を受け取れる |
デメリット | • 計画的にお金を使う必要がある • 勤続年数が短い場合は控除額が小さい | • 控除額が小さい • 社会保険料の負担が増える • インフレに対応できない | 一時金と年金の配分を自分で考える手間がかかる |
それぞれにメリットとデメリットがあるため、定年時の資産状況や健康状態など、さまざまな要素を考えなければなりません。また、一時金と年金では所得分類が異なるため、税金や社会保険料への影響度合いにも差があります。
年金生活者「年収211万円の壁」
65歳以降の年金生活者には「211万円の年収の壁」があることをご存じでしょうか。(単身世帯の場合は155万円の壁)。退職金を年金で受け取る場合は、公的年金と企業年金を合わせて211万円を超えないか確認することをおすすめします。
年金収入が211万円以下に収まっていると「住民税非課税世帯」に該当し、所得税や住民税が軽減されます。また、国民健康保険料と介護保険料の負担が軽くなり、税金と社会保険料の負担を抑えることが可能です。
公的年金だけでは211万円を超えないものの、企業年金を受け取ることで211万円の壁を超えてしまう、というケースは考えられます。なお、非課税限度額は住んでいる地域の「級地区分」によって異なります。級地区分は1級地・2級地・3級地に分けられているため、住んでいる自治体の級地区分を確認しておきましょう。
退職金は一時金でもらったほうが得することが多い
結論、退職金は一時金でもらったほうが手取り額が多くなり、得をする可能性が高い傾向にあります。税金や社会保険料の負担を抑えて、手元に多くのお金を残したい場合は、一時金での受け取りを検討しましょう。
具体的に60歳~69歳に到達するまでの10年間について、以下の条件でシミュレーションします。
- 60歳で定年、退職金受け取り
- 60〜65歳まで定年後再雇用、年収300万円
- 退職金2,500万円(勤続年数38年)
- 年金受け取りの場合は60歳以降10年間で受け取る
- 企業年金は毎年1%で運用する
- 65歳からの公的年金は180万円
受取総額・税金と社会保険料の負担・手取り額をまとめると、以下のようになります。
受け取り方 | 受取総額 | 税金・社会保険料 | 手取り額 |
---|---|---|---|
一時金 | 4,900万円 | 約445万円 | 約4,455万円 |
年金 | 約5,050万円 | 約838万円 | 約4,212万円 |
一時金+年金 | 約4,930万円 | 約500万円 | 約4,430万円 |
それぞれ詳細な計算式に関して、以下で解説します。なお、住民税や国民健康保険料・介護保険料に関しては自治体ごとに差があるため、あくまでも目安である点に留意してください。
シミュレーション1.全額一時金
退職金を全額一時金で受け取った場合、手取り額が最も多くなる可能性が高いです。長い目で見て、多くの金額を手元に残したい場合は、退職金の全額を一時金で受け取るとよいでしょう。
60歳で定年を迎えて、退職金2,500万円を一時金で受け取った場合、以下のようなシミュレーション結果になります。
時期 | 受取総額 | 税金・社会保険料 | 手取り額 |
---|---|---|---|
60歳で退職金を受け取るとき | 2,500万円 | 約35万円 | 約2,465万円 |
60~64歳で給与収入を受け取るとき | 1,500万円 | 約325万円 | 約1,175万円 |
65歳から69歳まで年金収入を受け取るとき(年間の社会保険料は15万円で計算) | 900万円 | 約85万円 | 約815万円 |
合計 | 4,900万円 | 約445万円 | 約4,455万円 |
60歳から69歳までの10年間で負担する税金・社会保険料は約445万円、受取総額に占める税金・社会保険料の割合は約9.0%です。退職金だけでなく、給与や公的年金を含めても受取総額の9割以上を手元に残せます。
退職所得には、社会保険料がかかりません。また、分離課税となっており他の所得と合算して税額を算出しない点が、退職金を一時金で受け取ったときに税金と社会保険料負担を抑えられる理由です。
シミュレーション2.全額年金(10年間で受け取る)
退職金の全額を企業年金として受け取ると、受け取らずに運用する期間がある分、受取総額が増えます。しかし、以下のシミュレーション結果のように、税金と社会保険料負担も増えてしまいます。
時期 | 受取総額 | 税金・社会保険料 | 手取り額 |
---|---|---|---|
60~64歳で給与収入・企業年金を受け取る | 約2,825万円 【内訳】 給与:1,500万円 企業年金:約1,325万円(運用益を含める)※ | 約460万円 | 約2,365万円 |
65歳から69歳まで年金収入・企業年金を受け取るとき(年間の社会保険料は40万円で計算) | 2,225万円 【内訳】 公的年金:900万円 企業年金:約1,325万円(運用益を含める)※ | 約378万円 | 約1,847万円 |
合計 | 約5,050万円 | 約838万円 | 約4,212万円 |
退職金の受け取りを全額年金にした場合、負担する税金・社会保険料は約838万円です。受取総額に占める税金・社会保険料の割合は約16.5%で、全額一時金で受け取る場合よりも負担が重くなっていることがわかります。
年金で受け取った分は「雑所得」で総合課税となり、給与や公的年金と合算して税金や社会保険料を算出します。このように、退職金の全額を年金で受け取る場合は、負担が大きくなりやすい点に留意しましょう。
シミュレーション3.一時金(2,000万円)+年金(500万円を10年間で受け取る)
勤務先によっては、退職金を一時金と年金の併用で受け取ることも可能です。一時金と年金を併用すると、退職所得控除を活用できる分、全額年金で受け取る場合よりも手取り額が増えます。
退職時に2,000万円を一時金で受け取り、500万円を年金で受け取る場合のシミュレーション結果は以下のとおりです。
時期 | 受取総額 | 税金・社会保険料 | 手取り額 |
---|---|---|---|
60歳で退職金を受け取るとき | 2,000万円 | 0円 | 2,000万円 |
60~64歳で給与収入・企業年金を受け取るとき | 約1,765万円 【内訳】 給与:1,500万円 企業年金:約265万円(運用益を含める)※2 | 約350万円 | 約1,415万円 |
65歳から69歳まで年金収入を受け取るとき(年間の社会保険料は20万円で計算) | 約1,165万円 【内訳】 公的年金:900万円 企業年金:約265万円(運用益を含める)※2 | 約150万円 | 約1,015万円 |
合計 | 約4,930万円 | 約500万円 | 約4,430万円 |
一時金と年金を併用した場合、手取り額は全額を年金で受け取る場合よりも多くなり、全額を一時金で受け取る場合よりも少なくなります。
一時金は退職所得控除に収まっていますが、年金で受け取る分があることで、税金と社会保険料負担が増えていることがわかります。以上のシミュレーション結果から「年金で受け取る部分があれば、税金と社会保険料負担が増えやすい」と言えるでしょう。
おすすめの退職金のもらい方
手取り額だけ見ると、退職金は一時金でもらったほうがお得になりやすいです。しかし、定年時の生活状況や大金を取り扱える自信があるかによって、ベストな退職金のもらい方は異なります。
以下で、おすすめの退職金のもらい方をケースごとに解説します。あなたに最も合うもらい方を選択して、充実した老後生活を送りましょう。
一時金でもらうのがおすすめの人
退職金のもらい方で、一時金が向いている人の特徴は以下のとおりです。
- 勤続年数が長い人
- 手取り額を増やしたい人
- 手元に現金を置いておきたい人
- 退職金を資産運用に回す予定がある人
- iDeCoを年金で受け取る予定の人
一時金で受け取ると、退職所得控除を受けられます。退職所得控除は勤続年数が長いほど大きくなることから、手取り額を増やしたい場合は一時金での受け取りが向いています。
手元に現金を置いておきたい人も、一時金での受け取りを検討しましょう。住宅ローンの返済や子どもの進学資金などの資金ニーズがある人や、手元に資金を確保して資産運用をしたい場合は、年金よりも一時金でまとめて受け取るほうが好都合である可能性が高いです。
iDeCoを行っており、年金で受け取る予定の人も、退職金は一時金でもらうとよいでしょう。公的年金の上乗せはiDeCoで行い、退職金でまとまったお金を確保できれば、多額の出費にも対応しつつ老後の年金を手厚くできます。
年金でもらうのがおすすめの人
退職金のもらい方で、年金がおすすめの人は以下のとおりです。
- まとまったお金を管理できる自信がない人
- 計画的にお金を使いたい人
- 長生きリスクに備えたい人
退職金は、場合によっては1,000万円以上に及びます。まとまったお金がいきなり手元に入ってきて、うまく管理できる自信がない人は、年金形式でもらうと心理的に安心できるのではないでしょうか。
退職金を年金で受け取りつつ公的年金を組み合わせた資金計画
退職金を年金形式で受け取ることで、60歳から69歳までの生活費は勤労収入と企業年金で賄い、公的年金は70歳以降に繰り下げるという手段もあります。
公的年金を繰り下げると、1ヶ月あたり0.7%増額された金額を一生涯受け取ることが可能です(繰り上げると1ヶ月あたり0.4%減額された金額を一生涯受け取る)。公的年金を受け取るタイミングを見据えたうえで、退職金の受け取り方を考えてみるとよいでしょう。
なお、65歳をベースに公的年金を繰り上げ受給・繰り下げ受給した場合の受給率や損益分岐点は以下のとおりです。
60歳 | 65歳 | 70歳 | 75歳 | |
---|---|---|---|---|
受給率 | 76.0% | 100% | 142.0% | 184.0% |
額面ベースの損益分岐点(65歳で受給開始するときと比較) | 80歳10ヶ月 | ー | 81歳11ヶ月 | 86歳11ヶ月 |
繰り下げ受給を選択すると、受給開始から約12年経過すれば、65歳で受給開始するケースよりも年金額が多くなることがわかります。企業年金や自分自身で資産運用をする場合と比較しつつ、最適な受け取り方を検討してみてください。
一時金+年金でもらうのがおすすめの人
退職金を、一時金と年金の併用でもらうのがおすすめの人は以下のとおりです。
- 退職金が退職所得控除額を上回る人
- 一部まとまったお金を用意したい人
- 資産運用に一部資金を回したい人
退職金が退職所得控除額を上回る人は、退職所得控除の範囲内で一時金をもらうと、受け取れる金額を最大化できる可能性があります。退職所得控除と公的年金等控除の両方を活用できるため、税金の負担をを減らせるでしょう。
上場企業をはじめ、退職金制度が手厚い企業に勤務している場合、退職金が退職所得控除を上回る可能性があります。この場合、一時金と年金の併用が有力な選択肢となるでしょう。
一部まとまった金額で退職金を受け取りたい場合も、一時金と年金の併用を検討する余地があります。まとまった支出が予定されている場合は一時金でカバーし、残りは年金で受け取ることで、安定した収入を確保できます。
資産運用を始めたい人や既に始めている人で、運用資金を用意したい場合も、退職金の一部を一時金で受け取る方法が考えられます。リスク許容度の範囲内で資産運用をすることで、あなたの資産寿命を延ばせるでしょう。
少しでも退職金をお得に受け取るために意識するべき4つのこと
退職金は定年後の生活を支えるための重要な資金です。少しでも退職金をお得に受け取るために、意識すべきことがあります。
退職金の額面だけに捉われるのではなく、あなたの生活スタイルやマネーリテラシーによって、合っている退職金のもらい方は異なります。
勤務先の退職金ルールを確認する
勤務先の退職金ルールはどうなっているか確認しましょう。多くの企業では、退職金額を勤続年数と最終給与を基に計算していますが、詳細な計算方法は企業によって異なります。
年金の受け取り開始年齢や、途中で受け取り方法の変更が可能かどうかも確認しましょう。また、退職金のもらい方の選択肢についても確認することが欠かせません。
勤務先の退職金ルールを確認しておかないと、「年金で受け取ろう」と考えていても「そもそも一時金でしか受け取れなかった」という事態になりかねません。あなたにとって最適な方法で退職金を受け取るためにも、勤務先の規定を確認することが大切です。
公的年金の受給額を把握する
企業年金の受給額だけでなく、公的年金の受給額も把握しましょう。公的年金と企業年金は雑所得で総合課税の対象となり、受給額が増えるほど税金と社会保険料の負担が重くなります。
そのため、受取総額だけに意識を向けてしまうと、トータルで見ると損をしてしまう事態になりかねません。税金と社会保険料の負担をイメージするうえで、公的年金と企業年金の受給額を把握することは欠かせません。
税金と社会保険料の負担だけでなく、長生きリスクへの対応を考える際にも、公的年金の受給額を把握することは大切です。多くの企業年金は有期年金ですが、公的年金は終身年金です。
つまり、長生きリスクに対応するには、終身にわたって受け取れる公的年金を軸に考える必要があります。何歳まで生きても確実に受給できる点は公的年金の強みなので、企業年金を活用しながら公的年金の繰り下げ受給を検討するとよいでしょう。
ねんきん定期便やマイナポータルで、受給できる公的年金額は把握できます。「繰り下げたほうがより安心して老後生活を送れる」と感じる場合は、企業年金を公的年金を受給するまでのつなぎとして活用する選択も検討してみてください。
現在の預貯金額を確認する
現在の預貯金額と、今後の収支状況をシミュレーションしましょう。現在と退職時の預貯金額によって、最適な退職金のもらい方が異なるためです。
例えば、退職金を受け取る時期に十分な預貯金がなさそうな場合、当面の生活費と万が一の入院・手術のリスクに備える必要があります。退職金を一時金でもらうか、一部を一時金でもらうことで、当面の生活費と突発的なリスクへの備えを用意できるでしょう。
逆に、手元に十分な預貯金があれば、退職金の一部を投資に回すのがおすすめです。預貯金のままお金を保有すると、昨今のようなインフレが起きたときに、資産が目減りしてしまいます。
資産の一部を投資に回すことで金融商品から利益を得られ、資産の購買力を維持できます。退職金の受け取りで損をしないためには、退職金をもらったあとの生活を守ることと、投資を通じて資産の購買力を守ることまで考えることが大切です。
自分のマネーリテラシーの高さを考える
退職金は一般的に大金なので、自分のマネーリテラシーとの兼ね合いを考えましょう。いきなり大金が手元に入っても、計画的に使えなければ、無駄遣いをして大切な資産を失いかねません。
退職金は定年後の生活を支える生活資金である以上、無駄遣いで目減りさせてしまうのは避けるべきです。老後の生活資金や将来の介護・医療などの出費に備えるために、退職金は確保しなければなりません。
そのため、マネーリテラシーに自信がない方は、無駄遣いを避けるためにも退職金を年金で受け取るほうが無難と言えます。
マネーリテラシーが高く、生活防衛資金に回す分と投資に回す分などを管理できる方の場合は、一時金で受け取っても問題が起こる可能性は低いでしょう。イメージしている老後生活を実現するために、最も合っている退職金の受け取り方を考えてみてください。
50代から退職金の受け取り方を考える重要性
50代は定年を徐々に意識する年代であることから、退職金のもらい方を考える場面も増えるでしょう。実際に、50代から退職金のもらい方を考えることは重要です。
退職金の手取り額が最もお得になる可能性が高いのは、退職金を全額一時金でもらうことです。しかし、最適な退職金のもらい方は、定年時に保有している財産や60歳以降の働き方などのライフスタイルによって異なります。
退職金のもらい方で損をしない判断を下すためにも、50代の内から以下について考えておくとよいでしょう。
- 何歳まで働くのか
- 退職金で住宅ローンを完済する予定はあるか
- 定年時に子どもは何歳か、教育資金は必要か
- 受給できる公的年金はいくらか
- 公的年金を繰り下げる必要性があるか
- 定年時の資産はどの程度か、理想の生活水準を維持できるか
- 一時金でもらう場合、まとまった資金をうまく取り扱えるか
- 退職金を使って投資をする考えがあるか、投資経験はどの程度か
簡単にまとめると、退職金をもらうタイミングの前後でまとまった出費が見込まれる場合は、一時金または一部を一時金でもらうとよいでしょう。まとまった出費の予定がなく、いきなり大金を扱える自信がない場合は、年金でもらうのが資産を守るうえでベストな選択かもしれません。
このように、退職金を一時金でもらうべきか年金でもらうべきかは、損得だけでなく公的年金との兼ね合いやライフスタイルも大きく影響します。
退職金のもらい方は、さまざまな要因を考える必要があります。退職が直前に迫って急に退職金のもらい方を考えても、ベストな判断を下すのは難しいでしょう。50代のように、退職金の受け取りが見えてきたものの、まだじっくりと考える時期に考えることで、後悔のない選択ができます。
勤務先の退職金ルールを確認したうえで、ライフスタイルや価値観、理想としている老後生活をイメージしてみてください。退職後にゆとりのある生活を送りつつ、自由な時間を謳歌するためにも、ベストな退職金のもらい方を考えることは有意義です。
まとめ:退職金は受け取り方次第で損得に大きな差が出る
退職金は、もらい方次第で手取り額に大きな差が出ます。人によっては、トータルの手取り額に数百万円の差が出る可能性もあるため、適当にもらい方を選ぶべきではありません。
退職金のもらい方を考えるときは、損得だけでなくあなたや家族の生活スタイルやマネーリテラシーなども加味しましょう。損得だけで判断すると、結果的に資金ニーズが満たせないリスクや無駄遣いにつながるリスクがあるためです。
安心して老後生活を送るためには、あなたが受け取れる退職金額を把握したうえで、生活に合ったもらい方を選ぶことが大切です。「自分だけでは退職金のもらい方を判断できない」という方は、資産運用の専門家への相談も検討しましょう。
柴田充輝
金融系ライター
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1,000記事以上の執筆実績あり。
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1,000記事以上の執筆実績あり。
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