個人年金を受け取る際に雑所得としての確定申告は不要ですか?
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2025/09/08 09:09
男性
60代
個人年金保険を受け取るとき、受け取った年金額は雑所得として扱われると聞きました。では、毎年の確定申告は必ず必要になるのでしょうか?それとも年金額が少ない場合や、会社員で給与から源泉徴収されている場合には申告が不要になるケースもあるのでしょうか。例えば、公的年金等控除の対象にならない点や、20万円以下なら申告不要とされる特例の適用有無など、具体的にどのような条件で確定申告が不要になるのかを知りたいです。
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
個人年金保険を受け取る際の課税は「その年の年金額から、対応する払込保険料部分(必要経費)を差し引いた残り」が雑所得となります。誤解されやすい「払込総額を超えた年から課税」という仕組みではなく、毎年の差額で判定される点が大切です。この計算は保険会社が行い、通知書(年金支払通知書など)に明記されますので、受け取った書類を確認すれば十分です。
では、雑所得が生じた場合に必ず確定申告が必要かというと、そうではありません。次の基準で考えます。
- 差額がゼロ以下で雑所得が出ない年は、申告不要です。
- 雑所得が20万円以下で、給与所得が年末調整で確定している会社員は、いわゆる「20万円ルール」により所得税の確定申告は不要です。ただし、このルールは住民税には適用されませんので、市区町村に別途申告が必要なケースがあります。
- 雑所得が20万円を超える場合、あるいは年末調整の対象外(給与が2,000万円超など)の場合は、所得税の確定申告が必要になります。
さらに注意したいのは、個人年金は「公的年金等控除」の対象外であることです。そのため控除の恩恵を受けられず、課税対象になりやすい点は見落とせません。加えて、差額が25万円以上ある場合は、支払時に10.21%の源泉徴収が行われ、翌年の確定申告で精算する流れとなります。
まとめると、個人年金に関して確定申告が必要かどうかは「毎年の差額の有無と金額」で変わります。まずは保険会社から届く通知書を確認すること、そして「20万円ルール」と住民税の違いを押さえておくことが、実務上もっとも重要な視点です。
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個人年金保険
個人年金保険とは、公的年金だけでは不足しがちな老後資金を、自助努力で補うために設計された私的年金商品です。契約者が決められた期間にわたり保険料を払い込み、あらかじめ設定した開始年齢(60歳・65歳など)に達すると年金形式で受け取りが始まります。受取方法には、決められた年数だけ確実に受け取る「確定年金型」と、生存している限り終身で受け取れる「終身年金型」があり、どちらを選ぶかによって総受取額や万一の際の遺族保障の形が異なります。変額型や外貨建て型など、インフレ対応や為替分散を意識したバリエーションも登場しています。 大きな魅力の一つは税制優遇です。一定の要件(受取人が契約者本人または配偶者、払込期間が10年以上など)を満たす契約であれば、払込保険料は「個人年金保険料控除」として所得控除の対象になります。たとえば年間保険料が8万円の場合、所得税で最大4万円、住民税で最大2万8千円が控除され、課税所得を圧縮できるため実質負担を抑えながら老後資金を積み立てられる点がメリットです。 一方で注意すべき点もあります。途中解約時には元本割れが生じやすく、解約返戻金が払込総額を下回るケースが多いこと、固定利率型の商品ではインフレに追いつけない可能性があること、そして保険会社が破綻した場合でも保険契約者保護機構による補償は責任準備金の90%が上限となることです。また、税優遇制度としては個人型確定拠出年金(iDeCo)や新NISAも利用できるため、流動性・運用商品の自由度・掛金上限などを比較し、自分に合った組み合わせを検討する必要があります。 これらの特徴を踏まえると、個人年金保険は「計画的に積立を続け、税制メリットを生かしながら老後の生活費を補完したい」人に適した選択肢といえます。生活防衛資金や他の運用枠を確保したうえで長期的な資産形成の一環として活用すれば、老後のキャッシュフローに安定感をもたらす手段となるでしょう。
雑所得
雑所得(ざつしょとく)とは、所得税法において定められた10種類の所得のうち、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得、一時所得のいずれにも該当しない所得を指します。具体的には、公的年金や副業による収入、仮想通貨の売却益、FXの利益、非営業用貸金の利子などが該当します。 経費を差し引いた金額が課税対象となり、総合課税の対象となります。また、雑所得が年間20万円を超える場合、確定申告が必要になります。
公的年金等控除
公的年金等控除とは、年金を受け取っている人の所得税や住民税を計算する際に、年金収入から一定額を差し引ける控除制度です。これにより課税対象となる金額が減り、税負担を軽減できます。 対象となるのは、国民年金・厚生年金・共済年金などの「公的年金」に限られます。これらは所得税法上の「公的年金等」に分類され、控除の対象となります。 一方で、iDeCo(個人型確定拠出年金)や企業型DC、個人年金保険などは、たとえ年金形式で受け取ったとしても税法上は「公的年金等」に該当せず、公的年金等控除の対象外です。これらは「雑所得(その他)」として課税されます。 控除額は受給者の年齢と年金収入の額に応じて異なり、特に65歳以上の高齢者には手厚い控除が設けられています。 | 年齢 | 公的年金等の収入額 | 控除額 | | --- | --- | --- | | 65歳未満 | 130万円以下 | 60万円 | | | 130万円超〜410万円以下 | 収入額 × 25% + 37.5万円 | | | 410万円超〜770万円以下 | 収入額 × 15% + 78.5万円 | | | 770万円超 | 一律195.5万円 | | 65歳以上 | 330万円以下 | 110万円 | | | 330万円超〜410万円以下 | 収入額 × 25% + 27.5万円 | | | 410万円超〜770万円以下 | 収入額 × 15% + 68.5万円 | | | 770万円超 | 一律195.5万円 | たとえば、65歳以上で年金収入が250万円であれば、110万円の控除が適用され、課税対象となる所得は140万円に圧縮されます。
源泉徴収
源泉徴収とは、給与や報酬、利子、配当などの支払いを受ける人に代わって、支払者があらかじめ所得税を差し引き、税務署に納付する制度です。特に給与所得者の場合、会社が毎月の給与から所得税を控除し、年末調整で過不足を精算します。 この制度の目的は、税金の徴収を確実に行い、納税者の負担を軽減することです。例えば、会社員は確定申告を行わずに納税が完了するケースが多くなります。ただし、個人事業主や一定の副収入がある人は、源泉徴収された金額を基に確定申告が必要になることがあります。 また、配当金や利子の源泉徴収税率は原則20.315%(所得税15.315%+住民税5%)ですが、金融商品によって異なる場合があるため、事前に確認が必要です。
住民税
住民税は、居住地の自治体(市区町村および都道府県)に納める地方税で、地域の行政サービスを賄うために使われます。住民税は「所得割」と「均等割」の2つで構成されます。 所得割は、前年の所得に基づき一律の税率(多くの場合10%)で計算されます。一方、均等割は所得に関わらず一律の金額(全国基準では年額5,000円程度)を納める部分です。 住民税は、所得税のような累進課税ではなく比例課税が基本で、納税額は所得や扶養状況などにより異なります。また、住民税は原則として前年の所得に基づき計算されるため、納税は翌年度に行われます。これにより、地域社会の運営を支える重要な財源となっています。
20万円ルール
20万円ルールとは、給与所得者が副業や投資などで得た所得が年間で20万円以下の場合には、確定申告をしなくてもよいとされる税務上の取り扱いのことを指します。 これは、会社員などが本業の給与所得以外に小さな副収入を得るケースが増えていることを踏まえ、少額の所得について申告義務を免除する仕組みです。ただし、住民税の申告は必要になる場合があり、また医療費控除など他の理由で確定申告を行う場合には、この副収入も合わせて申告しなければなりません。投資初心者にとっては、「副業や投資の利益が少額なら確定申告が不要になる特例」と理解するとわかりやすいでしょう。