貸家建付地とはなんですか?なぜ相続税対策になるのでしょうか?
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2025/09/18 10:24
男性
60代
人に貸している家やアパートが建っている土地は、相続税を計算するときに評価が下がると聞きました。こうした土地のことを『貸家建付地』というそうですが、なぜ評価が安くなって相続税の節約につながるのでしょうか?
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
貸家建付地とは、人に貸している家やアパートが建っている土地のことを指し、相続税の計算上は自分や家族が自由に使える土地(自用地)よりも低く評価されます。理由は、借家人が住んでいることで所有者が自由に利用・処分できる権利が制限されているため、その分だけ市場での自由度や価値が下がると考えられるからです。
評価額は「自用地としての評価額 × {1 − (借家権割合 × 賃貸割合)}」という計算式で求められます。借家権割合は国が一律に定めており通常30%、賃貸割合はその土地がどの程度貸し出されているかを示します。たとえば、更地評価で1億円の土地にアパートが建ち、全室を貸している場合、計算は「1億円 × {1 − (0.3 × 1.0)} = 7,000万円」となり、評価額が3,000万円減少します。税率が30%なら相続税は約900万円減る計算です。
このように、貸家建付地は「第三者に貸すことで土地の自由度が制限され、その分評価額を低く算定できる」仕組みによって、結果的に相続税の節約につながります。ただし、空室が多ければ効果は薄れますし、売却時には市場価格が基準になるため、評価額と実際の売値が異なる点には注意が必要です。
つまり、貸家建付地は不動産を賃貸することで得られる収益と、相続税評価額の引き下げによる節税効果の両面を活かせる仕組みといえます。
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貸家建付地(かしやたてつけち)
貸家建付地(かしやたてつけち)とは、貸家が建っている土地のことで、その土地は貸家とセットで利用されているため、自由に使える範囲や価値が制限される場合があります。 例えば、自分がその土地を所有していても、上に貸家が建っていて他人が住んでいる場合、自由に更地にしたり建物を取り壊したりすることは契約や法律上できません。このため、実際の市場価値は同じ場所の更地より低く評価されることがあります。税務上の評価では、貸家が存在することで土地の利用価値が制限される分を反映して計算される仕組みになっています。
自用地
自用地とは、その土地を所有者自身が住居や事業などのために直接使っている土地のことを指します。たとえば、自分の家を建てて住んでいる土地や、自分の会社の敷地として使っている土地が「自用地」となります。相続税や固定資産税の評価においては、この「自分で使っているかどうか」が重要な区分になり、第三者に貸している土地(貸付地)とは異なる評価方法が適用されます。 特に相続税では、自用地は原則として「路線価方式」や「倍率方式」によって評価され、その土地の市場価値に近い金額で算定されるため、課税評価額が比較的高くなります。土地の活用方法や名義変更のタイミングによって評価額が大きく変わることもあるため、資産運用や相続対策を考える際には、この「自用地」という概念を理解しておくことが大切です。
借地権
借地権とは、他人が所有している土地を借りて、その土地の上に自分の建物を建てて利用することができる権利のことをいいます。土地を借りる代わりに、地主(貸主)に地代と呼ばれるお金を定期的に支払うのが一般的です。借地権は法律によって強く保護されており、契約期間や更新、建物の建て替えに関するルールも細かく定められています。 住宅地や商業地の限られた土地を有効活用したいときや、土地を購入するよりも初期費用を抑えて利用したい場合に利用されることがあります。不動産投資や相続の場面でも関係する重要な権利であり、土地の所有権とは異なるものとして理解しておくことが大切です。
借家権(しゃっかけん)割合
借家権(しゃっかけん)割合とは、建物を借りて住んでいる人(借家人)が持つ「借家権」という権利の価値を、建物の評価額に対してどれくらい占めるかを示した割合のことです。主に相続税や贈与税の計算に使われ、建物が貸家になっている場合、その建物の評価額は借家人の権利分を差し引いて算出されます。これにより、実際の相続税評価額が下がる効果があります。 たとえば、借家権割合が30%とされている地域では、建物の評価額からその30%を控除できるため、相続税の負担を軽減できる仕組みとなっています。借家権割合は地域によって異なり、国税庁が定めた基準に基づいて決まります。資産を貸す側(大家)にとっては、所有資産の評価に影響する重要な項目であり、不動産を含む資産運用を行う際には押さえておくべき概念です。
賃貸割合
賃貸割合とは、不動産のうち、第三者に貸し出している部分が全体に対してどれくらいの割合を占めているかを示す指標です。これは特に、建物の一部を自分で使いながら残りを賃貸しているようなケースで用いられます。たとえば、自宅の1階を店舗として貸していて、2階に自分が住んでいる場合、その建物の賃貸割合は「1階部分の面積 ÷ 全体の面積」で計算されます。この割合は、不動産の相続税評価や固定資産税評価に影響するだけでなく、青色申告や経費算入など税務上の処理にも関係してきます。また、賃貸割合が高いと、収益不動産としての側面が強くなり、資産運用の戦略にも大きく関係します。正確な計算と記録は、節税や税務調査への備えにもつながります。
路線価
路線価とは、国税庁が毎年7~8月に公表する、1月1日時点の主要な道路に面した土地の1㎡あたりの価格です。主に相続税や贈与税の課税額を算出する際の基準として用いられます。 土地の評価額は、通常、実際の取引価格(時価)とは異なり、公示地価や基準地価を基に一定の割合で決定されます。一般的に、路線価は公示地価の約80%程度を目安に設定されますが、地域や土地の特性によって差が生じることもあります。 路線価は、土地の相続や贈与を行う際の税額計算に重要な指標となるため、事前に確認することで税負担の目安を把握することができます。また、路線価の適用範囲外の土地については、倍率方式と呼ばれる別の評価方法が用いられることもあります。土地の評価方法を理解し、適切な税務対策を講じることが重要です。