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不動産相続ガイド|手続き・税金対策から登記義務化、トラブル防止まで徹底解説

不動産相続ガイド|手続き・税金対策から登記義務化、トラブル防止まで徹底解説

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公開:

2025.08.12

更新:

2025.08.12

不動産を相続するとき、最も悩ましいのが「何から手をつければ良いのか」「税金対策はどうすればいいのか」という点です。特に2024年4月から相続登記が義務化され、3年以内の登記を怠ると最大10万円の過料が課されるため、事前の準備と正しい手続きが一層重要になっています。本記事では、相続開始後の3・4・10か月の重要期限から、税負担を軽減する特例、トラブル回避策まで詳しく解説。不安なく相続手続きを進めるための具体的な方法が身につきます。

サクッとわかる!簡単要約

この記事を読むと、不動産相続で陥りがちな手続きミスや税負担増のリスクを防ぎ、相続登記義務化(2024年4月施行)への正しい対応ができるようになります。相続発生後3・4・10か月の法定期限に沿った手続きの流れや、評価額を最大80%減らせる「小規模宅地等の特例」の活用法、相続税が払えないときの延納・物納判断基準を具体的に学べます。相続手続きの全体像を掴み、適切な準備で家族間のトラブル回避や円滑な資産承継を実現する方法が理解できます。

目次

不動産相続の全体像|まず押さえるべき4つの重要期限とタイムライン

相続手続きで守るべき4つの重要期限(3・4・10ヶ月、3年)

相続発生から完了までの基本タイムライン

2024年に義務化された相続登記・不動産名義変更の手続きガイド

なぜ義務化?相続登記をしないとどうなるのか(3年以内の期限と10万円以下の過料)

相続登記の必要書類一覧と取得方法

登記申請手続きの4ステップ:自力でやるか司法書士に頼むか

司法書士への依頼と費用相場

自宅・実家など居住用不動産を相続するときの要点と税金特例

小規模宅地等の特例で土地評価額を80%減額する要件

親の家に住み続けられる「配偶者居住権」とは?

共有名義は危険?単独取得・売却の判断フローと代償分割

相続した実家が空き家に?「3,000万円特別控除」で売却時の税金を節約

収益不動産(アパート・マンション等)を相続する際のポイント

相続税を抑える「貸家」「貸家建付地」評価

大家としての地位の承継と入居者への通知

賃貸経営を続けるか、売却するかの判断

家賃収入の帰属と2つの税務申告

マンションなど区分所有物件の相続で必要な固有の手続き

管理組合への「組合員変更届」の提出は必須

管理費・修繕積立金の精算と滞納分の扱い

駐車場やトランクルームの契約承継

不動産に関する保険・保証の名義変更と見直し:火災保険・団信・家賃保証

火災保険・地震保険の契約者名義変更

住宅ローンと団体信用生命保険(団信)の確認

収益物件の家賃保証契約の引継ぎと注意点

故人が「保証人」だった場合の対応

農地・山林・借地権など特殊不動産を相続した場合の注意点

農地の相続|農業委員会への届出と「納税猶予」の特例

山林の相続|管理コストと国庫帰属制度の活用

借地権の相続|地主の承諾や名義書換料は不要

相続にかかる税金はいくら?税務コストとキャッシュフロー試算ガイド

相続税の概算シミュレーション|基礎控除と税率

不動産評価額を自分で調べる3つの方法(路線価・固定資産税評価額)

納税資金が足りない時の「延納」「物納」という選択肢

相続後にかかる費用|固定資産税・都市計画税・維持管理費

不要な不動産を「売る」「手放す」3つの出口戦略

方法1:売却して現金化する(取得費加算の特例で節税)

方法2:相続放棄でプラスもマイナスもすべての財産を引き継がない

方法3:相続土地国庫帰属制度で土地を国に返す

不動産相続の相談は誰に?専門家活用のベストタイミングと費用感

相談内容別|司法書士・税理士・弁護士の役割と選び方

相談のベストタイミングは「生前」と「相続発生直後」

専門家費用の目安一覧|安さだけで選ぶと損をする理由

将来の相続に備える|元気なうちにやるべき生前対策5ステップ

ステップ1:資産と家族の現状を把握する

ステップ2:相続対策の目的を明確にする

ステップ3:目的別の対策プランを知る

ステップ4:専門家と連携し、対策を実行する

ステップ5:定期的に対策内容を見直す

不動産相続の全体像|まず押さえるべき4つの重要期限とタイムライン

不動産の相続が発生すると、故人が亡くなった日(相続開始)から期限内に様々な手続きを進める必要があります。特にペナルティに関わる重要な期限が定められているため、全体の流れを把握し、計画的に進めることが重要です。

相続手続きで守るべき4つの重要期限(3・4・10ヶ月、3年)

相続手続きには、特に重要で、遅れると不利益が生じる以下の4つの期限があります。

1.相続開始から3ヶ月以内:相続の承認または放棄の決定

財産と債務をすべて引き継ぐ「単純承認」、財産の範囲内で債務を引き継ぐ「限定承認」、すべてを放棄する「相続放棄」のいずれかを選び、家庭裁判所で手続きします。

相続放棄の3ヶ月ルールについては以下Q&Aで説明しています。

2.相続開始から4ヶ月以内:故人の所得税の申告(準確定申告)

故人が亡くなった年の1月1日から死亡日までの所得について、相続人が代わって所得税の申告と納税を行います。

3.相続開始から10ヶ月以内:相続税の申告・納付

不動産を相続した場合の名義変更手続きです。2024年4月から義務化され、正当な理由なく怠ると過料が科される可能性があります。

4.相続開始から3年以内:不動産の名義変更(相続登記)

不動産を相続した場合の名義変更手続きです。2024年4月から義務化され、正当な理由なく怠ると過料が科される可能性があります。

相続発生から完了までの基本タイムライン

故人が亡くなってから相続手続きが完了するまでの、具体的な手順を時系列で解説します。各ステップで「何を」「いつまでに」やるべきかを確認し、重要な期限を逃さないよう、計画的に手続きを進めましょう。

ステップ1:遺言書の確認と相続財産の調査

葬儀などが落ち着いたら、まず故人の遺言書がないか探します。法務局以外で保管されていた自筆の遺言書は、開封前に家庭裁判所で「検認」が必要です。 並行して、故人の出生から死亡までの戸籍謄本等で相続人を確定させます。同時に、不動産や預貯金、借金といった故人の全財産を調査し「財産目録」として一覧にまとめます。

ステップ2:相続方法の決定(3ヶ月以内)

財産調査の結果、借金の方が多い場合などは、家庭裁判所での「相続放棄」を検討します。

ステップ3:準確定申告(4ヶ月以内)

故人に事業所得や不動産収入があった場合は、準確定申告を忘れずに行います。

ステップ4:遺産分割協議と相続税の申告(10ヶ月以内)

遺言書がない場合、相続人全員で遺産の分け方を話し合います(遺産分割協議)。合意した内容は「遺産分割協議書」にまとめ、全員が署名と実印の押印をします。

協議内容に基づき、相続税を計算して申告・納付します。相続税は、遺産の総額が「3,000万円と、法定相続人の数に600万円を掛けた額の合計」である基礎控除額を超える場合に課税されます。

遺産分割協議書の作成が必要なケースについては以下Q&Aで説明しています。

ステップ5:相続登記(3年以内)

遺産分割協議や遺言に基づき不動産を相続した人は、その不動産の所在地を管轄する法務局で、所有者名義を故人から自分へ変更する「相続登記」を申請します。

2024年に義務化された相続登記・不動産名義変更の手続きガイド

不動産を相続したら、所有者名義を故人から相続人へ変更する手続き(相続登記)が必要です。この手続きは2024年4月から義務化され、期限内に申請しなければなりません。ここでは、その手順と注意点を解説します。

なぜ義務化?相続登記をしないとどうなるのか(3年以内の期限と10万円以下の過料)

かつて任意だった相続登記は、所有者不明の土地が社会問題化したことを背景に義務化されました。

新しいルールでは、相続で不動産の取得を知った日から3年以内に登記を申請する必要があります。遺産分割協議で取得する不動産が決まった場合は、その成立日から3年以内です。

正当な理由なくこの義務を怠ると、10万円以下の過料が科される可能性があります。地方の山林なども対象のため、注意が必要です。

相続登記の必要書類一覧と取得方法

相続登記には多くの公的書類が必要です。目的別に準備を進めると効率的です。

①相続人を証明するための書類

誰が相続人であるかを法的に証明するための書類です。

  • 被相続人(故人)の出生から死亡までの連続した戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍謄本
  • 相続人全員の現在の戸籍謄本(または抄本)

②不動産と故人を特定するための書類

どの不動産を誰が所有していたかを証明するための書類です。

  • 不動産の登記事項証明書(登記簿謄本)
  • 被相続人の住民票の除票(または戸籍の附票)

③誰が不動産を相続するかを証明する書類

遺言書の有無によって必要な書類が変わります。

  • 遺言書がある場合:故人が作成した遺言書(自筆の場合は家庭裁判所の検認済証明書が必要)
  • 遺言書がない場合:遺産分割協議書と、相続人全員の印鑑証明書

④税金の計算や手続きを円滑にするための書類

  • 固定資産評価証明書:登録免許税という税金を計算するために必要です。税額は「固定資産評価額×0.4%」で計算します。
  • 相続関係説明図(任意):提出すると、戸籍謄本一式の返却を受けられるメリットがあります。

登記申請手続きの4ステップ:自力でやるか司法書士に頼むか

書類が揃ったら、法務局へ申請します。手続きの基本的な流れは以下の4ステップです。

ステップ1:遺産分割協議書または遺言書を準備する

まず、遺言書や遺産分割協議書を用いて、誰が不動産を相続するのかを法的に確定させます。これが登記手続きの前提となります。

ステップ2:登記申請書を作成する

法務局へ提出する登記申請書を作成します。不動産の情報、故人と相続人の氏名・住所、相続日などを正確に記入します。

ステップ3:必要書類を揃え、登録免許税を納付する

作成した申請書に、集めた全ての書類を添付します。登録免許税(原則として固定資産評価額の0.4%)を計算し、税額分の収入印紙を申請書に貼り付けて納付します。

ステップ4:法務局へ申請する

書類一式を法務局の窓口へ持参するか、郵送またはオンラインで申請します。申請から1〜2週間ほどで登記が完了すると「登記識別情報通知」が交付されます。これは従来の権利証にあたる大切な書類なので、厳重に保管しましょう。

司法書士への依頼と費用相場

相続登記は手続きが複雑なため、司法書士に依頼するのが一般的です。専門家に任せれば、書類収集から申請まで代行してもらえ、時間と手間を節約できます。

司法書士への報酬は事案によりますが、数万円から十数万円程度が目安です。このほかに、登録免許税や戸籍取得費用などの実費がかかります。

義務化された今、手続きを先延ばしにするリスクは小さくありません。自分で進めるのが難しいと感じたら、早めに専門家へ相談することを検討しましょう。

自宅・実家など居住用不動産を相続するときの要点と税金特例

故人が暮らしていたご自宅や実家といった居住用不動産を相続する際には、知っておくだけで大きく差がつく税務上・法務上の特例や注意点があります。生活の基盤となる大切な資産を守るため、以下のポイントを押さえましょう。

小規模宅地等の特例で土地評価額を80%減額する要件

小規模宅地等の特例は、自宅の土地にかかる相続税の負担を大きく軽減できる制度です。

故人が住んでいた土地を配偶者や同居の親族が相続した場合、330平方メートルを上限に、土地の相続税評価額を80%減額できます。例えば、評価額5,000万円の土地なら1,000万円として計算されるため、相続税が大幅に軽減されます。

ただし、適用には「申告期限まで所有し、住み続けること」などの要件があります。特に配偶者以外の親族は条件が細かいため、誰が自宅を継ぐかによって税額が大きく変わることを理解しておくことが重要です。

相続財産の評価額を減らす評価減特例については以下Q&Aで説明しています。

親の家に住み続けられる「配偶者居住権」とは?

配偶者居住権とは、残された配偶者が安心して自宅に住み続けられるよう、2020年の民法改正で創設された権利です。

遺産分割などでこの権利を設定すると、配偶者は生涯または一定期間、無償で自宅に住み続けられます。この制度では、不動産の価値を「住む権利」と「所有権」に分けて考えます。

これにより、配偶者は「住む権利」を確保しつつ、預貯金など他の遺産も取得しやすくなります。遺産に占める自宅の割合が大きい場合に特に有効な選択肢です。

共有名義は危険?単独取得・売却の判断フローと代償分割

自宅を兄弟姉妹などで共有名義にすると、将来トラブルになる可能性があるため慎重な判断が必要です。維持費の負担や、将来売却する際の意見の不一致などが起こりやすくなります。

最も望ましいのは、その家に住む相続人が一人で取得し、他の相続人には見合う分の現金(代償金)を支払う「代償分割」という方法です。

相続した実家が空き家に?「3,000万円特別控除」で売却時の税金を節約

相続した実家を誰も利用せず空き家になる場合は、売却も選択肢の一つです。その際は、まず故人の住宅ローンが残っているか確認しましょう。多くの場合、団体信用生命保険(団信)でローンは完済されます。

その上で実家を売却する際には、税金を軽減する特例が利用できる場合があります。

いわゆる「空き家の3,000万円特別控除」は、故人が一人暮らしをしていた家などを相続した人が、一定期間内に売却した場合、売却益から最大3,000万円を控除できる制度です。適用には細かい要件があるため、利用を検討する際は専門家への確認をお勧めします。

収益不動産(アパート・マンション等)を相続する際のポイント

アパートなどの収益不動産の相続は、単なる財産ではなく「賃貸事業」の承継です。収益だけでなく管理運営の責任も伴うため、特有のポイントを理解しておきましょう。

相続税を抑える「貸家」「貸家建付地」評価

収益不動産は、所有者が自由に使えないという利用上の制約があるため、相続税を計算する際の評価額が低くなる仕組みがあります。

具体的には、賃貸中の建物は「貸家」として、更地上の建物より評価額が約3割下がります。その土地も「貸家建付地」として、更地に比べて評価額が約1〜2割程度低くなります。この評価減の仕組みは、相続税を抑える上で有効です。

大家としての地位の承継と入居者への通知

収益物件を相続すると、家賃を受け取る権利だけでなく、建物の修繕や敷金の返還といった大家としての義務も全て自動的に引き継ぎます。

そのため、相続が発生したら速やかに入居者全員にオーナーが変わったことを書面で通知し、新しい家賃の振込先などを案内する必要があります。故人が保管していた賃貸契約書を確認し、預かっている敷金の額なども正確に把握しておきましょう。

賃貸経営を続けるか、売却するかの判断

収益不動産を相続した場合、大家業を続けるか、物件を売却するか、経営方針を早期に決めることが重要です。

経営を続けるなら、入居率や家賃、修繕計画などを把握し、収支計画を見直します。ローンが残っていれば、金融機関との債務引継ぎ協議も必要です。

一方、納税資金の確保や経営の負担を理由に売却するのも有力な選択肢です。その際は、相続開始から3年10ヶ月以内に売却すれば、税負担を軽減できる特例(取得費加算の特例)の活用を検討しましょう。

家賃収入の帰属と2つの税務申告

相続した月の家賃は、誰の収入になるか、税金の申告はどうなるかを正しく理解しておく必要があります。

家賃収入は、故人の死亡日を境に所有者が変わります。死亡日までの家賃は故人の財産、翌日以降の家賃は相続人の収入です。

これに伴い、税務申告も2つに分かれます。死亡日までの所得に対する「準確定申告」(相続開始から4ヶ月以内)と、相続人が得た家賃収入に対する翌年の「確定申告」の両方が必要です。

マンションなど区分所有物件の相続で必要な固有の手続き

マンションを相続した場合、戸建ての相続とは異なり、他の所有者と共同で建物を維持管理する「管理組合」との関係が生じます。この組合とのやり取りが、マンション相続をスムーズに進めるための特有のポイントとなります。

管理組合への「組合員変更届」の提出は必須

マンションを相続すると、法律上は自動的にその管理組合の組合員になります。しかし、管理組合側は誰が新しい所有者になったか把握できないため、所有者が変わったことを届け出る必要があります。

速やかに「組合員変更届」などの書類を管理組合(または管理会社)へ提出しましょう。これにより、管理費の請求や総会の案内が正しく届くようになり、組合員としての権利と義務を適切に引き継げます。

管理費・修繕積立金の精算と滞納分の扱い

相続が発生すると故人の銀行口座が凍結され、管理費などの引き落としができなくなる可能性があります。意図せず滞納扱いになるのを防ぐため、支払い手続きも速やかに行いましょう。

まずは管理会社に連絡し、今後の支払い方法について相談します。自身の銀行口座からの引き落としに変更するなど、指示に従って手続きを進めてください。

駐車場やトランクルームの契約承継

マンション相続では、部屋の所有権だけでなく、それに付随する契約も見落とさずに引き継ぐ必要があります。

特に、駐車場やトランクルームの利用契約は、部屋の所有権とは別になっていることがほとんどです。利用を続けるなら、別途、契約者の名義変更手続きを行いましょう。

その他、以下の点も確認しておくと安心です。

  • 管理規約や長期修繕計画書などの重要書類は揃っているか
  • 鍵、入館カード、宅配ボックスなどのセキュリティ情報は引き継いだか
  • インターネット回線やケーブルテレビの契約状況

不動産に関する保険・保証の名義変更と見直し:火災保険・団信・家賃保証

不動産を相続したら、関連する保険や保証契約の確認も必要です。手続きを怠ると、いざという時に困ったり、思わぬ負債を負ったりする可能性があるため注意しましょう。

火災保険・地震保険の契約者名義変更

万が一の火災や地震に備え、建物の保険契約は必ず新しい所有者の名義に変更します。

故人が契約していた火災保険などは、保険会社に連絡して手続きをすれば、相続人が契約を引き継げます。名義変更を忘れても直ちに無効にはなりませんが、保険金の請求が煩雑になる可能性があります。この機会に、補償内容が現状に適しているか見直すのもよいでしょう。

住宅ローンと団体信用生命保険(団信)の確認

相続ではローンなどの負債も引き継がれるため、まず故人にローンが残っているか確認することが重要です。

故人が居住用の住宅ローンを組んでいた場合、多くは団体信用生命保険(団信)に加入しています。この場合、死亡保険金でローンは完済されるため、相続人は金融機関から届く書類をもとに抵当権の抹消登記を進めます。

一方、団信がない場合や事業用ローンなどは、借入金も相続人が引き継ぎます。速やかに金融機関と協議し、今後の返済手続きを進める必要があります。

収益物件の家賃保証契約の引継ぎと注意点

アパートなどを相続した場合、入居者が利用する家賃保証会社との契約も、新しいオーナーとして引き継ぐことになります。管理会社を変更する際などは、保証会社への連絡や再登録が必要になることもあるため、契約内容を確認しておきましょう。

故人が「保証人」だった場合の対応

不動産相続で特に注意したいのが、故人が誰かの借金の「保証人」になっていたケースです。

保証人としての地位、つまり保証債務もマイナスの財産として相続人に引き継がれてしまいます。もし故人が保証人だったことが判明し、その負債を背負いたくないのであれば、相続放棄を検討する必要があります。この重大な判断は、相続の開始を知った日から3ヶ月以内に行わなければなりません。

農地・山林・借地権など特殊不動産を相続した場合の注意点

農地、山林、借地権といった特殊な不動産の相続では、宅地とは異なる法律や制度への注意が必要です。

農地の相続|農業委員会への届出と「納税猶予」の特例

農地を相続する際は、農地法と税制の特例に留意します。相続による農地の取得に許可は不要ですが、農業委員会への届出が必要な場合があります。

税制面では、農業を続ける後継者が農地を相続すると、一定の要件下で相続税の納税が猶予され、その後免除される特例があります。

山林の相続|管理コストと国庫帰属制度の活用

山林は、宅地に比べて相続税評価額が低く評価されます。さらに、市町村が認定した森林経営計画の対象となっている山林は、評価額が5%減額される特例もあります。

相続後はその山林をどう管理するかを考える必要があり、利用見込みがなく管理が困難な場合は、国に所有権を移す「相続土地国庫帰属制度」の利用も選択肢になります。

借地権の相続|地主の承諾や名義書換料は不要

故人が他人の土地を借りて建物を所有していた場合、その土地を借りる権利(借地権)も相続します。

相続によって借地権を引き継ぐ場合、地主の承諾を得る必要はなく、名義書換料などを支払う法的義務もありません。

相続後は、契約期間や地代などの契約内容を改めて確認し、地主に所有者が変わったことを通知しておくと、その後の関係が円滑になります。

相続にかかる税金はいくら?税務コストとキャッシュフロー試算ガイド

不動産を相続した際にかかる税金と、その後の維持費について解説します。お金の流れを把握し、計画的に備えましょう。

不動産相続時の税金や節税対策について詳しくは以下の記事で解説しています。

相続税の概算シミュレーション|基礎控除と税率

相続税は、遺産の総額が「基礎控除」という非課税枠を超える場合のみ課税されます。

基礎控除額は「3,000万円と、法定相続人の数に600万円を掛けた額の合計」で計算できます。遺産総額がこの金額を下回る場合、相続税の申告も納税も原則不要です。

遺産総額が基礎控除額を超える場合は、その超えた部分に対して、10%から55%の累進課税率で相続税が課されます。

不動産評価額を自分で調べる3つの方法(路線価・固定資産税評価額)

相続税がかかるかどうかを正確に判断するには、不動産の「相続税評価額」を算出する必要があります。この評価額は、主に以下の基準を用いて計算されます。

土地の評価は、国税庁が定める「路線価方式」または「倍率方式」で行います。建物の評価は、市区町村が定める「固定資産税評価額」をそのまま用います。一般的に、これらの方法で算出された評価額は、実際に市場で売買される価格よりも低めになる傾向があります。

例えば、時価1億円の賃貸ビルでも、賃貸物件としての評価減を適用した後の相続税評価額は7,000万円程度になることもあります。相続税の計算はこの評価額を基に行うため、まずは専門家に相談し、正確な評価額を把握することが重要です。

納税資金が足りない時の「延納」「物納」という選択肢

相続税は、相続開始から10ヶ月以内に現金で一括納付するのが原則です。

不動産が資産の大半を占めるなど、納税資金が不足する場合、税金を分割で支払う「延納」や、不動産そのもので納める「物納」という制度があります。ただし、物納の適用要件は非常に厳しく、最終手段と考えるべきです。

納税に備え、生命保険の活用や相続した不動産の一部売却などをあらかじめ計画しておくことも大切です。

相続後にかかる費用|固定資産税・都市計画税・維持管理費

不動産は、所有している限り、相続税とは別に継続的なコストがかかります。

代表的なものは、毎年課税される固定資産税や都市計画税です。また、賃貸物件であれば修繕費や管理委託費、空室による収入減のリスクも考慮する必要があります。

長期的な収支を予測し、その不動産を持ち続けるべきか判断することが、将来の家計を守る上で重要になります。

不要な不動産を「売る」「手放す」3つの出口戦略

利用予定がなく管理が難しい不動産を相続した場合、手放すことを検討する必要があります。主な方法は「売却」「相続放棄」「国庫帰属」の3つです。

方法1:売却して現金化する(取得費加算の特例で節税)

相続した不動産を売却して現金に換えるのは、最も一般的な方法です。資産を整理でき、納税資金や他の相続人への代償金の準備にも役立ちます。

売却する際は、税負担を軽減できる特例の活用を検討しましょう。例えば、支払った相続税の一部を経費にできる「取得費加算の特例」や、相続した空き家を売る際に利用できる「3,000万円特別控除」などがあります。

なお、売却手続きを進めるには、前提として不動産の名義を相続人へ変更する「相続登記」を完了させておく必要があります。

方法2:相続放棄でプラスもマイナスもすべての財産を引き継がない

故人に多額の借金がある場合や、管理不能な不動産しかなく、一切の財産を引き継ぎたくない場合の選択肢が「相続放棄」です。

この手続きは、相続の開始を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所で行う必要があります。注意点は、不要な不動産だけでなく、預貯金などのプラスの財産もすべて手放すことになるため、特定の財産だけを選んで放棄することはできない点です。

方法3:相続土地国庫帰属制度で土地を国に返す

他の財産は手元に残したまま、不要な土地の所有権だけを国に移せるのが、2023年に始まったこの制度です。

ただし、どのような土地でも引き取ってもらえるわけではありません。建物が建っていない更地であること、境界が明確であることなど、国の審査基準は厳しく設定されています。

審査を経て承認された場合でも、相続人は将来10年分の土地管理費に相当する負担金を国に納付することで、ようやく土地を手放すことができます。

不動産相続の相談は誰に?専門家活用のベストタイミングと費用感

不動産相続は、法律、税務、登記など複数の専門分野が絡み合う複雑な手続きです。「餅は餅屋」というように、適切なタイミングで専門家の力を借りることが、円滑な相続への一番の近道です。ここでは「誰に」「いつ」「いくらで」相談すべきかを解説します。

相談内容別|司法書士・税理士・弁護士の役割と選び方

相続に関する悩みは、その内容によって相談すべき専門家が異なります。

  • 相続税の計算や節税の相談なら「税理士」
  • 遺言書の作成や不動産の名義変更(相続登記)なら「司法書士」
  • 相続人同士の話し合いがまとまらない、揉めてしまいそうなら「弁護士」
  • 不動産の正確な価値を知りたいなら「不動産鑑定士」
  • 不動産の売却を検討しているなら「宅地建物取引業者」

このように、ご自身の状況に合わせて、その分野のプロフェッショナルに相談することが重要です。

相談のベストタイミングは「生前」と「相続発生直後」

専門家への相談は、できるだけ早い時期が望ましいです。

最も理想的なのは、相続が起こる前の「生前」に、遺言や節税対策を相談しておくことです。

相続が発生した後でも、葬儀などが落ち着いたらすぐに連絡を取りましょう。早期に相談すれば、手続きの期限に追われることなく、的確な助言のもとで落ち着いて対処できます。

専門家費用の目安一覧|安さだけで選ぶと損をする理由

専門家への依頼費用は、手続きを正確に進め、将来のトラブルを避けるためのコストと考えましょう。一般的な費用の目安は以下の通りです。

  • 税理士報酬:遺産総額に比例することが多く、遺産総額1億円の場合で50万円から100万円程度が目安です。
  • 司法書士報酬:相続登記1件あたり5万円から10万円程度に、実費を加えた額が一般的です。
  • 弁護士費用:遺産分割の交渉では、着手金と成功報酬がかかる体系が主流です。

専門家を選ぶ際は、費用だけで判断せず、その分野での経験や実績も確認して、信頼できる相手を見つけることが大切です。

将来の相続に備える|元気なうちにやるべき生前対策5ステップ

将来の家族間トラブルや税負担を減らすには、元気なうちから計画的に準備することが大切です。ここでは、円満な相続を実現するための5つのステップを解説します。

ステップ1:資産と家族の現状を把握する

対策の第一歩は、現状を正確に把握することです。

まず、預貯金、有価証券、不動産など全ての資産を一覧にし、総額や内容を明確にします。特に不動産は、所在地や名義人がどうなっているか、法務局で登記情報を取得して確認しましょう。

あわせて、相続人となる家族の構成や状況も整理します。これにより「相続税は発生するか」「誰に何を遺したいか」「将来の争いの種は何か」といった課題が見えてきます。

ステップ2:相続対策の目的を明確にする

現状分析で見えた課題をもとに、対策の目的を決めます。例えば「家族が円満に財産を分けられること」を最優先にするのか、「相続税の節税」を目指すのか、あるいは「認知症による資産凍結を防ぐ」ことなのか、目的がはっきりすれば取るべき対策が絞られます。

ステップ3:目的別の対策プランを知る

目的を達成するための代表的な手段を5つ紹介します。ご自身の状況に合わせ、これらを組み合わせて活用するのが効果的です。

対策1:遺言書を作成する(争い防止)

法的に有効な遺言書は、相続争いを防ぐ最も強力な手段です。誰にどの財産を相続させるか指定でき、手続きも円滑に進みます。分割しにくい不動産の分け方を決めておくのに特に有効です。

対策2:生前贈与を活用する(相続税対策)

相続が始まる前に財産を贈与し、将来の相続財産を減らす対策です。暦年贈与のほか、教育資金や住宅取得資金の贈与に関する特例も利用できます。贈与の証明として「贈与契約書」を作成することが重要です。

対策3:家族信託や任意後見制度で備える(認知症対策)

家族信託や任意後見制度は判断能力が低下した際の資産凍結リスクに備える仕組みです。任意後見は将来の財産管理人をあらかじめ決めておく契約で、家族信託はより柔軟に財産の管理や承継を家族に託せる制度です。

家族信託や任意後見制度については以下Q&Aで説明しています。

対策4:生命保険を活用する(納税資金対策)

生命保険の死亡保険金は、相続税の納税資金や、不動産を相続しない家族への代償金の準備に役立ちます。また、死亡保険金には非課税枠があるため、相続財産を減らす効果もあります。

対策5:資産を組み換える(不動産評価額の圧縮)

現金のまま遺すより、賃貸アパートなどを建てて不動産として遺す方が、相続税計算上の評価額を下げられる場合があります。不動産に関する税制特例を計画的に活用することも節税に繋がります。

ステップ4:専門家と連携し、対策を実行する

対策プランが固まったら、法的に有効な形で実行します。遺言書を公正証書にする、贈与契約書の内容を専門家に確認してもらうなど、専門家の関与が対策の実効性を高めます。

また、対策の趣旨をご家族に事前に共有しておくことが、後の誤解や不満を防ぎ、円満な相続に繋がります。

ステップ5:定期的に対策内容を見直す

一度立てた対策も、財産や家族の状況変化に応じて見直すことが大切です。また、税制は将来変更される可能性があるため、数年ごとに専門家へ相談すると安心です。

判断能力が低下すると、有効な対策が取れなくなることもあります。先延ばしにせず、計画的に準備を進めましょう。

この記事のまとめ

不動産相続を円滑に進めるためには、「期限管理」「評価減の活用」「トラブル予防」の3点を押さえることが重要です。特に2024年4月からの相続登記義務化に伴い、3年以内の名義変更が必須となり、怠ると過料が課されるリスクがあります。まずは資産状況や家族間の意思を確認し、税負担を抑える特例や制度を活用しましょう。不明点は税理士や司法書士などの専門家に早めに相談することで、スムーズで安心な相続を実現できます。

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投資のコンシェルジュ編集部は、投資銀行やアセットマネジメント会社の出身者、税理士など「金融のプロフェッショナル」が執筆・監修しています。 販売会社とは利害関係がないため、主に個人の資産運用に必要な情報を、正確にわかりやすく、中立性をもってコンテンツを作成しています。

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2025.08.04

難易度:

タックスプランニング相続不動産投資

関連する専門用語

単純承認

単純承認とは、相続が発生した際に、被相続人(亡くなった方)の財産をそのまま全て受け継ぐと決める手続きのことをいいます。この場合、預貯金や不動産といったプラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産もすべて引き継ぐことになります。単純承認は特別な手続きをしなくても、相続人が財産を使ったり処分したりすると自動的に成立することが多いため、慎重な判断が必要です。 たとえば、被相続人に多額の借金があった場合、それも自分が返済する責任を負うことになりますので、相続を受ける前には、財産の内容をよく調べることが大切です。

限定承認

限定承認とは、相続人が引き継ぐ財産について、プラスの財産の範囲内でマイナスの財産(借金など)を支払うことを条件に、相続を受ける方法のことです。つまり、相続によって得られる資産が借金を上回っている場合にはその差額を受け取ることができますが、もし借金が多くても、自分の財産を使ってまで返済する必要はありません。 この方法を使えば、相続することで損をするリスクを減らすことができます。ただし、限定承認を行うには、相続の開始を知ってから原則として3か月以内に、他の相続人全員と一緒に家庭裁判所に申立てをする必要があるため、手続きがやや複雑です。

相続放棄

相続放棄とは、亡くなった人の財産を一切受け取らないという意思を家庭裁判所に申し立てて、正式に相続人の立場を放棄する手続きのことです。相続には、プラスの財産(預貯金や不動産など)だけでなく、マイナスの財産(借金や未払い金など)も含まれるため、全体を見て相続すると損になると判断した場合に選ばれることがあります。 相続放棄をすると、その人は最初から相続人でなかったものとみなされるため、借金の返済義務も一切負わなくて済みます。ただし、相続があったことを知ってから3か月以内に家庭裁判所に申し立てる必要があり、その期限を過ぎると原則として相続を受け入れたとみなされてしまいます。したがって、放棄を検討する場合は早めの判断と手続きが重要です。

準確定申告

準確定申告とは、納税者が死亡した場合に、その人が亡くなった年の1月1日から死亡日までの所得について、相続人が代わりに行う確定申告のことを指します。通常の確定申告と同様に所得税の計算を行いますが、提出期限は「死亡の翌日から4か月以内」と定められており、期限内に申告・納付する必要があります。 たとえば、年金収入や不動産収入、事業収入があった場合などには、申告が必要です。相続人全員が連名で提出するのが原則で、医療費控除や扶養控除なども通常どおり適用されます。相続の手続きと並行して行うことになるため、早めの準備と専門家への相談が勧められます。

相続税

相続税とは、人が亡くなった際に、その人の財産を配偶者や子どもなどの相続人が受け継いだときに課される税金です。対象となる財産には、預貯金や不動産、株式、貴金属、事業用資産などが含まれ、相続財産の合計額が一定の基準額を超えると課税対象となります。 相続税には、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算される基礎控除があり、この範囲内であれば原則として税金はかかりません。しかし、資産規模が大きい場合や相続人の数が少ない場合には、課税対象となり、10%〜55%の累進税率が適用されます。 さらに、相続税にはさまざまな非課税枠や控除制度が設けられており、これらを適切に活用することで税負担を抑えることが可能です。代表的な制度には以下のようなものがあります。 - 生命保険金の非課税枠:法定相続人1人あたり500万円まで非課税 - 死亡退職金の非課税枠:生命保険と同様に1人あたり500万円まで非課税 - 債務控除:被相続人に借入金などの債務があった場合、その金額を控除可能 - 葬式費用の控除:通夜・葬儀などにかかった費用は、相続財産から差し引くことができる また、配偶者には配偶者の税額軽減(1億6,000万円または法定相続分まで非課税)が認められており、適切に遺産分割を行えば、税額を大幅に減らすことができます。 相続税は、財産の種類や分割の仕方、受け取る人の立場によって税額が大きく変動するため、生前からの対策が非常に重要です。生命保険や不動産の活用、資産の組み替えなどを通じて、相続税評価額をコントロールすることが、家族への負担を減らし、スムーズな資産承継を実現するための鍵となります。

基礎控除

基礎控除とは、所得税の計算において、すべての納税者に一律で適用される控除のことを指す。一定額の所得については課税対象から除外されるため、納税者の負担を軽減する役割を持つ。所得に応じて控除額が変動する場合もあり、申告不要で自動適用される。

相続登記

相続登記とは、不動産を所有していた人が亡くなったときに、その不動産の名義を相続人へ変更する手続きのことです。この登記を行うことで、相続人が正式な所有者として法的に認められ、売却や担保設定などの権利行使が可能になります。これまでは義務ではありませんでしたが、2024年からは相続登記が法律上の義務となり、正当な理由なく放置すると過料(罰金)が科される可能性があります。 相続登記を行うには、戸籍謄本や遺産分割協議書などの書類を用意し、法務局に申請する必要があります。不動産の相続が発生した場合には、早めに登記を済ませることで、後のトラブルを防ぎ、相続資産を円滑に活用できるようになります。

過料

過料とは、法律や条例に違反した際に科される金銭的な制裁の一種で、刑罰ではなく行政上の処分として課されるものです。罰金や科料と異なり、過料の支払いによって前科が付くことはなく、あくまで法令違反に対する行政的なペナルティという位置づけになります。 たとえば、税務申告を期限内に行わなかったり、不動産の登記や相続手続きが遅れた場合などに、過料が科されることがあります。資産運用や相続においては、期限や手続きの不備によって思わぬ過料が発生するケースもあるため、事前にスケジュールや要件を確認し、適切に対応することが重要です。 また、法人で資産を保有している場合には、過料が税務上損金として処理できるかどうかも実務上の注意点となります。結論として、過料は原則として損金算入が認められていません。これは、法人税法において違法行為に基づく支出を税務上の費用として扱わないという考え方に基づいており、罰金や過料、科料などの制裁金はすべて損金不算入とされています。したがって、過料の支払いは実質的に企業や個人の資産を直接的に減少させる費用となり、税務上の負担軽減にはつながらない点に注意が必要です。 資産運用や相続対策を行う上では、こうした手続きミスや期限超過による過料のリスクをあらかじめ認識し、予防策を講じておくことが賢明です。特に法人や資産管理会社を活用している場合は、税務上の扱いも含めて専門家と連携しながら進めることが望まれます。

遺産分割協議

遺産分割協議とは、相続人が複数いる場合に、誰がどの財産をどのように受け取るかを話し合って決める手続きのことです。預貯金や不動産、有価証券などすべての遺産が対象になります。原則として相続人全員の合意が必要で、話し合いの結果を「遺産分割協議書」という文書にまとめて、全員が署名・押印します。遺言書がない場合や、遺言があっても一部の財産について分け方が指定されていないときに行われます。もし話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所での調停手続きに進むことになります。

遺産分割協議書

遺産分割協議書とは、相続人全員が話し合って決めた遺産の分け方を文書にまとめたものです。被相続人が遺言を残していない場合や、遺言書に記載されていない財産がある場合、相続人同士でどの財産を誰が受け取るかを決める必要があります。 その合意内容を正式に記録し、全員が署名・押印することで作成されるのが遺産分割協議書です。この書類は、相続した不動産の名義変更や預貯金の払い戻しなど、実際の手続きを進める際に必須となることが多いため、非常に重要な役割を持ちます。作成の際は、相続人全員の同意が必要で、1人でも欠けていると無効になってしまう点に注意が必要です。資産運用においても、円満な財産の承継や手続きのスムーズ化に役立つ書類です。

遺言書

遺言書とは、自分が亡くなったあとに財産をどのように分けてほしいかをあらかじめ書き残しておく文書のことです。生前に自分の意思を明確に示す手段であり、誰にどの財産を渡すか、あるいは誰には渡さないかなどを記載することができます。遺言書があることで、相続人同士のトラブルを防いだり、法定相続とは異なる分け方を実現したりすることが可能になります。法的に有効な遺言書にするためには、決められた形式に沿って作成する必要があります。代表的な形式には自筆証書遺言や公正証書遺言があります。資産運用においても、相続の計画を立てるうえで非常に重要な役割を果たします。

検認手続き

検認手続きとは、遺言書が見つかった際に家庭裁判所がその形状や日付、署名押印などの状態を確認し、改ざんや偽造の防止を図るための公的な手続きです。これは遺言の内容を有効と認める審査ではなく、あくまで遺言書の存在と原本の保全を目的とするものですが、検認を経ないまま遺言を執行すると過料の対象となるため注意が必要です。公正証書遺言では不要ですが、自筆証書遺言と秘密証書遺言では相続開始後に相続人が家庭裁判所へ申し立てを行い、開封の立ち会いや写しの作成を受けて初めて遺言内容を実行できる流れとなります。

財産目録

財産目録とは、自分や家族が所有している財産の内容を一覧にした書類のことです。現金や預金、不動産、有価証券(株式や債券)、自動車、貴金属などの資産のほか、住宅ローンや借金といった負債も含めて記載されます。遺言書に添付されたり、相続や贈与の際の準備資料として作成されたりすることが多く、遺族が財産の全体像を把握しやすくするために役立ちます。 資産運用の観点からも、自分の財産を整理し、どこに何があるかを明確にすることは、資産形成や老後の生活設計、相続対策などにおいて非常に重要です。財産目録を作っておくことで、将来のトラブルを未然に防ぎ、家族への安心にもつながります。

生前贈与

生前贈与とは、本人が亡くなる前に、自分の財産を家族や親族などに贈り与えることを指します。たとえば、子どもや孫に現金や不動産などを自分の意思で生きているうちに渡す行為がこれにあたります。生前贈与を活用することで、相続時に財産が一度に多額に移転するのを防ぎ、相続税の負担を軽減する効果が期待できます。ただし、贈与にも贈与税がかかるため、贈与額やタイミング、誰に贈るかによって課税額が大きく変わることがあります。また、一定の条件を満たせば非課税になる特例制度もあるため、計画的に行うことが重要です。資産運用や相続対策として、生前贈与は家族に財産を無理なく引き継がせるための有効な手段のひとつです。

家族信託

家族信託とは、ご自身の財産を信頼できる家族に託し、その管理や運用を契約で定めた目的に沿って行ってもらう仕組みです。委託者さまは公正証書で信託契約を締結し、現金や不動産、株式などを信託財産として受託者名義に移転します。これにより、たとえ将来認知症を発症されても資産が凍結されず、受益者さまへ生活費や医療費を継続して届けられる点が大きなメリットです。相続発生後は受益権そのものが相続対象となるため、遺産分割協議を簡素化できる効果も期待できます。 もっとも、家族信託には手続きと費用が伴います。不動産を組み入れる場合は信託登記が必要となり、登録免許税や司法書士報酬、公証人手数料が発生いたします。また、受託者さまは信託口座の開設、収支報告書の作成、信託財産とご自身の財産の分別管理など、煩雑な事務を担う義務があります。税務面では契約締結時に贈与税が課税されることは原則ございませんが、信託財産を売却した際の譲渡所得税や信託終了時の相続税は避けられません。そのため、成年後見制度や遺言信託と比較しながら、費用対効果や家族の負担を総合的に検討することが大切です。

任意後見

任意後見とは、自分の判断能力が低下する将来に備えて、あらかじめ信頼できる人を後見人として選び、公正証書で契約を結んでおく制度のことをいいます。これは「元気なうち」に本人の意思で準備できる後見制度であり、判断能力が実際に低下したときに、家庭裁判所の監督のもとで任意後見人が正式に活動を開始します。 任意後見人は、本人の財産管理や生活支援などを本人の希望に沿って行うことができるため、自分らしい生活を維持するための手段として注目されています。法定後見と違い、自分で「誰に、何を任せるか」を決めておける点が特徴です。高齢化や認知症のリスクが高まる中で、資産や生活の管理を将来にわたって安心して託すための、重要な準備の一つです。初心者にとっても、「自分の老後を自分で選ぶ」ための有効な制度として知っておく価値があります。

登録免許税

登録免許税(とうろくめんきょぜい)は、土地や建物などの不動産、あるいは会社などに関する「登記」や「登録」の手続きを行うときにかかる税金です。たとえば、不動産を購入したときには、その所有権を自分の名義にするための登記をしますが、このときに登録免許税を支払う必要があります。また、新しく会社を設立する際にも、設立登記をすることで正式な法人として認められますが、そのときにも税金が発生します。 この税金の金額は、登記や登録の内容によって異なります。たとえば、不動産の登記であれば、その不動産の評価額に一定の税率をかけて金額が決まります。不動産の価値が高ければ、それに応じて税金も高くなります。会社の設立登記の場合は、資本金の金額をもとに税額が計算されますが、たとえ資本金が少なくても、最低でも15万円の税金が必要とされています。 なお、登記や登録は、法律上の効力を持たせるために必要な手続きであり、それを行うにはこの税金の支払いが避けられません。ただし、登記の内容によっては、税率が軽減される「軽減措置」が適用されることもあります。これはたとえば、一定の条件を満たした住宅の購入や中小企業の設立などに当てはまることがあります。 このように、登録免許税は何かを「正式に記録する」ために必要な費用であり、不動産取引や会社の設立を考えている場合には、あらかじめかかる費用として意識しておくと安心です。

権利証(登記識別情報)

権利証(登記識別情報)とは、不動産の所有者であることを証明するために発行される情報で、正式には「登記識別情報」と呼ばれます。かつては紙の「権利証」として交付されていましたが、現在は登記手続きの電子化により、英数字の組み合わせによる「登記識別情報通知」として12桁程度のコードが発行されます。 この情報は、不動産を売却したり、担保に入れたりする登記手続きを行う際に、本人確認のために提出が求められる非常に重要な情報です。万が一第三者に知られると不正登記に使われるおそれがあるため、厳重な管理が必要です。なお、これを紛失しても所有権は失われませんが、登記手続きには別途本人確認の方法が必要となるため、注意が必要です。不動産取引の場面では、権利証=登記識別情報の取り扱いが信頼性や安全性に直結します。

司法書士

司法書士とは、不動産の名義変更や会社設立などの登記手続き、さらには裁判所に提出する書類の作成などを専門に扱う法律の専門家です。 相続の場面では、相続登記(不動産の名義変更)を代行したり、家庭裁判所への遺産分割調停申立書や遺言書の検認申立書などの作成を支援したりするなど、法的手続きをスムーズに進める役割を担います。 また、成年後見制度の申立てや、商業登記(会社役員変更など)にも対応できるため、相続以外の場面でも幅広くサポートを受けられます。特に相続に関する不動産がある場合、登記の専門家である司法書士の力は欠かせない存在です。

税理士

税理士とは、税金に関する専門的な知識と国家資格を持ち、税務申告や相談、書類作成などを行うことができる税務のプロフェッショナルです。 税理士には、税金の計算・申告を代理する「申告代理」、税務書類を作成する「書類作成」、税務に関する相談を受ける「税務相談」といった独占業務があります。 相続の場面では、相続税の申告や節税対策、複雑な財産評価、各種税務特例の適用などをサポートしてくれる、心強い存在です。さらに、税務署とのやりとりや税務調査への対応も税理士の重要な役割の一つです。 また、生前贈与や不動産の活用、法人化などを含む将来を見据えた資産設計についても、税務の観点からアドバイスを受けることができます。 税理士は弁護士や司法書士などと連携しながら、税金という専門領域を通じて、円滑で安心な相続手続きを支えてくれる存在です。

弁護士

弁護士とは、法律に関する問題について助言や代理を行うことができる、国家資格を持った法律の専門家です。 相続においては、遺産分割協議がまとまらない場合や、遺留分を巡るトラブル、遺言の無効主張、相続放棄の手続きなど、法的な対応が必要な場面で頼れる存在です。必要に応じて、調停や訴訟の代理人として交渉や手続きも代行してくれます。 相続人同士での意見の対立や紛争があるとき、また法的に複雑な問題が関係する場合には、早い段階で弁護士に相談することでトラブルを最小限に抑えることができます

小規模宅地等の特例

小規模宅地等の特例とは、相続が発生した際に、被相続人が居住や事業に使用していた土地について、一定の条件を満たせば、その土地の相続税評価額を大幅に減額できる制度です。主な目的は、相続税負担によって自宅や事業用不動産を手放すことを防ぎ、円滑な資産承継を支援することにあります。 たとえば、亡くなった方の自宅に配偶者や同居していた親族が引き続き居住する場合、その宅地の評価額を最大で80%まで減額できる可能性があります。事業用地や貸付事業に用いられていた土地についても、50%〜80%の減額が認められるケースがあります。この減額によって相続税の課税対象となる財産の価額が抑えられるため、納税資金の負担が軽減され、不動産を売却せずに相続を完了できる事例も多く見られます。 ただし、この特例の適用には、居住や事業の継続に関する要件、土地の面積制限(最大330㎡まで)など、細かな条件を満たす必要があります。また、相続税申告期限内に適用を受ける旨を申告することが必須であり、準備不足や誤解によって適用を逃すケースもあるため注意が必要です。 自宅や事業用不動産を含む資産を次世代に円滑に引き継ぐ上で、この特例は極めて重要な制度のひとつです。早めに対策を講じ、制度の内容を正しく理解したうえで、税理士など専門家のサポートを受けながら計画的に進めることが求められます。

居住権

居住権とは、ある建物に住み続けることができる法律上の権利を指します。とくに相続の場面では、配偶者が被相続人と一緒に住んでいた自宅に、たとえ所有権がなくても引き続き無償で住み続けられるようにする「配偶者居住権」が注目されています。 これは、配偶者の生活を保障しつつ、相続財産の公平な分配を可能にするために、2020年の民法改正で新たに導入された制度です。たとえば、家は夫名義だったが、夫が亡くなった後も妻がその家に住み続けたいというケースで、他の相続人と揉めることなく居住が確保される仕組みです。この権利は登記することで第三者にも対抗でき、資産運用や相続設計の上でも非常に重要な要素となっています。

代償分割

代償分割とは、相続において遺産を現物で平等に分けることが難しい場合に、一部の相続人が特定の財産を単独で取得し、その代わりに他の相続人に現金などを支払って調整する方法です。たとえば、相続財産が一つの不動産しかないとき、その不動産を1人の相続人が引き継ぎ、他の相続人にはその分に相当する金額を支払うといったケースが該当します。 これにより、財産の形を変えることなく円満な分割がしやすくなります。代償分割は、財産の価値を正確に評価したうえで合意が必要であり、トラブルを避けるためには専門家の助言を受けることが重要です。

貸家

貸家とは、家や建物を所有している人が、他の人に住むための場所として一定期間貸し出し、賃料を受け取る形態の不動産を指します。入居者は契約に基づいて家賃を支払い、その家を生活の拠点として利用します。 貸家は一戸建てだけでなく、連棟式や長屋、テラスハウスなども含まれます。資産運用の観点からは、安定した家賃収入を得られる可能性がある一方で、空室や修繕費、入居者との契約管理などのリスクや手間も伴います。不動産投資の一形態として長期的な運用を検討する際に利用されることが多いです。

貸家建付地(かしやたてつけち)

貸家建付地(かしやたてつけち)とは、貸家が建っている土地のことで、その土地は貸家とセットで利用されているため、自由に使える範囲や価値が制限される場合があります。 例えば、自分がその土地を所有していても、上に貸家が建っていて他人が住んでいる場合、自由に更地にしたり建物を取り壊したりすることは契約や法律上できません。このため、実際の市場価値は同じ場所の更地より低く評価されることがあります。税務上の評価では、貸家が存在することで土地の利用価値が制限される分を反映して計算される仕組みになっています。

団体信用生命保険(団信)

団体信用生命保険とは、住宅ローンを組んだ人が亡くなったり高度障害になったりした場合に、その時点のローン残高が保険金で返済される保険です。多くの場合、住宅ローンを借りる際に金融機関が加入を条件とすることがあり、略して「団信(だんしん)」とも呼ばれます。 この保険に加入しておけば、万が一のことがあった際に遺族がローンを引き継ぐ必要がなくなり、家に住み続けることができるため、大きな安心材料になります。保障の範囲は、死亡や高度障害に限らず、がんや三大疾病、就業不能までカバーするタイプもあり、ライフスタイルに応じて選ぶことができます。

保証債務

保証債務とは、他人が負っている借金や契約上の義務を、万が一その本人が果たせなかった場合に代わって履行する責任を負うことです。 例えば、知人が金融機関からお金を借りる際に保証人になった場合、その人が返済できなくなると、保証人が代わりに返済しなければなりません。 保証債務は一見すると直接お金を借りていないように見えますが、実質的には自分の財産や信用に影響を及ぼす重大な責任です。資産運用や家計管理の観点からも、保証債務は将来の資金計画や信用力に大きく関わるため、安易に引き受けるべきではありません。

相続土地国庫帰属制度

相続土地国庫帰属制度とは、相続や遺贈で取得した土地を、一定の条件のもとで国に引き渡すことができる制度です。2023年4月27日に施行され、所有者不明土地や管理放棄された土地の増加といった社会問題に対応するために導入されました。相続した土地が「使い道がない」「管理や税金の負担が重い」といった理由で手放したい場合に、この制度を利用することで国に土地を引き取ってもらうことが可能になります。 この制度を利用できるのは、相続や遺贈によって土地を取得した人(相続人・受遺者)です。売買や贈与などの契約によって取得した人は対象外です。申請対象となる土地には厳格な条件が設けられており、たとえば、境界が明確であること、建物や残置物が存在しないこと、地中に汚染物質や埋設物がないこと、第三者の権利(賃借権・地上権・抵当権など)が設定されていないことなどが必要です。要するに、国がそのまま保有しても管理上問題が生じない土地である必要があります。 制度の利用には手続きが必要で、まず申請者は土地の所在する法務局に必要書類を提出し、書面や現地調査を経て、法務大臣の承認を得る必要があります。申請には1筆あたり14,000円の審査手数料がかかり、さらに承認された場合には土地の種類に応じて「負担金(管理費相当額)」を支払います。宅地であれば原則1㎡あたり20円、ただし20万円が最低金額とされており、山林などでは1㎡あたり4円と軽く設定されています。 一方で、制度にはいくつかの注意点もあります。まず、要件を満たすためには、建物の解体や境界確定測量、担保権の抹消登記など事前の整備が必要となることが多く、手続きや費用がかさむことがあります。また、申請してもすべての土地が承認されるわけではなく、不承認となるケースも少なくありません。たとえば、アスベストの埋設が疑われる土地や、越境物のある土地、地元と境界紛争がある土地などは却下される可能性が高いです。 制度の利用件数は開始から徐々に増えており、2025年6月末時点では累計で4,000件を超える申請がありましたが、そのうち帰属が承認されたのは約1,700件程度です。申請後に取り下げられるケースや、不承認とされるケースも一定数存在しており、制度の運用実態は「使える土地は限られるが、条件を満たせば現実的な選択肢」といった評価が一般的です。 最後に、この制度は2024年4月から義務化された相続登記制度とも密接に関係しています。相続人が相続登記をせずに土地を放置すると10万円以下の過料が科される可能性があり、相続人にとっては「登記して持ち続けるか」「国に引き渡して負担を解消するか」の選択が求められる時代になりました。また、空き家対策の強化などとも相まって、本制度の重要性は今後さらに高まっていくと見られています。土地の処分や相続に悩む場合は、早めに法務局への相談や専門家との協議を行うことが望ましいでしょう。

路線価

路線価とは、国税庁が毎年7~8月に公表する、1月1日時点の主要な道路に面した土地の1㎡あたりの価格です。主に相続税や贈与税の課税額を算出する際の基準として用いられます。 土地の評価額は、通常、実際の取引価格(時価)とは異なり、公示地価や基準地価を基に一定の割合で決定されます。一般的に、路線価は公示地価の約80%程度を目安に設定されますが、地域や土地の特性によって差が生じることもあります。 路線価は、土地の相続や贈与を行う際の税額計算に重要な指標となるため、事前に確認することで税負担の目安を把握することができます。また、路線価の適用範囲外の土地については、倍率方式と呼ばれる別の評価方法が用いられることもあります。土地の評価方法を理解し、適切な税務対策を講じることが重要です。

倍率方式

倍率方式とは、不動産の評価方法の一つで、土地の評価額を「基準となる土地価格」に一定の倍率をかけて求める方法です。主に相続税や固定資産税の算定など、課税目的での評価に用いられます。 具体的には、路線価や固定資産税評価額などの公的な基準価格をもとに、その土地の利用状況や地域特性、権利関係などを反映させた倍率を乗じて計算します。市場での実際の売買価格とは必ずしも一致しませんが、簡便かつ統一的な評価ができるため、税務上の実務で広く利用されています。

固定資産税

固定資産税は、土地や建物、償却資産(事業用設備など)を所有している人が、その資産の所在する市区町村に納める地方税です。この税金は、毎年1月1日時点の固定資産の所有者に課されます。課税額は、資産の「課税標準額」に基づき、標準税率1.4%を乗じて算出されますが、市区町村によっては条例で異なる場合もあります。また、土地や住宅には負担軽減措置が設けられることがあり、課税額が抑えられるケースもあります。固定資産税は、その地域のインフラや公共サービスの維持・運営を支える重要な財源となっており、納税通知書は通常、毎年4~6月頃に送付されます。不動産を所有する際には、この税金を考慮して資産計画を立てることが重要です。

延納

延納とは、相続税や贈与税の納付について、一定の条件を満たした場合に限り、税務署の許可を得て年賦で分割して納めることができる制度です。原則として相続税は相続開始から10か月以内に一括納付する必要がありますが、相続財産の大部分が不動産や非上場株式など換金しづらい資産で占められている場合などには、現金での即時納付が困難なことがあります。こうした場合に、資産の処分を避けながら納税を進める手段として延納が活用されます。 延納が認められるには、納税者が金銭納付を一度に行うことが困難であると税務署に認められる必要があります。具体的には、資産の構成や収支状況、生活費への影響などを示す書類を添付した申請を行い、税務署の審査を経て許可を受ける必要があります。申請期限は、相続税の申告期限である相続開始から10か月以内と定められています。 延納期間は最長20年とされていますが、適用される財産の種類により認められる期間や条件が異なります。たとえば不動産等については20年までの延納が可能な一方で、換金性の高い財産が含まれる場合には延納そのものが認められないこともあります。延納できるのは相続税全額ではなく、延納の対象として認められた金額に限られます。 延納が許可されると、期間中は利子税が課されます。この利子税は毎年変動し、財務省告示により定められています。たとえば2024年時点では、延納期間が5年以内であれば年1.9%、5年超〜10年以内であれば年2.4%、10年超〜15年以内であれば年2.9%、15年超〜20年以内であれば年3.4%といった具合に延納期間に応じて利率が高くなります。なお、不動産など一部の特例財産については年0.9%とする軽減措置が適用されることもあります。 また、延納税額が一定額を超える場合には、原則として担保の提供が求められます。担保には不動産や上場株式などが用いられ、税務署がその価値や換金性を審査します。担保を準備できない場合や担保価値が不足している場合、延納申請が却下されることもあるため注意が必要です。 延納とよく混同される制度に物納がありますが、物納は延納をもってしても金銭納付が困難とされる場合に限って認められるもので、延納の次に検討される制度です。物納は納税資産として国に現物を引き渡す制度であるのに対し、延納はあくまでも金銭納付を分割で行う制度です。 相続税対策においては、納税資金の準備と同時に、延納の利用可能性をあらかじめ想定しておくことが重要です。特に、不動産中心の資産構成である場合や、被相続人の死亡時に手元資金が少ないケースでは、資産の一部を売却するか、延納・物納の制度を活用するかの判断が必要になります。延納は資産を残しつつ納税を可能にする制度ですが、その分、計画性と事前の準備、専門家による支援が不可欠です。

物納

物納とは、本来はお金で納めるべき税金を、現金の代わりに土地や建物、株式などの資産で納めることを指します。主に相続税の支払い時に、どうしても現金が用意できない場合に限って認められる制度です。ただし、物納を希望すれば必ず認められるわけではなく、まずは現金での納付や延納(分割払い)が優先されます。そのうえで、どうしても現金で払えない事情があるときに限り、税務署の審査を経て物納が許可されます。 また、物納に使える資産には順位や条件があり、必ずしもすべての資産が対象となるわけではありません。資産運用の観点では、相続や資産承継の際に現金化の難しい資産が多い場合、物納の可能性を考えておくことがリスク管理のひとつになります。

相続税の取得費加算の特例

相続税の取得費加算の特例とは、相続によって取得した土地や株式などの資産を一定期間内に売却した場合に、支払った相続税の一部をその資産の取得費に加えることができる制度です。この特例を使うことで、譲渡所得の計算上の利益が少なくなり、結果として譲渡所得税(売却益に対する税)の負担を軽減することができます。 対象となるのは、相続開始の日の翌日から3年10か月以内に売却した資産で、実際に相続税を支払っていることが条件です。相続と資産売却が関わる場面では、税金を抑えるために非常に有効な制度であるため、早めの手続きや専門家への相談が重要です。

管理組合

管理組合とは、マンションなどの区分所有建物において、建物や敷地、共用部分を適切に維持・管理するために、各区分所有者によって構成される組織のことです。マンションの購入と同時に自動的にその組合の一員となり、全員が平等な立場で意思決定に関与します。 主な役割には、共用部分の清掃や修繕の計画・実施、管理会社との契約、修繕積立金の管理、総会の開催などがあります。また、マンションの規模によっては理事会を設け、日常的な運営を理事長や役員が担う体制が一般的です。管理組合がしっかり機能しているかどうかは、住環境の快適さや建物の資産価値を左右する重要な要素となります。そのため、住民間の合意形成や情報共有、定期的な話し合いが大切です。

長期修繕計画

長期修繕計画とは、マンションやアパートなどの建物において、今後10年から30年程度の長期にわたる修繕や改修の内容・時期・費用を見通して作成される計画のことです。主に共用部分を対象としており、外壁の塗装、防水工事、エレベーターの更新、給排水管の交換など、定期的なメンテナンスをいつ、どのくらいの費用で実施するかが明記されています。 この計画があることで、住民や投資家は将来の費用負担をあらかじめ把握でき、予期せぬ出費を防ぐことができます。不動産投資においては、長期修繕計画がしっかりしている物件ほど維持管理が良好で、資産価値の下落を防ぎやすいと判断されるため、投資判断の際には重要なチェックポイントとなります。

農地等の納税猶予

農地等の納税猶予とは、農業を営む人が相続や贈与によって農地を取得したとき、その農地を一定期間、引き続き農業に使い続けることを条件に、相続税や贈与税の納税を一時的に猶予できる制度です。この制度は、農業の継続を支援するために設けられており、税金をすぐに納める必要がなくなることで、農業経営が困難になるのを防ぐ役割があります。猶予期間中に農業をやめたり、農地を売却するなどすると猶予された税金を納める必要が出てきますが、一定の条件を満たせば最終的に納税が免除されることもあります。

借地権

借地権とは、他人が所有している土地を借りて、その土地の上に自分の建物を建てて利用することができる権利のことをいいます。土地を借りる代わりに、地主(貸主)に地代と呼ばれるお金を定期的に支払うのが一般的です。借地権は法律によって強く保護されており、契約期間や更新、建物の建て替えに関するルールも細かく定められています。 住宅地や商業地の限られた土地を有効活用したいときや、土地を購入するよりも初期費用を抑えて利用したい場合に利用されることがあります。不動産投資や相続の場面でも関係する重要な権利であり、土地の所有権とは異なるものとして理解しておくことが大切です。

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