家の名義変更を親から子へする場合にどのような費用がかかりますか?
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2025/07/31 08:17
男性
60代
親が所有している自宅を将来的に相続する予定なのですが、生前に名義を私(子)に変更したほうが良いと聞きました。ただ、その場合にどのような費用がかかるのかが分かりません。具体的な費用項目と大まかな金額の目安を知りたいです。
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
親から子へ家の名義を変更する場合、主に「贈与」として手続きを行うことになります。この際にはいくつかの費用がかかりますが、特に注意すべきなのが「贈与税」です。
年間110万円を超える贈与には税金がかかり、金額に応じて10%〜55%の累進課税となります。ただし、親から子への生前贈与に限っては「相続時精算課税制度」を選ぶことで、累計2,500万円まで贈与税がかからずに名義変更できる可能性があります。ただし、この制度を使うと、将来の相続時に贈与分を含めた相続税計算がされる点には注意が必要です。
次に、名義変更には「登録免許税」がかかります。贈与による不動産の登記変更では、固定資産税評価額の2%が税額となります。例えば評価額が2,000万円なら、登録免許税は40万円です。これに加え、「不動産取得税」も発生し、住宅用の特例が適用されても3%(通常は4%)が課されます。評価額2,000万円の物件であれば、おおよそ60万円となります。相続で取得する場合はこれらの税が非課税または軽減されるため、贈与時の費用負担は相対的に大きくなります。
また、登記手続きにあたっては司法書士に依頼するケースが多く、報酬として5〜10万円ほどが相場です。そのほか、登記事項証明書や印鑑証明書などの発行費用が数千円から1万円程度かかります。これらを合算すると、固定資産税評価額2,000万円の家を贈与するケースでは、贈与税を含めておよそ600万円〜700万円前後の費用負担となることもあります。
一方で、相続による取得ではこれらの税負担が大きく抑えられます。たとえば、登録免許税は0.4%と大幅に軽減され、不動産取得税も原則かかりません。また、相続税には「基礎控除」(3,000万円+600万円×法定相続人の数)があるため、遺産総額がある程度までであれば非課税で取得できる可能性もあります。現金による即時負担が不要である点も、相続のメリットです。
とはいえ、名義変更を生前に済ませておくことで、将来の相続トラブルや認知症による判断能力の喪失リスクを避けられるという実務上の利点もあります。また、不動産価値の上昇が見込まれる場合には、早めに贈与することで将来の相続税評価額を抑えられるという考え方もあります。
贈与税の負担を抑える方法として、「相続時精算課税制度」や「住宅取得資金贈与の特例」(最大1,000万円非課税)を活用することも検討できます。ただし、これらの制度は使い方を誤ると後の相続税負担が増えたり、毎年の申告義務が生じたりするため、制度の仕組みや条件を十分に理解しておくことが重要です。
結論としては、「生前贈与か相続か」の判断は一概にどちらが有利とはいえず、ご家族の資産構成や将来設計、税務環境によって異なります。費用面だけでなく、相続対策・家族間の円滑な資産承継・税制上の優遇措置の使い方まで含めて、税理士や司法書士などの専門家に相談し、事前にシミュレーションすることをおすすめします。特に数百万円単位の納税負担が生じるケースでは、複数年にわたる計画的な資金準備も必要となるため、早めの対策が安心につながります。
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関連する専門用語
贈与税
贈与税とは、個人が他の個人から金銭・不動産・株式などの財産を無償で受け取った際に、その受け取った側(受贈者)に課される税金です。通常、年間110万円の基礎控除を超える贈与に対して課税され、超過分に応じた累進税率が適用されます。 この制度は、資産の無税移転を防ぎ、相続税との整合性を保つことを目的として設けられています。特に、親から子へ計画的に資産を移転する際には活用されることが多く、教育資金や住宅取得資金などに関しては、一定の条件を満たすことで非課税となる特例もあります。 なお、現在は「暦年課税」と「相続時精算課税」の2制度が併存していますが、政府は近年、相続税と贈与税の一体化を含めた制度改正を検討しており、将来的に制度の選択肢や非課税枠、課税タイミングが見直される可能性があります。 こうした背景からも、贈与税は単なる一時的な贈与の問題にとどまらず、長期的な資産承継や相続対策の設計に深く関わる重要な制度です。税制の動向を踏まえた上で、専門家と連携しながら最適な活用方法を検討することが求められます。
登録免許税
登録免許税(とうろくめんきょぜい)は、土地や建物などの不動産、あるいは会社などに関する「登記」や「登録」の手続きを行うときにかかる税金です。たとえば、不動産を購入したときには、その所有権を自分の名義にするための登記をしますが、このときに登録免許税を支払う必要があります。また、新しく会社を設立する際にも、設立登記をすることで正式な法人として認められますが、そのときにも税金が発生します。 この税金の金額は、登記や登録の内容によって異なります。たとえば、不動産の登記であれば、その不動産の評価額に一定の税率をかけて金額が決まります。不動産の価値が高ければ、それに応じて税金も高くなります。会社の設立登記の場合は、資本金の金額をもとに税額が計算されますが、たとえ資本金が少なくても、最低でも15万円の税金が必要とされています。 なお、登記や登録は、法律上の効力を持たせるために必要な手続きであり、それを行うにはこの税金の支払いが避けられません。ただし、登記の内容によっては、税率が軽減される「軽減措置」が適用されることもあります。これはたとえば、一定の条件を満たした住宅の購入や中小企業の設立などに当てはまることがあります。 このように、登録免許税は何かを「正式に記録する」ために必要な費用であり、不動産取引や会社の設立を考えている場合には、あらかじめかかる費用として意識しておくと安心です。
不動産取得税
不動産取得税は、土地や建物といった不動産を取得したときに、一度だけかかる税金です。たとえば、自分で購入した場合だけでなく、親から贈与を受けたり、誰かと不動産を交換した場合なども対象になります。この税金は国ではなく都道府県に納める「地方税」であり、不動産を取得した後に自治体から納税通知書が送られてきます。 税額は、不動産の購入価格そのものではなく、「固定資産税評価額」と呼ばれる基準に基づいて決まります。評価額に一定の税率(原則4%)をかけて計算されますが、住宅用の建物などについては、軽減措置が適用されて税率が下がる場合もあります。 このように、不動産取得税は取得のたびに一度だけ発生する税金であり、不動産を買ったりもらったりした際には、登記とは別にこの税金の存在も意識しておくことが大切です。
相続時精算課税制度
相続時精算課税制度とは、60歳以上の父母や祖父母から、18歳以上の子や孫へ財産を贈与する場合に利用できる、特別な贈与税の制度です。この制度を使うと、贈与を受けた年に2,500万円までの金額については贈与税がかからず、それを超えた部分にも一律20%の税率が適用されます。そして、その後贈与者が亡くなったときに、過去の贈与分をすべてまとめて「相続財産」として扱い、最終的に相続税として精算します。 つまり、この制度は「贈与税を一時的に軽くし、あとで相続税の段階でまとめて精算する」という仕組みになっています。将来の相続を見据えて早めに資産を移転したい場合や、大きな金額を一括で贈与したい場合に活用されることが多いです。 ただし、一度この制度を選ぶと、同じ贈与者からの贈与については暦年課税(通常の贈与税制度)には戻せないという制限があるため、利用には慎重な判断が必要です。資産運用や相続対策を計画するうえで、制度の特徴とリスクをよく理解しておくことが大切です。
固定資産税
固定資産税は、土地や建物、償却資産(事業用設備など)を所有している人が、その資産の所在する市区町村に納める地方税です。この税金は、毎年1月1日時点の固定資産の所有者に課されます。課税額は、資産の「課税標準額」に基づき、標準税率1.4%を乗じて算出されますが、市区町村によっては条例で異なる場合もあります。また、土地や住宅には負担軽減措置が設けられることがあり、課税額が抑えられるケースもあります。固定資産税は、その地域のインフラや公共サービスの維持・運営を支える重要な財源となっており、納税通知書は通常、毎年4~6月頃に送付されます。不動産を所有する際には、この税金を考慮して資産計画を立てることが重要です。
司法書士
司法書士とは、不動産の名義変更や会社設立などの登記手続き、さらには裁判所に提出する書類の作成などを専門に扱う法律の専門家です。 相続の場面では、相続登記(不動産の名義変更)を代行したり、家庭裁判所への遺産分割調停申立書や遺言書の検認申立書などの作成を支援したりするなど、法的手続きをスムーズに進める役割を担います。 また、成年後見制度の申立てや、商業登記(会社役員変更など)にも対応できるため、相続以外の場面でも幅広くサポートを受けられます。特に相続に関する不動産がある場合、登記の専門家である司法書士の力は欠かせない存在です。