CBDCは銀行業務や信用供給にどんな影響を与えますか?
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2025/05/14 10:50
男性
30代
CBDCが普及すれば、本当に銀行預金は不要になるのでしょうか。もし顧客資金が大量にCBDCへ移動した場合、企業融資や住宅ローンへの影響はどこまで広がるのでしょうか。銀行と中央銀行の役割分担や信用創造の仕組みはどう変わるのか、教えてください。
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
CBDCは中央銀行債務として信用リスクがなく、24時間即時決済が可能な点で銀行預金より機能的に優れますが、預金を置き換える存在ではなく決済インフラを補完するものと捉えるのが現実的です。
仮に資金が大量にCBDCへ移れば、銀行の負債基盤が縮小し資金調達コストが上昇、貸出枠や利ざやが圧縮されて企業融資・住宅ローン条件が悪化しかねません。
こうした副作用を抑えるため、多くの中央銀行は①個人保有残高の上限設定、②一定額超過分に階段的マイナス金利を課すティアード・リマニュレーション、③銀行が口座開設とKYCを担う二層構造モデル――を組み合わせ、預金と信用創造のエコシステムを維持する設計を検討しています。
さらに流動性規制や国債担保市場への影響もCBDC保有分と一体で評価する枠組みが整備されつつあり、導入は実証・限定運用・段階拡大という慎重なプロセスで進む見込みです。結論として、銀行は依然として信用仲介と資産変換機能を担い、CBDCは安全・効率的な決済手段として併存することで、双方の役割がより明確に分担されると予想されます。
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中央銀行
中央銀行とは、国や地域の金融の安定を保つために設置された特別な銀行で、民間の銀行とは異なり、通貨の発行や金利の調整など、経済全体に関わる重要な役割を担っています。 日本では「日本銀行(にっぽんぎんこう)」がその役割を果たしており、インフレ目標の達成や金融政策の実施、さらには銀行間の決済や国の資金管理などを行っています。資産運用においても、中央銀行の発表する政策金利や金融緩和・引き締めの方針は、株式市場や為替、債券の価格に大きな影響を与えるため、その動向を注視することがとても重要です。
資金調達
資金調達とは、企業が事業運営や成長のために必要な資金を集める活動を指します。方法としては、株式発行によるエクイティファイナンス、社債発行や銀行からの借入によるデットファイナンスがあります。それぞれの方法にはメリット・デメリットがあり、企業は資金コストや返済義務などを考慮して選択します。
利鞘(りざや)
利鞘(りざや)とは、金融機関や投資家が「お金の貸し借り」や「資産の運用」によって得られる利益のうち、資金の調達コストと運用によって得られる収益との差額を指します。たとえば、銀行が1%の金利で預金を集め、その資金を3%の金利で企業に貸し出した場合、その差の2%が銀行にとっての利ざやになります。 この利ざやは、銀行や保険会社などの金融機関の基本的な収益源であり、金利の水準や市場環境によって大きく変動します。低金利の環境では、貸出金利と預金金利の差が縮まりやすく、利ざやが小さくなるため、金融機関の収益にとっては厳しい状況となります。 資産運用においても、債券の購入や貸付型投資などでは、得られる利回りと資金コストの差を意識することが重要であり、利ざやの感覚を持つことが収益性の判断材料となります。投資判断や金融商品の選定においても、利ざやを理解しておくことは大切です。
ティアード・リマニュレーション
ティアード・リマニュレーションとは、中央銀行が銀行などの金融機関に対して適用する金利制度の一種で、預け入れられた資金に対して段階的(ティアード)に異なる金利を設定する方法を指します。これは、特にマイナス金利政策のもとでよく使われる仕組みです。 通常、金融機関が中央銀行に預けるお金には利息が付きますが、マイナス金利政策下では逆に手数料のように利息を取られることがあります。これが金融機関の収益を圧迫する要因となるため、その影響をやわらげる目的で、一部の預け入れ額にはゼロ金利や通常の金利を適用し、一定額を超えた部分にだけマイナス金利を適用するのが「ティアード・リマニュレーション」です。 この制度によって、金融機関の負担を軽減しつつ、中央銀行が金利政策の意図を市場に伝えやすくすることができます。資産運用の面でも、金融政策の変化や金利環境を読む上で、ティアード・リマニュレーションの導入は重要なヒントとなります。
マイナス金利
マイナス金利とは、中央銀行が金融機関に対して適用する基準金利をゼロ未満に設定する金融政策の一つで、「お金を預けると利息をもらえる」のではなく、「利息を払わなければならない」という逆の状態を意味します。つまり、民間の銀行が中央銀行にお金を預けておくと、その分だけ手数料のような形で金利を取られる仕組みです。 この政策は、デフレや経済の停滞を打開しようとする場面で導入されることが多く、金融機関に「お金を預けるのではなく、貸し出したり投資したりして経済を活性化させてほしい」というメッセージを送る目的があります。日本銀行や欧州中央銀行(ECB)などが実際に導入したことがあり、金利が低下することで住宅ローンや企業融資の金利も下がり、個人や企業の資金需要を高める効果が期待されます。 ただし、銀行の収益を圧迫する、副作用として資産価格が過熱するなどのリスクもあるため、その影響は慎重に見極められています。資産運用の観点では、マイナス金利環境下では預金や債券などの伝統的資産のリターンが低下し、投資の選択肢やリスク許容度にも影響を及ぼすため、重要なマクロ経済の変数のひとつとされています。
二層構造モデル
二層構造モデルとは、中央銀行と民間金融機関がそれぞれ異なる役割を担いながら、協力して通貨の発行と流通を行う仕組みのことを指します。特に中央銀行デジタル通貨(CBDC)を設計する際に使われる考え方として注目されています。 このモデルでは、中央銀行がCBDCの価値や仕組みを支える「中核(第1層)」の役割を果たし、民間の銀行や決済事業者が実際の流通・口座管理・顧客対応といった「末端(第2層)」を担います。つまり、中央銀行は通貨の安定性と信頼性を確保しつつ、民間の創意や利便性を活かして効率的に通貨を社会に広めることができます。 従来の現金や預金もこのモデルに近い構造で運用されており、既存の金融インフラとの整合性や、金融システムの安定を保ちながらイノベーションを促すという意味でも、二層構造モデルは現実的かつ実効性のあるアプローチとされています。資産運用や金融政策を考える際にも、通貨の供給体制やその進化を理解する上で重要な概念です。