株の名義変更はどのようにするといいですか?
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2025/07/31 08:17
男性
40代
親から株式を贈与してもらうことになったのですが、名義変更の手続き方法がよく分かりません。どのようにすればいいか教えていただけますか?
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
株式の名義変更は、上場株式か非上場株式か、そして贈与・相続・売買などどのような事情で行うかによって手続きや税金の扱いが大きく異なります。ここでは主に、上場株式を贈与や相続で名義変更するケースを中心に解説します。
まず、上場株式を家族間などで贈与する場合についてご説明します。最初に必要なのは、受贈者(もらう側)の証券口座を用意することです。同じ証券会社内での移管なら手続きが簡単になり、未成年の場合は親権者が代理で口座を開設します。その後、証券会社に「移管依頼書(名義書換依頼書)」を提出し、必要書類(本人確認書類やマイナンバーなど)を添付します。完了までは通常5〜10営業日程度です。
贈与にあたっては、「贈与契約書」を作成しておくと安心です。これは税務署への提出義務はありませんが、後日、贈与税の調査などが入った際の証明書類となるため、日付と署名を入れて保管しておくことが推奨されます。贈与税については、年間110万円を超える場合に申告が必要で、評価額は贈与日の株価(終値)で算定します。また、場合によっては相続時精算課税制度(贈与時に最大2,500万円まで非課税とし、将来の相続時に精算)を選択することもできますが、一度選ぶと変更できないため慎重な判断が必要です。
つづいて、相続による株式の名義変更について説明します。相続が発生したら、まず被相続人(亡くなった方)が取引していた証券会社に連絡し、相続の手続きを開始します。証券会社からは「相続手続依頼書」などが送られてきますので、戸籍謄本や法定相続情報一覧図、遺言書(ある場合)、相続人全員の印鑑証明書などを準備します。相続手続きでは、まず代表相続人の口座に株式を集めて、そこから他の相続人に分ける方法が一般的です。完了までは2〜4週間程度かかります。
相続税の申告が必要な場合、株式は「死亡日の終値」で評価し、10か月以内に申告・納税を行います。取得価額(将来売却した際の税金計算の基礎となる価格)は、原則として被相続人の取得時点のものを引き継ぐため、これも把握しておくことが重要です。
もし非上場株式や自社株のように譲渡制限のある株式を名義変更する場合は、さらに注意が必要です。多くの場合、会社側の承認が必要で、取締役会の議事録や譲渡承認書の提出が求められます。証券会社では対応できないケースも多く、時間と手間がかかります。必ず事前に会社側に確認を取りましょう。
最後に、名義変更に際して用意しておくべき代表的な書類としては、贈与契約書や遺言書、戸籍謄本、印鑑証明書、マイナンバー確認書類、名義書換依頼書などがあります。証券会社や手続き内容によって必要書類は異なるため、事前に確認することが大切です。
名義変更手続きは、書類さえ整えばそれほど難しいものではありませんが、税務処理や将来の売却を見据えた設計が重要です。特に贈与税や相続税の計算、取得価格の引き継ぎなどは将来の税負担に影響するため、専門の税理士に相談しながら進めることをおすすめします。
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関連する専門用語
名義変更
名義変更とは、不動産や預貯金、株式、自動車などの財産について、登記簿や契約書、口座記録などに記載されている所有者の名前を、現在の所有者から新しい所有者へと正式に書き換える手続きのことです。相続が発生した場合には、亡くなった人の名義になっている財産を、相続人の名義に変更する必要があります。この手続きを行わないと、たとえ法的に相続人であっても、その財産を自由に売却したり運用したりすることができません。 名義変更には、それぞれの財産に応じて必要な書類や手続きが異なり、例えば不動産であれば法務局での登記変更が必要になり、銀行口座であれば金融機関への申請が求められます。資産運用の観点では、名義変更を早めに行うことで、相続後の資産の管理や再運用がスムーズに進むため、とても重要なステップです。
贈与税
贈与税とは、個人が他の個人から金銭・不動産・株式などの財産を無償で受け取った際に、その受け取った側(受贈者)に課される税金です。通常、年間110万円の基礎控除を超える贈与に対して課税され、超過分に応じた累進税率が適用されます。 この制度は、資産の無税移転を防ぎ、相続税との整合性を保つことを目的として設けられています。特に、親から子へ計画的に資産を移転する際には活用されることが多く、教育資金や住宅取得資金などに関しては、一定の条件を満たすことで非課税となる特例もあります。 なお、現在は「暦年課税」と「相続時精算課税」の2制度が併存していますが、政府は近年、相続税と贈与税の一体化を含めた制度改正を検討しており、将来的に制度の選択肢や非課税枠、課税タイミングが見直される可能性があります。 こうした背景からも、贈与税は単なる一時的な贈与の問題にとどまらず、長期的な資産承継や相続対策の設計に深く関わる重要な制度です。税制の動向を踏まえた上で、専門家と連携しながら最適な活用方法を検討することが求められます。
証券口座
証券口座とは、株式や投資信託、債券、ETF(上場投資信託)などの金融商品を売買・保有するために証券会社に開設する口座のことを指します。証券口座には、株式の取引を行う「一般口座」や「特定口座」、税制優遇を受けられる「NISA口座」などがあり、投資目的に応じて選択できます。 証券口座を通じて、投資家は国内外の金融市場にアクセスし、資産運用を行うことが可能になります。特定口座(源泉徴収あり)を選択すると、証券会社が税金の計算と納税を代行してくれるため、確定申告の手間を省くことができます。一方、NISA口座では一定額までの投資利益が非課税となるメリットがあります。 なお、iDeCo(個人型確定拠出年金)口座も投資信託などを運用できる点では共通していますが、年金専用の制度であり、60歳まで引き出せないなどの制約があるため、一般的な証券口座とは区別されます。投資を始める際には、自身の投資目的や税制面を考慮し、適切な口座を選ぶことが重要です。
相続税
相続税とは、人が亡くなった際に、その人の財産を配偶者や子どもなどの相続人が受け継いだときに課される税金です。対象となる財産には、預貯金や不動産、株式、貴金属、事業用資産などが含まれ、相続財産の合計額が一定の基準額を超えると課税対象となります。 相続税には、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算される基礎控除があり、この範囲内であれば原則として税金はかかりません。しかし、資産規模が大きい場合や相続人の数が少ない場合には、課税対象となり、10%〜55%の累進税率が適用されます。 さらに、相続税にはさまざまな非課税枠や控除制度が設けられており、これらを適切に活用することで税負担を抑えることが可能です。代表的な制度には以下のようなものがあります。 - 生命保険金の非課税枠:法定相続人1人あたり500万円まで非課税 - 死亡退職金の非課税枠:生命保険と同様に1人あたり500万円まで非課税 - 債務控除:被相続人に借入金などの債務があった場合、その金額を控除可能 - 葬式費用の控除:通夜・葬儀などにかかった費用は、相続財産から差し引くことができる また、配偶者には配偶者の税額軽減(1億6,000万円または法定相続分まで非課税)が認められており、適切に遺産分割を行えば、税額を大幅に減らすことができます。 相続税は、財産の種類や分割の仕方、受け取る人の立場によって税額が大きく変動するため、生前からの対策が非常に重要です。生命保険や不動産の活用、資産の組み替えなどを通じて、相続税評価額をコントロールすることが、家族への負担を減らし、スムーズな資産承継を実現するための鍵となります。
ジュニアNISA
ジュニアNISAとは、2023年で新規口座開設が終了した未成年者向けの非課税投資制度で、子ども名義の口座に年間80万円まで株式や投資信託を購入し、運用益や配当にかかる約20%の税金を非課税にできる仕組みです。 正式名称は「未成年者少額投資非課税制度」で、2016年に導入されました。親や祖父母が子どもの将来資金を準備する手段として利用されてきましたが、2024年以降は新NISAへ一本化されています。既存口座は当面非課税運用を継続できますが、追加買付には制限がある点に注意が必要です。