金利上昇で上がる株にはどんなものがありますか?
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2025/07/18 08:19
男性
30代
金利が上がると株価が下がるとよく聞きます。逆に、金利が上がると株価が上昇する企業もあるのでは?と疑問に思いました。実際そのような企業はあるのでしょうか?
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
金利が上昇する局面で比較的プラスの影響を受けやすいのが金融関連の企業です。なかでも銀行や保険会社は、金利の変動に対する収益感応度が高いことで知られています。
まず銀行株は代表的な例です。金利が上昇すると、貸出金利を引き上げやすくなり、預金との金利差である「預貸利ざや」が拡大する可能性があります。この利ざやの拡大は銀行の本業収益を押し上げ、株価にとっても支援材料となりやすいです。特に、短期貸出の比率が高い地方銀行などは、金利上昇の影響が収益に反映されやすい傾向があります。ただし、金利上昇が急激だった場合や、景気が減速し貸倒リスクが高まる局面では、信用コストの増加や保有債券の評価損が利益を圧迫するリスクもあるため、過度な楽観は禁物です。
次に、生命保険会社や損害保険会社も金利上昇の恩恵を受ける代表的な業種です。これらの企業は、集めた保険料を国債や社債などで長期運用しているため、金利の上昇により新規投資の利回りが改善し、利差益(運用益と予定利率の差)が拡大します。加えて、金利の上昇により将来の保険金支払いに備える責任準備金の現在価値が下がるため、保険会社の財務負担が軽減されるという側面もあります。ただし、保有債券の含み損が拡大することや、過去に販売した貯蓄性保険商品の最低保証利率を下回る運用状況が続くと、逆ざやリスクが残る点には注意が必要です。
このように、銀行や保険会社は金利上昇局面において比較的有利な立場にありますが、その影響の大きさは金利の水準・上昇スピード・イールドカーブの形状、さらには景気や信用環境といったマクロ要因によって大きく左右されます。金融セクターへの投資を検討する際には、これらの複合的な条件を踏まえて判断することが重要です。
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