年収が1000万円の人の手取り収入はどれくらいですか?
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2025/10/29 09:06
男性
30代
年収が1000万円あると聞くと高収入のイメージがありますが、実際に税金や社会保険料を引かれた後にどのくらいの金額が手元に残るのかが気になります。独身か既婚か、扶養家族の有無などでも差が出ると思いますが、一般的なケースでの手取り額の目安を知りたいです。
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
年収1,000万円の会社員の場合、実際に手元に残る金額はおおむね年710万〜730万円程度です。これは月額に換算すると約59万〜61万円で、世間の印象ほどの“贅沢な可処分所得”ではありません。社会保険料や所得税、住民税などの負担が大きく、全体の約3割が税・社会保険で差し引かれます。
給与1,000万円の場合、まず給与所得控除は上限の195万円となり、そこから基礎控除48万円と社会保険料(健康保険・厚生年金・雇用保険など、約130万〜160万円)を引いた金額が課税所得です。この課税所得に対して所得税と住民税が課され、合わせて約140万円前後の税金負担となります。その結果、総支給1,000万円から社会保険料と税金を差し引いた残りが、実際の手取り710万〜730万円という水準になります。
家族構成によっても手取りは変わります。独身の場合で40〜64歳なら年約713万円、介護保険料がかからない39歳以下では年約725万円が目安です。配偶者控除を受けられる場合は、手取りが年8万〜12万円ほど増えます。さらに特定扶養(19〜22歳の子ども)がいると、控除によって年15万〜20万円ほど手取りが増えます。扶養家族がいるほど、課税所得が下がり、結果的に実効税率も低くなります。
また、健康保険組合の料率や地域差、標準報酬月額の上限の影響も無視できません。年収1,000万円帯は多くが保険料の上限等級に達しており、それ以上の収入部分には保険料がかからないため、実際の負担率は一律ではありません。住民税は前年の所得に基づくため、転職や前年の控除状況によっても当年の手取りが変動します。
節税を意識することで手取りを実質的に増やすことも可能です。特にiDeCoや企業型DCを活用すれば、拠出額が全額所得控除となり、税率20%前後の層では拠出額の2割近くが節税効果として返ってきます。住宅ローン控除や生命保険料控除、医療費控除も組み合わせれば、手取り改善の余地があります。
つまり、年収1,000万円という金額だけで高所得と判断するのは誤解を招きます。実際の可処分所得は7割前後にとどまり、生活コストの高い都市部では決して余裕があるわけではありません。ただし、控除制度や社会保険の仕組みを理解して最適化すれば、同じ年収でも手取りを数十万円単位で改善できる可能性があります。
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給与所得控除
給与所得控除とは、サラリーマンや公務員など給与を受け取って働いている人が、税金を計算する際に自動的に差し引かれる控除のことを指します。給与を得るためには通勤費や仕事に必要な支出がかかるため、それを一律に見積もって税負担を軽減する仕組みになっています。 実際の経費を一つひとつ証明する必要がなく、収入金額に応じてあらかじめ決められた金額が控除されます。そのため、給与所得者は自営業者のように細かい経費計算をせずとも、一定の負担軽減が自動的に適用されます。投資や家計管理を考えるうえでは、給与所得控除を差し引いた後の「課税所得」が税金計算の基礎になるため、自分の可処分所得を把握する上で理解しておくことが大切です。
基礎控除
基礎控除とは、所得税の計算において、すべての納税者に一律で適用される控除のことを指す。一定額の所得については課税対象から除外されるため、納税者の負担を軽減する役割を持つ。所得に応じて控除額が変動する場合もあり、申告不要で自動適用される。
課税所得
課税所得とは、個人や法人が一定期間内に得た収入から、法律に基づいて認められた各種控除や必要経費を差し引いた後の金額を指します。この金額に対して所得税や法人税などの税率が適用され、実際に納税すべき税額が計算されます。課税所得の計算方法は国や地域によって異なるため、具体的な控除項目や税率もそれに応じて変わります。 課税所得を計算する際には、まず総収入から非課税所得を除外します。その後、必要経費や特定の控除(例えば、標準控除、医療費控除、教育費控除など)を適用して課税対象となる所得を求めます。これにより、公正かつ実情に即した税額を算出し、納税者が収入に見合った税金を支払うことが可能となります。 課税所得の正確な把握と計算は、個人や企業の税務管理において非常に重要です。税法の変更に応じて控除額や計算方法が更新されることが多いため、適切な税務知識を持つこと、または専門の税理士などの助けを借りることが望ましいです。これにより、適切な税金の納付を確実に行い、法的な問題を避けることができます。
実効税率
実効税率とは、名目上の税率ではなく、実際に支払った税額がどれだけの割合を占めているかを示す割合のことです。たとえば、税率が30%とされていても、各種控除や特例などを適用した結果、実際に支払った税金の割合が20%程度であれば、それが実効税率となります。 この数値は、企業の財務分析や投資判断においてとても重要です。なぜなら、同じ利益でも企業によって支払う税額が異なり、それが収益性やキャッシュフローに大きな影響を与えるからです。個人投資家にとっても、配当や売却益などにかかる税金の実効税率を知ることで、手取りの利益を正確に把握しやすくなります。名目の税率だけを見るのではなく、最終的にいくら税金が差し引かれるかという実態を理解することが、より現実的な資産運用につながります。
標準報酬月額
標準報酬月額(ひょうじゅんほうしゅうげつがく)とは、日本の社会保険制度において、健康保険や厚生年金保険の保険料や給付額を計算する基準となる月額報酬のことを指します。これは、従業員の給与や賃金を基にして決定されますが、月ごとの変動を考慮して一定の範囲に分類されます。 <計算対象の例> 基本給、能率給、奨励給、役付手当、職階手当、特別勤務手当、勤務地手当、物価手当、日直手当、宿直手当、家族手当、休職手当、通勤手当、住宅手当、別居手当、早出残業手当、継続支給する見舞金等、事業所から現金または現物で支給されるもの
配偶者控除
配偶者控除とは、納税者に配偶者がいる場合、一定の条件を満たせば所得税や住民税の計算において課税所得を減らすことができる制度です。具体的には、配偶者の年間所得が一定額以下であれば、納税者の所得から一定金額を差し引くことができるため、結果として支払う税金が少なくなります。この制度は、家計全体の負担を軽減するためのもので、特にパートタイムや扶養内で働く配偶者がいる世帯にとって重要な意味を持ちます。なお、配偶者の収入が一定額を超えるとこの控除が使えなくなるため、「○○万円の壁」といった表現で語られることもあります。資産運用やライフプランを考える際には、税金の仕組みを理解しておくことが大切であり、配偶者控除はその中でも身近で影響の大きい制度のひとつです。




