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米国債の格付けの時系列での推移を知りたいです。米国債は安全と言えますか?

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2025/08/15 08:42

債券債券投資
債券債券投資

男性

40代

question

米国債は「世界で最も安全な投資先」とも言われますが、格付けは過去に変動があったと聞きました。実際に過去数十年間で、米国債の格付けがどのように推移してきたのか、時系列で教えて下さい


回答

佐々木 辰

株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長

米国債の格付けは長年にわたり最上位級でしたが、過去10数年で主要格付け会社が相次いで1ノッチ引き下げています。それでもデフォルト(元本や利払いの不履行)という意味での信用リスクは、先進国の中でも依然として極めて低いと評価されます。一方で、金利・インフレ・為替といった“格付けとは別のリスク”は残るため、投資の目的や期間に応じた設計が重要です。

時系列では、S&Pが2011年8月5日にAAAからAA+へ、Fitchが2023年8月1日にAAAからAA+へ格下げしました。Moody’sも長年のAaaから2025年5月16日にAa1へ引き下げています。DBRS Morningstarは2025年時点でAAAを維持しています。表記の違いに注意すると、S&P/Fitchの「AA+」とMoody’sの「Aa1」は、いずれも最上位から1段下の水準という意味合いです。

格下げ時の市場反応は必ずしも一様ではありません。2011年のS&P格下げ直後は株式市場が大きく下落した一方で、米国債には資金が流入し長期金利が低下する局面も見られました。2023年のFitch格下げ時は株安や長期金利の上振れなど、反応は限定的かつまちまちでした。2025年のMoody’s格下げでも、長期金利やタームプレミアムの上振れに対する警戒が意識された一方、構造的な安全資産需要は続くという見方も根強くあります。

「安全かどうか」を評価するうえで、まず信用(デフォルト)リスクを押さえましょう。米国は自国通貨建てで債務を発行し、課税権や金融政策運用力を持つため、信用力は依然きわめて高いとみなされます。ただし、政治要因として債務上限問題のような交渉により、支払い手続きの遅れが技術的に生じるリスクは理論的にゼロではありません(歴史的に小規模な遅延例も指摘されています)。

次に金利リスクです。債券の価格は金利に反比例するため、満期が長い債券ほど価格変動(デュレーション)が大きくなります。金利上昇局面では評価損が拡大しやすい点に注意が必要です。短期の資金や近い将来に使途が決まっているお金であれば、数か月〜1年程度のT-Bill(短期国庫短期証券)を組み合わせることで、金利変動の影響を相対的に抑えられます。ただし、短期運用には再投資利回りが読みにくいという再投資リスクが残ります。

インフレリスクも忘れがちです。名目の固定金利国債はインフレが高まると実質的な購買力が目減りします。物価連動国債(TIPS)を一部組み入れることで、実質購買力の維持に役立てることができます。

流動性という観点では、米国債は世界最大規模の市場で取引され、金融システムの担保としても広く用いられているため、売買のしやすさや価格のつきやすさは非常に高い部類に入ります。これは個人投資家にとっても、必要なときに現金化しやすいという実務的な安心材料です。

日本の個人投資家にとっては為替リスクも重要です。生活通貨が円であるなかで、ドル建ての米国債に投資すると、円高・円安によって円換算の評価額が大きく動きます。為替の影響を抑えたい場合は、為替ヘッジ付きの手段を検討すると良いでしょう。

実務的な組み立て方としては、近い期間で使う予定の資金や元本重視の部分はT-Billをラダー(満期を分散)で保有し、中期(1〜5年)は短期〜中期ノートや短デュレーション型の投信・ETFで金利リスクを抑制します。長期(10年以上)は価格変動が大きくなりやすいため、年金代替や将来の負債に期間を合わせるなど、目的が明確な場合に限定して比率を検討します。インフレが気になるならTIPSを一部組み入れ、円ベースでの資産管理を重視するなら為替ヘッジの活用を考える、というのが初心者にも取り組みやすい考え方です。

総括すると、米国債は「信用面では世界最高水準だが、万能ではない安全資産」です。格付けは安全性の大枠を示しますが、実際の投資判断では、期間(デュレーション)、インフレ、為替という三つのリスクを別建てで管理することが鍵になります。目的と期間と通貨を整理し、それに合った満期・商品タイプ(名目/TIPS、ヘッジの有無)を選ぶことが、初心者にとって現実的で失敗の少ないアプローチです。

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米国債

米国債とは、アメリカ合衆国政府が発行する債券で、政府が資金を調達するために投資家からお金を借りる手段として利用されます。一般に「トレジャリー」や「米国財務省証券」とも呼ばれ、発行元がアメリカ政府であることから、世界的に見ても非常に高い信用力を持つ安全資産とされています。 米国債には、短期のT-Bill(1年未満)、中期のT-Note(2〜10年)、長期のT-Bond(20〜30年)などの種類があり、いずれも固定利付で定期的に利息が支払われ、満期時に元本が償還されます。米国の金利動向に基づいて利回りが決まるため、低金利が続いている日本と比べて、米国債の利回りが高いケースが多くなっています。 ただし、日本の投資家が米国債に投資する際には、米ドル建てであるため為替リスク(円高による損失)がある点には注意が必要です。また、金利が上昇すると既発債券の価格が下がるといった価格変動リスクも存在します。 米国債は日本国内の証券会社を通じて購入可能であり、市場規模が大きく流動性も高いため、初心者にも比較的取引しやすい資産といえます。

格付け(信用格付け)

格付け(信用格付け)とは、取引をする際に参考にされる基準の一つで、取引の相手側の信用度を確認するために支払い能力や財務状況、安全性などを総合的にランク付けしたものである。アルファベットや数字で表されるのが一般的である。 (例)格付投資情報センター(https://www.r-i.co.jp/index.html) による発行体格付の定義 AAA:信用力は最も高く、多くの優れた要素がある。 AA:信用力は極めて高く、優れた要素がある。 A:信用力は高く、部分的に優れた要素がある。 BBB:信用力は十分であるが、将来環境が大きく変化する場合、注意すべき要素がある。 BB:信用力は当面問題ないが、将来環境が変化する場合、十分注意すべき要素がある。 B:信用力に問題があり、絶えず注意すべき要素がある。 CCC:発行体の金融債務が不履行に陥る懸念が強い。 CC:発行体の金融債務が不履行に陥っているか、その懸念が極めて強い。 C:発行体のすべての金融債務が不履行に陥っているとR&Iが判断する格付。

債務不履行(デフォルト)

債務不履行(デフォルト)とは、企業や国などの債務者が、借入金や債券などの元本や利息の支払いを、契約どおりに履行できなくなる状態を指します。利払いの遅延や元本返済の停止が発生した時点で、デフォルトとみなされます。 債務不履行が発生すると、債券を保有している投資家は、予定されていた利息や元本の一部または全額を受け取れないリスクに直面し、損失を被る可能性があります。特に、国による債務不履行(ソブリン・デフォルト)は、為替市場や株式市場にも連鎖的な影響を与え、国際的な金融不安を引き起こす要因となることがあります。 また、支払いの一時的な遅延や手続上の不備によって形式的に契約違反が生じる「テクニカル・デフォルト」というケースも存在します。これは即時の経済的破綻を意味するわけではありませんが、発行体の信用力に対する警戒が強まるきっかけとなり得ます。 投資においては、こうしたデフォルトの可能性(デフォルトリスク)をあらかじめ評価し、債券の発行体の財務状況や格付、市場環境を踏まえてリスク管理を行うことが重要です。

金利変動リスク

金利変動リスクとは、市場金利の上昇・下降に伴い保有資産の価格や収益が変わる可能性を指します。固定金利債券の場合、金利が上がれば新発債の利息が高くなり既存債券の魅力が薄れるため価格は下落し、逆に金利が下がれば既存債券の利息が相対的に高く映るため価格は上昇しやすくなります。価格の振れ幅は「デュレーション」と呼ばれる指標で測定でき、残存期間が長いほど同じ1%の金利変化でも値動きが大きくなる点が特徴です。短期債は影響が小さく、長期債は大きいという感覚を持つとリスク把握が容易になります。 金利を動かす主因は中央銀行の政策金利変更や景気の強弱、インフレ期待であり、これらのニュースを追うことで金利の方向性をある程度予測できます。ただし金利の動向は株式や不動産投資信託(REIT)にも波及し、企業の資金調達コストや配当余力、賃料収入見通しを通じて価格変動をもたらすため、債券以外にも広く目配りが必要です。さらに変動金利債券や変動金利住宅ローンのように、金利上昇局面で利息が増えるものも存在する一方、支払利息が膨らむ負の側面もある点には注意が求められます。 リスクを抑えながらリターンを狙うには複数の打ち手があります。償還時期の異なる債券を階段状に保有して高金利局面で再投資しやすくするラダー戦略、金利上昇期にはデュレーションを短くして価格下落を抑え、低下期には長くして値上がり益を取りにいく期間調整、株式やREIT、金利ヘッジETFなど異なる値動きを示す資産を組み合わせる分散投資、さらにはポートフォリオの一部を変動金利商品に振り替えて上昇メリットを享受する方法が代表的です。金利変動リスクを定量的に測り、運用計画を経済情勢に合わせて定期的に見直すことで、長期投資でも過度な値下がりを抑えつつ安定的な収益を目指せます。

インフレリスク

インフレリスクとは、物価の上昇が投資の実質的な価値や収益を減少させるリスクを指します。インフレが進行すると、通貨の購買力が低下し、同じ金額で以前よりも少ない商品やサービスしか購入できなくなります。このリスクは特に固定収益をもたらす投資、例えば債券や定期預金に顕著に現れます。債券のクーポン支払いや元本返済の実質的価値が、インフレによって目減りするためです。 投資家はインフレリスクを考慮に入れてポートフォリオを構築する必要があります。たとえば、インフレに対抗するために不動産や株式などのリアルアセットに投資する方法があります。これらの資産は、インフレの環境下で価値が上昇する傾向にあるため、インフレリスクから保護する効果が期待できます。また、インフレに連動する形で利息が上昇するインフレ連動債(TIPSなど)に投資することも、インフレリスクを管理する一つの手段です。 インフレリスクは、特に長期投資の計画において重要であり、経済全体の物価水準の変動を考慮に入れながら、資産を適切に配置し、リバランスを行うことが必要です。 さらに、異なる国や地域でのインフレ率の違いにも注意を払い、グローバルな視点からポートフォリオを見直すことも有効です。このように、インフレリスクを適切に理解し、対策を講じることで、投資の目標達成に向けた戦略的な判断が可能となります。

為替ヘッジ

為替ヘッジとは、為替取引をする際に、将来交換する為替レートをあらかじめ予約しておくことによって、為替変動のリスクを抑える仕組み。海外の株や債券に投資する際は、その株や債券の価値が下がるリスクだけでなく、為替の変動により円に換算した時の価値が下がるリスクも負うことになるので、後者のリスクを抑えるために為替ヘッジが行われる。

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