8資産均等がダメな理由はなんですか?
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2025/07/24 09:34
男性
40代
手軽に分散投資できることが魅力で、8資産均等型の投資信託を検討しています。しかし「8資産均等は避けたほうがいい」という意見も目にします。具体的にはどんなデメリットや問題があるのでしょうか?
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
8資産均等型の投資信託は、1本で株式・債券・REIT・コモディティなどに広く分散できる手軽さから人気ですが、「避けたほうがいい」という意見があるのも事実です。その背景には、以下のような課題が指摘されています。
まず第一に、資産配分が市場実態とかけ離れていることです。8資産均等型は、国内外の株式・債券、新興国債券、REIT、コモディティなどをすべて12.5%ずつ組み入れますが、実際の世界の投資市場における規模比率とは大きく異なります。たとえば、新興国債券やJ-REITは市場規模が小さいにもかかわらず、同等の比率で保有することになり、結果としてリスクが過度に偏る恐れがあります。
第二に、機械的なリバランスによって柔軟な対応ができない点があります。8資産均等型は、年に数回、一定の比率に戻す自動リバランスを行います。そのため、株式が上昇してもその分を売却し、債券や低成長資産に再配分してしまう仕組みになっており、成長相場に積極的に乗る運用はできません。
第三に、一部資産の相関性が高いため、分散効果が限定的になる可能性があります。たとえば、先進国株式と海外REIT、新興国株式とコモディティは値動きが似ている時期もあり、特に世界的なリスクオフ局面では複数の資産が同時に下落することがあります。理論上は分散されていても、実際にはリスクを抑えきれない場合があるのです。
さらに、為替リスクにも注意が必要です。このタイプのファンドは、海外資産(外国株・外国債・海外REITなど)を50%以上含み、為替ヘッジがかかっていないケースが一般的です。そのため、円高が進むと基準価額が大きく下落する可能性があります。為替の影響を受けにくい国内債券の比率は12.5%と少なく、下落時のクッションとしては物足りない面があります。
また、インフレへの対応力にも限界があります。国内債券やJ-REITが一定比率含まれていることにより、物価上昇局面では実質的な購買力が目減りするリスクが高まります。コモディティも組み込まれてはいますが、その効果は限定的で、インフレ耐性を高めるには別途対策が必要です。
一方で、以前指摘されていた信託報酬の高さについては改善が進んでおり、現在ではeMAXIS Slimシリーズなどで年0.1%台の低コスト商品が提供されています。また、自動リバランスの恩恵により「感情に流されない長期投資が続けやすい」といったメリットもあります。
結論として、8資産均等型は「手軽に幅広く分散したい」「資産配分を自分で調整したくない」といった投資初心者には適した選択肢です。ただし、市場規模との乖離や為替・インフレリスク、安全資産の割合の少なさといった特徴を理解し、補完する資産を別途組み合わせるなどの工夫が求められます。
資産配分の正解は一人ひとり異なります。自分のリスク許容度や運用目的に合った投資スタイルを見つけるためにも、独立系のファイナンシャルアドバイザーや中立的な専門家に相談して、客観的なアドバイスを受けながら判断することをおすすめします。
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関連する専門用語
8資産均等型
8資産均等型とは、8つの異なる資産クラスに均等(それぞれ12.5%ずつ)に投資することで、高い分散効果を狙ったバランス型の資産配分戦略のことです。投資対象は、通常「国内株式・国内債券・先進国株式・先進国債券・新興国株式・新興国債券・国内リート・海外リート」の8資産で構成されており、地域・資産タイプ・通貨などが幅広く分散されています。 このタイプのファンドは、値動きの異なる複数の資産を組み合わせることで、相場環境の変化に強く、リスクを抑えながら安定した運用成果を目指すことができます。特に長期の資産形成を目的とした初心者向けの投資信託として人気があり、積立投資(つみたてNISAなど)にも適しています。ただし、均等配分は常に最適とは限らず、市場環境によっては一部の資産の重みがパフォーマンスに影響する場合があります。
バランスファンド
バランスファンドとは、株式と債券などの固定収入資産を組み合わせた投資ファンドです。このタイプのファンドは、成長の機会を追求する一方で、リスクを分散し安定した収益を目指します。投資の比率は通常、ファンドの投資方針に基づき、アクティブに管理されます。 バランスファンドの主な魅力は、一つのファンド内で異なる資産クラスへの露出を確保できる点にあります。市場の変動に対する耐性を高めるために、株式の成長性と債券の安定性を兼ね備えています。このため、市場の状況に応じて、ファンドマネージャーは資産配分を調整し、リスクを管理しながらリターンを最適化することが可能です。 投資家にとって、バランスファンドは多様な投資ポートフォリオを持つことなく、一定のリバランスを通じて市場の機会を捉えつつ、下落リスクを抑制できる手段を提供します。特に長期投資や退職資金の積立に適しており、安定した運用成績を求める投資家に人気があります。
債券
債券(サイケン、英語表記:Bond)とは、発行者が投資家に対して将来一定の金額を支払うことを約束する金融商品です。 国や地方自治体、企業などが資金を調達する目的で発行し、投資家はこれを購入することで、定期的に利息(クーポン)を受け取ります。満期が来ると、投資した本金が返済されます。 債券はリスクが比較的低く、安定した収入を求める投資家に選ばれることが多いです。 また、市場で自由に売買が可能であるため、流動性も確保されています。債券市場は世界的にも広がりを見せており、多様な投資戦略に利用されています。
リバランス
リバランスとは、ポートフォリオを構築した後、市場の変動によって変化した資産配分比率を当初設定した目標比率に戻す投資手法です。 具体的には、値上がりした資産や銘柄を売却し、値下がりした資産や銘柄を買い増すことで、ポートフォリオ全体の資産構成比率を維持します。これは過剰なリスクを回避し、ポートフォリオの安定性を保つためのリスク管理手法として、定期的に実施されます。 例えば、株式が上昇して目標比率を超えた場合、その一部を売却して債券や現金に再配分するといった調整を行います。なお、近年では自動リバランス機能を提供する投資サービスも登場しています。
信託報酬
信託報酬とは、投資信託やETFの運用・管理にかかる費用として投資家が間接的に負担する手数料であり、運用会社・販売会社・受託銀行の三者に配分されます。 通常は年率〇%と表示され、その割合を基準価額にあたるNAV(Net Asset Value)に日割りで乗じる形で毎日控除されるため、投資家が口座から現金で支払う場面はありません。 したがって運用成績がマイナスでも信託報酬は必ず差し引かれ、長期にわたる複利効果を目減りさせる“見えないコスト”として意識されます。 販売時に一度だけ負担する販売手数料や、法定監査報酬などと異なり、信託報酬は保有期間中ずっと発生するランニングコストです。 実際には運用会社が3〜6割、販売会社が3〜5割、受託銀行が1〜2割前後を受け取る設計が一般的で、アクティブ型ファンドでは1%超、インデックス型では0.1%台まで低下するケースもあります。 同じファンドタイプなら総経費率 TER(Total Expense Ratio)や実質コストを比較し、長期保有ほど差が拡大する点に留意して商品選択を行うことが重要です。