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ワラント発行で株価が下がるのはなぜですか?

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2025/10/30 09:14

株式
株式

男性

60代

question

企業がワラント(新株予約権付社債など)を発行すると、株価が下落することが多いと聞きました。発行によってどのような影響が株価に及ぶのか、希薄化の仕組みや投資家心理の面から詳しく教えてください。


回答

佐々木 辰

株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長

ワラントを発行すると株価が下がりやすいのは、既存株主の1株当たり価値が理論的に薄まる「希薄化」と、実際の市場での売り圧力増加という2つの要因が主な理由です。

ワラントは将来一定の価格で株式を取得できる権利であり、行使されると発行済株式数が増えます。企業全体の価値が変わらなくても、株数が増えることで1株あたりの価値は下がるため、発表直後から投資家はその影響を織り込み、株価が下落する傾向を見せます。

たとえば、時価総額10億円・株価1000円・株式数1000万株の会社が、行使価額900円のワラントを500万株分発行すると、行使後は株式数が1500万株になります。会社は行使によって4.5億円を受け取りますが、単純計算で1株あたりの理論価値は967円程度に下がります。

さらに、ワラントを引き受けた投資家は、価格変動のリスクを抑えるために「デルタ・ヘッジ」と呼ばれる手法で現物株を売ることがあります。この売りが市場での需給を悪化させ、短期的に株価を押し下げる要因となります。特に流動性の低い銘柄では、ヘッジ売りの影響が大きく出やすい傾向があります。

加えて、発行条件そのものが「会社の資金繰りが厳しい」と市場に受け取られることもあります。行使価額が低い、リセット条項がある、希薄化率が高いといった条件は、企業が株主よりも資金調達を優先しているシグナルと見なされ、株価にマイナスに働くケースが多いです。

ただし、すべてのワラント発行が悪材料になるわけではありません。調達資金の使途が明確で成長投資に結びついている場合や、希薄化を抑える設計がなされている場合は、長期的に企業価値を高め、結果的に株価が上昇するケースもあります。

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ワラント

ワラントとは、一定の条件で株式や債券などを購入できる権利を指す。特に「新株予約権付社債(ワラント債)」の形で発行されることが多く、投資家は将来的にあらかじめ決められた価格で株式を取得できる。通常のオプションと異なり、企業が新規発行する株式に結びつくことが多く、希薄化リスクを伴う。価格は基礎となる株価の変動に大きく左右される。

新株予約権

新株予約権とは、将来あらかじめ決められた価格で会社の株式を取得できる権利のことです。この権利を持っている人は、指定された期間内に株式を買うかどうかを選べる仕組みになっています。 この仕組みは、企業が資金を調達したり、役員や従業員にインセンティブを与えたり、敵対的買収への備えとして使われることがあります。たとえば、ベンチャー企業では役員や社員に新株予約権を付与することで、会社の成長に応じて報酬を得られる仕組みとしています。これがいわゆるストックオプションです。 投資家の立場では、新株予約権は「潜在的に株式が増える可能性があるもの」として注意が必要です。行使されると新しい株式が発行されるため、既存の株主の持ち分が薄まる(希薄化)ことになります。このため、企業分析では「潜在株式数」を考慮して、1株あたりの利益や株主価値への影響を見ていくことが重要です。 また、新株予約権の価値は、株価の変動や行使価格、残り期間によって大きく変わります。株価が行使価格を上回っている場合は行使されやすく、そうでない場合は価値がないまま失効することもあります。 資産運用に関心のある方にとっては、投資先企業の開示資料などで「新株予約権の発行状況」や「ストックオプションの残高」などを確認することが、投資判断を行ううえで非常に有益です。企業の成長性を評価する際には、その裏で将来の株主構成や株式数がどう変化する可能性があるのかを見ておくとよいでしょう。

希薄化(ダイリューション)

希薄化(ダイリューション)とは、企業が新株発行やストックオプションの行使、転換社債の株式転換などを行った結果、発行済株式数が増加し、既存株主が保有する株式の「持ち分比率」や1株当たり指標(EPS・BPS・配当など)が相対的に低下する現象を指します。たとえば、発行済株式が1,000万株の会社で100万株を追加発行すると、株数は1,100万株に増え、従来10%を保有していた株主の持株比率はおよそ9.1%へ下がります。この比率低下だけでなく、利益や純資産が同じまま株数だけ増えるため、1株当たり利益(EPS)や1株当たり純資産(BPS)も薄まる点が既存株主にとっての実質的な影響です。 希薄化は、資金調達やM&A対価の支払いなど経営上の目的で避けられない場合がありますが、次のような視点で注意が必要です。 発行規模と発行価格 既存株主に与える希薄化インパクトは「何株・いくらで」発行するかで大きく変わります。発行株数が多い、あるいは発行価格が市場より著しく低い場合は希薄化が急激に進みやすいです。 資金使途とリターン 調達資金が成長投資や財務改善に使われ、中長期で収益拡大が見込めるなら、希薄化を上回る株価上昇につながる可能性があります。逆に、明確なリターンが見込めない増資は株価を長期的に押し下げることがあります。 潜在株式の規模 ストックオプションや転換社債など、まだ株式化していない潜在株式も将来の希薄化要因です。有価証券報告書の「潜在株式数」や平均行使価格を把握し、完全希薄化後EPSでバリュエーションを確認することが重要です。 ロックアップ・売却制限 発行先にロックアップ(一定期間の売却禁止)が設定されているかで、実際に市場へ売り圧力が出るタイミングが異なります。解除時期が近いと、株価の上値を抑えるオーバーハング要因になります。 まとめると、希薄化は発行済株式数の増加に伴う既存株主の持ち分低下と1株当たり価値の減少を意味します。投資判断を行う際は、新株発行の規模・価格・資金使途に加え、潜在株式の存在やロックアップ条件まで確認し、将来のリターンとリスクを総合的に見極めることが欠かせません。

デルタ

デルタとは、オプション取引において、原資産の価格が1単位動いたときに、オプションの価格がどれくらい動くかを示す指標です。たとえば、あるコール・オプションのデルタが0.6であれば、原資産の価格が1円上がると、そのオプションの価格は約0.6円上がるという意味になります。 デルタの値は通常、0から1の間(プット・オプションの場合は0から−1の間)で表され、オプションの値動きの感度を表す尺度として使われます。また、オプションの保有リスクを管理する際の重要な要素でもあり、「デルタ・ヘッジ」と呼ばれる手法に利用されることもあります。オプション取引を深く理解するには欠かせない概念です。

ヘッジ

ヘッジとは、価格変動や為替変動などのリスク(不確実性)から資産を守るために、あらかじめ対策を講じることを意味します。資産運用の分野では、将来起こりうる損失を緩和または回避するために、別の取引や金融商品を利用してリスクを相殺する行為を指します。 たとえば、外貨建て資産を保有している場合、円高が進むとその価値が目減りするリスクがあります。このとき、為替予約や為替先物といったヘッジ手段を使えば、円高による損失を一定程度防ぐことができます。また、株式市場の下落に備えて、先物取引やプットオプションを利用することも、価格下落に対するヘッジになります。 ヘッジは、利益を狙うための手段というよりも、損失を限定し、安定した運用成果を得るためのリスク管理策として使われます。完全にリスクをゼロにすることはできませんが、価格変動による影響を抑えたい場合には非常に有効です。ただし、ヘッジにはコストがかかることも多く、その効果と費用のバランスをよく見極めて判断することが重要です。

行使価格

行使価格とは、あらかじめ決められた価格で株式などの金融商品を購入したり売却したりできる権利を持つ際に、その売買ができる価格のことを指します。特に、ストックオプションやオプション取引といった場面でよく使われます。たとえば、ある会社のストックオプションを持っている従業員が、株を1株あたり1,000円で買える権利を持っている場合、この1,000円が行使価格です。もし市場価格が1,500円になっていれば、行使して利益を得ることができます。このように、行使価格は将来の利益を左右する重要な基準となります。

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