
子ども・子育て支援金(拠出金)とは?「独身税」と呼ばれる背景や負担額・計算方法・対象者を徹底解説
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公開:
2025.09.03
更新:
2025.09.03
2024年6月に「改正子ども・子育て支援法」が成立し、2026年度から新たに「子ども・子育て支援金」の徴収が開始されます。この制度は、少子化対策の財源確保を目的として、医療保険料に上乗せされる仕組みです。
本記事では、お金の専門家の立場から、子ども・子育て支援金制度の詳細について中立的に解説します。負担額の具体的な試算や計算方法、対象者の範囲など、制度の全体像を正確にお伝えします。
サクッとわかる!簡単要約
2026年4月に導入される子ども・子育て支援金について、仕組みや負担増の目安(月250〜450円)、制度別・年収別の例で把握できます。徴収方法は医療保険料と一体化されており、被用者保険は労使折半、扶養家族の直接負担はありません。児童手当の拡充や出産育児一時金50万円、2025年創設の新給付など使い道も理解でき、「独身税」とも呼ばれている誤解に惑わされず、制度の趣旨の理解が進みます。
目次
子ども・子育て支援金制度の概要
子ども・子育て支援金制度は、社会全体で子育て世帯を支援するために創設された新しい財源確保の仕組みです。この制度により、児童手当の拡充や育児支援の充実など、総額1兆円規模の少子化対策が実施されます。
制度が創設される背景
少子化・人口減少は、我が国が直面する最大の危機の一つです。政府は、若年人口が急激に減少する2030年代に入るまでが、少子化傾向を反転できるかどうかのラストチャンスとしています。
こうした危機的な状況を受けて、政府は「こども未来戦略」を策定し、抜本的な少子化対策に取り組むことを決定しました。
この戦略では、総額3.6兆円規模の「こども・子育て支援加速化プラン」がとりまとめられています。その財源の一部として、1兆円を子ども・子育て支援金で賄う計画となっています。
制度の目的と意義
子ども・子育て支援金制度の目的は、全世代・全経済主体で子育て世帯を支える「新しい分かち合い・連帯の仕組み」を構築することです。子どもがいる世帯だけでなく、すべての世代が少子化対策に参加することで、社会全体で子育てを支援する体制を整えようとしています。
この制度により実現される支援は、妊娠・出産から高等教育まで、ライフステージに応じた切れ目のない支援となります。児童手当の抜本的拡充や育児休業給付の充実、保育制度の拡張など、多岐にわたる施策が展開される予定です。
「独身税」と呼ばれる理由と誤解の真相
子ども・子育て支援金制度は、SNSやメディアで「独身税」という通称で呼ばれることが多くあります。しかし、この呼び方には大きな誤解が含まれており、制度の本質を正しく理解することが重要です。
なぜ「独身税」と呼ばれるのか
子ども・子育て支援金制度が「独身税」と呼ばれる理由は、子育て世帯への支援を目的としているにもかかわらず、子どもがいない世帯や独身者にも同様の負担が求められるためです。
支援の恩恵を直接受けない層にとって、「負担だけが増える制度」と感じられることから、SNS上で「独身税」という表現が広まりました。特に、少子化対策という名目で全世代から拠出を求める仕組みに対して、不公平感を抱く声が多く上がっています。
「独身税」は正確な表現ではない
実際には、この制度は「独身者だけに課される税金」ではありません。医療保険に加入するすべての人が対象となるため、既婚者や子どもがいる世帯も同様に負担します。
また、税金ではなく社会保険料への上乗せという形での徴収となるため、厳密には「税」でもありません。正式名称は「子ども・子育て支援金制度」であり、「独身税」はあくまで俗称・通称です。
誤解が生まれる背景
「独身税」という呼び方が広まった背景には、制度の複雑さと情報の伝わり方があります。政府の説明では「全世代・全経済主体で支える仕組み」とされていますが、実際の負担者目線では理解しにくい制度設計となっています。
また、支援内容が主に子育て世帯に集中しているため、その他の世帯にとっては「自分たちには関係ない制度のために負担させられる」という印象を与えやすい構造になっています。
いつから始まる?子ども・子育て支援金の徴収スケジュール
子ども・子育て支援金の徴収は、2026年度から段階的に開始されます。制度の構築と社会への周知期間を考慮して、2024年の法律成立から約2年間の準備期間が設けられています。
支援金の徴収は、3年間をかけて段階的に導入されます。初年度の2026年度は約6,000億円、2027年度は約8,000億円、2028年度に満額の約1兆円となる計画です。
この段階的な導入により、医療保険制度への影響を最小限に抑えながら、確実に財源を確保していく仕組みとなっています。また、制度の運用状況を確認しながら調整できる利点もあります。
制度開始までの間は、「子ども・子育て支援特例公債」が発行され、つなぎの財源として活用されます。これにより、児童手当の拡充などの施策は2024年10月から前倒しで実施されています。
子ども・子育て支援金の対象者と徴収方法
子ども・子育て支援金の対象者は、医療保険に加入するすべての人です。年齢や子どもの有無に関係なく、社会保険制度を通じて負担することになります。
負担対象となるのはすべての医療保険加入者
医療保険の被保険者および被扶養者が、支援金の対象となります。具体的には、会社員・公務員が加入する被用者保険、自営業者が加入する国民健康保険、75歳以上の方が加入する後期高齢者医療制度の加入者すべてです。
ただし、実際に保険料を負担するのは被保険者(保険料を支払う人)のみです。被扶養者(扶養されている配偶者や子どもなど)は、直接的な負担はありません。
なお、子どもがいない人や子育てが終わっている人も、支援金を納める必要があります。少子化・人口減少の問題は、日本経済全体・地域社会全体の問題であるためです。
つまり、国民皆保険制度や社会保険制を維持するために、子ども・子育て支援金は重要な役割を果たします。
医療保険と一体化して徴収される
支援金は、既存の医療保険料と一体となって徴収されます。新たな手続きや別途の支払いは必要なく、現在の保険料支払いと同じ方法で徴収される仕組みです。
被用者保険の場合、事業主と被保険者が折半して負担します。給与から天引きされる健康保険料に支援金分が上乗せされ、同額を会社も負担します。国民健康保険や後期高齢者医療制度では、保険料と合わせて個人が負担することになります。
子ども・子育て支援金はいくら?具体的な負担額
支援金の負担額は、加入する医療保険の種類や年収によって異なります。全制度平均では、月額250円から450円の負担増となる見込みです。
保険料別の負担額一覧
以下は、2028年度の満額実施時における加入者一人あたりの月額負担額です(こども家庭庁試算)。
区分 | 令和8年度見込み額 | 令和9年度見込み額 | 令和10年度見込み額 |
---|---|---|---|
全制度平均 | 250円 | 350円 | 450円 |
国民健康保険(市町村国保) | 250円 (参考)一世帯当たり 300円 | 350円 (参考)一世帯当たり 400円 | 450円 (参考)一世帯当たり 600円 |
後期高齢者医療制度 | 200円 | 250円 | 350円 |
協会けんぽ | 300円 (参考)被保険者一人当たり 450円 | 400円 (参考)被保険者一人当たり 550円 | 500円 (参考)被保険者一人当たり 700円 |
健保組合 | 250円 (参考)被保険者一人当たり 400円 | 350円 (参考)被保険者一人当たり 550円 | 450円 (参考)被保険者一人当たり 700円 |
共済組合 | 300円 (参考)被保険者一人当たり 500円 | 400円 (参考)被保険者一人当たり 600円 | 500円 (参考)被保険者一人当たり 800円 |
協会けんぽ(中小企業の会社員)に比べて、健保組合(大企業の会社員)や共済組合(公務員)の負担額が高くなっています。これは、各保険制度の給付水準や運営方式の違いによるものです。
大企業の健康保険組合と協会けんぽの違いに関しては、こちらのQ&Aも参考にしてみてください。
年収別負担額シミュレーション
年収に応じた具体的な負担額は以下のとおりです(2028年度、夫婦子1人の3人世帯、夫の給与収入のみのケース)。
年収 | 会社員・公務員 | 自営業者 |
---|---|---|
200万円 | 350円 | 250円 |
400万円 | 650円 | 550円 |
600万円 | 1,000円 | 800円 |
800万円 | 1,350円 | 1,100円 |
年収が高いほど負担額も大きくなる仕組みです。これは、医療保険料が標準報酬月額に比例して決まるためです。
支援金の計算方式
会社員や公務員の場合、毎月の給与(標準報酬月額)と賞与(標準賞与額)に支援金率を乗じて計算されます。支援金率は段階的に引き上げられ、2028年度に満額となる予定です。
自営業者などが加入する国民健康保険では、所得割・均等割・平等割といった現行の算定方式に支援金分が上乗せされます。具体的な算定方法は、各市区町村によって若干異なる場合があります。
実際の保険料への影響
支援金の導入により、医療保険料の負担は確実に増加します。ただし、段階的な導入により、急激な負担増は避けられる設計です。
被用者保険では労使折半となるため、従業員の実際の負担は支援金額の半分となります。例えば、支援金が月額800円の場合、従業員負担は400円、事業主負担も400円となります。扶養家族がいる場合でも、被保険者本人の負担のみで扶養者分の追加負担はありません。
子ども・子育て支援金の使い道と支援内容
集められた支援金は、子ども・子育て支援法で定められた事業にのみ使用され、他の目的に流用されることはありません。主な支援内容は以下のとおりです。
児童手当の抜本的拡充
2024年10月から実施されている児童手当の拡充が、支援金制度の主要な財源確保対象です。従来は中学生まで支給されていた児童手当が、高校生年代(18歳年度末)まで延長されました。
第3子以降の支給額も大幅に増額され、年齢に関係なく月額3万円が支給されます。また、所得制限が完全に撤廃され、すべての世帯が支給対象となっています。これらの拡充により、子どもが3人いる家庭では総額で最大400万円の増額となります。
妊娠・出産時の支援強化
妊婦のための支援給付
2025年度から制度化される「妊婦のための支援給付」では、妊娠届出時に5万円、出産後に子の人数×5万円が支給されます。双子の場合は、妊娠届出時5万円+出産後10万円(5万円×2人)となり、合計15万円の支援を受けられます。
これまで「出産・子育て応援交付金事業」として実施されていた支援が恒久的な制度となり、妊娠期からの切れ目のない支援が実現されます。
出産費用について詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてみてください。
出産育児一時金の拡充
出産育児一時金は、2023年4月に42万円から50万円に引き上げられました。さらに、2026年度をめどに出産費用(正常分娩)の保険適用導入も検討されており、妊婦の経済的負担のさらなる軽減が期待されています。
出産育児の手当・一時金や給付金の活用方法については、こちらの記事で詳しく解説しています。
出生後休業支援給付
2025年4月から創設される「出生後休業支援給付」では、両親がともに14日以上の育児休業を取得した場合、最大28日間の給付が上乗せされます。通常の育児休業給付と合わせて、手取り10割相当の支援となります。
父親は子の出生後8週間以内、母親は産後休業後8週間以内の取得が条件です。配偶者が専業主婦(夫)やひとり親家庭の場合は、配偶者の育児休業取得は要件とされません。
育児時短就業給付
2025年4月から創設される「育児時短就業給付」では、2歳未満の子を養育しながら時短勤務をする場合、時短勤務中に支払われた賃金の10%相当額が支給されます。
この制度により、育児期間中の柔軟な働き方を経済的にサポートし、仕事と育児の両立を促進する狙いがあります。
出生後休業支援給付と育児時短就業給付に関しては、こちらのQ&Aも参考にしてみてください。
国民年金保険料の免除措置
2026年10月から、子を養育する自営業者・フリーランスなど(国民年金第1号被保険者)について、その子が1歳になるまで国民年金保険料が免除される措置が創設されます。
対象期間は最大12ヵ月ですが、産前産後免除が適用される母親については最大9ヵ月となります。所得要件や休業要件はなく、幅広い被保険者が支援対象です。
免除期間中も「保険料納付済期間」に算入され、育児期間中の経済負担を軽減しながら年金受給権を確保できます。
こども誰でも通園制度
2026年度から全国で実施される「こども誰でも通園制度」は、保護者の就労状況に関係なく保育所などを利用できる新しい制度です。保育所等に通っていない生後6ヵ月から満3歳未満の子どもが対象となります。
月10時間の枠内で時間単位での利用が可能で、保護者の用事や リフレッシュ目的でも利用できます。子どもにとっては家庭以外での経験ができる機会となり、保護者にとっては育児負担の軽減効果が期待されています。
2023年度から試行的事業が開始されており、2025年度に制度化、2026年度に給付化して全国の自治体で実施される予定です。
「実質的な負担なし」の仕組み
政府は、支援金制度の導入について「実質的な負担なし」で構築するとしています。具体的には、歳出改革による社会保険負担軽減効果と賃上げによる効果を活用し、支援金制度導入による社会保障負担率の上昇がこれらの軽減効果を超えないよう設計されています。
社会保障負担率は「社会保険料負担÷国民所得」で算出され、この比率が上昇しないよう配慮された制度設計となっています。ただし、個人レベルでの実感については、賃上げの進展状況や歳出改革の効果によって変わってくる可能性があります。
この記事のまとめ
子ども・子育て支援金制度は、2026年4月から始まる新しい社会保障制度です。医療保険料への上乗せという形で、すべての世代が少子化対策に参加する仕組みとなっています。
支援金の負担は、年収や加入する医療保険によって異なります。全制度平均で月額250円から450円の負担増となりますが、具体的な金額は2026年の制度開始時に確定します。
負担は医療保険料と一体で徴収されるため、新たな手続きは不要です。ただし、支援内容について正しく理解し、該当する支援制度を適切に活用することが重要です。

金融系ライター
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1,000記事以上の執筆実績あり。
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1,000記事以上の執筆実績あり。
関連する専門用語
子ども・子育て支援金
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健康保険とは、病気やけが、出産などにかかった医療費の自己負担を軽減するための公的な保険制度です。日本では「国民皆保険制度」が採用されており、すべての人が何らかの健康保険に加入する仕組みになっています。 会社員や公務員などは、勤務先を通じて「被用者保険」に加入し、自営業者や無職の人は市区町村が運営する「国民健康保険」に加入します。保険料は収入などに応じて決まり、原則として医療費の自己負担は3割で済みます。また、扶養されている家族(被扶養者)も一定の条件を満たせば保険の対象となり、個別に保険料を支払わなくても医療サービスを受けられる仕組みになっています。健康保険は日常生活の安心を支える基本的な社会保障制度のひとつです。
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国民健康保険とは、自営業者やフリーランス、退職して会社の健康保険を脱退した人、年金生活者などが加入する公的医療保険制度です。日本ではすべての国民が何らかの健康保険に加入する「国民皆保険制度」が採用されており、会社員や公務員が加入する「被用者保険」に対して、それ以外の人が加入するのがこの国民健康保険です。 市区町村が運営主体となっており、加入・脱退の手続きや保険料の納付、医療費の給付などは、住民票のある自治体で行います。保険料は前年の所得や世帯の構成に応じて決まり、原則として医療機関では医療費の3割を自己負担すれば診療を受けられます。病気やけが、出産などの際に医療費の支援を受けるための基本的な仕組みであり、フリーランスや非正規労働者にとっては重要な生活保障となる制度です。
医療保険
医療保険とは、病気やケガによる入院・手術などの医療費を補償するための保険です。公的医療保険と民間医療保険の2種類があり、日本では健康保険や国民健康保険が公的制度として提供されています。一方、民間医療保険は、公的保険でカバーしきれない自己負担分や特定の治療費を補填するために活用されます。契約内容によって給付金の額や支払い条件が異なり、将来の医療費負担を軽減するために重要な役割を果たします。
後期高齢者医療制度
後期高齢者医療制度とは、75歳以上の高齢者(および一定の障害がある65歳以上の方)を対象とした日本の公的医療保険制度です。2008年に創設され、それまでの国民健康保険や被用者保険とは別に、医療費の負担をより明確にし、公平な制度運営を目指して導入されました。 この制度では、対象者は個人単位で保険に加入し、原則として年金からの天引きで保険料を納めます。医療機関を受診した場合には、所得に応じて自己負担割合(原則1割、一定以上の所得がある人は2割または3割)で医療費を支払います。 高齢化が進む中で、医療費の増加にどう対応していくかが社会全体の課題となっており、後期高齢者医療制度はその一つの柱として、安定的な医療提供と財源確保のバランスを図る役割を担っています。資産運用においても、老後の医療費を見積もる際に、この制度の仕組みを理解しておくことは重要です。
公的医療保険制度
公的医療保険制度とは、すべての国民が安心して医療を受けられるように、国が法律で定めた仕組みに基づいて提供される医療保険の制度です。日本では「国民皆保険(こくみんかいほけん)」と呼ばれ、国民全員がいずれかの医療保険に加入することが義務付けられています。 主な保険には、会社員などが加入する「健康保険」、自営業者や無職の人などが加入する「国民健康保険」、75歳以上の高齢者向けの「後期高齢者医療制度」などがあります。この制度により、医療費の一部(たとえば3割)を自己負担するだけで、必要な医療サービスを受けることができます。公的医療保険制度は、社会全体で医療費を支え合う「相互扶助」の仕組みであり、生活の安心を支える基本的な社会保障のひとつです。
被扶養者
被扶養者とは、健康保険に加入している人(被保険者)に生活の面で養われていて、自分では保険料を払う必要がない家族のことを指します。 一般的には、配偶者、子ども、親などが該当しますが、その人の年収が一定額以下であることなど、いくつかの条件を満たす必要があります。たとえば、専業主婦(または主夫)や収入の少ない学生の子どもなどが典型的な例です。 被扶養者は、自分で健康保険に加入していなくても、扶養している被保険者の健康保険を通じて医療を受けることができ、医療費の一部負担で済みます。 この仕組みによって、家族全体の保険料負担が軽減されるメリットがあります。ただし、就職などで収入が増えた場合には扶養から外れ、自分自身で保険に加入する必要があります。
被保険者
被保険者とは、保険の保障対象となる人物。生命保険では被保険者の生存・死亡に関して保険金が支払われる。医療保険では被保険者の入院や手術に対して給付金が支払われる。損害保険では、被保険者は保険の対象物(自動車など)の所有者や使用者となる。被保険者の同意(被保険者同意)は、第三者を被保険者とする生命保険契約において不可欠な要素で、モラルリスク防止の観点から法律で義務付けられている。
出産育児一時金
出産育児一時金とは、健康保険に加入している人が出産したときに、出産にかかる経済的負担を軽減するために支給されるお金のことです。出産に直接かかる費用は高額になることがあるため、国の制度として一定額が支給される仕組みになっています。原則として、1児につき一律の金額が支給され、双子や三つ子の場合は人数分が加算されます。 この制度は公的医療保険に加入していれば、被保険者本人でなくても、たとえば扶養されている配偶者が出産した場合でも受け取ることができます。手続きは加入している健康保険組合を通じて行い、多くの場合は医療機関との直接支払い制度により、実際に自分でお金を立て替えずに利用できる仕組みになっています。
出生後休業支援給付金
出生後休業支援給付金とは、主に父親が子どもが生まれた後に一定期間育児のために休業を取った場合、その期間の収入減少を補う目的で支給される給付金です。いわゆる「産後パパ育休」(出生時育児休業)と呼ばれる制度の利用を後押しするために設けられた新しい支援制度で、雇用保険に加入している労働者が対象です。 通常の育児休業給付金とは異なり、子どもの出生直後という限られたタイミングで取得した休業に対して支給され、柔軟な取得(分割や短期取得)ができるのが特徴です。支給額は休業前の賃金の一定割合で、育児と仕事の両立を促進し、特に男性の育児参加を進めるために制度化されました。申請は勤務先とハローワークを通じて行われ、手続きや取得時期をあらかじめ計画することが重要です。
育児時短就業給付金
育児時短就業給付金とは、育児のためにフルタイムではなく短時間で働くことを選んだ場合に、収入が減った分を補うために支給される給付金です。特に育児休業から復職する際、子どもが3歳未満であることなど一定の条件を満たした労働者が対象になります。 これは、子育てと仕事を両立しやすくするための支援制度の一つで、短時間勤務による収入減少を経済的にカバーする役割を持っています。ハローワークを通じて申請し、給付は雇用保険から行われます。支給額は、通常の賃金と比べてどれだけ収入が減ったかに応じて算出され、一定の割合で補填される仕組みです。時短勤務でも安心して働き続けられるようにするための制度として、育児期の働く親を支援しています。
育児休業給付金
育児休業給付金とは、赤ちゃんが生まれたあとに育児のために仕事を休む人に対して、雇用保険から支給されるお金のことです。この制度は、子どもが1歳になるまで(一定条件を満たせば最長2歳まで)育児に専念できるよう、収入を一部補うことを目的としています。対象となるのは雇用保険に加入していて、一定期間働いていた労働者で、男女問わず利用できます。 支給額は、休業前の給与の67%(一定期間以降は50%)で、会社から給与が出ていないことが条件となります。出産手当金が終わったあとに引き続き申請されるケースが多く、家計を支える大切な制度の一つです。手続きは会社を通して行うのが一般的です。
こども誰でも通園制度
こども誰でも通園制度とは、保護者の就労状況にかかわらず、すべての子どもが一定時間、保育所などの施設を利用できるようにすることを目的とした新しい制度です。 これまでの日本の保育制度では、基本的に保護者が働いている場合に限って保育施設の利用が認められていましたが、この制度により「働いていない家庭の子ども」も保育の場に参加できるようになります。 子どもの発達や社会性を育む観点からも重要視されており、育児の孤立を防ぐための地域支援策としての意味合いもあります。資産運用やライフプランニングの面では、保護者が安心して学び直しや就労準備に時間を使えるようになることで、家庭の収入や将来設計に前向きな影響を与える可能性があります。
標準報酬月額
標準報酬月額(ひょうじゅんほうしゅうげつがく)とは、日本の社会保険制度において、健康保険や厚生年金保険の保険料や給付額を計算する基準となる月額報酬のことを指します。これは、従業員の給与や賃金を基にして決定されますが、月ごとの変動を考慮して一定の範囲に分類されます。 <計算対象の例> 基本給、能率給、奨励給、役付手当、職階手当、特別勤務手当、勤務地手当、物価手当、日直手当、宿直手当、家族手当、休職手当、通勤手当、住宅手当、別居手当、早出残業手当、継続支給する見舞金等、事業所から現金または現物で支給されるもの
改正子ども・子育て支援法
改正子ども・子育て支援法とは、日本における子育て支援制度を強化・拡充するために見直された法律です。主に少子化対策の一環として位置づけられており、保育所や幼稚園、認定こども園の整備、保育士の処遇改善、子育て家庭への経済的支援などを目的としています。 特に近年の改正では「共働き世帯」や「ひとり親家庭」など多様な家庭環境に対応する内容が盛り込まれており、教育・保育の無償化の拡大や、所得に応じた負担軽減策などが注目されています。資産運用という観点では、これに関連する公的支援や税制優遇、児童手当などの制度が家庭の家計や将来のライフプランに影響を与えるため、重要な知識の一つとなります。
こども未来戦略
こども未来戦略とは、日本政府が少子化対策と子ども・子育て支援を総合的に進めるために策定した中長期的な政策の方針です。子どもを安心して産み育てられる社会を実現することを目的に、経済的支援の強化、保育サービスの充実、働き方改革との連携など多角的な施策が盛り込まれています。 この戦略は、特に2023年以降に議論が進み、こども家庭庁の設置とも連動して、国全体で子育て支援を優先的に進める姿勢を明確にしています。資産運用という観点では、この戦略によって拡充された給付金制度や教育費支援策、税制改正が家計に与える影響が大きく、ライフプランや将来設計に密接に関わってきます。
妊婦のための支援給付
妊婦のための支援給付とは、妊娠中の女性が安心して出産を迎えられるようにするため、国や自治体が経済的・医療的な負担を軽減する目的で支給する給付金やサービスのことを指します。 具体的には、妊婦健診の費用補助、妊娠期の栄養指導、交通費や生活費の助成などがあり、地域によって内容や金額が異なります。また、物価上昇や出産費用の増加を背景に、新たな現金給付制度が創設される動きもあります。 資産運用や家計管理の面では、このような支援給付を把握し、出産前後の支出計画に組み込むことで、無理のないライフプランを立てやすくなります。出産を控える家庭にとっては、将来の教育費や生活費に備える準備の第一歩ともいえる制度です。