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三大疾病保険は入るべきか・いらないかの判断基準と一時金の目安を解説
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公開:
2025.07.28
更新:
2026.10.05
がん・急性心筋梗塞・脳卒中は、治療が長期化したり、働けない期間が生じたりすることで、医療費だけでなく家計にも影響を与える可能性があります。三大疾病保険はこうしたリスクに備える方法の1つですが、病気になれば必ず一時金を受け取れるわけではなく、商品ごとに対象疾病や支払要件も異なります。この記事では、三大疾病の基礎知識から保険の仕組み、公的保障、必要な一時金の目安、デメリットや団信との違いまで具体的に解説します。
三大疾病とは?がん・心疾患・脳血管疾患の基礎知識
三大疾病とは、日本人の死因の上位を占める「がん(悪性新生物)」「心疾患」「脳血管疾患」の3つをまとめた呼び方です。まずは定義と統計から、どのくらい身近なリスクなのかを確認しましょう。
三大疾病の定義と「特定疾病」「新三大疾病」との違い
統計上の三大疾病は、がん・心疾患(高血圧性を除く)・脳血管疾患を指します。一方、保険では「がん・急性心筋梗塞・脳卒中」に範囲を絞って、三大疾病(特定疾病)と呼ぶ商品が一般的です。心疾患には狭心症や心不全、脳血管疾患には脳卒中以外の病気も含まれるため、保険の対象は統計上の三大疾病より狭くなる場合があります。
| 用語 | 指しているもの | 使われる場面 |
|---|---|---|
| 三大疾病(3大疾病) | がん(悪性新生物)・心疾患・脳血管疾患 | 死因統計、保険商品の総称 |
| 特定疾病(特定三大疾病・特定3疾病) | がん・急性心筋梗塞・脳卒中 | 特定疾病保障保険・特約の支払対象 |
| 新三大疾病(新3大疾病) | 公的な定義はなく、商品名として使われる | 住宅金融支援機構の「新3大疾病付機構団信」など |
| 七大疾病・八大疾病 | 三大疾病に糖尿病・高血圧性疾患などの生活習慣病を加えたもの(範囲は商品ごとに異なる) | 医療保険の特約、住宅ローンの団信 |
| 介護保険の特定疾病 | 末期がん・脳血管疾患など16の病気 | 40〜64歳の要介護認定 |
出典:生命保険文化センター「「特定疾病保障保険」で、保険金を受け取れる状態とは?」
出典:住宅金融支援機構「新3大疾病付機構団信の加入要件・保障内容」
同じ「三大疾病」「特定疾病」という言葉でも、場面によって対象となる病気が異なります。保険を検討するときは、名称ではなく約款に書かれた対象疾病と支払要件で比べることが大切です。
三大疾病は日本人の死因の約44%を占める
厚生労働省の人口動態統計(確定数)によると、2025年の死亡数は158万9,533人でした。内訳は、がんが37万8,829人、心疾患が22万539人、脳血管疾患が10万361人で、三大疾病の合計は69万9,729人にのぼります。
| 順位 | 死因 | 死亡数 | 全死亡に占める割合 |
|---|---|---|---|
| 1位 | 悪性新生物<腫瘍>(がん) | 378,829人 | 23.8% |
| 2位 | 心疾患(高血圧性を除く) | 220,539人 | 13.9% |
| 3位 | 老衰 | 214,712人 | 13.5% |
| 4位 | 脳血管疾患 | 100,361人 | 6.3% |
| — | 三大疾病の合計 | 699,729人 | 44.0% |
出典:厚生労働省「令和7(2025)年人口動態統計(確定数)の概況」
三大疾病の割合は、がん23.8%・心疾患13.9%・脳血管疾患6.3%を合計した44.0%で、亡くなった人のおよそ2.3人に1人にあたります。ただし、この数字は高齢者の死亡を多く含むため、働き盛りの世代のリスクをそのまま表すものではありません。
三大疾病になる確率:がんの年代別罹患リスク
国立がん研究センターの最新がん統計によると、日本人が一生のうちにがんと診断される確率は男性61.1%、女性50.1%です(2023年データ)。ただし、がんと診断される確率は年齢によって大きく異なり、若い世代では高くありません。年齢ごとの累積罹患リスクを見てみましょう。
| 性別 | 39歳まで | 49歳まで | 59歳まで | 69歳まで | 79歳まで | 生涯 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 男性 | 1.2% | 2.8% | 7.5% | 20.4% | 41.9% | 63.3% |
| 女性 | 2.3% | 6.4% | 12.7% | 21.4% | 33.3% | 50.8% |
出典:国立がん研究センター がん情報サービス「がんの統計 2026」
出典:国立がん研究センター がん情報サービス「最新がん統計」
59歳までにがんと診断される確率は男性7.5%、女性12.7%で、60歳以降に大きく高まります。女性は40〜50代のリスクが男性より高い点が特徴で、主な要因は乳がんです。2018年にがんと診断された人の5年相対生存率は64.8%で、がんは治療を続けながら長く付き合う病気になりつつあります。
表は2021年データにもとづく推計のため、生涯の数値は冒頭の最新値(2023年データ)と一致しません。なお、心疾患と脳血管疾患には同じ形式の罹患確率が公表されていないため、入院日数や患者数の統計を参考にしてください。
入院日数と治療期間:脳血管疾患は長期化しやすい
厚生労働省の令和5年患者調査によると、退院患者の平均在院日数は病気によって大きく異なります。
| 傷病 | 平均在院日数(総数) | 35〜64歳 | 65歳以上 | 入院患者数 | 外来患者数 |
|---|---|---|---|---|---|
| 悪性新生物(がん) | 14.4日 | 10.7日 | 15.5日 | 10.61万人 | 18.64万人 |
| 心疾患(高血圧性を除く) | 18.3日 | 8.3日 | 20.9日 | 5.72万人 | 13.90万人 |
| 脳血管疾患 | 68.9日 | 44.5日 | 75.5日 | 10.94万人 | 7.48万人 |
がんは入院が平均14.4日と短い一方、外来患者が入院患者の約1.8倍にのぼり、通院での治療が中心になっています。脳血管疾患は平均68.9日と長く、働く世代の35〜64歳でも44.5日です。入院が短くても通院やリハビリが続けば、医療費よりも収入の減少が家計の負担になりやすいといえます。
三大疾病保険とは?仕組みと医療保険・がん保険との違い
三大疾病保険は、がん・急性心筋梗塞・脳卒中などで所定の状態になったときに、まとまった一時金を受け取れる保険です。仕組みと種類、ほかの保険との役割の違いを押さえておきましょう。
三大疾病保険の基本的な仕組み
三大疾病保険(特定疾病保障保険)は、対象の病気で所定の状態になると、100万円や300万円といった一時金を受け取れる仕組みです。
- 一時金の使い道は自由で、治療費だけでなく生活費や住宅ローンの返済にも充てられます。加入方法には、主契約として単独で契約する方法と、医療保険や死亡保険に特約として付ける方法の2つがあります。
主契約タイプは、特定疾病保険金を受け取らずに死亡した場合に、同額の死亡保険金が支払われる商品が一般的です。特約タイプには、一時金を受け取れるものや、所定の状態になると以後の保険料の払い込みが免除されるものがあります。生命保険文化センターの2025年度調査では、特定疾病保障保険・特約の加入率は30.4%で、がん保険・がん特約の39.9%より低い水準でした。
出典:生命保険文化センター「病気入院や特定の病気に備える生命保険の加入率は?」
貯蓄型(終身型)と掛け捨て型(定期型)の違い
保険期間には、一生涯保障が続く終身型と、10年・15年や60歳までなど期間を区切る定期型があります。終身型は解約返戻金のある商品が多く「貯蓄型」と呼ばれますが、同じ保障額なら保険料は定期型より高くなるのが一般的です。
定期型は解約返戻金がないか少額の「掛け捨て型」で、年満期タイプは更新のたびに保険料が上がります。子どもの独立までなど必要な期間がはっきりしているなら定期型、老後まで備えたいなら終身型が候補になるでしょう。
なお、終身保険と定期保険の違いについては、こちらの記事もあわせて参考にしてみてください。
医療保険・がん保険・就業不能保険との違い
三大疾病保険と役割が近い保険に、医療保険・がん保険・就業不能保険があります。違いは「どの病気で」「どのような形でお金を受け取れるか」という点です。
| 項目 | 三大疾病保険 | 医療保険 | がん保険 | 就業不能保険 |
|---|---|---|---|---|
| 対象 | がん・急性心筋梗塞・脳卒中など | 病気・ケガ全般 | がん | 病気・ケガで働けない状態 |
| 主な受け取り方 | 一時金 | 入院給付金・手術給付金 | 診断一時金・入院給付金・治療給付金など | 毎月の給付金 |
| 主な支払要件 | 診断確定、60日以上の所定状態、手術など | 入院・手術 | がんの診断確定・入院・治療 | 所定の就業不能状態が一定期間続くこと |
| 主に備えられる支出 | 治療初期のまとまった支出、収入減 | 入院・手術の費用 | がん治療にかかる費用 | 長期の収入減 |
出典:生命保険文化センター「病気やケガに備える生命保険にはどんな種類がある?」
三大疾病保険は、対象の病気を絞る代わりに、使い道が自由な一時金をまとめて受け取れる点が特徴です。すでにがん保険や就業不能保険に加入している場合は、保障が重なる部分がないかを確認してください。
医療保険・がん保険・就業不能保険に関しては、こちらの記事も参考にしてみてください。
三大疾病保険は入るべきか・いらないか:公的保障で足りる範囲を確認
三大疾病保険に入るべきか、いらないかを考える出発点は、公的保障でどこまでカバーされるかを知ることです。治療費は高額療養費制度、収入は傷病手当金で一定程度まで支えられるため、保険で備えるのはその不足分になります。
治療費:高額療養費制度で自己負担に月・年の上限がある
公的医療保険が適用される治療費は、高額療養費制度によって1か月の自己負担に上限が設けられています。2026年8月診療分から上限額が見直され、あわせて1年間(8月〜翌年7月)の自己負担に「年間上限」が新設されました。70歳未満の上限額を所得区分ごとに確認しましょう。
| 年収の目安 | 月の上限額 | 多数回該当 | 年間上限 |
|---|---|---|---|
| 約1,160万円〜 | 270,300円+(医療費−901,000円)×1% | 140,100円 | 168万円 |
| 約770万〜約1,160万円 | 179,100円+(医療費−597,000円)×1% | 93,000円 | 111万円 |
| 約370万〜約770万円 | 85,800円+(医療費−286,000円)×1% | 44,400円 | 53万円 |
| 〜約370万円 | 61,500円 | 44,400円 | 53万円 |
| 住民税非課税 | 36,900円 | 24,600円 | 29万円 |
出典:厚生労働省「高額療養費制度の見直しについて(令和8年8月診療分から)」
年収約370万〜約770万円の人が1か月に100万円の医療を受けた場合、自己負担は9万2,940円です。直近12か月で4回目以降は多数回該当として4万4,400円に下がり、年間でも53万円を超える負担は生じません。
年収約200万円以下(標準報酬月額15万円以下など)と確認できた人は年間上限が41万円となり、超えた分は2027年8月以降に払い戻されます。2027年8月には、所得区分がさらに細分化される予定です。
高額療養費制度について知っておけば、必要以上に保険料を支払う事態を防げます。詳しくは、こちらの記事を参考にしてみてください。
収入:会社員は傷病手当金で給与の約3分の2が最長1年6か月
会社員が病気で働けなくなった場合、健康保険から傷病手当金が支給されます。協会けんぽでは、連続3日間の待期のあと4日目から、休んだ日について支給される仕組みです。
1日あたりの支給額は、支給開始日以前12か月の標準報酬月額の平均を30で割った額の3分の2で、支給期間は通算1年6か月となっています。一方、自営業やフリーランスが加入する国民健康保険では、傷病手当金は任意の給付とされ、原則として支給されません。
傷病手当金の仕組みについてくわしく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてみてください。
出典:協会けんぽ「傷病手当金」
公的保障でカバーされない費用:差額ベッド代・先進医療・収入減
公的保障の対象外となる代表的な費用は、差額ベッド代、先進医療の技術料、傷病手当金では埋まらない収入の減少分の3つです。差額ベッド代は1人室で1日あたり平均8,710円(2025年8月時点)で、希望して個室に入ると全額が自己負担になります。
先進医療の技術料も全額自己負担で、2024年7月〜2025年6月の実績では陽子線治療が1件あたり約278万円、重粒子線治療が約319万円でした。ただし、年間の実施件数は陽子線治療が739件、重粒子線治療が303件にとどまり、誰もが受ける治療ではありません。
- 生命保険文化センターの2025年度調査では、直近の入院時の自己負担費用は平均18.7万円でした。治療費よりも、長引いた場合の収入減や対象外の支出をどう賄うかが、保険の必要性を左右します。
出典:厚生労働省「中央社会保険医療協議会 総会(第653回)資料(主な選定療養に係る報告状況)」
出典:厚生労働省「令和7年6月30日時点における先進医療に係る費用 令和7年度実績報告」
出典:生命保険文化センター「入院費用(自己負担額)はどれくらい?」
三大疾病保険の必要性が高い人・低い人の判断基準
公的保障を踏まえると、三大疾病保険の必要性は「働けなくなったときの収入減」と「貯蓄で耐えられる期間」で決まります。次の基準に照らして、自分がどちらに近いかを確認してください。
三大疾病保険の必要性が高い人
必要性が高いのは、まず傷病手当金がない自営業・フリーランスの人です。会社員なら給与の約3分の2が最長1年6か月支給されますが、国民健康保険には原則としてこの給付がなく、休業がそのまま収入ゼロにつながります。住宅ローンや教育費など毎月の固定支出が大きく、貯蓄が生活費の半年分に満たない世帯も、収入減に耐えられる期間が短いため優先度が上がるでしょう。
三大疾病保険がいらない・必要性が低い人
必要性が低いのは、治療費と収入減を貯蓄で賄える人です。年収約370万〜約770万円の会社員なら、公的保険が適用される治療費の自己負担は年間53万円が上限で、傷病手当金も受け取れます。
生活費の1〜2年分にあたる金融資産があり、住宅ローンなどの大きな固定支出がなければ、保険料を貯蓄や資産形成に回す選択も合理的でしょう。すでにがん保険や就業不能保険、三大疾病保障付きの団信に加入している人も、保障が重なるため追加の必要性は下がります。
40代・60代など年代別の考え方
30〜40代は罹患リスクこそ低いものの、住宅ローンや教育費の負担が重く、収入が止まったときの影響が大きい年代です。がんの累積罹患リスクは49歳までで男性2.8%、女性6.4%にとどまるため、保険料が安いうちに必要な期間だけ定期型で備える方法があります。
50代以降はリスクが高まる一方で保険料も上がり、貯蓄や退職金で備えられる範囲が広がります。60代は、公的年金という働けなくなっても減らない収入の有無を踏まえ、治療費の自己負担を貯蓄で賄えるかで判断するとよいでしょう。
三大疾病の一時金はいくら必要?編集部試算で見る目安
三大疾病の一時金がいくら必要かは、「治療費の自己負担」「収入の減少」「公的保障の対象外の費用」の3つを積み上げると目安が見えてきます。ここでは2026年10月時点の制度をもとに、編集部で試算しました。
一時金の目安を決める3つの費用
三大疾病の一時金の目安は、次の3つの費用を合計して考えます。
一時金の目安を決める費用
- 治療費の自己負担:高額療養費制度の上限額までを見込む
- 収入の減少:会社員は給与の約3分の1、傷病手当金のない自営業は収入の全額
- 公的保障の対象外の費用:差額ベッド代など、希望する療養環境によって金額が変わる
この合計から、取り崩せる貯蓄額を差し引いた金額が、保険で準備する一時金の目安です。治療費は上限があるため見通しを立てやすい一方、収入の減少は休職期間が長引くほど大きくなります。会社員か自営業かで不足額が大きく変わる点を意識しておきましょう。
【編集部試算】会社員・自営業別の必要額シミュレーション
試算の前提は、月収36万円(年収約500万円、高額療養費の所得区分は年収約370万〜約770万円)の40代です。ケース1は入院15日・休職3か月、ケース2は入院69日・休職12か月(8月〜翌年7月)としました。
入院日数は、患者調査におけるがんと脳血管疾患の平均在院日数を参考にしています。公的保険が適用される医療費は月100万円(10割負担の額)と仮定し、高額療養費の上限額を自己負担としています。差額ベッド代は1人室の平均額8,710円を全入院日数に適用し、会社員は給与が支給されず傷病手当金のみを受け取ると仮定しました。
| 項目 | ケース1:入院15日・休職3か月 | ケース2:入院69日・休職12か月 |
|---|---|---|
| 治療費の自己負担(高額療養費の適用後) | 約28万円(92,940円×3か月) | 53万円(年間上限) |
| 差額ベッド代(1人室・1日8,710円) | 約13万円(15日分) | 約60万円(69日分) |
| 収入減:会社員(傷病手当金あり) | 36万円(月12万円×3か月) | 144万円(月12万円×12か月) |
| 合計:会社員 | 約77万円 | 約257万円 |
| 収入減:自営業(傷病手当金なし) | 108万円(月36万円×3か月) | 432万円(月36万円×12か月) |
| 合計:自営業 | 約149万円 | 約545万円 |
出典:厚生労働省「高額療養費制度の見直しについて(令和8年8月診療分から)」
出典:協会けんぽ「傷病手当金」
出典:厚生労働省「中央社会保険医療協議会 総会(第653回)資料(主な選定療養に係る報告状況)」
編集部試算では、会社員は約77万〜257万円、自営業は約149万〜545万円が目安になりました。差額ベッド代は個室を希望した場合の費用で、大部屋を利用すればケース1で約13万円、ケース2で約60万円少なくなります。
- 食事代や交通費、賞与の減少は含めていないため、実際の必要額は治療内容や勤務先の制度によって変わる点に留意してください。貯蓄で賄える分を差し引いたうえで、会社員は100万〜300万円、自営業は200万〜500万円の範囲で検討するとよいでしょう。
なお、保険の種類はこちらの記事でまとめています。あわせて参考にしてみてください。
三大疾病保険のデメリットと一時金がもらえないケース
三大疾病保険のデメリットは、支払要件が病気ごとに細かく決められており、診断されただけでは一時金を受け取れない場合があることです。保険料や他の保険との重複も含め、加入前に確認したい点を整理します。
デメリット1:急性心筋梗塞・脳卒中は支払要件が厳しい商品がある
一般的な特定疾病保障保険では、がんは診断確定で支払われる一方、急性心筋梗塞と脳卒中には「60日」を基準とする要件があります。急性心筋梗塞は労働が制限される状態、脳卒中は言語障害やまひなどの後遺症が、初診日から60日以上続いたと医師に診断されることが条件です。
狭心症など対象外の病気もあり、軽症で早期に回復した場合は受け取れない可能性があります。
| 病気 | 一般的な支払要件 | 注意点 |
|---|---|---|
| がん(悪性新生物) | 保障開始後に初めてがんと診断確定されたとき | 上皮内がん・皮膚がん(悪性黒色腫を除く)は対象外/契約後90日以内は対象外が一般的 |
| 急性心筋梗塞 | 初診日から60日以上、労働が制限される状態が続いたと診断されたとき/治療のための手術を受けたとき | 狭心症などは含まない |
| 脳卒中(くも膜下出血・脳内出血・脳梗塞) | 初診日から60日以上、言語障害・運動失調・まひなどの後遺症が続いたと診断されたとき/治療のための手術を受けたとき | 手術要件の有無は商品による |
出典:生命保険文化センター「「特定疾病保障保険」で、保険金を受け取れる状態とは?」
所定の手術を受けたときや、治療を目的に入院したときに支払う商品もあり、要件は保険会社や加入時期によって異なります。対象を心疾患・脳血管疾患全般に広げた商品もあるため、パンフレットだけでなく約款の支払事由で比較しましょう。
デメリット2:がんは90日の免責期間があり、上皮内がんは対象外が多い
がんの保障には、契約から90日間の免責期間(待ち期間)を設ける商品が一般的で、この間に診断されても一時金は支払われません。
また、上皮内がん(上皮内新生物)や悪性黒色腫以外の皮膚がんは、支払対象から外れる取り扱いが一般的です。上皮内がんを対象に含める商品もあるため、がんの保障範囲は商品ごとに確認してください。
デメリット3:受取回数の制限・保険料負担・他の保険との重複
主契約タイプの特定疾病保障保険は、一時金を1回受け取ると契約が消滅し、再発や別の病気には備えられません。特約タイプには、1年または2年に1回を限度に複数回受け取れるものもありますが、保障が手厚い分だけ保険料は高くなります。
更新型は年齢とともに保険料が上がり、たとえばコープの三大疾病保険(100万円コース)は40〜44歳の月680円に対し60〜64歳は月3,570円です。がん保険の診断一時金や団信の三大疾病保障と対象が重なれば、同じリスクに二重に保険料を払うことになります。
三大疾病の一時金がもらえない主なケース
三大疾病の一時金を受け取れないのは、主に次のようなケースです。
三大疾病の一時金がもらえない主なケース
- 契約から90日以内にがんと診断された
- 上皮内がんなど、支払対象外のがんだった
- 急性心筋梗塞・脳卒中で、所定の状態が60日以上続かず、手術も受けなかった
- 狭心症など、対象に含まれない病気だった
- すでに一時金を受け取り、契約が消滅していた
- 告知義務違反により契約が解除された
請求できるか迷ったときは、診断書を取得する前に保険会社へ支払事由を確認しましょう。
団信の三大疾病保障とは?金利上乗せと支払要件の注意点
住宅ローンの団体信用生命保険(団信)には、死亡・高度障害に加えて三大疾病を保障するタイプがあります。所定の状態になると住宅ローンの残高がゼロになる仕組みで、保険料は金利への上乗せで負担するのが一般的です。
三大疾病保障付き団信の仕組みと支払要件
【フラット35】の新3大疾病付機構団信では、がん・急性心筋梗塞・脳卒中で所定の要件に該当すると、残りの返済が不要になります。がんは保障開始から90日以内の診断と上皮内がんが対象外で、急性心筋梗塞・脳卒中は60日以上の所定状態の継続または所定の手術が要件です。
加入できるのは満15歳以上満51歳未満の人で、三大疾病の保障は満75歳の誕生月の末日までとなっています。申込後の変更は原則できず、返済開始後は団信の種類を変更できません。
民間金融機関の団信には、がんと診断確定された時点で残高がゼロになる「がん団信」や、八大疾病まで広げたタイプもあります。保障範囲・支払要件・上乗せ金利は金融機関ごとに異なるため、借入先の説明書面で確認してください。
出典:住宅金融支援機構「新3大疾病付機構団信の加入要件・保障内容」
出典:住宅金融支援機構「団体信用生命保険の契約概要(詳細版)」
出典:住宅金融支援機構「申込みをした後に新機構団信から新3大疾病付機構団信、または新3大疾病付機構団信から新機構団信に変更できますか?」
出典:生命保険文化センター「団体信用生命保険について知りたい」
【編集部試算】金利上乗せのコストと一時金タイプとの違い
新3大疾病付機構団信の借入金利は、新機構団信付きの金利に年0.24%を上乗せした水準です。上乗せ分の負担額を、借入額3,000万円・返済期間35年・元利均等返済・ボーナス払いなしの条件で編集部が試算しました。上乗せ前の金利は、2026年10月の【フラット35】(融資率9割以下)で最も多い年3.830%としています。
| 項目 | 新機構団信(年3.830%) | 新3大疾病付機構団信(年4.070%) | 差額 |
|---|---|---|---|
| 毎月の返済額 | 129,791円 | 134,095円 | 4,304円 |
| 総返済額 | 約5,451万円 | 約5,632万円 | 約181万円 |
出典:住宅金融支援機構「最新の金利情報:長期固定住宅ローン【フラット35】」
出典:住宅金融支援機構「新3大疾病付機構団信の加入要件・保障内容」
年0.24%の上乗せは、毎月約4,300円、35年間で約181万円の負担に相当します。団信の保障は住宅ローンの残高に充てられるため、治療費や生活費に使える現金は手元に入りません。一時金タイプの三大疾病保険とは役割が異なるので、住居費の不安には団信、生活費の不安には一時金と分けて考えると整理しやすいでしょう。
なお、団信についてはこちらの記事で解説しています。あわせて参考にしてみてください。
三大疾病保険の選び方と共済で備える場合のポイント
三大疾病保険を選ぶときは、保険料の安さよりも「どの状態で支払われるか」を優先し、そのうえで一時金額や保険期間を決めることが大切です。民間の保険だけでなく、生協の組合員向けの商品も選択肢になります。
一時金額・受取回数・保険期間を決める
一時金額は、試算した不足額から貯蓄で賄える分を引いて決めます。たとえば不足額が約257万円で、取り崩せる貯蓄が150万円あるなら、一時金は100万円程度が目安です。受取回数は、再発や転移に備えたいなら複数回タイプ、保険料を抑えたいなら1回タイプが候補になるでしょう。
保険期間は、住宅ローンの完済や子どもの独立など、収入減の影響が大きい時期をカバーできるかで判断してください。
コープ共済で三大疾病に備える場合の保障と民間保険との違い
コープ共済の商品で三大疾病に関わる保障には、CO・OP共済《あいぷらす》の「新がん特約」があります。がんと診断確定されると100万円または200万円のがん治療共済金を受け取れますが、対象はがん(上皮内新生物を含む)に限られます。責任開始日は、申込日から91日目または発効日のいずれか遅い日です。
これとは別に、生協の組合員向けの団体保険として「コープの三大疾病保険」があります。こちらは共済ではなく、三井住友海上火災保険が引き受ける損害保険です。がん(上皮内がんを含む)の診断確定、または急性心筋梗塞・脳卒中の治療を目的とした入院の開始で、50万〜300万円の診断保険金が支払われます。
スタンダードプラン100万円コースの月払保険料は40〜44歳で680円、60〜64歳で3,570円で、1年更新のため5歳刻みで保険料が変わります(2026年3月始期)。
死亡保険金はなく、継続は満100歳までの更新型のため、保険料が一定の終身型や死亡保障を兼ねたい場合は民間の保険と比較しましょう。
出典:コープ共済「《あいぷらす》満18歳~満60歳の方が加入できるプラン(保障内容)」
相談現場で多い三大疾病保険の誤解3つ
三大疾病保険は仕組みが複雑なため、加入後に「想定と違った」と気づくケースがあります。相談の場で特に多い誤解を3つ見ていきましょう。
誤解1:「三大疾病と診断されれば必ず一時金を受け取れる」
診断だけで支払われるのは、多くの商品でがんに限られます。急性心筋梗塞や脳卒中は、60日以上の所定状態や手術などの要件を満たさなければ対象になりません。加入中の保険がある人は、保険証券と約款で「支払事由」の欄を確認しておきましょう。
誤解2:「高額療養費制度があるから民間の保険は一切いらない」
高額療養費制度が抑えてくれるのは、公的医療保険が適用される治療費の自己負担です。収入の減少や差額ベッド代、先進医療の技術料は対象外で、自営業の人には傷病手当金も原則ありません。不足額を計算したうえで、貯蓄で足りるかを確かめることが大切です。
誤解3:「団信に三大疾病保障を付ければ医療費の備えも十分」
団信の三大疾病保障は、住宅ローンの残高をゼロにするための保障です。返済はなくなりますが、治療費や生活費に使える現金が支払われるわけではありません。団信と、医療費・収入減への備えは分けて考える必要があります。
この記事のまとめ
三大疾病保険は、がん・急性心筋梗塞・脳卒中などで所定の条件を満たしたときに、まとまった一時金を受け取れる保険です。ただし、支払要件や保障範囲は商品によって異なり、すべての治療や収入減をカバーできるわけではありません。まずは高額療養費や傷病手当金などの公的保障、貯蓄、既加入の医療保険・がん保険・団信を確認し、病気で働けなくなった場合の不足額を整理しましょう。そのうえで、必要な保障額や保険期間を決めることが大切です。

金融系ライター
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1,000記事以上の執筆実績あり。
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1,000記事以上の執筆実績あり。
関連する専門用語
三大疾病(しっぺい)
三大疾病(しっぺい)とは、一般的に「がん」「心疾患」「脳卒中」の3つの重い病気をまとめて指す言葉です。これらの病気は、発症すると長期の治療が必要になることが多く、医療費も高額になる可能性があります。特に生命保険や医療保険の中では、この三大疾病に対応した保障が設けられている商品が多く、一時金の支給や保険料の免除などの仕組みもあります。 資産運用の観点からも、病気による収入減や支出増をカバーするために、三大疾病に備えた保険を活用することは、生活の安定と将来設計のうえで重要な手段となります。
主契約
主契約とは、生命保険や医療保険などの保険商品において、基本となる保障内容を規定する中心的な契約部分を指します。投資型保険でも、まず主契約が土台となり、そのうえで必要に応じて追加保障やサービスを付加する「特約」を組み合わせる仕組みが一般的です。 主契約があることで保険としての骨格が成立し、保険料の算定や契約期間、解約返戻金の有無などの重要な条件が定められます。投資初心者の方にとっては、特約に目が行きがちですが、まず主契約が何を保障し、どのような運用や保障期間になっているかを理解することが、資産運用として保険を活用するうえでの第一歩となります。
一時金形式
保険金や退職金などを一括で受け取る方式。まとまった資金を一度に受け取ることができるため、住宅ローンの返済や子どもの教育資金など、大きな支出に充てやすいメリットがある。年金形式と比べて、総受取額は少なくなる場合が多いが、資金の即時活用や自己運用が可能。税制面では退職所得控除(退職金の場合)や相続税・贈与税の非課税枠(生命保険金の場合)などが関係し、状況によって有利な選択肢となりうる。インフレリスクや長生きリスクへの対応は自己責任となる点に注意が必要。
特約
特約とは、保険契約や金融契約、不動産契約などにおいて、基本契約に追加される特別な条件や取り決めのことを指します。これは標準的な契約内容とは別に、契約者の希望や状況に応じて付加されるもので、主契約の補足・強化・変更などを目的とします。 たとえば、生命保険では「災害特約」や「払込免除特約」などがあり、基本の保障に加えて追加の保障や条件変更を可能にします。特約は自由度が高い反面、内容や適用条件が複雑になることもあるため、契約時にはその内容を正確に理解しておくことが重要です。資産運用や保険設計においては、特約の有無によって将来のリスク対応力やコスト負担が大きく変わる可能性があるため、戦略的に選ぶべき要素のひとつです。
解約返戻金
解約返戻金とは、生命保険などの保険契約を途中で解約したときに、契約者が受け取ることができる払い戻し金のことをいいます。これは、これまでに支払ってきた保険料の一部が積み立てられていたものから、保険会社の手数料や運用実績などを差し引いた金額です。 契約からの経過年数が短いうちに解約すると、解約返戻金が少なかったり、まったく戻らなかったりすることもあるため、注意が必要です。一方で、長期間契約を続けた場合には、返戻金が支払った保険料を上回ることもあり、貯蓄性のある保険商品として活用されることもあります。資産運用やライフプランを考えるうえで、保険の解約によって現金化できる金額がいくらになるかを把握しておくことはとても大切です。
掛け捨て保険
掛け捨て保険とは、一定期間の保障を得ることに特化した保険で、保険期間が終わった後に保険料が戻ってこないタイプの保険です。代表的なものに、定期型の生命保険や医療保険があります。保障が必要な期間に絞って加入できるため、毎月の保険料を安く抑えられるのが大きな特徴です。貯蓄機能はないものの、万一に備えるコストパフォーマンスが高く、特に子育て世代や住宅ローン返済中など、一時的に大きな保障を必要とする方に適しています。「お金が戻らないから損」と感じる方もいますが、必要な時期に必要な保障を効率よく確保する手段として、多くの方に利用されています。







