
医療費控除2025年版ガイド:対象費用・計算式・e-Tax申告まで完全解説
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公開:
2025.06.27
更新:
2025.06.27
2025年からe-Taxとマイナポータル連携が強化され、医療費通知や領収書CSVをスマホだけで自動取込できるようになりました。一方、保険給付金の差し引き忘れや美容目的費用の誤申告など、見落としやすい落とし穴も依然多く存在します。
本記事では対象医療費の判定フロー、控除額計算式、還付申告期限5年の活用法などを具体例とともに解説し、正しく節税するコツを学べます。
サクッとわかる!簡単要約
年収600万・900万・1,200万世帯が医療費50万円を支払った場合の減税インパクトをシミュレーションしながら、オンライン診療費やPCR検査費の可否を即判断できる最新フローとe-Tax入力手順を短時間で把握できます。さらに、還付金をNISAやiDeCoへ再投資して二重の節税を図る戦略まで学べるので、読了後には「ムダなく戻す」「戻した分を増やす」行動が取れるようになります。
医療費控除の仕組みと節税インパクト
医療費控除の要件を満たし、確定申告をすれば、所得税や住民税を軽減できます。まずは、医療費控除の基本的な仕組みから見ていきましょう。
医療費控除とは何か──2025年時点の計算式と控除額
医療費控除とは、1月1日から12月31日までの1年間に本人や生計を一にする家族のために支払った医療費が一定額を超えた場合に、所得から差し引かれる所得控除制度です。
控除額の計算式
- 年間医療費合計-保険金等で補填された金額-10万円※(控除上限額は200万円)
- ※総所得金額が200万円未満の人は10万円ではなく総所得金額の5%を差し引きます。
保険金などで補填された分は、差し引いて申告しなければなりません。純粋に自己負担した医療費のみが、控除対象になる点がポイントです。
年間医療費が基準額を超えていれば、その超えた部分が所得控除となり、納める所得税・住民税が軽減されます。
たとえば、年間50万円の医療費(保険金補填なし)を支払った場合、控除額は40万円です。所得税率が20%の方は8万円の所得税が還付され、翌年の住民税を4万円軽減できます(住民税の税率は一律10%)。
なお、医療費控除の適用を受けるには確定申告(還付申告)が必要で、個別に手続きを行わなければなりません。なお、この控除は本人以外の家族の医療費も合算でき、5年間の遡及申告(還付申告)も可能です。
仮に申告を忘れても5年以内であれば手続きできるため、対象年の翌年1月1日から5年以内に還付申告すれば税金が戻ってきます。
高額療養費制度との違い
高額療養費制度とは、公的医療保険の給付制度です。1か月間の自己負担医療費が所得区分ごとの上限額を超えた場合に、超過分が後から払い戻される仕組みです。
高額療養費制度は、医療費発生時の経済的負担を直接的に軽減する制度であり、税金の控除ではありません。医療費が高額になった場合は、まず高額療養費制度で月ごとの負担を減らし、それでも年間自己負担が多い場合は医療費控除で税の還付を受ける、というイメージです。
なお、高額療養費や出産育児一時金など公的医療保険から支給された金額は、医療費控除計算時に医療費から差し引きます。
高額療養費に関しては、こちらのFAQで詳しく解説しています。あわせてご覧ください。
セルフメディケーション税制との違い
セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)は、一定の条件を満たした人がスイッチOTC医薬品の購入費用について、控除を受けられる制度です。年間1万2千円を超えた部分(上限8万8千円)を所得控除できる点で、医療費控除と似ています。
対象はOTC医薬品の購入費のみで、医療機関への支払いは含みません。医療機関にかからず、市販薬で治療を行う際に、医療費の実質的な負担を軽減する制度といえるでしょう。
なお、セルフメディケーション税制を利用するには、対象年度に健康診断や予防接種など一定の取り組みを行っている必要があります。
- 通常の医療費控除と特例(セルフメディケーション税制)は同じ年に併用できず、どちらか一方を選択適用します。年間の医療費が10万円超と多い場合は通常の医療費控除を、OTC薬の購入が多い場合はセルフメディケーション税制を選択しましょう。
医療費控除とセルフメディケーション税制の使い分け
医療費控除とセルフメディケーション税制は、どちらか一方のみ適用できます。どのように使い分ければよいのかを整理しました。
制度 | 選択の目安 | 控除額計算の基準・上限 | 典型的な適用例 |
---|---|---|---|
医療費控除 | 年間自己負担医療費が①10万円超、または②所得200万円未満で医療費が所得の5%超 | (医療費総額 - 10万円※)を最大200万円まで控除 ※②の場合は「所得の5%」を差し引く | 入院・手術・高額治療があった年/医療費が多い世帯 |
セルフメディケーション税制 | 医療費10万円以下だが対象OTC薬購入額が多い(年間1.2万円超) | (対象OTC薬購入額 - 1万2,000円)を最大8万8,000円まで控除 | 病院代は数万円、ドラッグストアでOTC薬を年間3~4万円購入する健康診断受診者 |
両方に該当 | 医療費が10万円を少し超え、OTC薬も購入 | 医療費控除:10万円控除 セルフメディケーション税制:1.2万円控除 →どちらが控除額・減税額大きいか要シミュレーション | 控除額と適用所得税率を比較し有利な制度を選択 |
なお、一度申告で適用した制度は後日変更することができません(修正申告や更正の請求でも選択変更不可)。その年にどちらの制度を使うか迷ったら、国税庁のツールやファイナンシャルプランナーなどへの相談を活用し、より節税になる制度を選択しましょう
年収別の減税シミュレーション(600万/900万/1,200万)
医療費控除による節税メリットは、所得税率の高い高収入者ほど大きくなります。控除額そのものは所得に関係なく算出されますが、それによって軽減される税金額は、適用される税率(所得税+住民税)に応じて異なるためです。
医療費控除額が同じ場合でも、年収によって還付額・減税額がどれほど変わるかシミュレーションしてみます。なお、前提条件は支払った年間の医療費が50万円で、医療費控除は40万円というケースを想定します。
指標\年収帯 | 600万円台 | 900万円台 | 1,200万円台 |
---|---|---|---|
所得税率 | 20 % | 23 % | 33 % |
住民税率 | 10 % | 10 % | 10 % |
控除対象額 | 40 万円 | 40 万円 | 40 万円 |
所得税軽減額 | 8.0 万円 | 9.2 万円 | 13.2 万円 |
住民税軽減額 | 4.0 万円 | 4.0 万円 | 4.0 万円 |
合計軽減額 | 12.0 万円 | 13.2 万円 | 17.2 万円 |
上表のように、医療費控除額自体は同じでも、適用される税率が高いほど戻ってくる税金は増えます。実際の所得税率は累進課税で細かく区分されていますが、高収入層では住民税(一律10%)と合わせた実効税率が30~40%を超えるためです。
- シミュレーション結果からも、医療費控除は高所得サラリーマン層にとって見逃せない節税策であることが分かります。特に医療費の支出が多かった年度に関しては、医療費を集計したうえで、確定申告をしましょう。
対象になる医療費・ならない医療費の判定フロー
医療機関に対して支払った費用のすべてが、医療費控除の対象になるとは限りません。
以下で、医療費控除の対象になる支出とならない支出をまとめます。
診療費・薬代・通院交通費の基本ルール
医療費控除の対象となる費用は、「治療」を目的として医師または歯科医師の診療や処方を受けるために必要な支出です。具体的には、以下のような費用が含まれます。
診療費・治療費 | 病院やクリニックでの診察代、手術費、入院費(部屋代や食事代を含む)。医師の指示に基づく検査費用も対象 |
---|---|
薬代 | 医師の処方箋にもとづく調剤薬局での薬代 (ビタミン剤や健康増進のサプリ等は対象外) |
通院の交通費 | 通院や入院のために公共交通機関(電車・バス・タクシー等)を利用した際の交通費は往復分含めて対象。通院に必要でやむを得ず利用したタクシー代も対象(自家用車のガソリン代や駐車場代は対象外) |
予防や美容目的の支出は原則として含まれず、交通費については患者本人が通院するために必要なものに限られます。公共交通機関のICカードで支払った電車・バス代など領収書の出ないものは、メモや家計簿などで日付・区間・金額を記録しておき、申告時に備えましょう。
歯科インプラント・矯正・不妊治療・レーシック等の扱い
医療費控除の対象範囲は、公的保険の適用・非適用にかかわらず、治療目的であれば広く認められます。保険外診療で費用が高額になりがちな以下のようなケースも、原則として控除対象に含めることができます。
医療行為 | 医療費控除の可否 | 申告できる主な費用 | 控除不可・注意点 |
---|---|---|---|
歯科インプラント | 〇 | インプラント施術費、関連投薬費、通院交通費 | ― |
歯列矯正(機能回復目的) | 〇 | 矯正治療費、関連検査・投薬費、通院交通費 | 美容目的のみの矯正は✕ |
不妊治療 | 〇 | 体外受精・人工授精等の治療費、検査・投薬費、通院交通費 | 自治体補助金は差し引いて申告 |
レーシック等視力矯正手術 | 〇 | 手術費、術前検査費、術後投薬費 | ― |
申告の際はこれら費用の領収書をしっかり保管し、明細書に「インプラント治療〇〇円」「不妊治療〇〇円」など、具体的に記載しましょう。
美容目的費用・健康食品・差額ベッド代が除外される理由
医療費控除の対象外となるものも、把握しておきましょう。共通するのは「治療目的ではない」「社会通念上必要と認められない部分の支出」です。具体例と除外理由は以下の通りです。
費用項目 | 例外的に認められるケース | 控除不可・注意点 |
---|---|---|
美容整形・美容皮膚科治療(二重まぶた、シミ取りレーザー等) | - | 容貌を美化するだけの施術は疾病治療に当たらず対象外 |
健康増進用食品・サプリメント(ビタミン剤・健康食品など) | - | 病気予防・体調維持目的は控除不可。フィットネスや整体リラク費用も同様 |
メガネ・コンタクトレンズ購入費 | 白内障術後など医師が治療上必要と判断した特殊眼鏡等 | 一般的な視力補正用は日常生活費扱いで対象外 |
人間ドック・定期健康診断 | 異常が見つかり直後に治療へ移行した場合、その治療費部分のみ可 | 健康な人の予防的受診費用は原則対象外 |
予防接種費用(インフルエンザ等) | 医師が治療上必要と指示した場合は認められることあり | 任意接種や会社・学校向け接種は対象外 |
差額ベッド代(特別室料) | 感染症隔離など医師判断で個室が必須となり、差額が発生した場合 | 患者都合(快適性・プライバシー目的)の個室利用料は不可 |
入院中のプライベート費用(日用品、特別食、謝礼等) | - | 治療と直接関係しない個人的支出は対象外 |
「治療」と無関係な部分や、本人の任意選択による治療と関係ない部分は、控除対象から除外されます。また、マスクや消毒液などは病気予防のための衛生用品であり、治療費ではないため、医療費控除になりません。
昨今は、月額課金で医師にチャット相談できる「オンライン健康相談サービス」が登場しています。このサービスは診療行為ではないため、医療費控除の対象外です。
- 医療費控除は、あくまで医療行為(診療・治療)の費用のみが対象である点に留意しましょう。医療費控除の明細書を作成する際は、「対象か、対象外か」を正しく判定して記入することが大切です。
医療保険の給付金を受け取ったときの税金については、こちらのFAQもあわせてご覧ください。
医療保険・共済給付金と医療費控除の関係(二重取り不可)
医療費控除では、医療費の負担を保険などで補填された場合、その金額は控除対象から除外しなければなりません。具体的には、以下のような給付金は医療費を補填する金額として扱われます。
補填金の種類 | 医療費控除計算での扱い | 具体例(補填額) |
---|---|---|
民間医療保険・共済の給付金(入院・手術・通院給付金など) | 控除対象医療費から差し引く | 入院1万円×20日=20万円 |
高額療養費の支給額(公的健康保険) | 差し引く | 医療費50万円のうち10万円支給 ⇒ 控除計算額40万円 |
出産育児一時金 | 差し引く | 分娩費用に充当 |
災害共済給付金・損害賠償金(治療費補填分) | 差し引く | 学校災害給付や交通事故の治療費賠償 |
つまり、医療費を実質的に負担していない部分については、医療費控除を受けられません。
具体例
- がん保険の診断一時金:入院費の補填が目的ではないため差し引き不要
- がん保険の入院給付金:入院費用を補う目的なので医療費から差し引く
申告書の医療費控除欄には、これら補填金額を記入する欄があります。本来であれば差し引くべき金額を忘れてしまうと、「二重取り」が発生し、適切な税務申告ができません。
その結果、あとで税務署に指摘されたり不正申告とみなされペナルティの対象になったりする可能性があるため、注意が必要です。
医療費控除の計算手順と明細書作成
確定申告をするときは、年間で支払った医療費を正確に計上しなければなりません。計算方法と明細書を作成する方法について、詳しく解説します。
レシート整理・CSV取り込み・家計アプリ活用術
医療費控除を受けるには、1年間の医療費を合計して明細書にまとめる作業が必要です。まずは手元の領収書やレシートを整理し、以下の方法で明細を整理しましょう。
手順・ツール | 活用方法 | 主なメリット | 注意点・補足 |
---|---|---|---|
領収書の整理 | 日付順・医療機関別に分類し家族ごと集計 | 医療費明細書を医療機関別合計で作成でき、転記負担を削減 | 領収書に日付・病院名・金額が明記されているか確認。不明点は病院へ照会 |
国税庁「医療費集計フォーム」(Excel) | 医療費を入力→CSVでe-Taxに取り込み | 枚数が多くても自動反映で入力時間を大幅短縮 | セルフメディケーション税制適用年は使用不可 |
家計簿・医療費管理アプリ(例:マネーフォワードME、EPARKお薬手帳、通院ノート) | 日常的に医療費を登録→CSV出力 | 転記ミス防止・集計自動化で時間短縮 | アプリごとにCSV仕様が異なるため事前確認 |
医療費通知の活用(健保組合発行・マイナポータル連携) | 保険診療自己負担額を自動取得し申告書へ反映 | 公的医療費分の手入力が不要 | 自由診療や市販薬分は別途入力が必要 |
自身に合った方法で、年間の医療費データをまとめましょう。領収書原本は提出不要ですが、5年間の保存義務があるため、データ化後も廃棄せず保管してください。
電子帳簿保存法対応と領収書原本保存のポイント
2017年分の確定申告から、医療費控除の手続きは領収書提出不要に変更され、「医療費控除の明細書」を提出(または電子送信)する方式になりました。
ただし、領収書やレシートの原本は自宅で5年間保存する義務があります。税務署から求められた場合には、領収書原本やそれに準ずる書類の提示をしなければならない点に注意しましょう。
なお、電子データで医療費を管理している場合、データそのものを保存しておけば問題ありません。国税庁の医療費集計フォーム(Excel)に入力してCSV提出した場合、そのExcelやCSVファイルを5年間保存することで、領収書に代えることができます(領収書は保管)。
e-Tax申告時には領収書画像の送信は不要ですが、マイナポータル連携で取り込んだ医療費通知情報は、税務署側でも把握しています。整合性が合わないと指摘を受ける可能性があるため、明細と整合するように申告しましょう。
共働き・扶養家族の医療費合算ルール
医療費控除は、同一生計(家計を一つにしている)の親族であれば、誰が支払ったかに関係なく合算可能です。共働き夫婦で各自がそれぞれ医療費を払っていた場合でも、一方の配偶者が両方の医療費をまとめて申告して構いません。
また、別居している親に仕送りしているケースでも、その親の医療費を本人(仕送りする子)が負担していれば合算できます。「生計を一にする」という要件で、必ずしも扶養控除の対象である必要はありません。扶養家族になっていない配偶者や子でも、生計が一なら医療費控除の対象として計上できます。
- 夫婦のどちらが申告しても問題ありませんが、基本的には所得の高い方(税率が高い方)がまとめて申告したほうが、節税効果が大きくなります。適用税率が高い方が確定申告すると、戻ってくる税額が多くなるためです。例えば、共働きで夫が年収1200万・妻が年収600万の場合は、夫側で全額申告したほうが有利です。
e-Taxを使った確定申告プロセス
実際に、e-Taxを使って確定申告する際のプロセスについて見ていきましょう。
確定申告書とマイナポータル連携の流れ
医療費控除を受けるには、確定申告が必要です。申告様式としては所得税確定申告書AまたはBを使用します。申告書Aは給与所得者や年金所得者用のシンプルな様式、申告書Bは事業所得や不動産所得がある人も含め全員が使える汎用様式です。
なお、e-Taxを利用するにはマイナンバーカードの取得と初期設定が必要です。具体的には以下の流れで進めます。
手順・ツール | 操作内容・ポイント |
---|---|
1.マイナンバーカードの準備 | カード本体・利用者証明用パスワード(4桁)・署名用パスワード(6–16桁英数字)を用意 |
2.マイナポータル利用登録 | マイナポータルへログインし利用者登録(スマホはアプリ可) |
3.確定申告書等作成コーナーにアクセス | PC/スマホのブラウザで国税庁サイトを開き、案内に従って入力画面へ |
4.マイナポータル連携(医療費通知等の自動入力) | 控除入力画面で連携をオン ➝ 医療費通知(2月上旬取得可)を自動取込 |
5.その他控除証明書の連携 | 生命保険料・住宅ローン・ふるさと納税なども自動取得 |
6.申告書の送信 | 入力完了後、還付口座を記入→カードリーダー/NFCで電子署名→送信 |
マイナポータル連携を活用すれば書類の自動入力が可能で、年々手間が軽減されています。電子申告であれば、証明書類の添付省略や自動入力機能があるため、便利です。
なお、紙で確定申告する場合はマイナポータル連携を使えません。医療費通知がある場合はその原本を添付(または提示)するか、通知の内容を明細書に転記して提出する必要があります。
スマホ申告ステップ別ガイド(2025年版画面例)
スマートフォンから、医療費控除の申告手続きを完結させることも可能です。スマホで申告する際のステップは、以下のとおりです。
手順・ステージ | 操作内容・ポイント | 必要ツール・条件 |
---|---|---|
1.事前準備 | マイナンバーカード・4桁/6–16桁パスワードを用意し、スマホのマイナポータル&e-Tax利用登録(ID連携)を完了 | NFC対応スマホ+マイナポータルアプリ |
2.申告書作成開始 | マイナポータルアプリ経由で「確定申告書等作成コーナー」にログイン→所得入力→控除入力へ | マイナポータルアプリ |
3.医療費控除の明細入力 | 取込んだ医療費通知を一覧確認し、不足分を手入力/CSV・XML読み込み | 医療費通知データまたは集計フォームCSV |
4.計算結果確認・還付額表示 | 全入力後、税額計算画面で還付見込額を確認→還付口座を入力 | ー |
5.電子署名と送信 | NFCでマイナンバーカードを読み取り、暗証番号入力→電子署名→データ送信 | マイナンバーカード+NFC |
スマホ申告の画面レイアウトはPCとは異なりますが、案内に沿って進めれば迷わず入力できます。2025年版ではマイナポータル連携や医療費集計フォーム取込もスマホ上で可能となり、利便性が向上しています。
還付申告の期限と延長措置(時効5年)
医療費控除は、確定申告の「還付申告(税金が戻る申告)」に該当します。還付申告の場合、通常の確定申告期限(翌年3月15日)を過ぎても、5年間は申告可能です。
納める税金が多すぎた場合や還付される税金が少なすぎた場合に、これらの金額を正しい額に訂正するために提出する請求を「更正の請求」といいます。
例えば、2024年分(2025年2~3月申告分)の医療費控除は、2025年1月1日から2029年12月31日まで申告すれば還付を受けられます。この5年という期間は法定申告期限から起算されるため、過年度の還付申告をする際には早めに行動しましょう。
更正の請求で使う書式は、確定申告書とほぼ同じです。対象年分の申告書を改めて作成し、「更正の請求」と明記して提出すれば、還付を受けられます。
逆に、医療費控除を申告したものの保険金の差し引き漏れなどで本来より多い還付を受けてしまった場合は、気づいた時点で修正申告を行います。修正が必要な状況を放置し、税務調査で指摘されると、延滞税や重加算税といったペナルティが科される場合があります。
医療費控除を活用した資産形成・保険見直し戦略
医療費控除を通じて還付された税金は、どのような用途で使っても問題ありませんが、将来のための資産形成に充てることを検討しましょう。
また、医療費控除の仕組みを踏まえて、必要な民間保険についても検討します。
医療保険・就業不能保険の給付設計と控除の位置づけ
医療費控除だけでなく、民間の医療保険や就業不能保険(所得補償保険)も合わせて検討することで、万一の備えを強化できます。ここでは、医療費控除と民間保険の関係性、そして賢い給付設計の考え方を解説します。
医療費控除と民間医療保険の役割
医療費控除は、あくまで支払った医療費の一部を税金で後から取り戻す仕組みです。例えば、50万円の医療費を払って医療費控除を受けても、高所得者でもせいぜい17~20万円程度の節税にとどまります。
一方で、民間の医療保険に加入していれば、入院や手術の際に給付金が支払われます。治療費の自己負担額そのものを直接埋め合わせることが可能で、家計を楽にする効果は医療保険のほうが大きいでしょう。
高収入者に適した給付金設計
高収入層は貯蓄余力もあり、軽度の入院や通院であれば、医療費の自己負担が発生しても家計に大打撃とならない場合が多いでしょう。そのため、「大きなリスクのみ民間保険でカバーし、細かい部分は自己負担+医療費控除で対応」という設計が合理的です。
数日程度の短期入院や外来治療費は貯蓄でカバーし、長期入院や高額療養費超過分は保険金で備えるという住み分けをすれば、保険料を最適化できるでしょう。
特に高収入層は所得税率が高いため、医療費控除で3割程度は戻ることを踏まえ、残りのリスクだけ保険でカバーするイメージです。
就業不能保険との組み合わせ
医療費控除や医療保険は治療費の穴埋めですが、高収入サラリーマンにとってもっと深刻なのは、長期療養による収入減少リスクです。長期間にわたって働けない状況に陥ったとき、収入減をカバーできるのが就業不能保険(所得補償保険)です。
長期の病気やケガで働けなくなった場合、毎月一定額の生活費を補償してくれる保険で、高収入の方ほど加入意義が大きい商品です。加入しておけば、公的な傷病手当金では賄いきれない高額な生活費・ローンなどの支出をカバーできます。
医療費控除は治療費の一部を還付されるにすぎず、収入補填にはなりません。長期的に働けなくなったとき、自分や家族の生活を維持するためにも、医療保険と就業不能保険を組み合わせるとよいでしょう。
- 高収入者向けの就業不能保険は保険料が高めですが、必要保障額を精査して適切な給付月額・給付期間を設定することがポイントです。
就業不能保険に関しては、以下の記事で詳しく解説しています。
保険料控除との関係
民間保険には生命保険料控除があり、医療保険や就業不能保険に加入すると、税制上のメリットを受けられます。年間保険料のうち最大4万円(所得税)+2.8万円(住民税)が所得控除でき、この控除で1~2万円程度税金を軽減できます。
ただし、保険料控除は払った保険料のごく一部しか戻りません。「保険料控除があるからといって不要な保険まで入る」ことは本末転倒です。あくまで必要な保障に絞り、備えるべきリスクに対してのみ、保険でカバーしましょう。
控除で浮いたキャッシュをNISA・iDeCoへ投下するシナリオ
医療費控除によって得られた還付金や節税効果は、将来の資産形成に活かすこともできます。具体的には、医療費控除で浮いたお金をNISA(少額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)に投資することを検討しましょう。
活用先 | 資金の流れ・ポイント | 節税・運用メリット | 留意点 |
---|---|---|---|
NISA投資 | 医療費控除による還付金10万円などをNISA口座で株式・投信購入に充当 | ① 運用益が非課税 ② 2024年以降の拡充で年間投資枠が拡大し、還付金を加えて上限まで活用しやすい | ・NISA枠は翌年へ繰越不可(年内に投資実行) ・リスク資産の値動きに注意 |
iDeCo拠出 | 医療費控除による手取り増(月1万円相当)をそのままiDeCo掛金に上乗せ | ① 掛金が全額所得控除(二重の節税) ② 運用益も非課税、受取時も公的優遇あり | ・会社員は掛金上限(月2万円台)・企業年金との調整が必要 ・60歳まで原則引き出せない |
医療費控除で戻ってきたお金を将来の資産形成に回すことで、単なる単年度の節税に留めず、長期的なリターンを狙えます。還付された税金は「臨時収入」のような位置づけとなるため、生活費に充てるのではなく、資産運用に充てましょう。
NISAとiDeCoは、いずれも非課税で資産運用できる制度です。効率よく資産形成を進めるうえで、利用しない手はありません。
- 特にiDeCoは掛金が全額所得控除の対象になるため、高収入者ほど節税メリットが大きい制度です。現役期の税負担を軽減しつつ、公的年金の上乗せとなる私的年金を用意するために、有効活用しましょう。
新NISAやiDeCoについてよくあるFAQを紹介します。あわせて参考にしてみてください。
よくある誤解・失敗例と税務調査で指摘されやすいポイント
医療費控除に関するよくある誤解と、税務調査で指摘されやすいポイントなどを解説します。
インボイス非対応領収書の取り扱い
インボイス制度は消費税の仕入税額控除に関するものであり、医療費控除(所得税)には無関係です。多くの医療機関はそもそも消費税非課税事業(保険診療収入のみ)でインボイス発行義務がなく、領収書にもインボイス要件は記載されていない場合があります。
基本的に、税務署も医療費控除の領収書にインボイス記載があるかどうかはチェックしません。氏名・日付・金額・医療機関名が明記されていれば、問題なく医療費控除は申請できます。
オンライン診療・検査費用の最新取り扱い(2025年版)
オンライン診療(遠隔診療)やセルフチェック用の検査費用については、コロナ禍を経て取り扱いが明確化されました。
費用項目 | 医療費控除の可否 | 認められるケース | 控除不可・注意点 |
---|---|---|---|
オンライン診療費(オンライン保険診療料・電話再診料等) | 〇 | 自由診療のオンライン相談料でも治療の一環なら対象 | 電子領収書は印刷またはPDF保存が必要 |
処方薬の配送費(郵送料) | 〇 | 医薬品を受け取るための送料は交通費の代替とみなし対象 | 通販の一般薬購入送料は対象外 |
PCR検査費(医師・保健所の判断による診断目的) | 〇 | 感染が疑われ症状等から実施した診断目的検査 | ― |
PCR検査費(自主判断・渡航証明目的等) | ✕ | ― | 治療目的でない検査は対象外 |
抗原検査キット代(医療機関指導下で実施) | 〇 | 医師の指示で購入・使用した場合 | ― |
抗原検査キット代(自主購入) | ✕ | ― | 自主的に購入したキット代は対象外 |
基本的には、医療費控除の原則通り「治療・診断のため必要なものは対象、単なる自己都合・予防目的対象外」と覚えておけば問題ありません。
保険給付金差し引き漏れの是正方法と具体的計算例
医療費控除を申告した後になって「入院給付金を差し引き忘れていた」と気づいた場合、どうすれば良いでしょうか。この保険金差し引き漏れはよくあるミスですが、正しい情報を反映させて「修正申告」として申告しましょう。
法定申告期限から5年以内であれば、修正申告が可能です。修正申告が遅れると、本来納めるべき税金に対して、延滞税が日割りで課されます。
- 税務調査で指摘される前に自主修正すれば過少申告加算税(10%)は課されませんが、調査で発覚すると加算税対象となる可能性があります。さらに、意図的な不正とみなされると重加算税(35%)まであり得るため、注意が必要です。
修正申告は、提出済みの確定申告書と同じフォーマットで再度作成し、「修正申告書」である旨を記載して提出します。e-Taxでは、「提出方法の選択」で修正申告を選びましょう。
医療費控除額とそれに伴う所得税額が訂正されるため、税務署への申告後は不足税額を速やかに納付する必要があります。住民税については確定申告を通じて自動連携されるため、市区町村への届出は不要です(自治体から訂正後の住民税額通知が来ます)。
なお、生命保険会社が税務署に提出する支払調書には、契約者のマイナンバーの記載が義務付けられています。税務署は「どの保険会社が、誰にどの程度保険金を支払ったか」を把握できるため、間違いに気づいたら速やかに申告することが大切です。
よくある質問(FAQ)
この記事のまとめ
医療費控除は治療目的か否かで線引きをし、マイナポータル連携で明細を自動入力したうえで還付申告期限5年内に手続きを終えることが基本です。申告漏れがあれば更正の請求で取り戻せます。
戻った資金は生活費に消える前にNISAやiDeCoへ振り向け、長期資産形成へ活かしましょう。領収書整理やデータ連携に不安があれば、早めに税理士やFPへ相談することで安心と確実性を高められます。

金融系ライター
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1,000記事以上の執筆実績あり。
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1,000記事以上の執筆実績あり。
関連質問
関連する専門用語
総所得金額
総所得金額とは、その年1年間に得た給与や事業収入、年金、利子・配当など、所得税の対象となるすべての所得を合計した金額のことです。 まだ控除や経費を差し引く前の“入り口”の数字であり、この金額を基に各種控除を差し引いていくことで課税所得が計算されます。資産運用を行ううえで、自分の投資利益がどれだけ全体の所得に影響するかを把握する第一歩となる概念です。
医療費控除の明細書
医療費控除の明細書とは、年間に支払った医療費の内容と金額を一覧にまとめ、確定申告の際に提出する書類です。 平成29年分(2017年分)から領収書の提出が不要となった代わりに、この明細書の添付が義務化され、支払先や支払日、金額などを正確に記載することで医療費控除を受けられます。領収書は自宅で5年間保存する必要があり、税務署から求められたときに提示できるようにしておくことが大切です。
セルフメディケーション税制
セルフメディケーション税制とは、健康維持や病気の予防を自ら行う人を後押しするための所得控除制度で、指定されたOTC医薬品(スイッチOTC等)を年間1万2千円を超えて購入した場合、その超過額(上限8万8千円)を総所得金額から差し引ける仕組みです。 通常の医療費控除とは別枠で選択適用となり、医療費が少なくても薬局での買い物が多い家庭でも節税効果を得やすいのが特徴です。ただし、確定申告の際にはレシートや購入明細の保管に加え、当年中に定期健康診断や予防接種などの予防医療を受けたことを証明する書類も必要になるため、日頃から書類管理を意識することが大切です。
スイッチOTC医薬品
スイッチOTC医薬品とは、もともと医師の処方箋が必要だった医療用成分を、安全性や副作用の管理が十分に確認されたのち、市販薬として薬局やドラッグストアで購入できるように「切り替え(switch)」た医薬品のことです。 消費者が自分の健康管理を主体的に行いやすくなる一方で、使用上の注意を守らないと本来の効果が得られなかったり副作用が強く出たりするリスクもあるため、購入時には薬剤師や登録販売者から説明を受けることが推奨されます。 セルフメディケーション税制の対象医薬品に多く該当し、一定額以上購入すると所得控除を受けられるため、家計管理や節税の面でも注目されています。
医療費通知
医療費通知とは、健康保険組合や共済組合などの保険者が加入者に対して定期的に交付する書類で、病院や薬局で実際にかかった医療費の総額や自己負担額、診療年月日、医療機関名などがまとめて記載されています。 確定申告で医療費控除を受ける際には、医療費控除の明細書の代替資料として添付できるため、個別の領収書を一つひとつ記入する手間を省くことができます。なお、通知には給付対象外の自由診療分や市販薬の購入費は含まれないため、セルフメディケーション税制を併用する場合は別途レシート管理が必要です。
同一生計
同一生計とは、家族が同じ財布で生活費をまかなっている状態を指し、たとえ住民票上の住所が離れていても実質的に生活費の負担が一体であれば「一つの生計」とみなされます。 所得税や住民税の扶養控除、配偶者控除、社会保険の扶養判定などで重要な概念となり、仕送りや家計の援助額が生活費の大部分を占めるかどうかが判断材料になります。 資産運用の場面では、家族の口座に分散して投資する際に「同一生計かどうか」で年間損益の通算可否や非課税制度(NISAなど)の利用枠に影響が出るため、家計全体の資金管理方針を立てるうえで欠かせない視点です。
電子署名
電子署名とは、電子文書に付与する電子的な「印鑑」のようなもので、発信者が本人であることを証明し、文書の改ざんが行われていないことを確認できる仕組みです。 電子証明書に含まれる公開鍵暗号技術を利用して作成され、受け取った側は対応する公開鍵で署名を検証することで、書面契約と同等の法的効力を認められます。 資産運用では、証券口座のオンライン開設や投資信託の目論見書への同意、さらには確定申告のe-Tax送信など、紙の書類を交わさずに安全かつ迅速に手続きを完了できるため、投資初心者にとっても手間の軽減とセキュリティ強化を両立させる重要な技術です。
還付申告
還付申告とは、給与や年金などから源泉徴収された所得税が実際に納めるべき税額より多かった場合に、その差額(還付金)の返還を受けるために提出する確定申告書のことです。 医療費控除や住宅ローン控除などの各種控除を適用すると税金が戻るケースが多く、通常の確定申告期間(毎年3月15日まで)を待たずに翌年1月から提出できます。また、申告期限から5年以内であればさかのぼって請求できるため、過去の年分についても還付を受けられる可能性があります。 手続きは税務署の窓口のほか、マイナンバーカードを用いたe-Taxでオンライン送信する方法もあり、振込先口座を入力しておけば還付金が直接入金されるので便利です。
更正の請求
更正の請求とは、すでに提出した確定申告書に誤りがあり、納め過ぎた税金が発生していると納税者自身が気付いた場合に、税務署へ修正を求めて還付を受ける手続きです。 原則として法定申告期限から5年以内に請求でき、追加で適用できる控除や所得計上の誤りを正すことで、正しい税額との差額が返金されます。 還付申告と似ていますが、こちらは一度提出した申告内容を「訂正」する点が特徴で、提出後に控除証明書が届いたり投資損失の繰越忘れに気付いたりしたときに役立ちます。e-Tax経由でも郵送でも手続きでき、請求が認められると登録口座へ還付金が振り込まれます。
修正申告
修正申告とは、すでに提出した確定申告書に誤りがあり、追加で納めるべき税額が生じたと納税者が自ら気付いた場合に、その不足分を納付するために行う手続きです。 提出後に申告漏れの所得が見つかったり、控除の適用条件を満たしていなかったことが判明したりした際に用いられます。原則として法定申告期限から5年以内に行う必要があり、期限を過ぎると延滞税や過少申告加算税が加算される場合があります。 資産運用では、株式や投資信託の売却益の計上漏れ、外国税額控除の計算ミスなどが理由で修正申告が発生することがあるため、取引履歴や証券会社の年間取引報告書をきちんと確認し、正確な申告を心掛けることが大切です。
還付金
還付金とは、給与や年金などから源泉徴収された税額、または自分で納付した税額が、確定申告による再計算の結果、実際に負担すべき税額を上回っている場合に、国や自治体から納税者へ返還されるお金のことです。 医療費控除や住宅ローン控除などを適用すると税額が減り過払いが生じやすく、還付申告や更正の請求を通じて手続きを行うと、指定した金融機関口座に振り込まれます。 振込時期は申告方法や混雑状況によって異なりますが、e-Taxでマイナンバーカードと電子署名を用いて提出すると審査がスムーズになり、受取までの期間を短縮できる傾向があります。
延滞税
延滞税は、所得税や住民税などの国税を法定納期限までに納めなかった場合に、自動的に課される「利息」に相当する追加負担です。 未納期間の日数に応じて年率がかかり、納期限の翌日から2か月までは原則として特例基準割合+1%、それ以降は+7.3%(いずれも年度ごとに見直し)と段階的に高くなるため、放置すると負担が膨らみやすい点が特徴です。 修正申告や期限後申告で不足税額が判明した場合も、その納期限からさかのぼって延滞税が計算されるため、投資取引の計上漏れなどに気付いたら早めに対応することが節税につながります。
医療費控除
医療費控除とは、納税者が1年間に支払った医療費の一部を所得から控除できる税制上の制度を指す。自己や家族のために支払った医療費が一定額を超える場合に適用され、所得税や住民税の負担を軽減できる。対象となる費用には、病院での診療費や処方薬の費用のほか、一定の条件を満たす介護費用なども含まれる。確定申告が必要であり、領収書の保管が重要となる。
e-Tax
e-Taxとは、国税庁が運営するインターネット上の税務手続きシステムで、所得税の確定申告や源泉所得税の納付などを自宅や職場からオンラインで行えるサービスです。 紙の申告書を税務署へ持参・郵送する必要がなくなり、24時間いつでも送信できるうえ、申告ミスの自動チェックや過去データの再利用といった利便性があり、手続き時間の短縮や控除額の自動計算による精度向上に役立ちます。 また、電子納税と連携すれば振替納税の手数料が不要となり、税金の支払いもスムーズになります。マイナンバーカードとICカードリーダー、あるいはスマートフォンの対応アプリを利用して本人認証を行うため、セキュリティ面でも高い安全性が確保されています。
マイナポータル
マイナポータルとは、政府が運営するオンラインサービスで、マイナンバーカードを使って自分の行政手続きや個人情報を一元的に確認・管理できるシステムです。たとえば、どの役所がどのような情報を閲覧したかの履歴確認、子育てや年金、税金、医療などの手続き状況の確認・申請、さらには民間サービスとの連携(たとえば保険や金融)にも対応しています。 利用者は自宅のパソコンやスマートフォンからアクセスでき、行政手続きを簡略化したり、書類の提出を省略できたりするなどのメリットがあります。特に確定申告や公金受取口座の登録、給付金申請などに活用される機会が増えており、デジタル社会における個人と行政をつなぐ基盤的なサービスと位置づけられています。
高額療養費制度
高額療養費制度とは、1ヶ月間に医療機関で支払った自己負担額が一定の上限額を超えた場合、その超過分については後から払い戻しを受けられる公的な医療費助成制度です。日本の公的医療保険制度では、治療費の自己負担割合は原則3割(高齢者等は1〜2割)とされていますが、重い病気や手術、長期入院などで医療費がかさむと、家計への影響が大きくなります。高額療養費制度は、そうした経済的負担を軽減するために設けられており、「所得区分に応じた月ごとの上限額」を超える分について、申請によって払い戻しを受けることができます。 さらに、事前に健康保険の窓口で「限度額適用認定証」を取得して医療機関に提示すれば、病院の窓口で支払う額自体を、最初から自己負担限度額までに抑えることも可能です。これにより、退院後の申請を待たずに、現金の一時的な負担を大きく減らすことができます。 この制度の上限額は、70歳未満・70歳以上で異なり、さらに被保険者の所得区分(年収目安)に応じて細かく設定されています。例えば、年収約370万〜770万円程度の方(一般的な所得区分)であれば、1ヶ月あたりの自己負担限度額は「約8万円+(総医療費−26.7万円)×1%」となり、想定以上の医療費負担が発生しても、上限を超えた分は保険者から還付されます。 資産運用の観点では、この制度の存在によって、突発的な医療費リスクの一部を公的にカバーできるため、「民間医療保険や緊急時資金の準備」を過度に厚くする必要がない可能性があります。 つまり、医療費リスクへの備えを公的制度・民間保険・現金準備のバランスで考える際、この制度の適用範囲を正しく理解しておくことが、保険の選択や生活防衛資金の適切な設定に役立ちます。特に、高所得者層や自営業者は制度上の上限額が比較的高めに設定されている点や、支給までにタイムラグがあることも踏まえ、制度と現金の備えの両面から検討することが重要です。
確定申告
確定申告とは、1月1日から12月31日までの所得を計算して翌年の2月16日から3月15日に申告し、納税する手続き。多くの会社では年末調整を経理部がしてくれるが、確定申告をすると年末調整では受けられない控除を受けることができる場合もある。確定申告をする必要がある人が確定申告をしないと加算税や延滞税が発生する。
所得控除
所得控除とは、個人の所得にかかる税金を計算する際に、特定の支出や条件に基づいて課税対象となる所得額を減らす仕組みである。日本では、医療費控除や生命保険料控除、扶養控除などがあり、納税者の生活状況に応じて税負担を軽減する役割を果たす。これにより、所得が同じでも控除を活用することで実際の税額が変わることがある。控除額が大きいほど課税所得が減少し、納税者の手取り額が増えるため、適切な活用が重要である。
NISA
NISAとは、「少額投資非課税制度(Nippon Individual Saving Account)」の略称で、日本に住む個人が一定額までの投資について、配当金や売却益などにかかる税金が非課税になる制度です。通常、株式や投資信託などで得られる利益には約20%の税金がかかりますが、NISA口座を使えばその税金がかからず、効率的に資産形成を行うことができます。2024年からは新しいNISA制度が始まり、「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の2つを併用できる仕組みとなり、非課税期間も無期限化されました。年間の投資枠や口座の開設先は決められており、原則として1人1口座しか持てません。NISAは投資初心者にも利用しやすい制度として広く普及しており、長期的な資産形成を支援する国の税制優遇措置のひとつです。
iDeCo(イデコ/個人型確定拠出年金)
iDeCo(イデコ)とは、個人型確定拠出年金の愛称で、老後の資金を作るための私的年金制度です。20歳以上65歳未満の人が加入でき、掛け金は65歳まで拠出可能。60歳まで原則引き出せません。 加入者は毎月の掛け金を決めて積み立て、選んだ金融商品で長期運用し、60歳以降に年金または一時金として受け取ります。加入には金融機関選択、口座開設、申込書類提出などの手続きが必要です。 投資信託や定期預金、生命保険などの金融商品で運用し、税制優遇を受けられます。積立時は掛金が全額所得控除の対象となり、運用時は運用益が非課税、受取時も一定額が非課税になるなどのメリットがあります。 一方で、証券口座と異なり各種手数料がかかること、途中引き出しが原則できない、というデメリットもあります。