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年収800万円超の会社員が注意すべき医療費リスクと備え方

年収800万円超の会社員が注意すべき医療費リスクと備え方

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執筆者:

公開:

2025.06.17

更新:

2025.06.17

ライフイベント公的年金生命保険

年収800万円を超える会社員でも、公的医療保険だけで医療費のリスクを完全にカバーすることはできません。高額療養費制度には上限がありますが、差額ベッド代や自由診療、長期療養による収入減少といった“見落としがちな負担”は自己責任となるケースも多くあります。本記事では、実際の支出リスクと制度の限界を明らかにし、必要な保障をどう備えるかを具体的に解説します。

サクッとわかる!簡単要約

「自分は高収入だから医療費の備えは万全」と思っていませんか?実は、差額ベッド代や高額薬剤、就業不能による収入減といった費用は、公的制度ではカバーされません。本記事では、年収800万円超の会社員が陥りやすい盲点や想定外コストを明らかにし、それに備える民間保険の組み合わせ方や見直しのポイントを整理。読後には、自分に必要な保障の輪郭がはっきり見えてくるはずです。

目次

年収800万円超でも医療費は青天井ではない

高額療養費制度でカバーされるのは公的医療保険に限られる

世帯合算と多数回該当の仕組み

会社員が見落としやすい“制度の限界”7コスト

差額ベッド代や家族の付き添い滞在費など入院付随費

自由診療・先進医療・高額薬剤

在宅療養・通院への移行時の交通費やケア費用

長期療養による賞与・各種手当カットなどの収入減少

休業中の社会保険料やローン返済

介護状態に移行した場合の長期支出

その他の雑費・機会損失

高収入層が検討すべき民間保障マップ

医療保険

がん保険

先進医療特約

就業不能保険・所得補償保険

介護保険

ケーススタディ(大企業健保 vs 協会けんぽ)

Aさん(年収1,000万円・大企業健保組合加入)

Bさん(年収800万円・協会けんぽ加入)

今回のケースで加入を検討すべき保険

保険料対効果を数値でチェックする5項目

保険料総額と給付総額のバランスはよいか

公的保障・社内制度との重複はないか

リスク発生率と必要保障額は妥当か

保険金の支払い条件・範囲に問題はないか

保険金額・保障期間は適切か

制度改定と医療インフレに備える「3年ごと見直し」フレーム

年収800万円超でも医療費は青天井ではない

高収入の会社員であるあなたも、日本の高額療養費制度のおかげで「医療費が青天井になることはない」と聞いたことがあるかもしれません。確かに、高額療養費制度により1カ月の自己負担には上限が設けられており、治療費がどれだけ高額になっても上限を超えた分は後から払い戻されます。

医療費負担の上限額は、以下のように年収によって区分されます(。年収が高い方ほど、自己負担額の上限が上がる仕組みです。

適用区分年収・基準(目安)ひと月の上限額(世帯ごと)
年収約1,160万円以上健保:標報83万円以上国保:旧ただし書き所得901万円超252,600円+(医療費 − 842,000円)× 1 %
年収約770〜約1,160万円健保:標報53〜79万円国保:旧ただし書き所得600〜901万円167,400円+(医療費 − 558,000円)× 1 %
年収約370〜約770万円健保:標報28〜50万円国保:旧ただし書き所得210〜600万円80,100円+(医療費 − 267,000円)× 1 %
〜年収約370万円健保:標報26万円以下国保:旧ただし書き所得210万円以下57,600円
住民税非課税者35,400円

※上表は69歳以下の方

たとえば健康保険適用の治療費が100万円かかった場合でも、年収800万円程度の現役世代なら自己負担は月約17万円で済みます。残りは公的保険と高額療養費制度でカバーされ、1カ月あたりの医療費負担に上限を設ける仕組みになっているのです。

ただし、制度改定の動きにも目を配る必要があります。政府は2025年8月から高額療養費制度の自己負担上限額を段階的に引き上げ、高所得者ほど上限額を大幅アップさせる方針を掲げていました。

この改定案は2025年3月に一旦先送り(実施見送り)が決定されていますが、医療費増大による保険財政圧迫は深刻であり、将来的に自己負担上限の引き上げが再検討される可能性は十分に考えられます。高収入だからといって今の制度に過信しすぎず、改定情報にもアンテナを張っておきましょう。

高額療養費制度でカバーされるのは公的医療保険に限られる

高額療養費制度があるからといって、油断は禁物です。まず、この制度でカバーされるのはあくまで公的医療保険の適用範囲内の医療費に限られます。差額ベッド代や入院時の食事代など、保険適用外の費用は対象外です。

事前に加入している健康保険から「限度額適用認定証」を発行してもらい、入院時に病院窓口へ提示すれば、上限額までの支払いで済むため便利です。この認定証がないといったん高額の医療費を全額立て替える必要があり、払い戻しにも数カ月かかるので注意しましょう。

世帯合算と多数回該当の仕組み

世帯内に同じ医療保険に加入している方がいて、その方が支払った自己負担額が21,000円を超える場合、世帯内で医療費を合算できる「世帯合算」という仕組みがあります。合算額が所定の金額を超えたときは、超えた分が高額療養費として支給されます。

高額療養費制度があっても、長期入院や治療が年に何度も続く場合は、医療費が家計を圧迫するかもしれません。そこで、過去12カ月以内に3回以上上限額に達した場合は、4回目以降の自己負担上限がさらに引き下げられる「多数回該当」という仕組みが設けられています。

所得区分本来の負担の上限額(ひと月・世帯ごと)多数回該当の場合(赤字は月4回目以降の上限)
年収約1,160万円〜の方252,600円+(医療費 − 842,000円)× 1 %140,100円
年収約770万円〜約1,160万円の方167,400円+(医療費 − 558,000円)× 1 %93,000円
年収約370万円〜約770万円の方80,100円+(医療費 − 267,000円)× 1 %44,400円
〜年収約370万円57,600円44,400円
住民税非課税者35,400円24,600円

※上表は69歳以下の方

年収800万円の方が多数回該当の要件を満たした場合、4カ月目以降の医療費の上限が93,000円に抑えられます。このように、長期治療が必要な患者の経済的負担を軽減する仕組みが導入されており、安心して医療を受けられる仕組みが整備されているのです。

会社員が見落としやすい“制度の限界”7コスト

高額療養費制度には公的保険適用分の自己負担を軽減する効果がありますが、それだけでは賄えない費用がいくつも存在します。とくに年収800万円超の会社員は「自分は十分稼ぎがあるから大丈夫」「公的保障もあるから安心」と思いがちですが、実際に治療が長引いたり想定外の支出が発生すると、負担は大きく膨らみます。

ここでは高額療養費制度がカバーしない7つのコストを具体的に挙げてみます。それぞれの費用と、どういった民間保険で備えられるかを確認しましょう。

差額ベッド代や家族の付き添い滞在費など入院付随費

入院するとき、大部屋ではなく個室や少人数部屋を希望すると差額ベッド代(室料差額)が発生します。これは保険適用外であり全額自己負担です。

首都圏の病院では、個室料金が1日あたり1~2万円というケースも珍しくありません。全国平均でも差額ベッド代は1日あたり約6,620円かかるというデータもあります。仮に20日間入院すれば、それだけで13万円超の出費です。

また、遠方の病院に入院する場合は、家族が付き添いで現地に滞在・面会する場面も考えられるでしょう。交通費・宿泊費だけでなく、移動に関わる身体的・時間的コストも見逃せません。

高額療養費制度では、入院中の食事代や室料差額、付き添い者の費用は対象外のため、これらは全て自己負担になります。高収入の方ほど「快適な個室で治療に専念したい」「家族にも来てもらいたい」と考える傾向がありますが、その分費用リスクも高まる点に注意が必要です。

出産費用と公的医療保険の関係については、以下のFAQもあわせてご覧ください。

自由診療・先進医療・高額薬剤

公的医療保険が効かない自由診療(保険適用外治療)を受けた場合、その費用は全額自己負担です。公的医療保険が適用されないため、高額療養費制度の対象にもなりません。

例えば海外で開発された新薬を国内未承認のまま使うケースや、最先端の治療法(免疫療法・遺伝子治療など)を自費で受ける場合が該当します。また、公的保険の適用内であっても、特殊な先進医療については技術料部分が保険適用外となります。

特に、先進医療の代表例であるがんの重粒子線治療・陽子線治療は、治療費が数百万円規模に及びます。実績データを見ると、例えばある免疫療法(デュルバルマブを用いた先進医療)の平均費用は約957万円にも達しており、高年収の方にとっても重い負担といえるでしょう。

近年話題の高額薬剤(超高額の抗がん剤や遺伝子治療薬など)は、公的保険で使える場合でも1回数百万円し、自己負担3割で上限付近まで支払っても1カ月20万円前後になるケースがあります。そのような薬剤を複数回投与すれば、毎月高額療養費制度の上限に達して自己負担が発生します。

在宅療養・通院への移行時の交通費やケア費用

入院治療が一段落し退院しても、すぐに元通りの生活に戻れるとは限りません。自宅療養や定期的な通院治療が必要になれば、病院への交通費が継続的にかかります。交通費は全額自己負担となるため、注意が必要です。

自宅から遠い専門病院に通う場合、電車やバス代のほか、体力が落ちていればタクシー利用も増えるでしょう。週1回タクシー往復で5,000円かかれば、月2万円以上の出費です。

また、療養期間中は、介助や家事サポートが必要になるケースもあります。家族が介護休職できなければヘルパー等のサービスを自費で手配することになり、その費用負担も毎月数万円になるでしょう。

長期療養による賞与・各種手当カットなどの収入減少

治療を受けるための費用だけでなく、その間に失われる収入も無視すべきではありません。就業ができない期間中は健康保険から傷病手当金が支給されるとはいえ、休業前の手取り収入を下回ります。

また、高収入会社員の収入構成を見ると、基本給以外に年2回の賞与(ボーナス)や各種手当(役職手当・残業代・営業インセンティブ等)が占める割合も大きいものです。病気やケガで長期療養が必要になると、まず残業や出張ができないため残業代や出張手当がゼロになります。役職手当についても、休職期間中は支給を停止する企業がほとんどでしょう。

さらに影響が大きいのが賞与のカットです。一般的に賞与は会社業績や勤務成績によって支給されますが、長期休職すると評価対象から外れるケースが多いため、満額支給されない可能性が高いのです。年収800~1000万円クラスの方では、賞与が年収の2~3割を占めるケースもあります。

  1. 仮に年収1000万円(賞与込み)・月給70万円程度の部長職が半年間休職した場合、その年の賞与が大幅な減額となり、何百万円もの収入ダウンにつながりかねません。また営業職であれば成果に応じたインセンティブ報酬もなくなるでしょう。

このように、治療中でも生活費やローン支払いは続くのに、収入だけが大幅に減ってしまうのが長期療養の怖いところです。公的な傷病手当金は休業中の所得補償として給与の約3分の2を最長1年6カ月支給してくれますが、賞与や手当までは補填されない点に留意すべきです。

休業中の社会保険料やローン返済

病気やケガで休職して無給となった場合でも、社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料)は免除されず、支払い義務が継続します。休職中で給与が出ない場合でも社会保険の加入は継続しているため、本人負担分の保険料を会社に納めなければなりません(会社によっては休職期間の本人負担分を免除してくれるケースもあります)。

傷病手当金の中から社会保険料を支払う必要があるため、実質的な手取り収入は減少してしまう点に注意が必要です。高収入者の健康保険料は月あたり数万円と高額なため、休業中に本人負担を求められると、家計に響いてしまうでしょう。

また住宅ローンやマイカーローンがある場合、その返済も待ってはくれません。休職で収入が減った状況でも、契約内容に沿って、これまで通り返済を続ける必要があります。これらは高額療養費制度の範疇外であり、病気になろうが関係なく発生し続ける固定支出なのです。

休職が長引けば貯蓄を切り崩して支払う必要性が生じ、生活資金が枯渇してしまうという事態も現実味を帯びてきます。

介護状態に移行した場合の長期支出

疾病によっては、治療後も要介護状態が残ってしまうケースがあります。また、不幸にも障害が残ってしまうリスクもゼロではありません。

例えば、脳卒中の後遺症で麻痺が残り日常生活に介助が必要になった場合は、医療保険の適用範囲を超えて介護サービスやリハビリが必要です。この場合、公的介護保険(40歳以上で加入する介護保険制度)からサービス利用料の一部給付が受けられますが、それでも自己負担は1~3割必要です。

  1. 公益財団法人生命保険文化センターの「「2024(令和6)年度
    生命保険に関する全国実態調査」によると、介護に要した一時費用の合計額は平均で47万円、継続的に発生する介護費用は平均で1カ月あたり9.0万円でした。

現役世代が要介護になった場合でも、小堤の要件を満たせば障害年金を受け取ることは可能です。しかし、年金額は月数万~十数万円程度(等級や扶養家族などによって異なる)ため、収入が激減する点は否めません。

高額療養費制度は介護サービスには適用されず、医療保険と介護保険は別制度となっているため、医療費以上に長期の自己負担が大きくなりがちなのです。

その他の雑費・機会損失

これらの医療費負担や逸失利益以外にも、高額療養費制度の対象外となる費用は、以下のように細々と発生します。

その他の雑費・機会損失

  1. 入院中のパジャマ
  2. 洗面用具のレンタル代
  3. シャンプーや歯ブラシなどの日用品
  4. 病院内のテレビカード代などの雑費
  5. 着替えのクリーニング代
  6. シーツ交換などのリネン代
  7. 入院・療養に伴う引っ越しや住環境の変更費用(バリアフリーリフォームなど)

また、長期療養によってキャリア機会を逸失したり昇進が遅れたりすることで、将来的な年収が減少する「機会損失」も見逃せない間接的コストです。

自分や家族の生活を守るためにも、「高額療養費制度で医療費そのものは抑えられたが、周辺費用で貯蓄が減ってしまった」という事態を防ぐ必要があります。

そのため、社会保障給付や現在の貯蓄状況だけで経済的負担に対応できない場合は、民間の保険でリスクヘッジの網を張りましょう。

高収入層が検討すべき民間保障マップ

公的保障の限界を補完するために、高収入の会社員が加入を検討すべき民間保険商品をマッピングしてみましょう。前章で挙げたコストに対応する形で、以下のような保険を組み合わせると安心です。

公的制度で不足するリスク領域対応する主な民間保険備考・補足
入院時の自己負担増・付随費用医療保険(入院給付金)差額ベッド代や雑費、上限までの医療費自己負担をカバー
高額な先進医療・自由診療費先進医療特約・がん保険技術料や自由診療費用を実費補償(先進医療特約は月数百円)
長期療養による収入減少・固定費就業不能保険(所得補償保険)病気やケガで働けない期間の生活費・ローン返済に充当
要介護状態への移行介護保険(民間)介護一時金や年金で介護サービスの自己負担や施設費を補填

あなたの優先順位に応じて必要な保障を取捨選択し、保険料負担とのバランスも考慮してプランニングしましょう。適切な民間保障をマップ化しておくことで、想定外の事態でも大切な資産を減らさず、安心して治療に専念できます。

医療保険

医療保険は、入院日額給付や入院一時金が受け取れる保険です。差額ベッド代や入院中の雑費、自宅療養移行期の支出など、公的保障ではカバーしない費用をカバーする目的があります。

給付金の支給方法は保険商品によって異なり、入院1日あたりの保障をベースに、入院一時金や手術一時金などを付加するケースが一般的です。高収入層は手厚い医療保険は不要という意見もありますが、例えば会社の健康保険組合に付加給付がなく月の自己負担上限が高めの場合は、医療保険があると安心です。

また、「入院することになっても、個室からテレワークをするかもしれない」という方にとっても、個室代をカバーできる医療保険は有用です。

なお、医療保険の給付金を受け取ったときの課税関係については、以下のFAQを参考にしてみてください。

がん保険

日本人の死亡原因トップであるがんに特化した保険です。がんと診断された時点で一時金が支給されるタイプが主流で、働けない期間の生活費補填にもなります。

特に高額な抗がん剤治療が長期化した場合、公的保険の適用内でも毎月高額療養費の上限付近まで支出が続くことがあります。その点、がん保険の診断一時金や通院給付があれば、治療期間中の差額費用や収入減をカバーできます。

さらに、商品によっては先進医療特約が自動付帯され、自由診療のがん治療費も補償対象に含まれます。「自分ががんになったら、希望する治療を選びたい」と考える方にとって、先進医療費用や長期治療費を賄えるがん保険は心強い味方です。

先進医療特約

先進医療特約は、主契約である医療保険やがん保険の上乗せとして付加する特約です。月額数百円程度で先進医療の技術料をカバーできるため、コストパフォーマンスに優れています。

先進医療に該当する治療はがん以外にも多岐にわたり、白内障の高性能レンズ治療(多焦点眼内レンズ)から難病治療まで様々です。特に治療費が高額になりやすい重粒子線治療や陽子線治療を受ける場合でも、先進医療特約に入っていれば最先端の医療にアクセスできます。

就業不能保険・所得補償保険

就業不能保険と所得補償保険は、働けなくなったときに生活費を保障してくれる保険です。会社員の場合、公的な傷病手当金で給与の約3分の2は最長1年6カ月補償されますが、それでは不足する収入減少分を埋める目的で用いられます。

就業不能保険所得補償保険
主な取扱会社生命保険会社損害保険会社
保障内容病気やケガ(精神疾患含む)で長期間働けなくなった場合の収入減少を補う病気やケガで短期間働けなくなった場合の収入減少を補う
保険期間長期(例:60歳・70歳満了など)短期(例:1年更新など)
免責期間長め(例:60日、180日など)短め(例:7日など)
給付金受取期間保険期間満了まで(長期)1年または2年など(短期)
加入条件職業の有無にかかわらず加入可就労していることが条件となる場合が多い
保険料加入時の年齢・性別で決まり、期間中は変動しない年齢ごとに変動し、更新時に見直し

傷病手当金だけで生活費やローンの返済などをカバーできない場合は、就業不能保険・所得補償保険が役立ちます。商品によって支給条件や免責期間(支給開始までの待機期間)が異なるため、メンタル疾患での支給可否や何日目から保険金が出るかなどを確認して、自分のリスクに合ったものを選びましょう。

介護保険

介護保険は要介護状態に備える保険で、所定の要介護度に認定された際に介護一時金や介護年金が受け取れます。公的な介護保険は、65歳以上の方か特定疾病に罹患した40歳から64歳までの方でなければ利用できません。

つまり、39歳以下の方は公的介護保険からの給付は受けられません。若いうちに大病をしてそのまま介護が必要になるケースでは、公的介護保険からの給付がないため、民間介護保険で備える意義は大きいでしょう。

公的介護保険を利用できる方でも、介護状態が長引けば公的保障だけでは賄えない支出がかさむため、介護保険の必要性は大きいといえます。

ケーススタディ(大企業健保 vs 協会けんぽ)

それでは具体的に、大企業の健康保険組合に加入する年収1,000万円の部長Aさんと、協会けんぽ(政府管掌健保)に加入する年収800万円の課長Bさんがそれぞれ3カ月入院したケースを比較してみましょう。

同じように3カ月の入院生活を送っても、公的保険から受けられる給付や収入減少の度合いによって、実質的な自己負担額や必要な備え額は大きく異なります。

Aさん(年収1,000万円・大企業健保組合加入)

Aさんの健康保険組合には高額療養費の付加給付があり、自己負担上限額まで支払った後にさらに残りを全額補填する仕組み(一部の健保では月2万円までの負担に軽減)があったため、3カ月の治療費自己負担額は約6万円で済みました。

その結果、入院中にAさんが病院に支払ったのは食事代や差額ベッド代程度で、公的保険適用分の高額治療費についてはほぼ負担がありませんでした。

一方、収入面では有給休暇消化後は休職扱いとなり給与は受け取れず、傷病手当金により月約55万円(標準報酬月額83万円の2/3)が給付されました。しかし、通常の月収との差額約28万円は補填されない状態が3カ月続いたため、給与ベースでは約84万円の減収となりました。

幸い休職期間に賞与支給がなかったため賞与減額は発生しませんでしたが、仮に賞与査定期間と重なっていれば年間収入への影響はさらに大きかったでしょう。合計すると、Aさんは3カ月入院により「自己負担医療費6万円+収入減少84万円=約90万円」の経済的損失が発生したことになります。

Bさん(年収800万円・協会けんぽ加入)

Bさんの収入レンジ(標準報酬月額53~79万円)では、高額療養費制度による医療費負担額の上限が1カ月で約17万円前後です。今回は毎月100万円程度の医療費がかかったため、各月で自己負担は上限に達し、3カ月合計で約51万円を窓口で支払いました。

Bさんの会社には健康保険組合の付加給付がなく、この51万円は後からさらに払い戻されることはありません。

休職により給与がストップしたため、公的な傷病手当金(月約44万円)のみが収入源となりました。通常の月収との差額約22万円が3カ月分なので、約66万円の収入減少となっています。

賞与への影響はなかったものの、Bさんは「自己負担医療費51万円+収入減少66万円=約117万円」の損失となりました。Aさんに比べて、かなり大きな負担です。

このケーススタディから明らかなように、同じ入院3カ月でも公的保障や勤め先の制度によって負担額は大きく異なります。Aさん(大企業健保)は医療費負担こそ軽微でしたが収入面のロスが大きく、一方でBさん(協会けんぽ)は収入減少と医療費自己負担のダブルパンチで経済的打撃がより深刻です。

今回のケースで加入を検討すべき保険

Aさんの場合、自己負担医療費はほぼゼロであるため、医療保険の必要性は低いでしょう。しかし、収入減少90万円を埋めるために、就業不能保険への加入を検討する余地があります。

例えば、就業不能保険で月30万円(×3カ月で90万円)の補償を用意しておけば、休職による減収分をほぼカバーでき、家計へのダメージを防げます。

Bさんの場合、自己負担医療費51万円に対応する医療保険と、収入減少分に対応する就業不能保険の両方が必要です。医療保険では入院給付金日額1万円・がん診断一時金100万円などで手当し、就業不能保険では月20万円以上の補償を確保すれば、3カ月程度の入院なら概ね医療費と相殺できる計算になります。

  1. このように具体的にシミュレーションしてみると、「自分にはどれくらいの保障が適正なのか」が見えてきます。高収入の方こそ万一のコストが大きくなりがちですから、ケーススタディを他人事と捉えずに、あなたの職場制度や家計状況で試算して必要保障額を逆算してみましょう。

保険料対効果を数値でチェックする5項目

民間保険を検討する際は、「闇雲に手厚く入れば安心」というものではありません。あくまでもリスクへの備えとして第一に考えるのは、社会保険制度や自分の預貯金です。

保険に加入する場合でも、保険料に見合った効果が得られるかを冷静に見極めることが大切です。そこで、保険加入前にチェックすべきポイントを解説します。

保険料総額と給付総額のバランスはよいか

まず、加入を検討している保険に一生涯で支払う保険料総額をざっくり計算してみましょう。例えば月額1万円の医療保険に30歳から60歳まで30年間加入すると、総支払保険料は「1万円×12カ月×30年=360万円」です。

一方、その医療保険から受け取れる給付金を想定します。入院日額1万円・手術給付20万円程度の保障だと、仮に50歳でがんになり30日入院+手術1回受けても、給付金合計50万円程度です。保険料360万円に対して受け取れる給付は50万円で、大きくマイナスになります。

このように「払った額に対してどれだけ受け取れる可能性があるか」を試算することで、その保険の費用対効果がおおよそ掴めます。

高額療養費制度のおかげで自己負担は月数十万円に限られるため、医療保険に加入せず、「保険料を貯金として積み立てておいたほうがよい」という判断もあり得るでしょう。

保険金には、税金がかかるケースがあります。保険と税金の関係については、以下の記事をご覧ください。

公的保障・社内制度との重複はないか

加入を検討する保険が、既に自分が享受している公的保障や福利厚生と重複していないか確認します。例えば、勤め先の健康保険組合に付加給付があり自己負担上限が2万円の会社員が、高額療養費の自己負担分を埋めるためだけに高額な医療保険に加入するのは非効率です。

また、会社に十分な病気休職制度(例えば給与の○割を◯カ月支給など)があれば、就業不能保険の金額を抑えられるでしょう。高収入層の方は、充実した社内制度を持つ企業にお勤めの場合が考えられるため、どのような福利厚生があるのか確認してみてください。

  1. 公的保障と社内制度、自分の資産でリスクに備えられるのであれば、保険に入る必要はありません。不要な保険に加入すると、余計な保険料を支払うことになるため、保険の必要性に関する判断は慎重に行いましょう。

不幸にも障害が残ってしまったとき、頼れる公的保険制度に「障害年金」があります。障害年金については、以下の記事で詳しく解説しています。

リスク発生率と必要保障額は妥当か

保険の本質は「万が一の事態が起き、自分や家族の生活が破綻してしまうリスク」に備えるものです。その「万が一」の発生確率にも目を向けてみましょう。

例えば、働き盛り世代(30~40代)の平均入院日数は約12日と短く、多くの入院は2週間程度で退院しています。

一方、60代以降になると入院が長期化しやすく、平均在院日数が20日超になります。がんにかかる確率は男性で約62%、女性で約47%(一生のうちに発症する確率)と言われますが、その中でも高額な治療が必要になるケースは一部です。また、発症する年代の大半は60代以降です。

このような公的データを調べ、自分の年齢や健康状態に照らしてどのリスクに備える必要性が高いかを考えましょう。あわせて、「自分の場合、入院したらいくらぐらい足りなくなるのか(必要保障額)」も計算してみます。

保険の必要性の考え方

  1. 入院や手術時、平均的には○万円かかる
  2. 社会保障給付や社内制度でカバーできるのは○万円
  3. 毎月の生活費や、ローンの返済額は○万円
  4. 自分の場合、毎月○万円の自己負担が発生する
  5. 現在の資産状況では、○年程度で資産が枯渇してしまう
  6. 保険金(給付金)が○万円の民間保険に加入してリスクに備えよう

具体的な数字に落とし込んで検討することで、必要な保険金(給付金)額を計算できます。

保険金の支払い条件・範囲に問題はないか

保険ごと、保険金の支払い条件は異なります。事前に、どのような条件で給付金が支払われるかを確認しましょう。

「何日以上の入院で支払い」「所定の状態が○日継続したら支払い」など、期間に関する条件が多くの保険に設定されています。例えば、就業不能保険では免責期間が90日や180日(働けなくなってから90日または180日経たないと支給開始されない)という商品が一般的です。

免責期間の要件を見落とすと、「給付金を受け取れると思ったら、受け取れなかった」という事態になりかねません。

また、保障の対象範囲もチェックしましょう。がん保険なら「上皮内新生物(ステージ0)の場合一時金が半額になる」といったケースや、就業不能保険なら「精神疾患が原因の場合は支払い対象外」という商品もあります。

保険金額・保障期間は適切か

設定している保険金額や保障期間に、過不足がないか見直します。高収入層だと「念のため」と保障を積み増ししがちですが、必要以上の保険金額は保険料の無駄につながります。

一方で、物価上昇や医療費アップにより、必要保障額が将来的に増えるリスクも考慮しましょう。例えば、10年前は1日1万円で足りた差額ベッド代も、今では都内の人気病院だと1日2万円以上することがあります。

同様に、がん診断一時金100万円では最新の高額治療に足りない場合も出てきました。定期型保険であれば定期的に見直して増額できますが、終身型保険だと加入時の金額がずっと固定です。

インフレや医療費高騰に対して定期的(少なくとも3年ごと程度)に保障額が妥当か検証し、必要なら増減させることが大切です。保険期間についても、例えばお子さんが独立するまでは手厚く、その後はスリム化するといった期間のメリハリを数字で計画しましょう。

「とりあえず一生涯の保障があれば安心だろう」と安易に加入すると、トータルの保険料負担が重くなります。現在の貯蓄額や今後の収支シミュレーションと照らし合わせ、根拠ある保障金額・期間を設定することが重要です。

制度改定と医療インフレに備える「3年ごと見直し」フレーム

公的医療制度の改定や医療費のインフレ動向に対応するため、定期的な保険見直しを行う習慣をつけましょう。主に確認すべき点は、下表のとおりです。

公的制度の改定動向確認直近で健康保険や高額療養費、介護保険の改定、自己負担額の変更や新制度の有無
医療費・介護費のトレンド確認最新の医療費統計や高額治療の事例、費用など
加入中の保険の保障内容見直し現在の保証額・期間は今のニーズにマッチしているか
自身のライフステージ変化家族の増減、収入や資産状況の変化など

おすすめは「3年に一度」のペースで、自身の医療保障を総点検することです。この3年という期間にはいくつか理由があります。

ひとつは、公的医療保険制度や介護保険制度の見直しサイクルです。高額療養費制度の改定こそ先送りとなりましたが、他にも高齢者医療の自己負担割合変更や介護保険サービスの報酬改定など、公的保障は概ね数年おきに見直されます。

実際、政府は2025年8月以降に3段階で高額療養費上限を引き上げる計画を立てており、いずれ時期を改めて実施される可能性があります。3年に一度は最新情報をチェックし、自分の自己負担上限額や給付内容がどう変わるか把握しましょう。

次に、医療技術や費用の変化です。医療は日進月歩で、3年も経てば新しい治療法や高額薬剤が登場し、先進医療のリストも更新されます。例えば数年前には存在しなかった医療技術が保険適用外で出てくるかもしれません。逆に、保険外診療(自由診療)だった治療が、一定の評価や審査を経て保険診療に移行するケースもあり得るでしょう。

場合によっては先進医療特約を追加(または解約)したり、がん保険の一時金を増額(または減額)するといった調整が求められるでしょう。

また、3年経過すれば、あなた自身の環境も変化しています。3年も経てば年齢はもちろん、家族構成や資産状況も変わる可能性があります。例えば、以下のようなケースでは、必要保障額の見直しが求められるでしょう。

見直しのタイミング例

  1. 住宅ローンを組んで団体信用生命保険に加入した
  2. 転職して収入が変わった
  3. 独立してフリーランスになった
  4. 子どもが生まれた

定期的な見直しにより、「もう不要になった保障」「新たに必要になった保障」を洗い出し、保険の無駄や不足を解消していくことが大切です。

よくある質問(FAQ)

この記事のまとめ

高収入でも医療リスクは“想定外の出費”や“収入減”として家計に影響を及ぼします。高額療養費制度を正しく理解した上で、そのカバー外となる費用を洗い出し、自分の職場制度や資産状況と照らして必要な民間保障を補完することが重要です。「何に、どこまで備えるべきか」を具体的に可視化し、3年ごとの見直しを習慣にしましょう。不安が残る方は、医療・保険に詳しい専門家への相談も有効な一歩です。

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投資のコンシェルジュ編集部

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投資のコンシェルジュ編集部は、投資銀行やアセットマネジメント会社の出身者、税理士など「金融のプロフェッショナル」が執筆・監修しています。 販売会社とは利害関係がないため、主に個人の資産運用に必要な情報を、正確にわかりやすく、中立性をもってコンテンツを作成しています。

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自由診療

自由診療とは、公的医療保険が適用されない診療や治療の総称で、費用は全額患者さんの自己負担となります。医療機関と患者さんが自由に治療内容や料金を決定できるため、保険診療では受けられない最先端の医療技術や高価な医薬品を利用できる可能性がありますが、その分費用が高額になる傾向があります。また、設定価格や提供されるサービスが医療機関ごとに異なるため、治療前に内容と費用の詳細を十分に確認することが大切です。

差額ベッド代

差額ベッド代とは、病院で個室や少人数部屋などの特別療養環境室を利用するときに発生する追加料金のことです。一般的な大部屋は公的医療保険の入院基本料に含まれますが、快適性やプライバシーを重視してよりグレードの高い病室を選ぶと、その差額分は保険が適用されず全額自己負担になります。 病院は入院前に料金や部屋の条件を記載した同意書を提示し、患者さんが署名して初めて請求できますので、費用や希望条件を事前に確認し、自分の予算や必要性に合った病室を選ぶことが大切です。

世帯合算

世帯合算とは、公的医療保険で高額療養費制度を利用するときに、同じ世帯である家族それぞれの自己負担額を同じ月内で合計し、一定額を超えた分について払い戻しを受けられる仕組みを指します。個々の医療費はそれぞれが負担しますが、一人あたり21,000円を超えた自己負担が複数ある場合には家族分を足し合わせて判定できるため、同じ月に家族が続けて受診したときなどに医療費負担を抑えやすくなります。 払い戻しを申請するときは世帯主がまとめて手続きを行うのが一般的で、医療機関の領収書や保険証、公的機関が発行する限度額適用認定証などをそろえて提出します。世帯合算を活用することで、家計全体の医療費負担を軽減できる可能性が高まるため、家族で医療費がかさんだ月には忘れずに確認することが大切です。

多数回該当

多数回該当とは、高額療養費制度で同じ世帯が過去12か月以内に自己負担限度額を3回超えた場合、4回目以降の自己負担限度額が引き下げられる仕組みを指します。これにより、慢性的な病気や長期入院で医療費がかさむ世帯でも、4回目からは月ごとの負担上限を抑えられ、家計の負担を軽減できます。 多数回該当の判定は健康保険組合や全国健康保険協会が行い、該当すると翌月以降の払戻額が自動的に増えるか、限度額適用認定証を提示することで窓口負担が最初から低く抑えられます。対象となる月数や回数のカウント方法は保険者共通で、同じ世帯で合計した医療費が基準になるため、家族の医療費が多い場合にも効果が大きい仕組みです。

自己負担限度額

自己負担限度額とは、公的医療保険で定められた高額療養費制度において、同じ月に患者が支払う医療費の上限を示す金額です。外来受診や入院でかかった費用の自己負担分を合計し、この限度額を超えた分は後から払い戻されるか、限度額適用認定証を提示することで窓口負担を最初から抑えられます。 限度額は年齢と所得区分によって細かく区分され、低所得者ほど上限が低く設定されていますので、家計状況に応じた保護が図られています。慢性疾患で医療費が長期にわたって高くなる場合や、同じ世帯で医療費がかさむときに大きな助けとなる制度であり、事前に手続きをしておくと負担を最小限に抑えやすくなります。

がん保険

がんと診断されたときや治療を受けたときに給付金が支払われる民間保険です。公的医療保険ではカバーしきれない差額ベッド代や先進医療の自己負担分、就業不能による収入減少など、治療以外の家計リスクも幅広く備えられる点が特徴です。通常は「診断一時金」「入院給付金」「通院給付金」など複数の給付項目がセットされており、加入時の年齢・性別・保障内容によって保険料が決まります。 更新型と終身型があり、更新型は一定年齢で保険料が上がる一方、終身型は加入時の保険料が一生続くため、長期的な負担の見通しを立てることが大切です。がん治療は医療技術の進歩で入院期間が短くなり通院や薬物療法が中心になる傾向があるため、保障内容が現在の治療実態に合っているかを確認し、必要に応じて保険の見直しを行うと安心です。

先進医療

先進医療とは、公的医療保険ではまだ給付対象になっていない最先端の治療法や検査を指し、厚生労働大臣が安全性と有効性を一定程度認めたものとして個別に承認しています。保険診療と同時に受ける場合でも、先進医療にかかる部分の費用は全額自己負担となる一方、その他の一般的な診療費については通常どおり保険が適用されるため、患者さんは高額な最先端技術を必要最小限の自己負担で利用できる可能性があります。 ただし先進医療は提供できる医療機関が限られており、治療の内容や費用、リスクを十分に理解したうえで選択することが大切です。

先進医療特約

先進医療特約とは、民間の医療保険やがん保険に追加して付けられる保障で、厚生労働大臣が承認した先進医療を受けた際にかかる技術料や治療費の自己負担分を所定の限度額まで補填する仕組みです。先進医療は公的医療保険の対象外で、粒子線治療など一回数百万円に上るケースもあるため、特約を付けることで大きな費用負担を回避できます。 一般的に保険料は月数百円程度と比較的低く抑えられており、加入時の年齢や支払方法によって決まります。給付を受けるには治療前に保険会社へ連絡し、指定医療機関で先進医療の実施が確定したことを証明する書類を提出する必要があります。医療技術は日々進化しており、承認される先進医療の数も変動するため、加入後も特約の対象範囲が最新の治療に対応しているか確認しておくと安心です。

協会けんぽ(全国健康保険協会管掌健康保険)

協会けんぽとは、正式名称を「全国健康保険協会管掌健康保険」といい、主に中小企業に勤める会社員やその家族が加入する公的医療保険制度です。企業と被保険者が折半で保険料を納めることで、病気やけがの治療費の一部を負担したり、傷病手当金や出産手当金などの給付を受けられる仕組みになっています。 保険料率や給付内容は全国一律ではなく、都道府県ごとの医療費水準に応じて毎年度見直されるため、加入者は自分の居住地の料率やサービスを確認しておくと安心です。大企業が独自に設立する健康保険組合と異なり、規模の小さな事業所でも安定した医療保障を受けられることが特徴で、退職後には任意継続被保険者として最長2年間まで加入を継続できます。

健康保険組合

健康保険組合とは、主に大企業や業界団体が、従業員やその家族の医療費をまかなうために設立・運営している独自の健康保険の運営団体です。一般的な会社員は全国健康保険協会(協会けんぽ)に加入しますが、一定の条件を満たす企業は、自社や業界内で健康保険組合を設立することができます。 健康保険組合は、保険料の率を独自に決めたり、付加給付と呼ばれる独自の医療費補助や保健事業(健康診断、予防接種補助など)を行ったりすることで、加入者にとってより手厚い保障が受けられる場合があります。運営費は主に事業主と従業員が支払う保険料でまかなわれ、加入者の健康維持や医療費の適正化を目的としています。加入者にとっては、より柔軟で充実した医療支援を受けられる仕組みとなっています。

付加給付

主に大企業が設立する健康保険組合が独自に設けている追加保障で、高額療養費制度の自己負担限度額をさらに下回る水準まで医療費の負担を軽減したり、入院時の食事療養費や差額ベッド代の一部を補填したりする仕組みです。公的医療保険の基本給付だけでは賄いきれない費用をカバーすることで、組合員とその家族の医療費負担を大幅に抑えられる点が大きなメリットになります。 給付内容や支給条件は健康保険組合ごとに異なり、入院日数や自己負担額の下限設定がある場合もありますので、利用を検討する際には自分が加入する組合の規約を確認し、手続きに必要な書類や申請期限を把握しておくことが大切です。

必要保障額

必要保障額とは、万一の際に残された家族が現在と同等の生活水準を維持しながら、将来の教育費や住宅費といった支出も含めて安心して暮らしていけるよう、生命保険などで準備すべき金額を指します。具体的には、遺族の生活費、子どもの教育資金、住宅ローンの残債、葬儀費用などの「必要資金」から、公的遺族年金、勤務先の死亡退職金、既存の貯蓄や保険などの「準備済み資金」を差し引くことで算出します。 この必要保障額は、家族構成や年齢、子どもの進学予定、住宅ローンの残り期間など、個々のライフプランによって大きく異なります。たとえば、子どもが小さいうちは教育費や生活費の負担が長期にわたるため保障額は大きくなりがちですが、成長とともに必要な保障額は徐々に減少していきます。また、配偶者の就労状況や資産形成の進捗によっても必要な金額は変動します。 そのため、保険を一度加入したら終わりではなく、ライフステージの変化に応じて定期的に見直すことが重要です。保障が過剰であれば保険料の無駄払いになり、逆に不足していればいざというときに家族が困ることになります。こうしたリスクを避けるためにも、保険はライフプラン全体の中での位置づけとして考えることが不可欠です。 保険加入を検討する際には、営業担当者の提案を鵜呑みにせず、自分の生活設計に照らして必要な保障内容を見極めることが大切です。保障の目的や期間、公的制度とのバランス、そして家計や資産運用との整合性を踏まえた設計にすることで、無理なく持続可能な保険の活用が実現できます。必要に応じて、ライフプランニングに精通した中立的な専門家に相談し、現状の見直しと将来設計を行うのも有効な方法です。

介護保険制度

要介護状態になった高齢者やその家族の負担を社会全体で支えるために設けられた公的保険です。40歳以上の国民が加入者となり、保険料を納めることで、要介護認定を受けた際に訪問介護やデイサービス、施設入所など多様な介護サービスを自己負担1割〜3割の範囲で利用できます。 給付内容や利用者負担割合は、所得区分や要介護度によって異なるほか、市区町村が主体となって保険料率や地域のサービス体制を決定しているため、住んでいる自治体ごとに細かな違いがある点も特徴です。必要な介護を適切に受けながら、家計への影響を抑えるためには、要介護認定の申請やケアマネジャーによるケアプラン作成など、制度の手続きを理解し、早めに相談することが大切です。

保険診療

保険診療とは、日本の公的医療保険制度に基づき、健康保険が適用される診察や治療、検査、処方などの医療サービスのことを指します。患者は原則として自己負担分(通常は3割)だけを支払い、残りの費用は公的保険から医療機関に支払われます。 この制度により、誰でも一定の費用で必要な医療を受けられる仕組みが整っています。たとえば、風邪で病院を受診したり、薬をもらったりする際の費用の多くが保険でカバーされるのはこの保険診療によるものです。資産運用や生活設計の観点では、突然の医療費負担を大きく軽減してくれるため、医療リスクへの備えとして非常に重要な制度であり、民間保険との役割分担を考える際の前提にもなります。

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