生命保険はいらない?入るべき?必ず確認すべき判断軸を整理

生命保険はいらない?入るべき?必ず確認すべき判断軸を整理
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公開:
2025.10.10
更新:
2026.02.20
生命保険は「入っていて当たり前」と思われがちですが、実際には未加入の人も少なくありません。一方で、公的保障で足りるのか、貯蓄で備えるべきか、営業提案のまま契約してよいのかで迷い、不要な保険料を払い続けたり、逆に保障不足を招いたりするリスクがあります。この記事では、公的保障(高額療養費・遺族年金)と貯蓄・投資の比較を軸に、家族構成・収入・資産・働き方別に生命保険の必要性を判断する方法を具体的に解説します。
生命保険に入っていない人はどれくらい?
生命保険文化センターの「2024(令和6)年度 生命保険に関する全国実態調査」によると、2人以上世帯の生命保険(個人年金保険を含む)の世帯加入率は89.2%と、約9割に達します。
日本は依然として「保険大国」であり、家族を持つ世帯の多くが何らかの生命保険に加入していることが分かります。一方で、単身世帯の加入率は45.6%にとどまり、約半数は生命保険に入っていません。
- つまり「生命保険に入っていない人」は決して少数派ではなく、特に若年層や単身者では珍しくありません。周囲が入っているかどうかよりも、自分や家族の生活設計に照らして、加入の必要性を冷静に判断することが重要です。
生命保険が「いらない」「必要ない」と言われる理由
生命保険が不要だといわれる背景には、いくつかの理由があります。
日本の充実した社会保障制度、保険料と給付のバランス、そして実際にリスクが発生する可能性の低さなどが挙げられます。これらの考え方には一定の合理性があり、すべての人に生命保険が必要とは限りません。
理由1:公的保障制度が充実しているから
日本は国民皆保険制度を採用しており、すべての国民が何らかの健康保険に加入しています。 医療費の自己負担は原則3割以下で、高額療養費制度により月額の負担上限も定められています。
たとえば、70歳未満で年収370万〜770万円の場合、医療費が100万円かかっても自己負担は約8万7,000円に抑えられます。
- また、厚生年金加入者が死亡した場合には、遺族年金制度により、子どもがいる配偶者は遺族基礎年金と遺族厚生年金を受給できます。このように、公的保障と一定の貯蓄があれば、生命保険に加入しなくても生活を維持できると考える人もいます。
なお、死亡に備えるうえで遺族年金制度は必ず押さえておくべき制度です。遺族年金制度に関する詳細説明はこちらの記事をご参照ください。
理由2:貯蓄で対応できる可能性があるから
「保険料を支払うくらいなら、その分を貯蓄に回した方が良い」という考え方もあります。 たしかに掛け捨て型の医療保険は、入院や手術をしなければ保険料が戻ってこない仕組みです。たとえば月額5,000円の保険料を30年間支払うと、総額は180万円になります。 この金額を毎月積み立てておけば、いざというときの医療費や入院費に十分対応できるケースもあります。
- 実際、日本には高額療養費制度があり、1か月の自己負担額には上限があります。たとえば年収約500万円の人であれば、入院しても自己負担は1回10万円前後に抑えられることが多いです。つまり、数十万円の貯蓄があれば、多くの医療費リスクには自分の資金で対応できるということです。
このように、医療費を自己負担できるだけの貯蓄がある人にとっては、毎月保険料を払い続けるよりも、自分で資金を管理するほうが合理的といえます。
高額療養費の世帯合算と多数回該当の仕組みについては、こちらのQ&Aも参考にしてみてください。
理由3:保険料を支払うよりも貯蓄や投資で増やしたほうが合理的だから
保険料を支払う代わりに、同じ金額を長期で投資に回したほうが、複利の効果によってより大きな資産形成ができるという考え方もあります。 たとえば月1万円の保険料を30年間支払うと、総額は360万円です。これを年利5%で運用した場合、30年後には約832万円になります。
さらに、NISAなどの非課税制度を活用すれば、運用益に税金がかからず、資産形成の効率は一段と高まります。 このように、保険料として支払えば「消費」として消えるお金も、投資に回せば「将来の資産」に変えることができます。これが、保険不要論を支える一つの根拠です。
- なお、保険にも「貯蓄型保険」が存在しますが、一般的に保険と運用を一体化させると、手数料や予定利率の制約により運用効率は低下します。そのため、「保障は保障、運用は運用」と切り分けるのが基本です。
理由4:保険会社や保険代理店の提案は構造的に偏りが生じるから
保険営業の現場では、残念ながら「顧客の不安を煽る」セールストークが横行しています。恐怖を煽って商品を訴求するトークは、冷静な判断を妨げる典型例です。
実際、多くの営業担当者は歩合制で働いており、契約件数や保険料の大きさが収入に直結します。このため、本来必要ない特約を勧めたり、過大な保障額を提案したりすることも少なくありません。
- さらに問題なのは、営業担当者自身が商品の詳細を十分理解していない場合があることです。複雑な約款や給付条件を正確に説明できず、「とりあえず入っておけば安心」という曖昧な提案に終始することもあります。
生命保険は必要か?入るべき人・入らなくてもよい人をタイプ別に整理
生命保険は「誰にとっても必ず必要な商品」ではありません。死亡時に家族の生活が成り立たなくなる人には必要性が高く、一方で扶養家族がいない人や十分な資産がある人は「生命保険は必要ない」と判断できるケースも多くあります。
代表的な世帯構造ごとに、生命保険が「入るべきか、入らなくてもよいか」の目安を整理しました。
| タイプ | 生命保険の必要性 | ポイント |
|---|---|---|
| 独身・子どもなし(実家暮らし/一人暮らし) | 基本的に不要 | 死亡しても生活費を失う家族がいないため、死亡保障の必要性は低い |
| 共働き夫婦・子どもなし(DINKs) | 基本的に不要 | どちらかが亡くなっても、残された配偶者の収入だけで生活が維持できるなら不要 |
| 片働き世帯(専業主婦(夫)+小さい子ども) | 必要 | 一定期間の生活費をカバーできる死亡保険を備えておかないと、遺族の生活水準が大きく下がるリスクが高い |
| 共働き世帯・子あり | 必要(世帯ごとに調整) | 片方の収入だけでは生活や教育方針を維持できない場合は必要。どちらか一方の収入でも十分なら不要 |
| 自営業・フリーランスで小さい子どもあり | 必要 | 公的保障が手薄になるため、死亡保障のほか就業不能保険なども併せて検討する |
| 子ども独立後の夫婦(60〜70代) | 不要 | 死亡によって生活費を失う家族がほぼいないため、死亡保障の必要性は低い例外的に相続対策が必要な場合は検討する |
| 貯蓄・資産が十分にある富裕層 | 不要 | 死亡しても資産だけで家族の生活は成り立つため不要 |
なお、上表はあくまで「一般的な目安」です。
- 実際には、公的遺族年金の金額や貯蓄額、親からの支援の見込みなどによって「生命保険は必要か」「どこまで必要か」は変わってきます。
生命保険がいらない人の特徴
生命保険の必要性は、個人の経済的状況や家族構成によって異なります。すべての人に生命保険が必要というわけではなく、条件によっては加入しなくても問題ない場合があります。
ここでは、生命保険が不要と考えられる人の特徴を具体的に解説します。自分がこれらの条件に該当するかどうか、客観的に判断してみましょう。
リスクに備えるだけの十分な貯蓄がある人
万一のときに必要な費用をすべて貯蓄でまかなえる人は、生命保険の必要性が低いといえます。具体的には、生活費や子どもの教育費用も貯蓄でカバーできる場合、保険で備える必要はありません。
保険は「もし起こってしまうと、自分や家族の生活が破綻する」というリスクに備えるものです。万が一の事態が起きても、社会保障と貯蓄で遺族の生活を守れるのであれば、生命保険は不要です。
扶養家族がおらず経済的責任が軽い人
独身で扶養する家族がいない人は、死亡保障の必要性が低くなります。自身が死亡しても、経済的に困る人がいないためです。
子どもが独立して教育費もかからなくなった人は、大きな死亡保障は不要になります。配偶者も自身の年金や貯蓄で生活できる場合は、なおさらです。
- このような状況の人は、保険を見直して保障額を減少させたり、解約したりすることで、保険料負担を軽減できます。浮いた保険料は老後の資金準備に回すことも可能です。
公的保障・勤務先の福利厚生でリスクをカバーできている人
日本の社会保障制度は世界的に見ても充実しており、これに勤務先の福利厚生が加われば、民間保険なしでも十分なケースがあります。
まず、大企業や公務員の場合、健康保険組合や共済組合による上乗せ給付が手厚いのが特徴です。例えば、一般的な健康保険では高額療養費の自己負担限度額が月8万円程度のところ、企業の健保組合では月2~3万円まで引き下げているケースもあります。さらに、入院時の差額ベッド代を補助する制度や、人間ドックの費用補助なども充実しています。
傷病手当金の延長給付制度を持つ企業もあります。通常1年6か月で終了する傷病手当金を、会社独自の制度で2~3年まで延長し、その間の生活を保障するのです。このような企業に勤めている場合、保険の必要性は大幅に下がります。
共働きでどちらか一方の収入でも生活できる世帯
共働き世帯で、片方の収入だけでも生活が成り立つ家庭は、生命保険の必要性が相対的に低くなります。このような世帯の最大の強みは「リスク分散」ができていることです。
例えば、夫婦それぞれが年収400万円の共働き世帯を考えてみましょう。世帯年収は800万円ですが、生活費を年間500万円に抑えていれば、どちらか一方が亡くなっても、残された配偶者の収入400万円で基本的な生活は維持できます。さらに遺族年金が加わることを考えれば、経済的な困窮リスクはかなり低いといえます。
- 特に正社員同士の共働きは強力です。両者とも厚生年金に加入していれば、老後の年金も各自で確保でき、片方が働けなくなっても傷病手当金がそれぞれに支給されます。つまり、共働き世帯は死亡に対する備えだけでなく、就業不能状態に対する備えも手厚いのです。
生命保険の加入が必要な人
生命保険が特に必要となる人には、明確な特徴があります。家族構成や職業、貯蓄額などによって、万一のときの経済的影響は大きく異なります。
ここでは、生命保険への加入を真剣に検討すべき人の代表的なケースを解説します。ご自身や家族の状況と照らし合わせながら、必要性を見極めましょう。
主に家計を支えており扶養家族が多い人
家族の生活費を主に負担している世帯主は、生命保険の必要性が最も高いといえます。世帯主が亡くなると、家族の収入が途絶え、生活水準を維持できなくなるおそれがあるためです。
厚生労働省の「家計調査報告(2024年)」によると、2人以上の世帯の平均消費支出は月約30万円、年間で約360万円にのぼります。 一方で、遺族年金の支給額は限られています。たとえば子ども1人の場合、遺族基礎年金は年額約107万円程度です。生活費との差額である年間250万円前後を、残された家族が自力で補わなければなりません。
- この差を20年間カバーしようとすれば約5,000万円に達し、貯蓄だけで賄うのは現実的ではありません。世帯主に万一があった場合でも家族の生活を支えるためには、十分な死亡保障を備える生命保険が必要です。
保険が必要な場合でも、適切な保険の選び方で迷うことがあるかもしれません。詳しくは、こちらの記事も参考にしてみてください。
小さい子どもがおり生活費や教育費を用意する必要がある人
子どもがいる家庭では、教育費の確保が重要な課題になります。文部科学省の調査によると、幼稚園から高校まですべて公立の場合でも、1人あたり約574万円の教育費が必要です。 小学校から高校まで私立に通う場合は約1,840万円、さらに大学進学を考慮すると、1人につき2,000万円を超えるケースも少なくありません。
親の死亡によって収入が途絶えると、こうした教育費の確保が難しくなります。子どもの進学や将来の選択肢を守るためには、死亡保障が大きな役割を果たします。
特に「収入保障保険」は、毎月一定額を遺族が受け取れる仕組みのため、家計を安定的に支えやすく、子育て世代に適した選択肢といえます。保険料も一時金型の死亡保険に比べて抑えやすい点も魅力です。
子どもの教育費や収入保障保険について詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてみてください。
リスクに備えられる経済的余裕・貯蓄が少ない人
貯蓄額が少ない人ほど、生命保険の必要性は高まります。 手元資金だけでは突発的な支出に対応できず、保険によるリスク補完が欠かせないためです。
金融広報中央委員会の調査によると、30代の貯蓄額の中央値は約240万円。 この金額では、長期入院や失業といった予期せぬ事態に十分備えるのは難しいのが現実です。
- 生命保険なら、毎月数千円の保険料で数百万円から数千万円の保障を得ることができます。貯蓄がまだ十分でない人にとって、効率的にリスクをカバーできる手段といえるでしょう。まずは最低限の保障から始め、貯蓄が増えるにつれて保険内容を見直すことが現実的な選択です。
逆に言えば、生活防衛資金を用意できていれば、加入する生命保険を最小限に抑えられます。目安となる金額は、こちらの記事を参考にしてみてください。
公的保障が薄い自営業・フリーランス
自営業者やフリーランスは、会社員と比べて公的保障が薄いため、民間の生命保険でカバーする必要性が高くなります。特に大きな違いは、傷病手当金と遺族年金です。
国民健康保険には傷病手当金の制度がありません。病気やケガで働けなくなっても、収入の補償はないのです。一方、会社員なら最長1年6か月間、給与の約3分の2が支給されます。
遺族年金についても、国民年金のみの加入者は遺族基礎年金しか受け取れません。自営業・フリーランスは社会保障が薄くなりがちな点を押さえたうえで、生命保険の必要性を判断しましょう。
傷病手当金が受け取れないケースについての詳細は、こちらの記事で解説しています。
相続対策が必要な人
相続財産が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人数)を超える人は、相続税対策として生命保険を活用できます。生命保険の死亡保険金には「500万円×法定相続人数」の非課税枠があるためです。
たとえば、配偶者と子ども2人が法定相続人の場合、1,500万円まで非課税となります。現金で相続するより、生命保険を通じて渡すほうが節税効果が高いのです。さらに、受取人を指定できるため、特定の相続人に確実に資産を残せるメリットもあります。
生命保険を活用した相続対策に関しては、こちらの記事も参考にしてみてください。
生命保険に入らないことで起こり得るリスク
生命保険に加入しないという選択をする前に、起こり得るリスクを精査しましょう。公的保障や資産状況を踏まえて、以下で解説するリスクに対応できる場合、「生命保険はいらない」という判断が合理的です。
遺族の生活費が不足する
世帯主が死亡した場合、遺族の生活費が大幅に不足する可能性があります。生命保険文化センターの調査によると、世帯主死亡後の必要生活費は、現在の生活費の約7割と考える人が一般的です。
月30万円の生活費なら、遺族には月21万円が必要になる計算です。年間では252万円となりますが、遺族基礎年金は子ども1人の場合で年額約107万円しかありません。差額分を、配偶者の収入や貯蓄、相続財産でまかなう必要があるのです。
- 配偶者が専業主婦(主夫)の場合、すぐにフルタイムで働くことは困難でしょう。保育料や学童保育の費用も発生し、思うように収入を増やせないケースも多いのが現実です。生命保険がなければ、生活水準を大きく下げざるを得なくなります。
死亡に備えるための保険は、定期保険と終身保険に大別されます。それぞれの違いは、こちらの記事を参考にしてみてください。
教育資金を確保できない
親が死亡しても、子どもの教育費は変わらずかかり続けます。日本政策金融公庫の調査では、大学4年間の教育費は国公立でも約481万円、私立理系なら約821万円が必要です。
教育資金が不足すれば、子どもは進学を諦めたり、多額の奨学金を借りたりすることになります。日本学生支援機構の奨学金を4年間借りた場合、卒業時の借入総額は400万円を超えることもあるでしょう。
社会人になってから長期間の返済が続き、結婚や住宅購入などのライフステージに影響を与えかねません。親の死亡が、子どもの将来にまで大きな影響を及ぼす可能性があるのです。具体的に必要な教育資金の目安に関しては、こちらの記事も参考にしてみてください。
入院・手術時の医療費が家計を圧迫する
高額療養費制度があっても、すべての医療費がカバーされるわけではありません。差額ベッド代、先進医療、入院時の食事代などは自己負担となります。
厚生労働省の調査によると、差額ベッド代の平均は1日あたり約6,600円です。30日間入院すれば約20万円の負担となり、個室を希望すれば1日2万円以上かかることもあります。
がん治療で注目される重粒子線などの先進医療技術は、約300万円の治療費がかかりますが、公的保険の適用対象外です。最新の治療を受けたくても、経済的理由で断念せざるを得ないケースも出てくるでしょう。
葬儀費用が不足する
葬儀費用は思いのほか高額になることがあります。葬儀費用やお墓の購入費用、永代使用料などの出費に対応できない場合、遺族は葬儀ローンを組むか、親族から借金をすることになります。
故人を送る大切な儀式が、経済的負担として遺族を苦しめることにもなりかねません。終身保険などで最低限の葬儀費用を用意しておくことは、遺族への思いやりともいえるでしょう。
保険に加入するにあたって、どの程度の保障が必要かを知るためにはライフプランシミュレーションが欠かせません。不安がある方は、専門家と無料相談をしてみてはいかがでしょうか。
生命保険は本当に必要か?加入前に検討すべきポイント
生命保険の必要性は、画一的に判断できるものではありません。年齢、家族構成、収入、貯蓄額など、さまざまな要素を総合的に検討する必要があります。
ここでは、生命保険の必要性を判断するための具体的なポイントを解説します。感情論ではなく、客観的なデータと計算に基づいて、あなたにとって最適な選択を導き出しましょう。
受けられる公的保障を確認する
公的保障の内容を正しく理解することで、民間保険の必要性がより明確になります。まず、自分が加入している社会保険の種類を確認しましょう。
会社員なら健康保険と厚生年金、自営業者なら国民健康保険と国民年金に加入しています。それぞれの保障内容は大きく異なるため、詳細な確認が必要です。
- 日本年金機構の「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」を活用すれば、将来の年金見込額を確認できます。遺族年金の試算も可能なので、実際の支給額を把握したうえで、不足分を計算しましょう。
生命保険は、一度加入したら終わりではありません。定期的に見直しを行い、不要になったら解約しましょう。詳しくは、こちらの記事で解説しています。
家族構成を確認する
まず確認すべきは、現在の家族構成と今後の変化です。配偶者の有無、子どもの人数と年齢、親の扶養状況などを整理します。
子どもがいる場合は、それぞれの独立までの年数を計算しましょう。たとえば、5歳と8歳の子どもがいれば、下の子が22歳で独立すると仮定して、あと17年間の保障が必要です。この期間の生活費と教育費を合計すると、必要保障額が見えてきます。
配偶者の就労状況も重要なポイントです。共働きなら、片方の収入でどこまで生活できるかを試算します。専業主婦(主夫)の場合は、就労開始までの期間と、その間の生活費を考慮する必要があるでしょう。親の介護が必要になる可能性も、忘れずに検討してください。
収入と支出を把握する
家計の収支を正確に把握することは、保険選びの基本です。まず、手取り月収と年間賞与を合計し、年間の可処分所得を算出します。
次に、固定費と変動費を分けて月間支出を計算しましょう。住宅ローンや家賃、光熱費、通信費などの固定費は、世帯主が死亡しても大きく変わりません。一方、食費や交際費などの変動費は、家族構成の変化により減少する可能性があります。
収支の把握をする際には、家計管理が欠かせません。おすすめの方法は、こちらのQ&Aを参考にしてみてください。
保有している資産額を把握する
預貯金が300万円以上ある場合、医療保険の必要性は相対的に低下します。、この程度の預貯金があれば、保険に頼らずとも対応可能だからです。
不動産や有価証券などの資産がある場合も、保険の必要性は低くなります。ただし、流動性の低い資産が中心の場合は、緊急時にすぐに現金化できない可能性があるため、一定の保険は維持すべきでしょう。
退職金や企業年金の見込み額も考慮すべき要素です。大企業の退職金は平均2,000万円程度あるため、これを老後資金として活用できる場合、個人年金保険の必要性は低くなります。
親族から受けられる援助の有無を把握する
実家が経済的に安定している場合、緊急時に援助を受けられる可能性があります。ただし、親族からの援助をあてにした保険設計は避けるべきで、あくまで最後のセーフティネットとして考えることが重要です。
配偶者の実家からの援助可能性も考慮要素となります。特に住宅購入時の援助や、子どもの教育費援助が期待できる場合は、その分だけ保険による備えを調整できるでしょう。
逆に、親の介護が必要になる可能性がある場合は、追加の備えが必要です。介護費用は月額平均9万円かかるといわれており、この負担を考慮した保険設計が求められます。
必要な介護費用の目安に関しては、こちらのQ&Aも参考にしてみてください。
相続対策の必要性を考慮する
相続税の基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人数)を超える資産がある場合、生命保険を活用した相続税対策が有効です。死亡保険金の非課税枠(500万円×法定相続人数)を活用することで、大幅な節税が可能となります。
不動産など分割困難な資産が多い場合も、生命保険の活用が効果的です。代償分割の原資として死亡保険金を活用することで、円満な遺産分割を実現できるでしょう。
事業承継を考えている経営者の場合、自社株の相続税評価額が高額になることがあります。この場合、相続税の納税資金として死亡保険金を活用することで、事業の円滑な承継が可能となります。
感情ではなく数字で生命保険の必要性を判断しよう
「何となく不安だから」という理由で生命保険に加入すると、本来であれば不要な保険に契約し、無駄な保険料を払い続けることになります。保険会社や代理店の営業員は、将来の不安をあおる話術を使いますが、感情に流されてはいけません。
重要なのは、具体的な数字で必要性を判断することです。まず、遺族の必要生活費から遺族年金や配偶者の収入を差し引き、不足額を計算します。
- 遺族の生活費が年350万円、受給できる遺族年金が年120万円・配偶者収入が年100万円とすると、不足額は年130万円です。この不足分を何年分カバーする必要があるかで、必要保障額が確定します。
必要なのは、あなたの家計状況を示す具体的な数字だけです。源泉徴収票、家計簿、貯蓄残高を確認し、冷静に計算することで、本当に必要な保険だけを選ぶことができるのです。
生命保険の加入に関するよくある誤解
保険や資産形成について、多くの人が抱いている誤解があります。これらの誤解は、不適切な判断につながり、結果的に家計を圧迫したり、必要な保障が得られなかったりする原因となっています。
正しい知識を持つことで、無駄な支出を削減し、本当に必要な備えに資金を振り向けることができます。
「入れば安心」ではない
「保険に入っていれば安心」という考えは、根強く残る誤解の一つです。
保険はあくまでリスクに備える手段の一つであり、すべてのリスクをカバーできるわけではありません。また、過剰な保障は保険料の無駄遣いにつながり、かえって家計を圧迫する要因となってしまうでしょう。
適正な保障額は「必要保障額=遺族の支出−遺族へ渡る−資産遺族の収入−公的保障」という計算式で求められます。まず遺族の生活費、教育費、住居費などの支出を見積もり、そこから遺族の収入と遺族年金などの公的保障を差し引いた金額が、民間保険で備えるべき金額となります。
保障額は定期的に見直すことも重要です。子どもの成長とともに必要な教育費は減少し、住宅ローンの残高も減っていきます。5年ごとに保障額を見直すことで、保険料を年間10万円以上削減できることもあるでしょう。
医療保険は必須ではない
「医療保険に入らないと入院費が払えない」という不安から、複数の医療保険に加入している人も少なくありません。しかし、日本の公的医療保険制度は世界的に見ても充実しており、高額療養費制度により自己負担は限定的です。
貯蓄が十分にある場合や、傷病手当金が受給できる会社員の場合、医療保険の必要性は相対的に低くなります。むしろ、保険料を貯蓄に回したほうが、柔軟に使える資金として有効な場合もあるでしょう。
健康保険には高額療養費制度があり、年収500万円の人なら、月の医療費自己負担の上限は約8万円です。また、会社員なら傷病手当金として、最長1年6か月間、標準報酬月額の3分の2が支給されます。
医療保険への加入を検討している高年収の方は、こちらの記事もご覧ください。
「掛け捨て型保険はもったいない」は勘違い
「掛け捨て型保険はもったいない」という考えは、一般的に誤解です。掛け捨て型保険は、保険料が返ってこないため無駄に感じる人もいますが、その最大のメリットは保険料が割安で、大きな保障を手軽に得られる点です。特に子育て世代や若い世代にとっては、保険料を抑えつつ必要な保障を確保する合理的な選択肢と言えます。
掛け捨て型保険の特徴は保障期間が限定されていることや、満期や解約時に返戻金がないことですが、その分保険料は安いです。一方、貯蓄型保険は保険料が高く、満期金や解約返戻金が受け取れますが、家計の負担は大きくなります。
掛け捨て型はシンプルな保障であり、保障が必要な期間に絞って加入できるため、無駄ではなく「保障を買っている」と考えるべきです。
貯蓄型保険と掛け捨て保険の違いを詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
「公的年金はあてにならない」は間違い
「年金制度は破綻する」「将来は年金がもらえなくなる」という不安から、過度に民間保険に頼ろうとする人が増えていますが、これは大きな誤解です。日本の公的年金制度は賦課方式を採用しており、現役世代が納めた保険料をその時の高齢者に支給する仕組みのため、制度が完全に破綻することは考えにくいのが実情です。
重要なのは、公的年金をリスク管理の「基礎」として位置づけ、不足分を民間保険や預貯金で補完するという考え方です。
公的年金への過度な不安から、月額5万円も6万円も個人年金保険に加入するケースがありますが、これは本末転倒です。まず公的年金の見込み額を「ねんきん定期便」で確認し、不足額を正確に把握したうえで、必要な分だけ民間保険で準備するという合理的なアプローチが重要となります。
障害年金や遺族年金に関しては、こちらの記事で詳しく解説しています。あわせて参考にしてみてください。
よくある質問(FAQ)
2026.02.24
男性50代
“道民共済に加入しています。共済金の請求方法を教えて下さい。”
A. 道民共済の共済金請求は、病気の入院・手術/ケガの通院で必要書類が異なります。給付事由別に確認し、マイページまたは郵送で、期限内に提出しましょう。
2026.02.24
男性50代
“同じ月に2回入院した場合、高額医療費はどうなるのでしょうか。”
A. 同一月の高額療養費は月単位で判定するため、入院が2回でも原則合算して限度額を判定します。ただし、医療機関ごと、医科ごと・歯科ごと、入院ごと・外来ごとという分類で行われます。
2025.10.15
男性30代
“生命保険を解約するデメリットや注意点について教えてください”
A. 生命保険を解約すると保障の喪失や元本割れ、再加入困難など多くのリスクがあります。解約前に減額・払済など代替策を検討しましょう。

金融系ライター
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1,000記事以上の執筆実績あり。
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1,000記事以上の執筆実績あり。
関連する専門用語
公的保障
公的保障(こうてきほしょう)とは、国や自治体が税金を財源として、すべての国民に最低限の生活を保障する制度を指します。社会保障制度の柱の一つであり、病気や失業、貧困、子育てなどで生活に困窮した場合に、保険料を支払っていなくても利用できる点が特徴です。 代表的な例として、生活保護があります。これは収入や資産が一定基準を下回る世帯に対し、生活費や医療費を補う制度で、まさに「最後のセーフティネット」とされています。また、児童手当は子どもを養育する家庭に所得に応じて一定額を支給する仕組みであり、子育て世帯の生活支援を目的としています。さらに、基礎年金の一部は国庫からの負担で賄われており、拠出額が少ない人でも一定の年金を受け取れるようになっています。 一方で、公的保険は国民や事業主が保険料を拠出し、相互扶助の仕組みで運営されます。健康保険や雇用保険、介護保険、年金保険などが代表的で、保険料を支払うことでリスク発生時に給付を受けられます。公的保障は税を財源に「無拠出」で提供される点で、公的保険とは性格が異なります。 公的保障は最低限度の生活を維持するための支援にとどまることが多いため、実際には公的保険や私的保険、さらに自助的な資産形成を組み合わせて備えることが現実的で安心といえます。
遺族年金
遺族年金とは、家計の支え手である人が亡くなった際に、残された家族の生活を保障するために支給される年金のことです。公的年金制度の中に組み込まれており、国民年金から支給される「遺族基礎年金」と、厚生年金から支給される「遺族厚生年金」があります。対象となるのは、主に配偶者や子どもで、支給額や期間は家族構成や被保険者の加入状況などによって異なります。遺族年金は、残された家族が安定した生活を続けるための公的な支援制度として、生活設計においてとても重要な役割を果たします。
遺族基礎年金
遺族基礎年金とは、国民年金に加入していた人が亡くなったときに、その人に生計を維持されていた一定の家族(主に子どもがいる配偶者や子ども自身)に支給される年金です。これは公的年金制度のひとつで、生活保障を目的としており、主に子育て世帯を対象にしています。たとえば、夫が亡くなり、子どもを育てる妻がいる場合、その妻に遺族基礎年金が支給されます。受給の条件には、亡くなった人が保険料を一定期間納付していたことや、受け取る側に対象となる子どもがいることなどが含まれます。支給額は定額で、子どもの人数に応じた加算もあります。子どもが一定年齢に達すると支給は終了します。家計を支える人を失ったときに、遺族の生活を一定期間支援する大切な制度です。
遺族厚生年金
遺族厚生年金とは、厚生年金に加入していた人が亡くなった場合に、その遺族に支給される公的年金のことです。対象となるのは、主に配偶者(特に一定年齢以上の妻)、子ども、父母、孫、祖父母などで、生計を同じくしていたことが条件とされます。 遺族基礎年金が子どもがいる世帯を中心に支給されるのに対し、遺族厚生年金は子どもがいなくても一定の条件を満たせば支給されるため、対象範囲がやや広いのが特徴です。支給額は、亡くなった人の厚生年金の納付記録や報酬額に基づいて計算されるため、個人差があります。また、遺族基礎年金と併用して受け取れる場合もあり、特に現役世代の死亡リスクに備える重要な保障制度のひとつとされています。家計の柱を失ったときに、遺族の生活を長期にわたって支える仕組みです。
高額療養費制度
高額療養費制度とは、1か月に医療機関で支払った自己負担額が一定の上限を超えた場合、その超過分が払い戻される公的な医療費助成制度です。日本では公的医療保険により治療費の自己負担割合は原則3割(高齢者などは1〜2割)に抑えられていますが、手術や長期入院などで医療費が高額になると家計への影響は大きくなります。こうした経済的負担を軽減するために設けられているのが、この高額療養費制度です。 上限額は、70歳未満と70歳以上で異なり、さらに所得区分(年収の目安)によって細かく設定されています。たとえば、年収約370万〜770万円の方(一般的な所得層)では、1か月あたりの自己負担限度額は「約8万円+(総医療費−26.7万円)×1%」となります。これを超えた分は、後から申請によって保険者から払い戻しを受けることができます。 また、事前に健康保険の窓口で「限度額適用認定証」を取得し、医療機関に提示しておけば、病院の窓口で支払う金額そのものを最初から自己負担限度額までに抑えることも可能です。これにより、退院後の払い戻しを待たずに現金の一時的な負担を軽減できます。 同じ月に複数の医療機関を受診した場合や、同一世帯で同じ医療保険に加入している家族がいる場合には、世帯単位で医療費を合算して上限額を適用することもできます。さらに、直近12か月以内に3回以上この制度を利用して上限を超えた場合、4回目以降は「多数回該当」となり、上限額がさらに引き下げられる仕組みもあります。なお、払い戻し申請から実際の支給までには1〜2か月程度かかるのが一般的です。 資産運用の観点から見ると、この制度によって突発的な医療費リスクの一部を公的にカバーできるため、民間の医療保険や緊急時資金を過剰に積み上げる必要がない場合もあります。医療費リスクへの備えは、公的制度・民間保険・現金準備のバランスで考えることが大切です。特に高所得者や自営業者の場合は、上限額が比較的高めに設定されている点や支給までのタイムラグを踏まえ、制度と現金の両面から備えておくと安心です。
終身保険
終身保険とは、被保険者が亡くなるまで一生涯にわたって保障が続く生命保険のことです。契約が有効である限り、いつ亡くなっても保険金が支払われる点が大きな特徴です。また、長く契約を続けることで、解約した際に戻ってくるお金である「解約返戻金」も一定程度蓄積されるため、保障と同時に資産形成の手段としても利用されます。 保険料は一定期間で払い終えるものや、生涯支払い続けるものなど、契約によってさまざまです。遺族への経済的保障を目的に契約されることが多く、老後の資金準備や相続対策としても活用されます。途中で解約すると、払い込んだ金額よりも少ない返戻金しか戻らないこともあるため、長期の視点で加入することが前提となる保険です。







