
収入保障保険とは?「やめたほうがいい」と言われる理由や定期保険・就業不能保険との違い、メリット・デメリットまで解説
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公開:
2025.09.30
更新:
2025.09.30
収入保障保険は、万が一のときに残された家族の生活を守るための保険商品です。毎月の給料のように年金形式で保険金を受け取れるため、生活費の不足を補いやすいという特徴があります。
しかし、「収入保障保険」という名前から、働けなくなったときの保険と勘違いされることも少なくありません。実際には、被保険者が亡くなったり高度障害状態になったりした場合に、家族が保険金を受け取る死亡保険の一種となります。
本記事では、中立的な立場から収入保障保険の仕組みやメリット・デメリット、他の保険との違いについて解説していきます。また、必要保障額の計算方法や選び方のポイント、おすすめの商品についても具体的に紹介します。
サクッとわかる!簡単要約
この記事を読むことで、収入保障保険の仕組みと活用法を短時間で理解できます。逓減型による合理的な保障設計や、定期保険・終身保険との比較による違いが明確になり、なぜ保険料が割安なのかがわかります。さらに、子育て世帯や自営業者に特に必要とされる理由、教育費や住宅費を踏まえた必要保障額の計算方法、FWD生命やオリックス生命など具体的な商品事例も紹介し、自分に合った保障設計を考える第一歩を踏み出せます。
収入保障保険の基本を理解する
収入保障保険について正しく理解するためには、まず基本的な仕組みを把握することが大切です。一般的な死亡保険とは異なる特徴があるため、その違いを明確にしておきましょう。
収入を得ている人の死亡や高度障害に備える保険
収入保障保険とは、被保険者が死亡または高度障害状態になった場合に、保険期間満了まで毎月一定額の保険金が支払われる定期型の死亡保険です。
たとえば、月額15万円の保険金で60歳満期の契約の場合、35歳で万が一のことがあれば、25年間にわたって毎月15万円が遺族に支払われることになります。
年金形式で保険金を受け取る
収入保障保険の保険金は、原則として年金形式で毎月受け取ることになります。一度にまとまった金額を受け取る一般的な死亡保険とは異なり、給料(年金)のように定期的に支払われるため、家計管理がしやすいというメリットがあります。
ただし、多くの商品では一括受取りも選択可能です。葬儀費用や相続税の支払いなど、まとまった資金が必要な場合には便利な選択肢となるでしょう。
注意すべき点として、一括で受け取る場合の金額は、年金形式で受け取る総額よりも少なくなることが挙げられます。これは、将来支払われる予定の保険金を現在価値に割り引いて計算するためです。
逓減型保険の仕組み
収入保障保険は「逓減型」の保険であり、時間の経過とともに保障額が段階的に減少していく仕組みです。この特徴は、一見するとデメリットのように感じるかもしれませんが、実は合理的な設計といえます。
なぜなら、子どもが成長するにつれて必要な教育費は減少し、住宅ローンの残債も少なくなっていくからです。
逓減型の仕組みにより、本当に大きな保障が必要な時期には手厚い保障を確保しながら、保険料を抑えることが可能になります。30歳で加入した場合、40歳時点での必要保障額と50歳時点での必要保障額は異なるため、この仕組みは理にかなっているといえるでしょう。
保険金の受取人と税金
収入保障保険の保険金にかかる税金は、契約形態によって異なります。一般的な契約形態は、契約者と被保険者が同一で、受取人が配偶者や子どもとなるケースです。
この場合、初年度は年金現価相当額(将来受け取る年金の一括元本を現在価値で算出した値)が相続税の対象となります。ただし、法定相続人1人あたり500万円の非課税枠があるため、実際に課税されるケースは限定的です。
2年目以降の年金受取分については、雑所得として所得税と住民税の課税対象となります。ただし、二重課税を防ぐために相続税課税済み部分については「必要経費」として控除されるため、実際の税負担はそれほど大きくありません。
保険金と税金の関係に関しては、こちらの記事でも解説しています。あわせて参考にしてみてください。
収入保障保険が「やめたほうがいい」と言われる理由
収入保障保険について調べていると、「やめたほうがいい」という意見を目にすることがあります。確かに、収入保障保険には掛け捨て型特有のデメリットや、すべての人に適しているわけではないという側面があることは事実です。
しかし、これらの意見の多くは、収入保障保険の仕組みを正しく理解していないか、自分のニーズと合っていない商品を選んでしまった結果から生まれているケースがほとんどです。なぜ「やめたほうがいい」と言われるのか、その理由を詳しく検証していきます。
掛け捨てへの抵抗感
収入保障保険が批判される最大の理由は、掛け捨て型であることへの心理的な抵抗感です。「保険料を払い続けても、何もなければ1円も戻ってこない」という事実に、もったいないと感じる方がいるのは致し方ありません。
しかし、この考え方には重要な視点が欠けています。保険の本質は「リスクの移転」であり、貯蓄とは根本的に異なる金融商品なのです。
保障額減少への誤解
「時間とともに保障額が減っていくのは損」という意見も、収入保障保険への批判としてよく聞かれます。確かに、加入直後と比べて満期直前では受け取れる保険金総額に大きな差があることは事実です。
しかし、この逓減型の仕組みこそが、収入保障保険の合理性の証明でもあります。子ども1人の教育費は成長とともに必要額が減少するため、必ずしもデメリットにはなりません。
むしろ、必要保障額が減っているにもかかわらず、同じ保障額を維持し続けることのほうが非効率といえるでしょう。収入保障保険は、この点を解決した合理的な商品設計となっているのです。
「やめたほうがいい」という意見に惑わされることなく、自分のライフステージや家族構成、資産状況を総合的に判断して、収入保障保険の活用を検討することが大切です。批判的な意見も参考にしつつ、メリットとデメリットを正しく理解したうえで、賢明な選択をすることをおすすめします。
収入保障保険と他の保険の違い
収入保障保険を検討する際には、他の死亡保険や収入を保障する保険との違いを正しく理解しておくことが重要です。名称が似ている保険もあるため、それぞれの特徴を把握して、自分に最適な保険を選びましょう。
ここでは、定期保険や終身保険といった死亡保険、さらに就業不能保険や所得補償保険との違いについて、具体的に比較しながら解説していきます。
項目 | 収入保障保険 | 定期保険 | 終身保険 | 就業不能保険 | 所得補償保険 |
---|---|---|---|---|---|
保険の分類 | 生命保険(死亡保険) | 生命保険(死亡保険) | 生命保険(死亡保険) | 生命保険(第三分野) | 損害保険 |
保険の目的 | 遺族の生活費確保 | 遺族の生活費・ まとまった資金確保 | 葬儀費用・相続対策・ 資産形成 | 働けない期間の 本人の収入補償 | 働けない期間の 本人の収入補償 |
保険期間 | 一定期間 (10年~30年程度) | 一定期間 (10年~30年程度) | 一生涯 | 一定期間 (60歳・65歳まで等) | 短期更新 (1年~5年) |
保障タイプ | 掛け捨て型 | 掛け捨て型 | 貯蓄型 | 掛け捨て型 | 掛け捨て型 |
支払条件 | 死亡・高度障害 | 死亡・高度障害 | 死亡・高度障害 | 所定の就業不能状態 | 病気・ケガによる就業不能 |
受取人 | 遺族 (配偶者・子ども等) | 遺族 (配偶者・子ども等) | 遺族 (配偶者・子ども等) | 被保険者本人 | 被保険者本人 |
受取方法 | 年金形式が基本 (一括受取も可能) | 一括受取 | 一括受取 | 毎月受取が基本 | 毎月受取 |
保険金額の推移 | 時間経過で減少 (逓減型) | 一定額 (平準型) | 一定額 (平準型) | 一定額 | 実際の収入に連動 (50~70%程度) |
支払期間 | 保険期間満了まで | 1回のみ | 1回のみ | 就業不能が 継続する限り | 対象期間内 (最長1~2年が一般的) |
保険料水準 | 安い (定期保険の約60%) | やや安い | 高い (定期保険の10倍以上) | やや高い | 比較的安い |
解約返戻金 | なし(掛け捨て) | なし(掛け捨て) | あり | なし(掛け捨て) | なし(掛け捨て) |
満期保険金 | なし | なし | なし (満期がない) | なし | なし |
※各保険の詳細な条件は保険会社により異なります。加入の際は必ず各社の約款をご確認ください。
定期保険との違い
定期保険と収入保障保険は、どちらも一定期間の死亡保障を提供する掛け捨て型の保険です。定期保険では、保険期間中のいつ亡くなっても同額の保険金が一括で支払われるのに対し、収入保障保険は年金形式で受け取ることが基本となります。
保険料の面では、同じ保障額で比較すると収入保障保険のほうが安くなる傾向にあります。
ただし、まとまった資金が必要な場合には定期保険のほうが適しています。相続税の納税資金や事業承継資金など、一時的に大きな金額が必要となる目的には、定期保険を選択するほうが合理的といえるでしょう。
終身保険との違い
終身保険は保障が一生涯続く貯蓄型の保険であり、収入保障保険とは根本的に性質が異なります。老後の資金準備や相続対策としても活用できる一方、終身保険には解約返戻金があるため、保険料は収入保障保険の倍以上です。
保障の目的も異なり、万一への備え・葬儀費用の準備・相続対策など、加入者の状況に応じて異なります。一方で、収入保障保険は子育て期間中の生活費確保が主目的です。そのため、両方を組み合わせて加入することで、バランスの取れた保障設計が可能になります。
定期保険と終身保険の違いに関しては、こちらの記事もあわせてご覧ください。
就業不能保険との違い
就業不能保険は、病気やケガで働けなくなった場合に被保険者本人が給付金を受け取る保険です。収入保障保険が「死亡時の家族の生活保障」であるのに対し、就業不能保険は「生存中の本人の収入補償」という明確な違いがあります。
支払い条件も大きく異なります。就業不能保険では、医師の診断により所定の就業不能状態が一定期間継続した場合に給付金が支払われます。一方で、収入保障保険は死亡または高度障害状態が条件です。
長期療養に備えるには就業不能保険が適していますが、万が一の死亡リスクには対応できないため、両方の保険を検討することが大切です。
就業不能保険に関しては、こちらの記事もあわせて参考にしてみてください。
所得補償保険との違い
所得補償保険は損害保険会社が取り扱う商品で、就業不能保険と同様に働けなくなった際の収入減少を補償する保険です。収入保障保険とは保険の種類自体が異なり、生命保険と損害保険という違いがあります。
保険期間にも大きな違いがあり、所得補償保険は1年更新が一般的で、短期間の就業不能に対応しやすい設計となっています。一方、収入保障保険は10年以上の長期契約が基本で、保険料も契約期間中は変わりません。
給付金の計算方法も異なります。所得補償保険では実際の収入の50~70%程度が上限となりますが、収入保障保険では収入に関係なく契約時に定めた金額が支払われます。自営業者やフリーランスの方は、公的保障が手薄なため、両方の保険を組み合わせることで、死亡リスクと就業不能リスクの両方に備えることができるでしょう。
収入保障保険に魅力や加入するメリット
収入保障保険には、他の死亡保険にはない独自のメリットがあります。特に子育て世帯や住宅ローンを抱える家庭にとって、効率的に必要な保障を確保できる点が大きな魅力といえるでしょう。
ここでは、保険料の割安さから優良体割引まで、収入保障保険の4つの主要なメリットについて詳しく解説していきます。
保険料を抑えられる
収入保障保険の保険料が割安な最大の理由は、時間の経過とともに保障額が減少する逓減型の仕組みにあります。保険会社にとって支払うリスクが時間とともに減少するため、その分保険料を抑えることができるのです。
さらに、収入保障保険は掛け捨て型であることも保険料を抑える要因となっています。解約返戻金や満期保険金がないため、純粋に保障のみに特化した商品設計が可能となり、結果として保険料の削減につながっているのです。
合理的な保障設計となっている
収入保障保険の逓減型という特徴は、ライフステージの変化に応じた必要保障額の推移と合致しており、合理的な設計といえます。
子どもの成長とともに必要な教育費は減少し、住宅ローンの残債も少なくなっていくため、時間の経過とともに必要保障額が減るのは自然なことです。このように、保険金が必要保障額に合わせて最適化されるため、保険料を抑えられるのです。
計画的に資金を活用できる
収入保障保険の年金形式での受け取りは、保険金を計画的に活用できる大きなメリットとなります。一度に大きな金額を受け取ると、使い方に迷ったり、無計画に使ってしまったりする可能性がありますが、毎月定額で受け取れば家計管理がしやすくなります。
たとえば、月額15万円の保険金を受け取る場合、これを生活費の不足分に充てることで、安定した生活を維持できます。遺族年金と合わせれば、基本的な生活は維持できるでしょう。
収入保障保険のデメリットや注意点
収入保障保険には多くのメリットがある一方で、加入前に理解しておくべきデメリットも存在します。これらのデメリットを把握したうえで、自分のニーズに合っているか慎重に判断することが大切です。
ここでは、掛け捨て型であることや保障額の減少、税金の複雑さなど、収入保障保険の主なデメリットについて詳しく解説していきます。
掛け捨て型で解約返戻金はない
収入保障保険は基本的に掛け捨て型の保険であり、解約返戻金や満期保険金がありません。保険期間中に何事もなければ、支払った保険料は一切戻ってこないため、これをデメリットと感じる方も多いでしょう。
ただし、掛け捨て型だからこそ保険料が安く抑えられている点も理解しておく必要があります。同じ保障額の終身保険と比較すると、保険料は10分の1以下になることもあり、その差額を投資に回すという選択肢も検討できるでしょう。
保障額が減少する仕組み
収入保障保険の最大の特徴である逓減型の仕組みは、場合によってはデメリットにもなります。保険期間の後半になるほど受け取れる保険金総額が少なくなるため、まとまった資金が必要な場合には不向きといえるでしょう。
亡くなるタイミングが満期に近いと、支払保証期間分の金額しか受け取れない可能性もあります。このように、保険事故が発生する時期によって差が生じる点は、加入時に十分理解しておく必要があります。
税金計算の複雑さ
収入保障保険の保険金を年金形式で受け取る場合、税金の取り扱いが複雑になることもデメリットのひとつです。初年度は相続税、2年目以降は雑所得として所得税と住民税の対象となるため、確定申告が必要になるケースがあります。
雑所得は他の所得と合算されるため、所得税率が上がる可能性もあり、手取り額が想定より少なくなることも考えられます。場合によっては、慣れない確定申告の手続きが必要となる点もデメリットとして押さえておきましょう。
収入保障保険の必要性が高い人
収入保障保険は、すべての人に必要な保険ではありません。家族構成やライフステージ、職業などによって必要性は大きく異なります。自分が該当するかどうかを見極めることで、無駄な保険料を支払うことなく、適切な保障を確保できるでしょう。
子育て世帯
子育て世帯にとって収入保障保険は、効果的な保険のひとつといえます。特に子どもが小さいうちは、将来の教育費や生活費を長期間にわたって確保する必要があるため、大きな保障が求められるからです。
将来に発生する教育費に加えて、毎月の生活費も確保しなければならないため、世帯主に万が一のことがあった場合の経済的影響は計り知れません。
また、配偶者が専業主婦(主夫)の場合や、パートタイムで働いている場合は、特に保障の必要性が高くなります。
自営業・フリーランス
自営業者やフリーランスの方にとって、収入保障保険は会社員以上に重要な保険となります。会社員と違って遺族厚生年金がないため、公的保障が手薄になっているからです。
公的な保障が薄く、遺族基礎年金だけで生活費をカバーするのは現実的ではないため、民間の保険で補完することが不可欠といえるでしょう。
収入保障保険の必要性が低い人
以下に該当する方は、収入保障保険の必要性が低いといえます。
- 独身で扶養家族がいない人
- 子どもが独立した後の夫婦
- 十分な資産を保有している人
- 勤務先の福利厚生が充実している人
そもそも扶養すべき子どもがいなければ、死亡や高度障害に備える必要性は小さいでしょう。そのため、独身の方や子どもが既に独立している場合、収入保障保険は不要と考えて問題ありません。
十分な資産があれば、収入保障保険に頼らなくても生活を維持できる可能性が高いため、保険料を支払う必要性は低くなります。
また、公務員や大企業の正社員で、充実した企業保障がある場合も、収入保障保険の必要性は相対的に低くなります。死亡退職金や企業年金、遺族への継続雇用制度など、勤務先の福利厚生制度を確認したうえで、本当に追加の保障が必要かどうか判断することが重要です。
おすすめの収入保障保険
収入保障保険を選ぶ際は、各商品の特徴を理解して、自分のニーズに最も合った商品を選択することが重要です。ここでは、特徴的な3つの収入保障保険について、詳しく解説していきます。
各商品にはそれぞれ強みがあるため、保険料の安さだけでなく、保障内容や付帯サービスなども含めて総合的に判断することをおすすめします。
FWD生命「FWD収入保障」
FWD生命の「FWD収入保障」は、保険料の安さと、充実した健康割引制度が特徴的な商品です。特に非喫煙者や健康な方にとっては、魅力的な保険料設定となっています。
項目 | 内容 |
---|---|
保険会社 | FWD生命保険株式会社 |
商品の特徴 | 健康体割引により、非喫煙者・健康な方は大幅な保険料削減が可能 |
契約年齢範囲 | 20歳~70歳 |
保険期間 | 50歳~80歳満了(5歳刻み) |
支払保証期間 | 2年・5年・10年から選択可能 |
健康体割引率 | 最大約43%割引(非喫煙者優良体の場合) |
保険料区分 | 4区分(非喫煙者優良体・非喫煙者標準体・喫煙者優良体・喫煙者標準体) |
優良体基準 | ・BMI:18.0~27.0 ・血圧:最高140mmHg未満かつ最低90mmHg未満 |
主な特約・特則 | ・配偶者同時災害死亡時割増特則(保険金2倍) ・生活支援特則(就業不能保障) ・三大疾病保険料払込免除特約 |
付帯サービス | FWD健康サービス(健康相談・セカンドオピニオン・メンタルヘルスサポート) |
保険金受取方法 | 年金形式・一括受取・一部一括受取から選択可能 |
メリット | ・非喫煙者は保険料が割安になる ・充実した付帯サービス ・配偶者同時災害への手厚い保障 ・柔軟な保険金受取方法 |
デメリット | ・喫煙者には割高 ・健康体基準が厳格 ・ネット完結での申込不可 |
こんな方におすすめ | ・非喫煙者で健康に自信がある方 ・保険料を最優先で抑えたい方 ・夫婦で加入を検討している方 ・充実したサービスを求める方 |
※2025年9月現在
FWD収入保障の保険料体系は、4つの健康区分(非喫煙者優良体、非喫煙者標準体、喫煙者優良体、喫煙者標準体)に分かれています。非喫煙者かつ優良体の場合、標準体と比較して最大約43%の割引が適用されます。
保障内容も充実しており、配偶者同時災害死亡時割増特則を付加すると、夫婦が同一の不慮の事故で死亡した場合、保険金が2倍になります。交通事故などのリスクを考えると、子どものいる家庭には心強い保障といえるでしょう。
また、保険金の受取方法も柔軟で、年金形式だけでなく一括受取りや一部一括受取りも選択可能です。支払保証期間は2年、5年、10年から選べるため、ライフプランに合わせた設計ができる点も魅力です。
オリックス生命「収入保障保険Keep Up[キープ・アップ]」
オリックス生命の「収入保障保険Keep[キープ]」は、シンプルな商品設計と手頃な保険料が特徴です。複雑な特約を排除し、基本保障に特化することで、分かりやすく使いやすい商品となっています。
項目 | 内容 |
---|---|
保険会社 | オリックス生命保険株式会社 |
商品の特徴 | シンプルな商品設計と手頃な保険料、ネット完結の手続きが可能 |
契約年齢範囲 | 15歳~75歳(業界最広範囲) |
保険期間 | 年満了:10年~35年 歳満了:50歳~80歳 |
支払保証期間 | 1年・5年から選択可能 |
健康体割引 | あり(2区分:標準体・健康体) |
主な特約・特則 | ・年金月額変更特約(保障額の減額が可能) ・特定疾病保険料払込免除特則(月額約100円の追加) |
付帯サービス | オンライン医療相談サービス |
保険金受取方法 | 年金形式・一括受取から選択可能 |
メリット | ・シンプルで分かりやすい商品設計 ・ネットで申込完結が可能 ・契約年齢範囲が広い ・支払保証期間1年の選択が可能 ・保障額を途中で減額できる |
デメリット | ・健康体割引が2区分のみ ・特約の選択肢が少ない ・付帯サービスが限定的 |
こんな方におすすめ | ・シンプルな保険を求める方 ・ネットで手続きを完結したい方 ・将来的に保障額を調整したい方 |
※2025年9月現在
Keep Up[キープ・アップ]の特徴は、保険期間中に保険金の受取方法を変更できる「年金月額変更特約」です。子どもの成長に応じて保障額を減額することで、保険料負担を軽減できる仕組みとなっています。
支払保証期間を1年または5年から選択でき、短期間の設定も可能です。1年という短い設定は業界でも珍しく、保険料を極限まで抑えたい方には魅力的な選択肢となります。
さらに、「特定疾病保険料払込免除特則」を付け加えると、がん・急性心筋梗塞・脳卒中で所定の状態になった場合、以後の保険料が免除されます。保険料は月額100円程度の上乗せで付加できるため、コストパフォーマンスの高い特則といえるでしょう。
はなさく生命「はなさく収入保障」
はなさく生命の「はなさく収入保障」は、2019年に設立された新しい保険会社の商品ですが、日本生命グループの安定した基盤を持つ点が特徴です。シンプルで分かりやすい商品設計と、競争力のある保険料設定が魅力となっています。
項目 | 内容 |
---|---|
保険会社 | はなさく生命保険株式会社(日本生命グループ) |
商品の特徴 | 喫煙状況や健康状態にかかわらず一律の保険料体系、契約後の健康改善でも割引適用 |
契約年齢範囲 | 20歳~70歳 |
保険期間 | 50歳~80歳満了(5歳刻み) |
支払保証期間 | 2年・5年から選択可能 |
健康体割引 | 契約時はなし(一律料率) |
健康応援割引 | 契約2年後から適用可能(健康診断結果の提出により保険料割引) |
主な特約・特則 | ・三大疾病保険料払込免除特約(限定的) ・リビング・ニーズ特約 |
付帯サービス | 特別な付帯サービスなし(シンプルな設計) |
保険金受取方法 | 年金形式・一括受取から選択可能 |
メリット | ・喫煙者でも標準的な保険料 ・健康状態による加入時の差別なし ・契約後の健康改善が保険料に反映 ・日本生命グループの安定性 ・シンプルで分かりやすい |
デメリット | ・健康な非喫煙者には割高 ・特約の選択肢が少ない ・付帯サービスがない ・健康応援割引の適用に2年必要 |
こんな方におすすめ | ・喫煙者の方 ・健康診断で指摘事項がある方 ・加入後の健康改善を目指す方 ・シンプルな保険を求める方 ・大手グループの安心感を重視する方 |
※2025年9月現在
この商品の特徴は、喫煙状況や健康状態にかかわらず、一律の保険料体系を採用している点です。健康に不安がある方や喫煙者でも、標準的な保険料で加入できるため、幅広い層に対応できる商品といえます。
はなさく収入保障では、契約後の健康状態改善に対してインセンティブを提供する「健康応援割引」があります。契約から2年経過後に健康診断結果を提出し、所定の基準を満たすと、以後の保険料が割引される仕組みです。
はなさく収入保障は、複雑な特約を排除し、基本保障に特化したシンプルな設計となっています。これにより、保険の知識があまりない方でも理解しやすく、必要な保障を適切に選択できます。
必要保障額の計算方法
収入保障保険に加入する際、最も重要なのが適切な保障額の設定です。保障額が不足していれば家族の生活を守れませんし、過剰な保障は保険料の無駄につながります。必要保障額を正確に計算することで、効率的な保障設計が可能になるでしょう。
ここでは、生活費や遺族年金、教育費、住宅費などを考慮した必要保障額の具体的な計算方法について解説していきます。
生活費から考える保障額
必要保障額の基本となるのは、残された家族の生活費です。一般的に、世帯主が亡くなった後の生活費は、現在の生活費の70%程度になるとされています。これは、世帯主の個人的な支出がなくなることや、住居費の一部が減少することなどが理由です。
必要保障額の計算式は「(月々の必要生活費-遺族の収入)×必要年数」と「将来発生する教育費」の合計です。
教育費については、進学プランによって必要額が大きく変動します。子どもの年齢や希望する進路を考慮して、現実的な金額を設定することが重要です。また、児童手当や高等学校等就学支援金などの公的支援も考慮に入れます。
つまり、必要保障額を計算するためには、現在の家計状況を把握しなければなりません。あわせて、子どもの進学ルートをシミュレーションしておきましょう。
なお、ライフステージごとに必要な生命保険の選び方は、こちらのQ&Aをご覧ください。
遺族年金の確認方法
遺族年金は必要保障額を計算するうえで重要な要素です。受給できる金額は家族構成や加入している年金制度によって大きく異なるため、現状を踏まえて計算しましょう。
会社員の場合は遺族基礎年金と遺族厚生年金の両方を受け取れますが、自営業者は遺族基礎年金のみとなります。
遺族年金の正確な金額は、日本年金機構のウェブサイトで確認できます。また、配偶者の年齢や子どもの人数によって受給額が変わるため、家族構成の変化に応じて定期的に見直すことが大切です。
遺族年金に関しては、こちらの記事でも解説しています。あわせて参考にしてみてください。
収入保障保険の選び方
収入保障保険を選ぶ際は、保険料の安さだけでなく、保障内容や付帯サービスなど、総合的に判断することが重要です。ライフステージや家族構成に応じて最適な設計をすることで、無駄なく効果的な保障を確保できるでしょう。
ここでは、保険期間の設定から特約の選択まで、収入保障保険を選ぶ際の重要なポイントについて詳しく解説していきます。
保険期間を決める
保険期間の設定は、重要なポイントのひとつです。一般的には、末子が独立する時期や定年退職の時期に合わせて設定しますが、家族の状況によって最適な期間は異なります。
たとえば、35歳で第一子が生まれた場合、子どもが大学を卒業する22歳になるのは自分が57歳のときです。この場合、60歳満期で設定すれば、子どもの教育期間をカバーしつつ、自分の定年までの期間も保障できるため合理的といえるでしょう。
支払保証期間を確認する
支払保証期間は、保険期間の終了間際に万が一のことがあっても、一定期間の保険金支払いを保証する仕組みです。多くの商品では2年、5年、10年から選択でき、期間が長いほど保険料は高くなります。
一般的には5年の支払保証期間を選ぶケースが多く、これは葬儀費用や当面の生活費、相続税の納税資金などをカバーするのに適切な期間といえます。
月額給付金を決める
月額給付金は、遺族の生活費から遺族年金や配偶者の収入を差し引いた不足分を基準に設定します。一般的には月額10万円から20万円の範囲で設定されることが多く、15万円前後が一般的な水準です。
ただし、給付金額を高く設定しすぎると保険料負担が重くなるため、現在の家計とのバランスを考慮することが重要です。保険料が家計の負担とならないように、無理のない範囲で設定しましょう。
特約・オプションの必要性を検討する
収入保障保険には、基本保障に加えてさまざまな特約を付加できます。代表的な特約として、三大疾病収入保障特約、就業不能保障特約、介護保障特約などがあり、保障範囲を広げることが可能です。
三大疾病収入保障特約は、がん・急性心筋梗塞・脳卒中と診断された場合に、死亡時と同様の保険金が支払われる特約です。
一方で、特約を付加すると保険料は上昇するため、本当に必要な特約だけを選択することが大切です。医療保険や就業不能保険に別途加入している場合は、保障の重複を避けるためにも特約は最小限に抑えることをおすすめします。
収入保障保険の加入手続き
収入保障保険への加入を決めたら、スムーズに手続きを進めることが大切です。健康状態の告知や審査基準を理解しておくことで、加入時のトラブルを避けることができます。また、契約後の見直しや解約についても事前に把握しておきましょう。
ここでは、加入手続きの流れから契約後の注意点まで、実務的なポイントを詳しく解説していきます。
健康状態の告知方法
収入保障保険の加入時には、健康状態の告知が必要となります。告知は保険会社がリスクを判断するための重要な情報であり、正確かつ誠実に回答することが求められます。虚偽の告知をすると、保険金が支払われない可能性があるため注意が必要です。
告知項目は一般的に、過去5年以内の病歴、現在の治療状況、健康診断での指摘事項などが含まれます。
健康診断結果の提出が必要な場合もありますが、これにより優良体割引が適用される可能性があります。定期健康診断を受けている方は、最新の結果を準備しておくとスムーズに手続きを進められるでしょう。
審査基準と注意点
保険会社の審査は、告知内容と申込金額をもとに行われます。
持病がある方でも、症状が安定していれば「条件付き承諾」として加入できる場合があります。特定部位不担保や保険料の割増などの条件が付くことがありますが、まったく加入できないわけではないため、まずは相談してみることをおすすめします。
契約後の見直し時期
収入保障保険は長期間の契約となるため、ライフステージの変化に応じて定期的な見直しが必要です。特に、子どもの誕生、住宅購入、転職などの大きなライフイベントがあった際は、保障内容が適切かどうか確認しましょう。
見直しの目安として、3年に1回程度のペースで保障内容をチェックすることをおすすめします。
保険料の払込みが厳しくなった場合は、保障額の減額や払済保険への変更なども検討できます。ただし、一度減額した保障を元に戻すことは困難なため、慎重に判断する必要があるでしょう。
生命保険を見直すタイミングに関しては、こちらのQ&Aも参考にしてみてください。
解約時の注意事項
収入保障保険は掛け捨て型のため、解約しても解約返戻金はほとんどありません。保険料の支払いが困難になった場合でも、すぐに解約するのではなく、他の選択肢を検討することが重要です。
まず検討すべきは「払済保険」への変更です。これは保険料の支払いを中止し、その時点での解約返戻金をもとに保障を継続する方法ですが、収入保障保険では解約返戻金がないため、この選択肢は使えないことがほとんどです。
この記事のまとめ
収入保障保険は、残された家族の生活を守るための合理的な保険商品です。保険期間の経過とともに保障額が減少する仕組みにより、必要な時期に必要な保障を、割安な保険料で確保できることが特徴です。
収入保障保険が特に必要となるのは、子育て世帯や自営業・フリーランスの方です。公的保障だけでは不足する部分を効率的にカバーできるため、家族の生活を守る重要な手段となります。
保険は一度加入したら終わりではありません。収入保障保険は、ライフステージに合わせて保障額が減少する仕組みにより、効率的かつ割安に必要な保障を確保できる保険です。必要に応じて専門家とも相談し、収入保障保険の必要性を判断してください。

金融系ライター
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1,000記事以上の執筆実績あり。
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1,000記事以上の執筆実績あり。
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収入保障保険
収入保障保険とは、契約者が死亡または高度障害になった場合に、遺された家族が毎月一定額の保険金を受け取れる生命保険の一種です保険金は一括ではなく、年金のように月々の定額支給という形で受け取るため、日々の生活費や教育費など、継続的な支出に備えるのに適した保険です。 この保険の特徴は、契約期間が経過するごとに受け取れる総額(=支給期間)が短くなるため、保険料が比較的割安に設定されていることです。必要な保障額を効率よく確保できることから、特に子育て中の家庭や、一家の収入を支える人に万が一があった場合のリスクに備えたい方に人気があります。
所得補償保険
所得補償保険とは、病気やケガによって働けなくなった場合に、就労不能期間中の収入の一部を補償するための保険です。たとえば、会社員が入院して長期間仕事を休むことになった際、その間の給与が減ったり支払われなくなったりするリスクに備えて、保険金が支払われる仕組みになっています。 生活費や住宅ローン、教育費など、働けなくなっても継続的に必要となる支出を支える役割があり、特に自営業者やフリーランスのように公的な補償が薄い立場の人にとって重要な保障手段です。公的医療保険ではカバーしきれない「収入の途絶」に備えることで、生活の安定を支える保険のひとつとして活用されています。
終身保険
終身保険とは、被保険者が亡くなるまで一生涯にわたって保障が続く生命保険のことです。契約が有効である限り、いつ亡くなっても保険金が支払われる点が大きな特徴です。また、長く契約を続けることで、解約した際に戻ってくるお金である「解約返戻金」も一定程度蓄積されるため、保障と同時に資産形成の手段としても利用されます。 保険料は一定期間で払い終えるものや、生涯支払い続けるものなど、契約によってさまざまです。遺族への経済的保障を目的に契約されることが多く、老後の資金準備や相続対策としても活用されます。途中で解約すると、払い込んだ金額よりも少ない返戻金しか戻らないこともあるため、長期の視点で加入することが前提となる保険です。
解約返戻金
解約返戻金とは、生命保険などの保険契約を途中で解約したときに、契約者が受け取ることができる払い戻し金のことをいいます。これは、これまでに支払ってきた保険料の一部が積み立てられていたものから、保険会社の手数料や運用実績などを差し引いた金額です。 契約からの経過年数が短いうちに解約すると、解約返戻金が少なかったり、まったく戻らなかったりすることもあるため、注意が必要です。一方で、長期間契約を続けた場合には、返戻金が支払った保険料を上回ることもあり、貯蓄性のある保険商品として活用されることもあります。資産運用やライフプランを考えるうえで、保険の解約によって現金化できる金額がいくらになるかを把握しておくことはとても大切です。
逓減定期保険
逓減定期保険とは、保険期間の経過に応じて保険金額が段階的に減っていくタイプの定期保険です。つまり、契約当初は高めの保障額が設定されていても、時間の経過とともにその保障額が少しずつ減っていく仕組みになっています。 これは、家計の責任が時間とともに減っていくという考え方に基づいています。たとえば、子どもの教育費や住宅ローンの残高が年々減少していくようなケースに合わせて、必要保障額を効率的に準備することができます。 また、保障額が逓減する分、同じ定期保険でも保険料を比較的抑えることができる点も特徴です。資産運用というよりは、家計のリスク管理に役立つ保険で、必要な時期に無駄のない保障を確保したい初心者にとっても利用しやすい商品です。
定期保険
定期保険とは、あらかじめ決められた一定の期間だけ保障が受けられる生命保険のことです。たとえば10年や20年といった契約期間のあいだに万が一のことがあれば、保険金が支払われますが、その期間を過ぎると保障はなくなります。保障期間が限定されているため、保険料は比較的安く設定されています。特に子育て世代や住宅ローンを抱えている方など、特定の期間だけ万が一の保障を重視したい場合に適しています。貯蓄性はなく、純粋に「保障のための保険」である点が特徴です。
満期保険金
満期保険金とは、保険契約で定められた期間が終了したときに、契約者や被保険者に支払われるお金のことをいいます。たとえば、10年や20年などの一定期間保険料を払い続け、満期になったときにその保険が「満了」すると、あらかじめ決められた金額が支払われます。 このお金は、死亡や病気などのリスクに備えるだけでなく、貯蓄のように将来の資金づくりにも役立つという特徴があります。特に学資保険や養老保険などでよく使われる仕組みです。
団体信用生命保険(団信)
団体信用生命保険とは、住宅ローンを組んだ人が亡くなったり高度障害になったりした場合に、その時点のローン残高が保険金で返済される保険です。多くの場合、住宅ローンを借りる際に金融機関が加入を条件とすることがあり、略して「団信(だんしん)」とも呼ばれます。 この保険に加入しておけば、万が一のことがあった際に遺族がローンを引き継ぐ必要がなくなり、家に住み続けることができるため、大きな安心材料になります。保障の範囲は、死亡や高度障害に限らず、がんや三大疾病、就業不能までカバーするタイプもあり、ライフスタイルに応じて選ぶことができます。
優良体割引
優良体割引とは、生命保険に加入する際に、健康状態が特に良好な人や生活習慣に問題がない人に対して、保険料を通常よりも割引して提供する仕組みのことです。 たとえば、喫煙をしていない、血圧やコレステロールの値が基準内である、肥満でないなどの条件を満たすと、保険会社から「優良体」とみなされます。このような人は将来的に病気になるリスクが低いため、保険会社としても支払いの可能性が少なく、保険料を安くできるのです。 これは、保険を資産運用の一環として考える際に、長期的な支出を抑える手段として重要なポイントになります。
相続税
相続税とは、人が亡くなった際に、その人の財産を配偶者や子どもなどの相続人が受け継いだときに課される税金です。対象となる財産には、預貯金や不動産、株式、貴金属、事業用資産などが含まれ、相続財産の合計額が一定の基準額を超えると課税対象となります。 相続税には、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算される基礎控除があり、この範囲内であれば原則として税金はかかりません。しかし、資産規模が大きい場合や相続人の数が少ない場合には、課税対象となり、10%〜55%の累進税率が適用されます。 さらに、相続税にはさまざまな非課税枠や控除制度が設けられており、これらを適切に活用することで税負担を抑えることが可能です。代表的な制度には以下のようなものがあります。 - 生命保険金の非課税枠:法定相続人1人あたり500万円まで非課税 - 死亡退職金の非課税枠:生命保険と同様に1人あたり500万円まで非課税 - 債務控除:被相続人に借入金などの債務があった場合、その金額を控除可能 - 葬式費用の控除:通夜・葬儀などにかかった費用は、相続財産から差し引くことができる また、配偶者には配偶者の税額軽減(1億6,000万円または法定相続分まで非課税)が認められており、適切に遺産分割を行えば、税額を大幅に減らすことができます。 相続税は、財産の種類や分割の仕方、受け取る人の立場によって税額が大きく変動するため、生前からの対策が非常に重要です。生命保険や不動産の活用、資産の組み替えなどを通じて、相続税評価額をコントロールすることが、家族への負担を減らし、スムーズな資産承継を実現するための鍵となります。
非課税枠
非課税枠とは、税金が課されない金額の上限を指し、様々な税制に適用される制度。 例えば相続税では基礎控除額として「3,000万円+600万円×法定相続人数」が非課税枠となる。贈与税では年間110万円までの贈与が非課税。また、NISA(少額投資非課税制度)では年間の投資上限額に対する運用益が非課税となる。 このような非課税枠は、税負担の軽減や特定の政策目的(資産形成促進など)のために設定されており、納税者にとって税金対策の重要な要素となっている。
特約(がん団信・三大疾病保障・全疾病保障 など)
特約とは、住宅ローンに付帯する団体信用生命保険(団信)に追加できる保障のことを指します。基本の死亡保障だけではカバーしきれない病気やケガ、就業不能などのリスクに対応するために設けられており、住宅ローン返済が困難になる事態に備える役割を果たします。 代表的なものとして、がんと診断されると残高が免除される「がん団信」、がん・急性心筋梗塞・脳卒中のいずれかで所定の状態に該当した場合に保障される「三大疾病保障」、さらに病気やケガによる就業不能もカバーする「全疾病保障」があります。ほかにも、介護状態に認定された場合の「介護保障」、共働き世帯向けにどちらか一方に万一があった場合も返済を免除する「夫婦連生型」、健康状態に不安がある人でも加入しやすい「ワイド団信」、一定の条件で返済を支援する「失業特約」など、種類は多岐にわたります。 これらの特約は安心感を高める一方で、加入すると住宅ローン金利に0.1〜0.3%程度の上乗せが発生することが一般的です。例えば4,000万円を35年返済する場合、上乗せ金利によって総支払額が100万円以上変わることもあり、保障内容とコストのバランスを慎重に考える必要があります。 また、特約には「診断された時点で保障されるのか」「一定期間の就業不能が条件なのか」など、支払い事由の定義が商品ごとに異なります。対象外となる疾病や免責期間、就業不能の範囲などをよく確認しないと、想定通りの保障を受けられないこともあります。そのため、既に加入している生命保険や医療保険、所得補償保険などとの重複を整理し、不足している部分を補う観点で検討するのが効果的です。 特に資産形成の初期段階ではローン残高が大きく、純資産が十分でないため手厚い保障が有効ですが、ローン残高より資産が多くなった段階では必要性が下がり、特約を減らす判断も合理的です。特約は「住宅ローンという大きな負債に伴うリスクをどうカバーするか」という観点で位置づけ、資産運用計画全体の安全性と効率性を高めるために選択するものといえます。
雑所得
雑所得(ざつしょとく)とは、所得税法において定められた10種類の所得のうち、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得、一時所得のいずれにも該当しない所得を指します。具体的には、公的年金や副業による収入、仮想通貨の売却益、FXの利益、非営業用貸金の利子などが該当します。 経費を差し引いた金額が課税対象となり、総合課税の対象となります。また、雑所得が年間20万円を超える場合、確定申告が必要になります。
払済保険
払済保険とは、もともと契約していた保険の保険料の支払いを途中でやめ、その時点までに払い込んだ保険料を使って、以後の支払いをせずに保障だけを継続する保険のことです。たとえば、終身保険などで使われることが多く、保険料を支払うのが難しくなった場合などに選ばれる方法です。 保障額は元の契約よりも小さくなりますが、保険契約を完全に解約するのではなく、一定の保障を残すことができる点が特徴です。資産運用の観点では、解約返戻金を有効に活用しながら保障を維持する手段として理解しておくと役立ちます。
支払保証期間
支払保証期間とは、年金保険や個人年金商品などにおいて、受取人が亡くなったとしても、あらかじめ定められた期間中は年金が遺族などに支払われ続けることを保証する期間のことです。たとえば「10年保証」の年金であれば、年金の受取を開始してから10年以内に本人が亡くなった場合でも、残りの期間については遺族が年金を受け取ることができます。 この考え方は「収入保障保険」においても重要です。収入保障保険は、被保険者が亡くなったときに、残された家族へ毎月一定額の生活費を一定期間にわたって支払う保険ですが、多くのタイプには「最低〇年は支払う」といった支払保証期間が設定されていることがあります。 たとえば、保険期間の残りが2年であっても、「5年保証」の条件があれば、遺族には5年間分の給付が支払われるという形になります。これにより、万が一の際でも家族が生活設計を立てやすくなり、資産・生活の防衛に役立つ保障になります。
特定部位不担保
特定部位不担保とは、医療保険や生命保険に加入する際に、過去に治療歴のある臓器や部位について、一定期間または契約期間中ずっと保障の対象外とする取り決めを指します。たとえば、過去に膝を手術したことがある人が保険に加入する場合、その膝に関する入院や手術は給付の対象外となる、といった条件が付けられることがあります。これは、保険会社がすでにリスクが高いと判断された部位に対する将来的な支払い負担を避けるための仕組みです。 一方で、特定部位不担保という条件が設けられることで、本来なら「既往歴があるため加入できない」と判断される可能性があった人でも、保険に加入できる道が開けるという側面があります。つまり、保障範囲を一部制限する代わりに、その他の部位や病気については通常通りの保障を受けられるため、全く加入できないよりも安心感が得られる仕組みなのです。 実際には、がんや心疾患といった大きなリスク部位が不担保とされる場合もあれば、軽度な既往歴に基づいて限定的に設定される場合もあります。契約時には、不担保の範囲や期間を確認し、自分にとってどの程度実用的な保障になるのかを判断することが大切です。不担保を受け入れてでも広い範囲で保障を確保するのか、あるいは別の商品を検討するのか、選択の基準になります。