
年代別のライフイベントや備えるべきリスクとは?世帯類型別に適した保険やよくある誤解も解説
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公開:
2025.10.07
更新:
2025.10.10
人生100年時代といわれる現代において、年代ごとに異なるライフプランの悩みを抱えている方は多いのではないでしょうか。20代の将来への漠然とした不安から、60代の老後資金の現実的な課題まで、各年代で直面する問題は大きく異なります。
本記事では、20代から60代まで、それぞれの年代が抱える特有の悩みと、その解決に向けた保険活用を含む対策を詳しく解説していきます。想定されるライフイベントからあなたの年代に合った最適な選択ができるよう、具体的な数字とともにお伝えします。
サクッとわかる!簡単要約
本記事を読むことで、各年代のライフイベントに必要な費用や直面するリスクを体系的に理解できます。結婚や子ども一人の教育費、老後の生活費といった具体的数値を把握できます。さらに独身世帯やDINKs、ひとり親など世帯類型ごとの適切な保険選びやよくある誤解も整理。読み終える頃には、自分にとって無駄のない保障と備えの形が見え、将来に向けた資産設計に自信を持てるようになります。
目次
【一覧表】主なライフイベントにかかる費用の目安
日本FP協会によると、主なライフイベントにかかる費用の目安は以下のとおりです。
ライフイベント | 費用の目安 | 詳細 |
---|---|---|
就職活動 | 約8万円 | リクルートスーツ代、交通費、宿泊費など |
結婚 | 約327万円 | 挙式、披露宴・ウエディングパーティー総額(全国推計値) |
出産 | 約48万円 | 全施設出産費用の総額(入院料・分娩料・検査・薬剤料・処置等) |
教育 | 約1,097万円 | 子ども1人あたりの総額(幼稚園から高校まで公立、大学のみ私立の場合) |
住宅購入 | 約3,719万円~(マンションは約4,848万円) | 住宅の平均購入価格 |
老後生活費(月額) | 約27万円/月 | 65歳以上夫婦のみの無職世帯の支出 |
介護費用(月額) | 約18万円/月 | 介護保険受給者1人あたりの使用額。 (保険給付額、公費負担額及び利用者負担額の合計額) |
緊急資金 | 約60万円 | 病気やケガで働けなくなったときや急なリストラにあったときなど、緊急時のための備え |
上表はあくまでも目安であり、最終的な支出額には個人差があります。あくまでも目安として捉えておくとよいでしょう。
なお、昨今はさまざまなモノやサービスの価格が上昇しているため、将来的には必要な金額が増える可能性があります。インフレも見越したうえで、ライフイベントに備えた資産形成を進めることが大切です。
20代の主なライフイベント例とリスク
20代は社会人としてのスタートを切ったばかりで、収入も少なく将来への不安を抱えやすい時期といえます。
この年代では、まず緊急資金を確保することが最優先となります。その後、結婚や住宅購入などの将来のライフイベントに向けた準備を始めることが重要になってくるでしょう。保険については必要最小限にとどめ、貯蓄を優先させる戦略が基本となります。
20代の主なライフイベント
20代は人生の基盤を築く重要な時期で、多くの「初めて」を経験する年代です。社会人デビューから始まり、経済的自立や結婚など、人生を左右する大きな選択が集中します。
就職・転職は20代前半の主なライフイベントです。昨今は転職も活発で、キャリアの方向性を模索しながら、収入アップを目指す重要な時期といえるでしょう。
一人暮らしの開始も大きな転機となります。家賃、光熱費、食費など、すべてを自分で管理する必要があり、月15万円程度の生活費が必要になります。実家暮らしと比べて年間100万円以上の支出増となるため、家計管理能力が試される時期です。
保険よりも貯蓄優先
基本的には、まず生活費の3~6か月分の緊急資金を確保することを優先すべきでしょう。その後、必要最小限の医療保険に加入し、残りは将来のための貯蓄に回すという順序が理想的といえます。
この緊急資金は、すぐに引き出せる普通預金や定期預金で管理することが大切です。投資に回すのは、この緊急資金を確保してからにしましょう。緊急資金があることで、精神的な安定も得られ、長期的な資産形成にも取り組みやすくなります。
結婚準備の資金
ゼクシィの調査によると、結婚費用は約327万円、新婚旅行を含めると400万円を超えます。ご祝儀で半分程度は賄えるものの、200万円程度の自己資金が必要となるケースが一般的です。
また、新生活の準備には家具や家電の購入費用として50~100万円程度かかることも考慮する必要があります。計画的な貯蓄なしには、理想の結婚生活をスタートさせることは難しいでしょう。
結婚を機に、ライフプランを本格的に考え始める必要があります。子どもの人数や教育方針、住宅購入の時期など、大きな支出を伴うイベントについて話し合っておきましょう。
20代におすすめの保険
20代は保険料を抑えて加入できる時期ですが、収入が限られているため、必要最小限の保障に絞ることが重要です。この年代では、貯蓄を優先しながら、最低限のリスクに備える保険選びが基本となります。
共済保険は、20代に最適な選択肢の一つといえるでしょう。都道府県民共済や全労済(こくみん共済)なら、月額2,000円程度で入院日額5,000円、死亡保障200万円程度の基本的な保障が得られます。営利を目的としない組織が運営しているため、決算後に割戻金が戻ってくる点も魅力です。
定期型の医療保険も検討に値します。20代なら月額1,000円前後で、入院日額5,000円の保障が得られる商品もあります。10年更新型なら、収入が増えてから保障を充実させることも可能です。
収入保障保険も検討する価値があります。月額2,000円程度で、万が一の際に毎月10万円を遺族に残せる保障が得られます。死亡保障額が年々減少していく仕組みのため、一般的な定期保険より保険料が安く設定されているのが特徴です。
都道府県民共済に関しては、こちらの記事でも解説しています。あわせて参考にしてみてください。
30代の主なライフイベント例とリスク
30代は結婚や出産、住宅購入など、人生の大きなライフイベントが集中する時期です。
この年代では、子育てにかかる費用と住宅ローンの返済という二大支出をどう管理するかが最大の課題となるでしょう。また、共働き世帯が増えるなか、世帯収入は増加する一方で、保育料などの新たな支出も発生し、家計管理の複雑さが増していきます。
30代の主なライフイベント
30代は家族形成期として、人生で変化の激しい10年間となる可能性があります。結婚、出産、住宅購入という三大イベントが集中し、ライフスタイルが大きく変りやすい時期です。
出産・子育ての開始は30代の最重要イベントです。第一子出生時の母親の平均年齢は30.7歳で、出産費用は約48万円、その後の育児費用もかかります。保育園の待機児童問題や、仕事と育児の両立など、新たな課題にも直面することになります。
第二子・第三子の誕生も30代に多く、教育費の負担が急増します。兄弟間の年齢差によっては、保育料と習い事代で月10万円を超えることもあり、計画的な家計管理が不可欠となるでしょう。
住宅購入も30代に集中します。住宅を購入する場合、頭金として数百万円、その後35年間の住宅ローン返済が家計に大きな影響を与えます。
子育て初期の課題
第一子の出産から小学校入学までの期間は、保育料や育児用品など、想像以上に支出がかさむ時期となります。内閣府の調査によると、0歳から3歳までの年間子育て費用は約100万円にのぼり、家計への影響は決して小さくありません。
さらに、育児休業中の収入減少も考慮する必要があります。育児休業給付金は最初の180日間は賃金の67%、それ以降は50%となるため、世帯収入が大きく減少することを前提とした家計設計が不可欠です。
育児中の給付金制度については、こちらの記事もあわせてご覧ください。
教育費の見通し
文部科学省の調査によると、幼稚園から高校までの学習費総額は以下のとおりでした。
学校種別 | 区分 | 令和5年度 学習費総額 |
---|---|---|
幼稚園 | 公立 | 18万4,646円 |
私立 | 34万7,338円 | |
小学校 | 公立 | 33万6,265円 |
私立 | 182万8,112円 | |
中学校 | 公立 | 54万2,475円 |
私立 | 156万359円 | |
高等学校(全日制) | 公立 | 59万7,752円 |
私立 | 103万283円 |
出典:文部科学省「令和5年度子供の学習費調査の結果を公表します」
大学進学を含めると、場合によっては子ども一人あたり1,000万円以上の教育費が必要となる計算です。
教育資金の準備は、児童手当(月額1万5,000円または1万円)を全額貯蓄に回すことから始めましょう。これだけで中学卒業までに約200万円の貯蓄が可能になります。さらに学資保険やNISAなどを活用して、計画的に準備を進めることが重要です。
住宅購入の判断
国土交通省の「令和6度住宅市場動向調査によると、初めて住宅を購入する人の平均年齢は40.3歳、注文住宅の平均購入価格は5,876万円となっています。頭金は購入価格の1〜2割が理想とされ、500~600万円程度の自己資金が必要になります。
ただし、分譲戸建住宅や分譲マンションなど、購入する不動産に応じて価格は異なります。また、地域によっても差があるため、どのような住まいを実現したいのかによって必要な予算が異なる点に留意してください。
住宅ローンの返済額は、年収の25%以内に抑えることが健全な家計運営の目安とされています。年収600万円なら年間150万円、月々12.5万円程度が上限となるでしょう。
住宅ローンと教育費という二大支出を両立させるには、綿密な資金計画が必要です。住宅ローンの返済期間中に教育費のピークが重なる場合、月々の支出が家計を圧迫する可能性があります。
30代におすすめの保険
30代は家族構成の変化により、保険ニーズが大きく変わる時期です。子どもの誕生や住宅購入など、守るべきものが増えるため、保障の充実と家計のバランスを考えた保険選びが必要になります。
共働き世帯では、どちらかに万が一のことがあっても、もう一方の収入で最低限の生活は維持できる場合が多くなっています。しかし、住宅ローンや教育費を考慮すると、収入保障保険の必要性は依然として高いといえるでしょう。
子どもが独立するまでの期間限定で手厚い保障が得られ、保険料も定期保険より割安です。非喫煙者割引がある商品を選べば、さらに保険料を抑えることができるでしょう。
学資保険は、教育資金の準備として30代前半までに加入したい保険です。月額1万円程度の保険料で、18歳満期時に200万円程度の満期金が受け取れます。返戻率は100〜105%程度と低金利時代でも元本割れしにくく、契約者に万が一のことがあった場合は以後の保険料が免除される点も魅力です。
終身型の医療保険への切り替えも、30代で検討すべきでしょう。月額3,000円前後で、入院日額5,000円、手術給付金10万円程度の保障が一生涯続きます。先進医療特約を付加しても月額100円程度の追加で済み、将来の医療費不安に備えることができます。
学資保険や収入保障保険に関しては、こちらの記事も参考にしてみてください。
40代の主なライフイベント例とリスク
40代は教育費がかかる時期と重なり、家計が厳しくなりやすい年代といえます。家族の生活上の問題や収入や資産の見通しに関して、不安を感じやすい特徴があります。
40代の主なライフイベント
40代は家族の成長と自身のキャリアピーク、そして親の高齢化が重なる複雑な時期です。経済的には最も充実する一方で、支出も最大となる年代といえます。
この時期は、子どもの大学進学費用、自身の健康問題、親の介護という三重苦に直面する可能性があります。平均年収はピークに近づきますが、支出もピークを迎えるため、効率的な家計管理と将来への備えのバランスが重要になってきます。
子どもの進学ラッシュは40代の家計を直撃します。中学受験から大学受験まで、塾代だけで年間100万円を超えることも珍しくありません。複数の子どもがいる場合は年間300万円以上の教育費が必要になることもあります。
親の介護開始も40代後半から現実的な問題となります。介護離職による収入減が発生すると、経済的影響は深刻です。
住宅ローンの返済ピークも40代に訪れます。子どもの教育費と住宅ローンで、月々の固定費が30万円を超える世帯も少なくありません。繰り上げ返済を検討する一方で、教育資金との兼ね合いに悩む時期でもあります。
健康リスク増大
40代になると、がんや心疾患などの重大疾病のリスクが急激に上昇します。国立がん研究センターのデータによると、40代はがん罹患率が上昇に転じる傾向にあります。
健康診断の結果も悪化傾向を示し、高血圧や糖尿病などの生活習慣病の治療を始める人も増えてきます。医療費の増加と収入減少のリスクに、本格的に備える必要がある年代といえるでしょう。
がんなどの重大疾病にかかった場合、治療と仕事の両立が大きな課題となります診断後に退職や廃業を余儀なくされると、収入への影響は深刻です。
治療期間中も住宅ローンや教育費の支払いは続くため、就業不能保険やがん保険の必要性が高まります。特に、自営業者やフリーランスの方は、傷病手当金がないため、より手厚い備えが必要になってきます。
親の介護準備
生命保険文化センターの調査によると、介護費用は平均で一時費用が約47万円、毎月の費用が約9万円、介護期間の平均が4年7か月であり、合計するとおよそ540万円の費用がかかります。
仕事と介護の両立は想像以上に困難で、介護離職に追い込まれるケースも少なくありません。事前の準備と家族での話し合いが、介護問題を乗り切る鍵となるでしょう。
必要な介護費用に関しては、こちらのQ&Aも参考にしてみてください。
40代におすすめの保険
40代は健康リスクが急上昇する時期であり、保険の必要性が高まる年代です。一方で教育費負担も重いため、効率的な保障設計が求められます。この時期の保険選びは、将来の見直しも視野に入れた戦略的な判断が重要です。
がん保険は、40代で優先的に検討すべき保険です。診断給付金100万円、通院日額1万円のタイプなら、月額4,000〜5,000円程度で加入できます。最近のがん治療は通院が中心となっているため、通院保障が充実した商品を選ぶことが重要です。複数回給付型なら、再発や転移にも対応できるため安心感が高まります。
就業不能保険は、40代の働き盛りの方にとって必要性が大きい保険です。月額5,000円前後で、月額20万円の給付を60歳まで受け取れる設計が一般的です。精神疾患も保障対象となる商品を選べば、ストレスが多い40代のメンタルヘルスリスクにも対応できます。
がん保険や就業不能保険に関しては、こちらの記事も参考にしてみてください。
50代の主なライフイベント例とリスク
50代は定年退職が現実的に見えてくる一方で、老後資金の準備が十分でないことに焦りを感じる年代です。
この時期は、役職定年による収入減、子どもの独立、住宅ローンの完済時期など、家計に大きな変化が訪れます。
50代の主なライフイベント
50代は子どもの独立と定年退職への準備、親の本格的な介護など、ライフステージの大きな転換を迎える時期です。
子どもの就職・独立は50代前半の大きな節目です。大学卒業と同時に経済的自立を果たし、教育費負担から解放されます。一方で、就職活動の支援や、独立時の援助など、最後の大きな出費も発生します。
子どもの結婚・孫の誕生も50代に集中します。結婚式の援助金や新居の準備金なども含めると、予想外の出費となることもあります。孫の誕生は喜ばしい反面、育児支援や教育資金の援助など、新たな役割も生まれます。
定年退職・再雇用は50代後半から60歳にかけての最大のイベントです。退職金は住宅ローンの完済や老後資金として、使い道の計画が重要になります。再雇用では年収が半減することも多く、生活水準の見直しが必要です。
親の本格的な介護・看取りも50代の重要な課題です。施設入居となれば入居一時金で数百万円、月額費用20万円以上かかることもあります。相続の準備や、実家の処分など、精神的・経済的負担が重なる時期となります。
退職準備の本格化
多くの企業で導入されている役職定年制度により、55歳前後で管理職を解かれ、年収が3〜4割減少するケースが増えています。さらに60歳の定年後は、再雇用されても年収200〜400万円程度になることが一般的です。
この「収入の崖」に備えて、50代のうちに生活水準のダウンサイジングを進めることが重要になってきます。退職金の平均額も大卒で約2,000万円まで減少しており、計画的な準備なしには老後の生活が成り立たない可能性があります。
日本経済団体連合会の調査によると、55歳の役職定年で年収が平均32%減少し、60歳の定年後の再雇用では年収が50〜60%まで下がることが一般的です。年収700万円だった方が、役職定年で480万円、再雇用で350万円になるイメージです。
この収入減に対応するため、50代前半のうちから支出を見直し、減少後の収入でも生活できる家計体質に改善しておく必要があります。特に、趣味や交際費などの変動費を段階的に削減していくことが効果的でしょう。
子の独立
子どもが社会人となり独立することで、教育費の負担から解放される一方、扶養控除がなくなることで税負担が増加します。また、子どもの結婚資金の援助など、新たな支出も発生する可能性があります。
子どもが独立したら、高額な死亡保障は不要になります。例えば、3,000万円の死亡保険に加入していた場合、葬儀費用と配偶者の生活費を考慮して500万円程度まで減額できる可能性があります。
保険料の削減額は月1〜2万円になることも多く、その分を老後資金の積み立てに回すことができます。ただし、医療保険やがん保険は、年齢とともにリスクが高まるため、継続または充実させることを検討しましょう。
住まい戦略の見直し
住宅ローンの完済時期が近づく50代は、繰り上げ返済を実行するか、老後資金として温存するかの判断が必要になります。また、子どもの独立により広い家が不要になることから、住み替えを検討する人も増えています。
住宅ローンの繰り上げ返済は、支払利息の軽減効果がある一方で、手元資金が減少するデメリットもあります。現在の低金利環境では、繰り上げ返済の効果は限定的で、むしろ手元に現金を残しておくほうが有利な場合もあるでしょう。
持ち家の場合でも、固定資産税や修繕費、管理費などで年間30〜50万円程度の住居費が発生します。築30年を超える住宅では、大規模修繕が必要になることも多く、200〜300万円の出費を覚悟する必要があるでしょう。
50代におすすめの保険
50代は保険の整理と老後準備を同時に進める時期です。子どもの独立により高額な死亡保障は不要になる一方、自身の健康リスクは高まるため、保障内容の最適化が重要になります。
医療保険の終身型への移行は、50代のうちに完了させたい課題です。更新型の医療保険は60歳以降急激に保険料が上昇するため、月額5,000〜7,000円程度で一生涯保障が続く終身型に切り替えることをおすすめします。入院日額は5,000円程度で十分ですが、がん診断特約や三大疾病特約を付加することで、重大疾病への備えを強化できます。
個人年金保険は、50代前半までに加入を検討したい保険です。月額2万円を10年間払い込み、65歳から10年確定年金を受け取るプランなら、年金額を月2万円程度上乗せできます。所得控除も受けられるため、節税効果も期待できるでしょう。
変額保険は、退職金の運用先として50代に適した選択肢です。一時払い500万円で、死亡保障を確保しながら資産運用ができます。運用成績によっては元本を上回るリターンも期待でき、相続対策としても活用できます。ただし、元本割れリスクもあるため、余裕資金での加入が前提となります。
認知症保険は、50代後半から検討価値が高まる新しいタイプの保険です。認知症と診断されたら一時金200万円が支給される商品なら、月額2,000〜3,000円程度で加入できます。介護費用だけでなく、成年後見制度の利用費用などにも充てることができ、家族の負担軽減につながります。
個人年金保険や変額保険について詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてみてください。
60代以降の主なライフイベント例とリスク
60代は定年退職を迎え、年金生活がスタートする人生の大きな転換期です。
年金だけでは生活費が不足する場合、毎月の赤字を貯蓄や資産所得から補填する生活が始まります。
60代以降の主なライフイベント
60代はセカンドライフの始まりとして、仕事からの引退と年金生活への移行、健康管理と相続準備など、人生の最終章に向けた重要な時期です。
完全退職・年金生活の開始は65歳が一般的です。厚生年金の平均受給額は月約14.6万円、夫婦で約22~23万円となりますが、生活費との差額を貯蓄から補填する生活が始まります。
年金の繰り下げ受給を選択すれば、70歳で42%、75歳で84%増額されるため、健康状態と相談しながらの判断が必要です。
健康問題の顕在化も60代の特徴です。がん、心疾患、脳血管疾患などの罹患率が急上昇し、医療費は全世代平均の3倍になります。定期的な健康診断と早期発見・早期治療が、健康寿命を延ばす鍵となるでしょう。
相続準備・終活の本格化も60代から始めるべきライフイベントです。遺言書の作成、財産目録の整理、生前贈与の実行など、計画的な準備が必要です。エンディングノートの作成や、葬儀の生前契約など、家族の負担を軽減する準備も重要になってきます。
年金受給の開始
公的年金の受給開始は原則65歳からですが、60歳から70歳(2022年4月以降は75歳)の間で選択できます。
総務省の資料によると、夫婦2人の標準的な年金額は月額約22~23万円ですが、実際の生活費は約27~28万円かかります。赤字分をカバーするために、繰り下げ受給により年金額を増やすか、働いて収入を得るか、貯蓄を計画的に取り崩すか、慎重な判断が必要です。
定年後は、交際費や被服費などを削減できる一方、医療費は増加傾向にあります。年金収入に合わせて生活水準を調整し、特別支出用の予備費も確保しておくことが、安定した老後生活の基盤となるでしょう。
年金の繰上げ受給や繰下げ受給に関しては、こちらの記事も参考にしてみてください。
医療と介護負担
60代になると医療費が急増し、厚生労働省のデータでは65歳以上の一人あたり医療費は年間約75万円と、全世代平均の約3倍になっています。さらに、75歳を超えると介護が必要になる確率が急上昇し、新たな経済的負担が発生します。
高額療養費制度により自己負担は軽減されますが、差額ベッド代や先進医療費など、保険適用外の費用も考慮する必要があります。介護についても、要介護度によっては月10万円以上の自己負担が発生することもあるでしょう。
70歳以上の医療費自己負担割合は、一般所得者で2割、現役並み所得者で3割となっています。
介護保険の自己負担は原則1割ですが、所得により2〜3割になることもあります。在宅介護の平均費用は月約5万円、施設介護では月15〜30万円程度かかることを想定し、予備資金を確保しておく必要があるでしょう。
相続対策の実行
相続税の基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人数」となっており、配偶者と子ども2人なら4,800万円まで非課税です。国税庁のデータでは、相続税の課税対象となるのは全体の約8.8%ですが、都市部では不動産価格の上昇により課税対象となるケースが増えています。
相続対策は、節税だけでなく、遺産分割でもめないための準備も重要です。特に、自宅不動産が資産の大部分を占める場合、分割方法で相続人同士がトラブルになることも少なくありません。
円滑な遺産分割のためには、財産目録を作成し、誰に何を相続させるかを明確にしておくことが大切です。預貯金、不動産、有価証券、生命保険など、すべての資産を把握し、定期的に更新することで、相続人の負担を軽減できます。
相続税対策として、生前贈与を活用する方法があります。暦年贈与なら年間110万円まで非課税で、10年間続ければ1,100万円を無税で移転できます。また、教育資金贈与(1,500万円まで非課税)や住宅取得資金贈与(最大1,000万円まで非課税)などの特例もあります。
ただし、相続開始前7年以内の贈与は相続財産に加算されるため、早めに開始することが重要です。また、贈与の証拠を残すため、贈与契約書の作成と銀行振込での送金を心がけましょう。
効果的な相続対策方法については、こちらの記事もあわせてご覧ください。
60代以降におすすめの保険
60代は新規加入が難しくなる年代ですが、既存の保険の継続判断と、相続対策としての保険活用が重要なテーマとなります。健康状態や資産状況に応じて、必要な保障を厳選することが大切です。
終身保険は、相続対策として60代に最も適した保険です。一時払い終身保険なら、相続税の納税資金を用意しつつ、相続税の非課税枠(500万円×法定相続人数)も活用できます。現金で相続するより、保険金として残したほうが、遺産分割もスムーズに進むというメリットもあります。
がん保険の継続は、75歳程度まで検討する価値があります。60代でも月額7,000〜10,000円程度で継続でき、診断給付金100万円の保障が維持できます。高額療養費制度でカバーできない先進医療や、QOL(生活の質)を高める治療の選択肢を確保する意味でも重要です。
医療保険は、貯蓄額によって継続の判断が分かれます。貯蓄が1,000万円以上あれば、医療保険は解約して貯蓄で対応することも選択肢です。ただし、終身型で保険料が変わらない場合は、月3,000〜5,000円程度なら継続する価値はあるでしょう。
終身保険や医療保険に関しては、こちらの記事もあわせてご覧ください。
世帯類型別の悩み
世帯構成によって、ライフプランの悩みや必要な備えは大きく異なります。
それぞれの世帯類型には特有のリスクがあり、画一的な対策では不十分な場合があります。世帯類型に応じた最適な対策を立てることが重要です。
独身世帯の備え
国立社会保障・人口問題研究所の推計では、50歳時点での未婚率は男性約28%、女性約18%まで上昇しており、生涯独身を選択する人が増えています。独身世帯は、病気やケガで働けなくなったときに頼れる人がいないため、経済的な備えがより重要になります。
老後についても、配偶者の年金や収入に頼れないため、自分一人の力で生活を成り立たせる必要があります。
長期療養の懸念
独身者が長期入院や要介護状態になった場合、収入が途絶えるだけでなく、身の回りの世話をしてくれる人もいません。入院時の保証人や、各種手続きの代行者を事前に決めておく必要があります。
就業不能保険への加入は独身者にとって特に重要で、月額10〜15万円程度の給付を60歳まで受け取れるタイプがおすすめです。保険料は30代なら月3,000〜5,000円程度で、精神疾患も保障対象となる商品を選ぶとより安心でしょう。
老後資金の確保
独身者の老後資金は、夫婦世帯の約7割程度が目安となります。生活費は一人分でも、住居費や光熱費などの固定費は夫婦世帯とそれほど変わらないためです。
iDeCoやNISAを活用した資産形成を早めに始めることが重要です。特にiDeCoは、掛金が全額所得控除になるため、独身者の高い税率を考えると節税効果も大きくなります。
iDeCoやNISAについて詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてみてください。
独身世帯に適した保険
独身世帯は、配偶者や子どもへの経済的責任がない分、死亡保障よりも自身の生活を守ることに重点を置いた保険選びが重要です。
就業不能保険は独身世帯にとって最優先の保険といえるでしょう。月額4,000〜6,000円程度で、病気やケガで働けなくなった際に月額15〜20万円の給付を受けられます。
独身者は収入が途絶えると即座に生活が困窮するリスクが高いため、この保険は加入するメリットが大きいでしょう。特に精神疾患もカバーする商品を選ぶことで、ストレスの多い現代社会のリスクに対応できます。
医療保険は、入院日額5,000円程度の終身型がおすすめです。月額2,000〜3,000円程度で加入でき、入院時の差額ベッド代や雑費をカバーできます。独身者は入院時に身の回りの世話を頼める人が限られるため、個室利用を想定した保障があると安心です。
個人年金保険も30代から検討すべきでしょう。配偶者の年金に頼れない分、自力での老後資金準備が不可欠です。月額1万5,000円程度の積み立てで、65歳から月3万円程度の年金を10年間受け取れるプランなら、公的年金の不足分を補えます。
DINKs世帯の設計
DINKs(共働きで子どものいない夫婦)世帯は、経済的に余裕がある一方で、老後の生活設計には注意が必要です。子どもがいないため教育費はかかりませんが、老後に頼れる親族が少なくなる可能性があります。
相互補完の設計
DINKs世帯では、どちらかに万が一のことがあっても、もう一方が経済的に自立できる体制を作ることが重要です。それぞれが独立した収入源を持ち、個人型の資産形成も進めておくことで、リスクを分散できます。
生命保険の必要性は低いですが、医療保険や就業不能保険は各自で加入しておくべきでしょう。また、どちらかが要介護状態になった場合の対策として、民間介護保険への加入も検討する価値があります。
資産形成の加速
子育て費用がかからない分、積極的な資産形成が可能です。世帯収入の30〜40%を貯蓄・投資に回すことも現実的で、50歳までに5,000万円以上の資産を築くことも不可能ではありません。
不動産投資や株式投資など、リスク資産への投資も選択肢になります。ただし、両者の投資方針を共有し、リスク許容度を事前に確認しておくことが大切です。老後は有料老人ホームへの入居も視野に入れ、その費用も含めた資産計画を立てましょう。
DINKs世帯に適した保険
DINKs世帯は経済的に余裕がある分、保険は最小限にとどめ、資産運用に重点を置くことが合理的です。ただし、パートナーへの配慮と老後の備えは重要になります。
収入保障保険は、それぞれが月額2,000円程度で加入し、相手に月額10万円程度の保障を残すプランがおすすめです。DINKs世帯は双方に収入があるため高額な死亡保障は不要ですが、住宅ローンがある場合や生活水準維持のための最低限の保障は必要です。保険期間は60歳までの定期型で十分でしょう。
がん保険は、40代以降は各自で加入を検討すべきです。診断給付金100万円タイプなら月額3,000円程度で、治療の選択肢を広げることができます。DINKs世帯は治療に専念できる経済的余裕があるため、より良い治療を選択するための資金として活用できます。
介護保険は、50代から検討する価値が高まります。要介護2で一時金300万円が支給されるタイプなら、月額4,000円程度で加入できます。子どもがいない分、介護は配偶者か外部サービスに頼ることになるため、経済的備えが重要です。
ひとり親の対策
ひとり親世帯は、経済的に厳しい状況にある世帯が多いのが現実です。
限られた収入で子育てと仕事を両立させながら、将来への備えも必要となるため、公的支援の活用と効率的な家計管理が不可欠となります。
収入途絶の備え
ひとり親が病気やケガで働けなくなると、家計は即座に破綻する危険があります。児童扶養手当やひとり親家庭医療費助成などの公的支援はありますが、それだけでは不十分です。
最低限の医療保険と、可能であれば就業不能保険への加入を検討しましょう。共済保険なら月2,000円程度で基本的な保障が得られます。また、実家の援助が期待できる場合は、緊急時の支援体制について事前に相談しておくことも重要です。
公的支援の活用
ひとり親世帯が利用できる公的支援は児童扶養手当のほか、住宅手当、就学援助、高等職業訓練促進給付金など、自治体によってさまざまな制度があります。
教育費についても、給付型奨学金や授業料減免制度の対象になりやすく、年収300万円以下なら大学の授業料が全額免除になることもあります。これらの制度を漏れなく活用することで、限られた収入でも子どもの教育機会を確保できるでしょう。
ひとり親世帯に適した保険
ひとり親世帯は限られた収入で最大限の保障を確保する必要があるため、コストパフォーマンスの高い保険選びが不可欠です。
共済保険は、ひとり親世帯にとって有力な選択肢です。都道府県民共済なら月額2,000円で、入院日額5,000円、死亡保障200万円程度が確保できます。決算後の割戻金もあり、実質的な負担はさらに軽くなります。子どもの医療保障も月1,000円程度で追加でき、家計への負担を最小限に抑えられます。
定期型の死亡保険は、子どもが成人するまでの期間限定で加入すべきです。保険金額1,000万円、保険期間20年なら、30代で月額2,000円程度です。万が一の際、子どもの教育費と生活費を確保できます。収入が少ない場合は、保険金額を500万円に抑えて保険料負担を軽減することも検討しましょう。
学資保険の代わりに、児童手当を全額貯蓄に回すことをおすすめします。保険料負担が厳しい場合は、無理に学資保険に加入せず、確実に貯蓄できる仕組みを作ることが重要です。自動積立定期預金などを活用し、教育資金を着実に準備しましょう。
自営業者・フリーランスの課題
自営業者やフリーランスは、会社員と比べて社会保障が薄く、自助努力による備えがより重要になります。国民年金だけでは老後の生活費を賄えないため、国民年金基金やiDeCoへの加入は必須といえるでしょう。
会社員なら傷病手当金で最長1年6か月間、給与の3分の2が保障されますが、自営業者にはこの制度がありません。1か月の入院でも、その間の収入はゼロになる可能性があります。
自営業者・フリーランスに適した保険
所得補償保険は自営業者にとって価値を感じやすい保険です。免責期間を30日に設定し、短期の休業にも対応できるようにしておくことが重要です。売上の変動に応じて、毎年保障額を見直すことも大切です。
医療保険は、入院日額1万円以上の手厚いタイプを選ぶべきです。月額4,000〜5,000円程度で、入院時の収入減少と医療費の両方をカバーできます。特に手術給付金が充実したプランを選び、日帰り手術にも対応できるようにしておきましょう。
定期保険は、家族がいる場合は必要です。保険金額2,000万円、保険期間20年なら、40代でも月額5,000円程度で加入できます。収入が不安定な分、万が一の際の家族の生活を確実に守る必要があるためです。
保険加入に関するよくある誤解
保険や資産形成について、多くの人が抱いている誤解があります。これらの誤解は、不適切な判断につながり、結果的に家計を圧迫したり、必要な保障が得られなかったりする原因となっています。
正しい知識を持つことで、無駄な支出を削減し、本当に必要な備えに資金を振り向けることができます。
「入れば安心」ではない
「保険に入っていれば安心」という考えは、根強く残る誤解の一つです。
保険はあくまでリスクに備える手段の一つであり、すべてのリスクをカバーできるわけではありません。また、過剰な保障は保険料の無駄遣いにつながり、かえって家計を圧迫する要因となってしまうでしょう。
適正な保障額は「必要保障額=遺族の支出−遺族へ渡る−資産遺族の収入−公的保障」という計算式で求められます。まず遺族の生活費、教育費、住居費などの支出を見積もり、そこから遺族の収入と遺族年金などの公的保障を差し引いた金額が、民間保険で備えるべき金額となります。
保障額は定期的に見直すことも重要です。子どもの成長とともに必要な教育費は減少し、住宅ローンの残高も減っていきます。5年ごとに保障額を見直すことで、保険料を年間10万円以上削減できることもあるでしょう。
「生命保険はいらない」という意見に関しては、こちらの記事で解説しています。
医療保険は必須ではない
「医療保険に入らないと入院費が払えない」という不安から、複数の医療保険に加入している人も少なくありません。しかし、日本の公的医療保険制度は世界的に見ても充実しており、高額療養費制度により自己負担は限定的です。
貯蓄が十分にある場合や、傷病手当金が受給できる会社員の場合、医療保険の必要性は相対的に低くなります。むしろ、保険料を貯蓄に回したほうが、柔軟に使える資金として有効な場合もあるでしょう。
健康保険には高額療養費制度があり、年収500万円の人なら、月の医療費自己負担の上限は約8万円です。また、会社員なら傷病手当金として、最長1年6か月間、標準報酬月額の3分の2が支給されます。
医療保険への加入を検討している高年収の方は、こちらの記事もご覧ください。
「掛け捨て型保険はもったいない」は勘違い
「掛け捨て型保険はもったいない」という考えは、一般的に誤解です。掛け捨て型保険は、保険料が返ってこないため無駄に感じる人もいますが、その最大のメリットは保険料が割安で、大きな保障を手軽に得られる点です。特に子育て世代や若い世代にとっては、保険料を抑えつつ必要な保障を確保する合理的な選択肢と言えます。
掛け捨て型保険の特徴は保障期間が限定されていることや、満期や解約時に返戻金がないことですが、その分保険料は安いです。一方、貯蓄型保険は保険料が高く、満期金や解約返戻金が受け取れますが、家計の負担は大きくなります。
掛け捨て型はシンプルな保障であり、保障が必要な期間に絞って加入できるため、無駄ではなく「保障を買っている」と考えるべきです。
貯蓄型保険と掛け捨て保険の違いを詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
「公的年金はあてにならない」は間違い
「年金制度は破綻する」「将来は年金がもらえなくなる」という不安から、過度に民間保険に頼ろうとする人が増えていますが、これは大きな誤解です。日本の公的年金制度は賦課方式を採用しており、現役世代が納めた保険料をその時の高齢者に支給する仕組みのため、制度が完全に破綻することは考えにくいのが実情です。
重要なのは、公的年金をリスク管理の「基礎」として位置づけ、不足分を民間保険や預貯金で補完するという考え方です。
公的年金への過度な不安から、月額5万円も6万円も個人年金保険に加入するケースがありますが、これは本末転倒です。まず公的年金の見込み額を「ねんきん定期便」で確認し、不足額を正確に把握したうえで、必要な分だけ民間保険で準備するという合理的なアプローチが重要となります。
障害年金や遺族年金に関しては、こちらの記事で詳しく解説しています。あわせて参考にしてみてください。
この記事のまとめ
それぞれの年代や家族構成によって、直面する問題は異なりますが、共通しているのは「早めの準備と定期的な見直し」の重要性です。
大きなライフイベントがあったときは、必ず見直しのタイミングです。結婚、出産、住宅購入、転職、子どもの進学、親の介護開始など、生活に変化があったときは、それに応じてライフプランも調整する必要があります。
不安が残る場合は専門家に相談し、自分に合った保障設計を進めることで、将来への安心感を高められるでしょう。

金融系ライター
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1,000記事以上の執筆実績あり。
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1,000記事以上の執筆実績あり。
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定期保険
定期保険とは、あらかじめ決められた一定の期間だけ保障が受けられる生命保険のことです。たとえば10年や20年といった契約期間のあいだに万が一のことがあれば、保険金が支払われますが、その期間を過ぎると保障はなくなります。保障期間が限定されているため、保険料は比較的安く設定されています。特に子育て世代や住宅ローンを抱えている方など、特定の期間だけ万が一の保障を重視したい場合に適しています。貯蓄性はなく、純粋に「保障のための保険」である点が特徴です。
終身保険
終身保険とは、被保険者が亡くなるまで一生涯にわたって保障が続く生命保険のことです。契約が有効である限り、いつ亡くなっても保険金が支払われる点が大きな特徴です。また、長く契約を続けることで、解約した際に戻ってくるお金である「解約返戻金」も一定程度蓄積されるため、保障と同時に資産形成の手段としても利用されます。 保険料は一定期間で払い終えるものや、生涯支払い続けるものなど、契約によってさまざまです。遺族への経済的保障を目的に契約されることが多く、老後の資金準備や相続対策としても活用されます。途中で解約すると、払い込んだ金額よりも少ない返戻金しか戻らないこともあるため、長期の視点で加入することが前提となる保険です。
就業不能保険
就業不能保険とは、病気やけがで働けなくなり、収入が得られなくなった場合に、一定期間ごとに保険金が支払われる民間の保険商品です。この保険は、入院や自宅療養などで仕事を続けられない状況が長引いたときに、生活費やローン返済などの家計の負担を軽減するために設けられています。 公的な障害年金制度ではカバーしきれない部分を補う目的があり、自営業者やフリーランスなど、収入の保障が不安定な人に特に注目されています。保障内容や支払期間、免責期間などは契約ごとに異なるため、自分の職業やライフスタイルに合わせて選ぶことが大切です。
学資保険
学資保険とは、子どもの教育資金を計画的に準備するための保険商品で、一定期間保険料を支払うことで、子どもの進学時期(中学・高校・大学入学など)に合わせて祝い金や満期保険金が受け取れる仕組みになっています。保険であるため、契約者(通常は親)に万が一のことがあった場合でも、以後の保険料の支払いが免除され、満期時には予定どおりの給付金が支払われる点が大きな特徴です。 貯蓄機能と保障機能が組み合わさっており、「教育費を積み立てながら万一に備えたい」と考える家庭に人気があります。ただし、途中解約すると元本割れするリスクがあるため、長期的な資金計画としての活用が前提となります。初心者の方にとっては、預貯金とは違う形で将来の教育資金を準備できる手段のひとつとして、選択肢に入れて検討する価値があります。
医療保険
医療保険とは、病気やケガによる入院・手術などの医療費を補償するための保険です。公的医療保険と民間医療保険の2種類があり、日本では健康保険や国民健康保険が公的制度として提供されています。一方、民間医療保険は、公的保険でカバーしきれない自己負担分や特定の治療費を補填するために活用されます。契約内容によって給付金の額や支払い条件が異なり、将来の医療費負担を軽減するために重要な役割を果たします。
がん保険
がんと診断されたときや治療を受けたときに給付金が支払われる民間保険です。公的医療保険ではカバーしきれない差額ベッド代や先進医療の自己負担分、就業不能による収入減少など、治療以外の家計リスクも幅広く備えられる点が特徴です。通常は「診断一時金」「入院給付金」「通院給付金」など複数の給付項目がセットされており、加入時の年齢・性別・保障内容によって保険料が決まります。 更新型と終身型があり、更新型は一定年齢で保険料が上がる一方、終身型は加入時の保険料が一生続くため、長期的な負担の見通しを立てることが大切です。がん治療は医療技術の進歩で入院期間が短くなり通院や薬物療法が中心になる傾向があるため、保障内容が現在の治療実態に合っているかを確認し、必要に応じて保険の見直しを行うと安心です。
三大疾病保険
三大疾病保険とは、がん・急性心筋梗塞・脳卒中のいずれかと医師に診断されたとき、あるいは所定の状態に該当したときに、一時金が支払われる保険です。治療費はもちろん、仕事を休むことで減少する収入や、介護・生活環境の整備などの費用にも充てられるため、医療保険や公的医療保障を補完しながら家計への影響を抑える役割を果たします。保険会社や商品によって給付条件や支払上限、診断後の免責期間に違いがありますので、契約前に内容をよく確認し、自分のライフプランや貯蓄状況に合った保障額を選ぶことが大切です。
収入保障保険
収入保障保険とは、契約者が死亡または高度障害になった場合に、遺された家族が毎月一定額の保険金を受け取れる生命保険の一種です保険金は一括ではなく、年金のように月々の定額支給という形で受け取るため、日々の生活費や教育費など、継続的な支出に備えるのに適した保険です。 この保険の特徴は、契約期間が経過するごとに受け取れる総額(=支給期間)が短くなるため、保険料が比較的割安に設定されていることです。必要な保障額を効率よく確保できることから、特に子育て中の家庭や、一家の収入を支える人に万が一があった場合のリスクに備えたい方に人気があります。
個人年金保険
個人年金保険とは、公的年金だけでは不足しがちな老後資金を、自助努力で補うために設計された私的年金商品です。契約者が決められた期間にわたり保険料を払い込み、あらかじめ設定した開始年齢(60歳・65歳など)に達すると年金形式で受け取りが始まります。受取方法には、決められた年数だけ確実に受け取る「確定年金型」と、生存している限り終身で受け取れる「終身年金型」があり、どちらを選ぶかによって総受取額や万一の際の遺族保障の形が異なります。変額型や外貨建て型など、インフレ対応や為替分散を意識したバリエーションも登場しています。 大きな魅力の一つは税制優遇です。一定の要件(受取人が契約者本人または配偶者、払込期間が10年以上など)を満たす契約であれば、払込保険料は「個人年金保険料控除」として所得控除の対象になります。たとえば年間保険料が8万円の場合、所得税で最大4万円、住民税で最大2万8千円が控除され、課税所得を圧縮できるため実質負担を抑えながら老後資金を積み立てられる点がメリットです。 一方で注意すべき点もあります。途中解約時には元本割れが生じやすく、解約返戻金が払込総額を下回るケースが多いこと、固定利率型の商品ではインフレに追いつけない可能性があること、そして保険会社が破綻した場合でも保険契約者保護機構による補償は責任準備金の90%が上限となることです。また、税優遇制度としては個人型確定拠出年金(iDeCo)や新NISAも利用できるため、流動性・運用商品の自由度・掛金上限などを比較し、自分に合った組み合わせを検討する必要があります。 これらの特徴を踏まえると、個人年金保険は「計画的に積立を続け、税制メリットを生かしながら老後の生活費を補完したい」人に適した選択肢といえます。生活防衛資金や他の運用枠を確保したうえで長期的な資産形成の一環として活用すれば、老後のキャッシュフローに安定感をもたらす手段となるでしょう。
繰下げ受給
繰下げ受給とは、本来65歳から支給される公的年金(老齢基礎年金や老齢厚生年金など)の受け取り開始を自分の希望で後ろ倒しにする制度です。66歳以降、最大75歳まで1か月単位で繰り下げることができ、遅らせた月数に応じて年金額が恒久的に増えます。 増額率は1か月当たり0.7%で、10年(120か月)繰り下げた場合にはおよそ84%の上乗せとなるため、長生きするほどトータルの受取額が増えやすい仕組みです。ただし、繰下げた期間中は年金を受け取れないため、その間の生活資金や健康状態、就労収入の見通しを踏まえて慎重に検討することが大切です。
変額保険
変額保険とは、死亡保障を持ちながら、保険料の一部を投資に回すことで、将来受け取る保険金や解約返戻金の金額が運用成績によって変動する保険商品です。 保険会社が提供する複数の投資先から自分で選んで運用することができるため、運用がうまくいけば受け取る金額が増える可能性があります。 ただし、運用がうまくいかなかった場合は、受け取る金額が減ることもあります。保障と資産運用の両方を兼ね備えた商品ですが、元本保証がない点には注意が必要です。投資初心者の方には、仕組みを十分に理解したうえで加入することが大切です。
高額療養費制度
高額療養費制度とは、1か月に医療機関で支払った自己負担額が一定の上限を超えた場合、その超過分が払い戻される公的な医療費助成制度です。日本では公的医療保険により治療費の自己負担割合は原則3割(高齢者などは1〜2割)に抑えられていますが、手術や長期入院などで医療費が高額になると家計への影響は大きくなります。こうした経済的負担を軽減するために設けられているのが、この高額療養費制度です。 上限額は、70歳未満と70歳以上で異なり、さらに所得区分(年収の目安)によって細かく設定されています。たとえば、年収約370万〜770万円の方(一般的な所得層)では、1か月あたりの自己負担限度額は「約8万円+(総医療費−26.7万円)×1%」となります。これを超えた分は、後から申請によって保険者から払い戻しを受けることができます。 また、事前に健康保険の窓口で「限度額適用認定証」を取得し、医療機関に提示しておけば、病院の窓口で支払う金額そのものを最初から自己負担限度額までに抑えることも可能です。これにより、退院後の払い戻しを待たずに現金の一時的な負担を軽減できます。 同じ月に複数の医療機関を受診した場合や、同一世帯で同じ医療保険に加入している家族がいる場合には、世帯単位で医療費を合算して上限額を適用することもできます。さらに、直近12か月以内に3回以上この制度を利用して上限を超えた場合、4回目以降は「多数回該当」となり、上限額がさらに引き下げられる仕組みもあります。なお、払い戻し申請から実際の支給までには1〜2か月程度かかるのが一般的です。 資産運用の観点から見ると、この制度によって突発的な医療費リスクの一部を公的にカバーできるため、民間の医療保険や緊急時資金を過剰に積み上げる必要がない場合もあります。医療費リスクへの備えは、公的制度・民間保険・現金準備のバランスで考えることが大切です。特に高所得者や自営業者の場合は、上限額が比較的高めに設定されている点や支給までのタイムラグを踏まえ、制度と現金の両面から備えておくと安心です。
傷病手当金(しょうびょうてあてきん)
傷病手当金(しょうびょうてあてきん)とは、会社員など健康保険に加入している被保険者が、業務外の病気やけがによって働けなくなり、給与の支払いを受けられない場合に支給される所得補償制度です。 原則として、連続する3日間の待期期間のあと、4日目以降の働けなかった日から支給されます。支給期間は同一の傷病につき、支給開始日から通算して最長1年6か月です。支給額は、休業前の標準報酬日額の3分の2に相当する額で、収入減少を一定程度補う役割を果たします。 支給を受けるには、医師による「労務不能」の証明が必要です。また、会社から給与が一部支給される場合は、その分が差し引かれて調整されます。なお、退職後であっても在職中に支給要件を満たしていれば、継続して受給できる場合があります。 一方で、国民健康保険(自営業者やフリーランスなどが加入する制度)には原則として傷病手当金の仕組みがありません。 これは、国民健康保険が「個人単位」での医療費給付を目的とした制度であり、勤務先を持たない人には“給与の喪失”という概念が存在しないため、所得補償を行う仕組みが制度設計上含まれていないことが理由です。 ただし、一部の自治体では独自に「国民健康保険傷病手当金」を設けており、新型コロナウイルス感染症など特定の事由に限って給付されるケースがあります。とはいえ、全国的には例外的な措置にとどまります。 このように、傷病手当金は会社員や公務員など被用者保険に加入している人のための制度であり、自営業者など国民健康保険加入者は対象外となる点に注意が必要です。
児童手当
児童手当とは、家庭の経済的負担を軽くし、子どもの健やかな育成を支援するために、0歳から中学校卒業までの子どもを養育している保護者に対して国や自治体が支給するお金のことです。 所得制限はありますが、原則として子ども1人につき毎月定額が支給されます。支給額は子どもの年齢や人数によって異なり、例えば3歳未満は月額15,000円、3歳から小学生までは月額10,000円(第3子以降は15,000円)などと定められています。 申請は居住地の市区町村窓口で行い、原則として児童の出生や転入から15日以内に届け出が必要です。子育て世帯の家計を直接支える制度であり、教育費や生活費の一部に充てられることが多く、非常に身近で利用者の多い支援制度の一つです。
共済
共済とは、同じ目的や立場を持つ人々が、万が一の病気や事故、災害などに備えてお金を出し合い、困ったときに助け合う仕組みです。民間の保険と似ていますが、営利を目的としておらず、協同組合や労働団体などが運営する非営利の制度です。 加入者は「組合員」と呼ばれ、掛金と呼ばれる毎月の支払いを行うことで、一定の条件に当てはまる出来事が起こった際に共済金を受け取ることができます。保障内容は医療、生命、火災、自動車など多岐にわたり、家計に優しい金額で加入できることから、多くの人に利用されています。特に生活者目線で設計されており、地域や職場を通じて身近な存在として広く活用されています。
基礎控除
基礎控除とは、所得税の計算において、すべての納税者に一律で適用される控除のことを指す。一定額の所得については課税対象から除外されるため、納税者の負担を軽減する役割を持つ。所得に応じて控除額が変動する場合もあり、申告不要で自動適用される。