
定期保険と終身保険はどう違う?4タイプを3つの軸で整理する保険選びガイド
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公開:
2025.06.20
更新:
2025.06.20
あなたに万が一の事態が起こったとき、遺族の生活を守るために役立つのが生命保険(死亡保険)です。代表的な生命保険の種類は、「定期保険」「終身保険」「養老保険」「収入保障保険」です。
生命保険の商品は多様な種類がありますが、その仕組みを考える際には「保障期間」「保険の受け取り方」「お金の戻り方」を軸に、あなたに合った保険を探しましょう。
この3つの軸で分類すると、後述する定期保険・終身保険・養老保険・収入保障保険の4タイプの特徴もスッキリ理解できます。
サクッとわかる!簡単要約
貯蓄型と掛け捨て型の違いは、「見直しやすさ」「現金化のしやすさ」「貯まる力」「戻るお金の有無」「月々の負担」といった5つの視点で整理すると、自分に合った保険の姿がクリアに見えてきます。さらに、貯蓄型は途中解約で損をしやすい一方、掛け捨てで浮いたお金をNISAやiDeCoに回すことで、保障と資産形成の両立も可能に。保険に対するモヤモヤが「納得の選択」に変わり、将来の安心と今の自由、どちらもあきらめない設計が見えてきます。
目次
生命保険4タイプの基本と代表的な活用シーン
ここでは死亡保障を提供する生命保険4タイプとして、「定期保険」「終身保険」「養老保険」「収入保障保険」の特徴と、代表的な使いどころ・留意点を解説します。
いずれも、民間の生命保険会社で取り扱われる基本的な商品タイプです。それぞれメリット・デメリットが異なるため、ニーズに合わせた選択が重要です。
定期保険(コスパを重視する人向け)
定期保険は、その名のとおり一定の期間だけ死亡保障が得られる保険です。例えば「10年間」や「60歳まで」など期間を定め、その間に被保険者が亡くなった場合に、所定の死亡保険金が支払われます。
最大の特徴は保険料の安さです。解約返戻金や満期金がない掛け捨て型のため、同じ保険金額なら、他の貯蓄型保険に比べて大幅に保険料が割安です。
少ない保険料負担で大きな保障を用意できるため、コストパフォーマンスに優れています。子育ての時期など、責任が大きい時期や将来にわたって子どもの教育資金を用意する必要がある場合、定期保険が向いているでしょう。
例えば、小さな子どもがいる方は、遺族へ数千万円規模の生活資金や教育資金を残す必要があります。定期保険なら月々数千円程度の保険料で必要な保障を得られるため、適した商品といえるでしょう。
- 注意点としては、保障期間が限られているため、更新や見直しが必要になる点です。多くの定期保険は契約満了時に更新が可能ですが、その際には年齢に応じて保険料が上がるのが一般的です。
また、何事もなく期間を終えればお金は戻らず掛け捨てになります。「長期間保険料を払い続けて何も残らないのは嫌だ」という場合は、後述の貯蓄型保険も検討すると良いでしょう。
終身保険(終身保障と貯蓄性を重視する人向け)
終身保険は、一生涯の保障が続く死亡保険です。満期が無く、被保険者が亡くなるまで保障が継続するため、必ず死亡保険金を受け取れる点が特徴です。
保険料は契約時のまま一生涯変わらないタイプが一般的で、払い込み期間は終身払い(生涯払い続ける)や60歳・65歳まで、さまざまな選択肢から選べます。
終身保険には解約返戻金があり、途中で解約した場合は積立金の一部が戻ってきます。契約を長く続けるほど解約返戻金は増え、将来の金融資産として活用することも可能です(低解約返戻金型など特殊なタイプでは一定期間返戻金が抑えられるものもあります)。老後資金だけでなく、教育資金を準備を兼ねて積み立てるケースもあります。
人はいつか必ず亡くなるため、終身保険に加入しておけば、葬儀代やお墓の費用など確実に発生するエンディングコストを準備できます。また、保険金受取人を指定できるため、遺産代わりに現金を残す手段として相続対策に活用されることもあります。
- 注意点としては、短期で解約すると元本割れになる点です。契約後まもない時期で解約すると支払保険料に対して解約返戻金が大幅に少なくなり、「貯蓄」として期待していた金額を受け取れない可能性があります。
また、保険料が定期保険より高いため、高額な死亡保障が必要な子育て期において、終身保険だけで備えるのは非現実的です。必要保障額の一部を終身保険でカバーしつつ、足りない分は定期保険で補うなど、保障と貯蓄のバランスを考えて活用することが大切です。
養老保険(満期返戻型)
養老保険は生死混合保険と呼ばれ、死亡保障と貯蓄機能を兼ね備えた保険商品です。契約時に定めた一定の保険期間内に被保険者が死亡した場合は死亡保険金が支払われ、満期まで生存した場合には死亡保険金と同額の満期保険金を受け取れます。
「生きていても、万一亡くなっても同額のお金が受け取れる」仕組みになっており、満期時にお金が戻ってくる点が最大の特徴です。保障期間は10年や15年といった有期で、保険料の払い込みも期間内に完了します。
ただし、養老保険の保険料は比較的高い点に注意が必要です。同じ1,000万円の保障額でも、満期保険金がある分だけ終身保険より割高になっています。ただし、満期まで生存すれば支払った保険料相当の満期金を受け取れるため、掛け捨てには抵抗がある方には魅力的に映るでしょう。
代表的な活用シーンは、将来の特定資金の計画的準備です。例えば、子どもの進学に合わせて満期金を受け取れるように契約すれば、死亡リスクに備えつつ教育資金を用意できます。
- 注意点としては、リターン(満期金利回り)がそれほど良くない点です。支払った保険料が満期にそのまま戻ってくる設計が多く、お金が大幅に増えて戻る期待は持てません。インフレで貨幣価値が下がると、実質的に目減りするケースもあり得ます。
病気やケガによる入院・手術費用をカバーできる特約を付加すると、満期保険金を受け取るときに元本割れするケースがあります。また、終身保険と同様に、途中解約した場合も元本割れとなります。
なお、養老保険についてはこちらのFAQで詳しく解説しています。
収入保障保険(生活費補償型)
収入保障保険は一定期間内の死亡リスクに備えられ、保険金の受取方法が年金(分割)形式になっています。
契約時に「保険期間○年(または○歳まで)」「年金月額○万円」といった形で設定し、被保険者が死亡した場合に、満期まで毎月定額の保険金が支払われます。例えば60歳満期・月額10万円の収入保障保険なら、「10万円×残り期間(月数)」が支払われます。仮に残り期間が25年(300ヶ月)だと、総額で3,000万円が遺族に渡ります。
一方で、満期間近で被保険者が亡くなった場合、遺族が受け取れる保険金は少額になります。例えば、満期まで残り1年の場合、遺族が受け取れる保険金は「10万円×12ヶ月=120万円」です。なお、多くの商品では「最低5年」のような最低保証期間を設定できます。
このように、死亡時期によって最終的な受取総額が変動するのが、収入保障保険の特徴です。この仕組みは「年を追うごとに必要な保障額は減っていく」という、一般的な家計の状況に対応したものです。
一般的に、子どもの成長に伴って将来必要な生活費や教育費の総額は徐々に減少していくため、それに合わせて保険金額も減っていく収入保障保険は合理的な設計です。保険料も掛け捨て型で割安であり、同じ1億円の総保障を準備する場合でも、定期保険より収入保障保険のほうが保険料負担は軽くなります。
残された家族に、生活費を年金のような形で支給できるため、安定収入を確保できる安心感があります。遺族の方が、まとまった一時金を計画的に使用できるか自信がないケースにも向いているでしょう。お金を計画的に使うのが苦手な遺族でも、毎月定額が支給されれば家計管理がしやすいメリットがあります。
- 注意点としては、死亡保険金が一括で出ないため、葬儀代や住宅資金、子どもの入学金など大口の出費に対応しにくい点が挙げられます。収入保障保険に加入する場合でも、別途葬儀費用分の一時金を用意し、子どもの進学時期に合わせて学資保険や預貯金で備える対策が必要です。
4タイプを横断比較するチェックリスト
死亡リスクに備えられる4つの保険タイプについて、主な項目を比較してみましょう。「保障期間」「保険料水準」「返戻金の有無」「受取方法」「主な用途の観点」で、各タイプの特徴をまとめています。
項目 \ タイプ | 定期保険 (掛け捨て型) | 終身保険 (貯蓄型) | 養老保険 (生死混合型) | 収入保障保険 (年金型) |
---|---|---|---|---|
保障期間 | 一定期間のみ(例:10年更新・◯歳まで) | 生涯(一生保障) | 一定期間(満期あり) | 一定期間(満期あり、主に60~65歳まで) |
保険料水準 | 割安(低コスト) | やや高め(定期より割高) | 非常に高い(4種で最も高額) | 割安(定期よりさらに割安) |
返戻金(解約・満期金) | 無し(掛け捨て) | 有(解約返戻金あり) | 有(満期保険金あり) | 無し(掛け捨て) |
受取方法 | 死亡時に一括受取(死亡保険金) | 死亡時に一括受取(死亡保険金) | 死亡時 or 満期時に一括受取 | 死亡後に分割受取(毎月年金形式) |
主な用途 | 働き盛りの大きな死亡保障確保(家族の生活費・教育費に) | 葬儀代など一生涯の保障準備+資産形成・相続対策 | 教育資金・老後資金の貯蓄+死亡保障(計画的な資金準備) | 遺族の生活費補償(毎月給付)※大口出費には別途対応 |
※上記は一般的な傾向をまとめたもので、実際の保険商品によって細部は異なります。一部商品では例外的な機能(返戻金の有無や保証内容など)を持つ場合もありますので、契約時には必ずパンフレット等で詳細を確認してください。
上記チェックリストから分かるように、それぞれの保険タイプには明確な長所と短所があります。
価値観ごとに適した保険
- とにかく安い保険料で大きな保障を確保したい:定期保険・収入保障保険
- 一定期間だけ死亡に備えつつ、満期にはお金が戻ってほしい:養老保険
- 終身の保障を得つつ将来の資産形成も兼ねたい:終身保険
このように、あなたの価値観や家族構成などに応じて、ニーズにマッチした保険を見極めることが大切です。
資産家の方は、生命保険を用いた相続税対策も検討しましょう。以下のFAQも、あわせてご覧ください。
適した保険を選ぶための3つの軸
死亡に備えられる保険商品は主に4種類あり、保険商品ごとに特徴が異なります。以下で、自分に適した保険に加入するうえで重視すべき3つの軸を見ていきましょう。
保障期間
保険によって、保障が続く期間が異なります。例えば、定期保険や収入保障保険は「○年間」あるいは「○歳まで」といった一定の期間に限定された保険です。
一方、終身保険は一生涯にわたって保障が続く点が特徴です(契約に満期がなく、生涯保障が途切れません)。養老保険は保障期間が一定期間で、満期が設定されている点で定期保険に似ています。
つまり期間軸で見ると、終身保険だけが生涯保障であり、他の3つは多くの場合60歳や65歳まで等の定年時期や契約から10年・20年といった有期の保障になります。
合っている保険の考え方
- 決まった期間だけ保障があればよい:定期保険・収入保障保険・養老保険
- 終身にわたって保障があると安心:終身保険
保険金の受け取り方
一般的な死亡保険では、被保険者が亡くなったとき一時金(一括のお金)が遺族に支払われます。定期保険や終身保険はこの典型で、死亡時にまとまった保険金を受け取るタイプです。
一方で、収入保障保険の場合は、保険金が年金(月々の定額)のように遺族へ支払われます。いわば「毎月のお給料」のように分割で支給される死亡保障で、遺族の生活費補填を目的としています。
また養老保険は少し毛色が異なり、満期のある死亡保険ですが、生存時にも満期金が受け取れる仕組みです。契約期間中に亡くなれば死亡保険金が出ますが、何事もなく満期を迎えた場合には死亡保険金と同額の満期保険金を受け取れるため、貯蓄という面も併せ持っています。
このように、死亡時の一括金がメインなのか、遺族の生活費としての分割給付なのか、あるいは満期まで生存した場合の貯蓄払い戻しなのか、保障の目的でタイプが分かれます。
合っている保険の考え方
- 一時金を遺族へ残したい:定期保険・終身保険・養老保険
- 一時金ではなく年金で遺族の生活を守りたい:収入保障保険
死亡保険金には、相続税、贈与税、または所得税のいずれかが発生します。詳細は以下のFAQで解説しているため、参考にしてみてください。
お金の戻り方(返戻金)
定期保険と収入保障保険はいずれも掛け捨てタイプで、満期を迎えても満期保険金(解約返戻金)は基本的にありません。保険期間中に万一のことがなければ、支払った保険料は戻らない仕組みです(商品によってはごくわずかな解約返戻金がある場合もありますが、基本的にはゼロと考えてよいでしょう)。
一方で終身保険や養老保険には貯蓄機能があり、保険を途中で解約した場合などに解約返戻金を受け取れたり、満期まで保有すれば満期金を得られたりします。終身保険は満期こそありませんが、支払いが完了した後に解約すれば、それまで積み立てたお金の一部が戻ります。
養老保険は前述の通り満期時に死亡保険金と同額の満期金が受け取れるため、いわば満期で全額戻ってくる商品です。このように、返戻金(貯蓄性)の有無によっても、保険のタイプを分類できます。
合っている保険の考え方
- お金は戻らなくてもよいので保険料を抑えたい:定期保険・収入保障保険
- 保障を得つつ将来に向けて貯蓄もしたい:終身保険・養老保険
ライフステージ×資産運用で考える保険配置
生命保険の必要性と適切な商品タイプは、加入者のライフステージ(年齢や家族構成)によって変わります。また、保険はあくまで保障を提供するものなので、資産運用・貯蓄とのバランスを考えることも重要です。
ここでは一般的に考えられる各年代(30代・40〜50代・60代以降)の保険活用法と、資産運用との組み合わせ方について解説します。
30代:家計の基盤づくりと必要保障の確保
30代は結婚・出産・マイホーム購入などのライフイベントが相次ぎ、家計の状況が大きく変化しやすい時期です。特に子どもが生まれたり、配偶者が育児のため退職・産休したりすると、一家の必要保障額は大きく増加します。
例えば、子どもが独立するまでに必要な生活費や教育費を考えると、万一自分に何かあった場合に残すべき金額は高額になるでしょう。進学ルートにも左右されるとはいえ、小学生から大学までの合計で数千万円は必要です。
30代の方は大きな資産を持っていないケースが多いと考えられるため、定期保険や収入保障保険を活用して、大きな死亡保障を低コストで確保することがポイントです。
まだ若いからといって「保険加入は後回しでいい」と考えるのは危険です。一般に年齢が若いほど保険料は割安に加入でき、健康状態も良好で審査に通りやすいメリットがあります。必要な保障がある場合は、早い段階でカバーするほうが、トータルの負担は軽く済みます。
必要保障額が大きいケース
- 子どもが幼い場合
- 子どもが複数人いる場合
- 専業主婦(夫)世帯の場合
- 保有している資産が少ない場合
保険でリスクに備えることと並行して、資産運用も30代からスタートすることが大切です。定期保険や収入保障保険でコストを抑えつつ、NISAの「つみたて投資枠」を活用して長期の積立投資を進めましょう。
貯蓄型保険と掛け捨て保険を選ぶ際のポイントは、以下の記事で詳しく解説しています。
40〜50代:保障ニーズのピークと老後資金準備の両立
40代〜50代は、家庭によって状況が分かれる時期ですが、多くの場合死亡保障のニーズが徐々に変化する転換期です。40代ではお子さんの教育費負担がピークを迎える家庭も多く、必要保障額がまだ大きめです。
このため、子どもが独立するまでは十分な死亡保障(定期保険や収入保障保険等)を維持することが重要です。一方で50代になると子育てが一段落し、教育費・生活費の仕送り負担が減る家庭も増えてきます。
子どもの独立後は、それまで設定していた高額な死亡保障を減額するタイミングです。子どもの成長に伴って必要保障額は徐々に減少していくため、保険金額を減らすことで保険料負担も軽減できます。なお、不要な保険に関しては解約しても問題ありません。
保険の縮小や解約によって浮いた資金は、老後資金の準備に充てるのがおすすめです。50代は定年が視野に入り始めるため、老後生活への備えを進める必要性が出てきます。そのため、年齢を重ねるにつれて保険ではなく資産形成に注力すべきでしょう。
40〜50代が老後資金を用意する方法
- 積立貯蓄
- NISA
- iDeCo
- 個人年金保険など
また、40〜50代は自身の健康リスクも高まる時期です。場合によっては医療保険・がん保険・介護保険など、生存時の保障を検討し始めることもあります。
注意したいのは、年齢を重ねてから新規に保険加入・保障追加しようとすると、保険料が割高になる点です。健康状態によっては加入自体が難しくなるケースもあるため、必要と感じる保障(例えば介護や重病に備える保険)があるなら、健康なうちにある程度手当てしておくほうが安心です。
公的医療保険制度には「高額療養費制度」という、1カ月あたりの医療費に上限を設ける仕組みがあります。社会保険制度や家計状況などを踏まえて、どの程度健康リスクに備えるべきか、考えてみましょう。
60代以降:保障の役割転換と資産寿命の確保
60代以降になると、一般に死亡保障の必要性は大きく減少します。子どもが独立し配偶者も高齢になれば、万一自分が亡くなった場合でも、遺された家族の生活費はそれほど長期間必要とされません。
現役時に貯蓄型保険に加入していた方は、解約返戻金を老後資金に充てられます。契約時の重要事項説明書や約款を見れば、受け取れる解約返戻金を確認できるため、確認しておきましょう。
- 死亡リスクへの備えは不要になる一方で、高齢になるほど医療・介護の保障ニーズは高まります。医療費や介護費の発生に備えるために、別途「医療費・介護費専用のお金」としてプールしておくと安心です。現役時代から継続して医療保険や介護保険などに加入している方は、そのまま契約を継続するという選択肢もあります。
ただし、退職後は収入が年金が中心となります。「不安だから」といって無闇に保険契約を継続すると、家計に占める保険料負担が大きくなり、家計を圧迫する事態になりかねません。
可能であれば退職時までに必要な保険の払い込みを完了しておくか、思い切って不要な保険は解約・減額して、保険料支出を減らすことも検討しましょう。保険を見直して保険料負担を軽くできれば、その分を老後の生活費や趣味、医療介護費用に充て、自分たちの人生を楽しむ余裕が生まれます。
「公的医療保険による保障や給付+保有資産」で医療費や介護費に対応できそうであれば、保険に新規加入する必要はありません。
60代以降は「家族を守るために保険を活用する」フェーズから、「自分たちが豊かな老後生活を送るために資産を活用する」フェーズへ移ります。保険の見直しと貯めてきた金融資産、退職金などの把握を通じて、理想としていたセカンドライフを実現しましょう。
選び方ロードマップ|3ステップ+セルフチェック
最後に、ポイントを踏まえて生命保険を選ぶ手順を整理します。保険選びに悩んだら、以下の4つのステップに沿って考えてみることをおすすめします。
また、加入後も定期的にセルフチェックを行い、保障内容のメンテナンスを心がけましょう。
1.必要保障額を算出する
まずは、あなたに万一のことがあった場合にいくらの保障が必要かを計算します。遺される家族の生活費や子どもの教育費、葬儀費用などを洗い出し、その合計額をベースラインとします。
2.社会保険制度からの給付と保有資産額を把握する
社会保険制度から、どのような給付を受けられるのかを確認しましょう。例えば、年金制度からは遺族年金(遺族基礎年金と遺族厚生年金)が支給されます。
勤務先から死亡退職金を受け取れる場合も、リスクに備える手段の一つです。また、現在あなたが保有している資産は配偶者や子に相続されるため、やはりリスクへの備えとなります。
つまり、民間保険でカバーすべき必要保障額は以下の計算式で求められます。
必要保障額の計算式
- 遺族に必要な資金−(社会保険制度からの給付金+勤務先の福利厚生+あなたの保有資産)
例えば、「子どもが独立するまでに生活費として1,000万円、大学卒業までに教育費2,000万円が必要」と試算したケースで考えてみましょう。
「遺族年金で総額1,500万円は賄える、預貯金が500万円ある」という場合、必要保障額は「3,000万円ー2,000万円=1,000万円」です。つまり、この場合は民間保険で1,000万円分の保障を用意すれば、少なくとも家族の生活が破綻するリスクに備えられます。
リスクに備えるにあたって、まず考えるべきは公的な社会保険制度です。基本的に遺族年金は最低限の生活費しか賄えないため、不足する分を生命保険でカバーしましょう。遺族年金を受け取れる年額や総額は家族構成によって異なるため、ぜひ試算してみてください。
遺族年金の受給額や受給対象者などは、以下の記事で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。
3.保険と資産運用の役割分担を決める
求めた必要保障額を「どのような手段で用意するか」を考えます。生命保険は万一の死亡時に大きなお金を残すのに適した手段ですが、長期的な資産形成(老後資金や教育資金の準備)には必ずしも効率的ではありません。
例えば、貯蓄型の生命保険は安全確実に資金を用意できる一方で、リターンは低めです。つまり、預けたお金を大きく増やす手段としては不適です。
一方、株式や投資信託などへの長期投資は元本保証こそ無いものの、時間を味方につければインフレに負けないリターンを期待できる場合があります。そこで、保険はあくまで「リスクへの備え」と位置付け、将来確実に必要となる資金の形成は運用でカバーするという考え方も重要です。
たとえば、住宅ローンや子どもの学費といった予定支出には現役中の収入や積立投資で備えつつ、自分に万一のことがあった場合に不足する分は定期保険や収入保障保険で補う、という分担です。
- 投資にはリスクが伴うため、「元本割れは困る」という方は貯蓄型保険で確実に準備する方法もあります。しかし、その場合でも、生命保険の貯蓄性はあくまでおまけと捉え、まずは必要保障額を満たすことを優先しましょう。
保険料と貯蓄額のバランスを考え、「保障」と「運用」それぞれにいくら割り当てるかを決めていくと、無駄のない保険プランが見えてきます。
定期的な見直し(セルフチェック)を行う
保険は、一度加入したら終わりではありません。時間の経過とともに、あなたや配偶者の働き方や収入、資産状況は変わります。状況の変化に応じて、その後も定期的なメンテナンスを行いましょう。
ライフステージや家族構成の変化に応じて必要保障額は刻々と変わり、公的制度の改正や保険商品の進化によって、より有利な選択肢が登場することもあります。
目安として3~5年ごと、あるいは結婚・出産・住宅購入・子どもの独立・退職など大きなイベントの際には、必ず現在の保障内容をセルフチェックしましょう。
チェックするポイント
- 現在の保障額は今の自分に過不足ないか
- 家族構成の変化に対応できているか
- 保険料負担は適正か
- よりよい商品が出ていないか
- 特約の必要性など
例えば、子どもが独立した後にまだ高額な死亡保障に加入し続けているなら、縮小や解約を検討すべきです。逆に、健康状態に不安がある場合や持病ができてしまったなら、今の保険を継続する価値が高まります。
また、古い契約より新しい商品の方が保障内容が充実して保険料が安いケースもあります。保険会社は市場のニーズや社会状況の変化に対応するために保険商品を開発・販売しているため、見直し時には最新の商品動向も確認してみましょう。
あなた自身で判断が難しい場合は、お金の専門家(ファイナンシャルプランナー)に相談するのも一手です。こうした見直し・調整を怠らず続けることで、長い人生にわたり無駄のない最適な保険プランを保ち続けることができます。
よくある質問(FAQ)
この記事のまとめ
保険は「家計を守るコスト」と「資産を育てる手段」を混同せず、必要保障額が大きい期間は掛け捨てでコストを抑え、目的が明確な長期資金だけを貯蓄型で賄うのが合理的です。契約前には総支払額と返戻金の実質利回り、流動性、解約条件を比較し、複数社の見積もりをFPと検証することで後悔を防げます。読後は現在加入中の保険証券を確認し、保障と貯蓄を分離した設計になっているか点検してみましょう。

MONO Investment
投資のコンシェルジュ編集部は、投資銀行やアセットマネジメント会社の出身者、税理士など「金融のプロフェッショナル」が執筆・監修しています。 販売会社とは利害関係がないため、主に個人の資産運用に必要な情報を、正確にわかりやすく、中立性をもってコンテンツを作成しています。
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ファイナンシャル・プランナー(FP)
ファイナンシャル・プランナーとは、お金に関する幅広い知識を持ち、個人や家庭のライフプランに応じた資金計画や資産運用、保険、税金、年金、相続などについてアドバイスを行う専門家のことです。略して「FP(エフピー)」と呼ばれることもあります。例えば、子どもの教育資金や老後の生活費をどのように準備するか、住宅ローンをどう組むべきか、保険は見直すべきかといった具体的な悩みに対して、相談者の状況に合ったプランを提案してくれます。国家資格や民間資格を持つファイナンシャル・プランナーが存在し、中立的な立場でアドバイスをしてくれる点が信頼されています。投資や家計管理に自信がない方にとって、人生の重要なお金の意思決定をサポートしてくれる心強い存在です。
貯蓄型保険(積立型)
貯蓄型保険(積立型)とは、万が一の保障に加えて、将来的にお金が戻ってくる仕組みを備えた保険商品のことです。保険料の一部が積み立てられ、契約満了時や途中解約時に「解約返戻金」や「満期保険金」として受け取れるようになっています。 代表的な商品には、終身保険、養老保険、学資保険などがあり、保険としての安心を持ちながら、同時に資産形成も行えるのが特徴です。特に、教育資金や老後資金の準備、相続対策など、目的を持った長期の計画に活用されます。 「掛け捨て型保険」と異なり、支払った保険料が将来的に戻ってくるため、保険と貯金の“ハイブリッド”として位置づけられる商品です。ただし、途中解約すると元本割れするリスクがあるほか、運用利回りが低めに抑えられていることが多いため、目的と期間をしっかり考えて加入することが大切です。 保障と貯蓄を1つの仕組みで両立させたい人にとって、計画的な資産形成の手段として有効な選択肢のひとつです。
解約返戻金
解約返戻金とは、生命保険などの保険契約を途中で解約したときに、契約者が受け取ることができる払い戻し金のことをいいます。これは、これまでに支払ってきた保険料の一部が積み立てられていたものから、保険会社の手数料や運用実績などを差し引いた金額です。 契約からの経過年数が短いうちに解約すると、解約返戻金が少なかったり、まったく戻らなかったりすることもあるため、注意が必要です。一方で、長期間契約を続けた場合には、返戻金が支払った保険料を上回ることもあり、貯蓄性のある保険商品として活用されることもあります。資産運用やライフプランを考えるうえで、保険の解約によって現金化できる金額がいくらになるかを把握しておくことはとても大切です。
予定利率
予定利率は、生命保険会社が保険契約者に対してあらかじめ約束する運用利回りのことです。これは保険会社が保険料を計算する際に用いる重要な指標の一つで、契約者から払い込まれた保険料を運用して得られると予想される運用利回りを表します。 予定利率は保険料の設定に大きな影響を与えます。予定利率が高い場合は保険料が安くなり、低い場合は高くなります。これは、高い予定利率では将来の運用によるリターンを多く見込めるため、保険料を低く抑えることができるからです。 予定利率の決定方法は、まず金融庁が国債の利回りなどを参考に「標準利率」を設定し、その後各保険会社が標準利率を基準に自社の状況を反映して決定します。 予定利率には特徴があり、契約時点の率が適用され、基本的には支払い終了時や更新時まで同率で変わりません。バブル経済期には高い予定利率の保険が多く販売され、これらは「お宝保険」と呼ばれています。近年は低金利環境により、予定利率は低下傾向にあります。 保険料の計算には予定利率以外にも、予定死亡率(性別、年齢別に想定される死亡率)や予定事業費率(保険会社の運営に必要な経費の割合)も影響します。これら3つの要因を合わせて「予定基礎率」と呼びます。
生命保険料控除
生命保険料控除とは、個人が支払った生命保険料に応じて、所得税や住民税の課税所得額を一定金額まで減らすことができる税制上の優遇制度です。この控除によって、納める税金が軽減されるため、実質的に保険料の一部が戻ってくる効果があります。 対象となる保険は、「一般生命保険」「介護医療保険」「個人年金保険」の3つの区分に分かれており、それぞれに控除限度額が設けられています。控除を受けるには、保険会社から発行される控除証明書を年末調整や確定申告の際に提出する必要があります。保険による万一への備えと、節税効果の両方を得られる制度として、多くの人に活用されています。初心者にとっても、生命保険を契約する際にはこの控除制度の存在を知っておくことで、より効果的な保険選びや家計管理につなげることができます。
都道府県民共済
都道府県民共済とは、各都道府県に住む人々が組合員となり、掛金を出し合って万一の病気やけが、死亡などに備える協同組合方式の保険制度です。営利を目的としない仕組みのため、保険料に相当する掛金が比較的低く抑えられ、余剰が出た場合には割戻金として組合員に還元される特徴があります。 また、シンプルな保障内容とわかりやすい加入手続きが支持されており、家計の固定費を抑えつつ必要な保障を確保したい人に適した選択肢といえます。
掛け捨て保険
掛け捨て保険とは、一定期間の保障を得ることに特化した保険で、保険期間が終わった後に保険料が戻ってこないタイプの保険です。代表的なものに、定期型の生命保険や医療保険があります。保障が必要な期間に絞って加入できるため、毎月の保険料を安く抑えられるのが大きな特徴です。貯蓄機能はないものの、万一に備えるコストパフォーマンスが高く、特に子育て世代や住宅ローン返済中など、一時的に大きな保障を必要とする方に適しています。「お金が戻らないから損」と感じる方もいますが、必要な時期に必要な保障を効率よく確保する手段として、多くの方に利用されています。
終身保険
終身保険とは、被保険者が亡くなるまで一生涯にわたって保障が続く生命保険のことです。契約が有効である限り、いつ亡くなっても保険金が支払われる点が大きな特徴です。また、長く契約を続けることで、解約した際に戻ってくるお金である「解約返戻金」も一定程度蓄積されるため、保障と同時に資産形成の手段としても利用されます。 保険料は一定期間で払い終えるものや、生涯支払い続けるものなど、契約によってさまざまです。遺族への経済的保障を目的に契約されることが多く、老後の資金準備や相続対策としても活用されます。途中で解約すると、払い込んだ金額よりも少ない返戻金しか戻らないこともあるため、長期の視点で加入することが前提となる保険です。
個人年金保険
個人年金保険とは、公的年金だけでは不足しがちな老後資金を、自助努力で補うために設計された私的年金商品です。契約者が決められた期間にわたり保険料を払い込み、あらかじめ設定した開始年齢(60歳・65歳など)に達すると年金形式で受け取りが始まります。受取方法には、決められた年数だけ確実に受け取る「確定年金型」と、生存している限り終身で受け取れる「終身年金型」があり、どちらを選ぶかによって総受取額や万一の際の遺族保障の形が異なります。変額型や外貨建て型など、インフレ対応や為替分散を意識したバリエーションも登場しています。 大きな魅力の一つは税制優遇です。一定の要件(受取人が契約者本人または配偶者、払込期間が10年以上など)を満たす契約であれば、払込保険料は「個人年金保険料控除」として所得控除の対象になります。たとえば年間保険料が8万円の場合、所得税で最大4万円、住民税で最大2万8千円が控除され、課税所得を圧縮できるため実質負担を抑えながら老後資金を積み立てられる点がメリットです。 一方で注意すべき点もあります。途中解約時には元本割れが生じやすく、解約返戻金が払込総額を下回るケースが多いこと、固定利率型の商品ではインフレに追いつけない可能性があること、そして保険会社が破綻した場合でも保険契約者保護機構による補償は責任準備金の90%が上限となることです。また、税優遇制度としては個人型確定拠出年金(iDeCo)や新NISAも利用できるため、流動性・運用商品の自由度・掛金上限などを比較し、自分に合った組み合わせを検討する必要があります。 これらの特徴を踏まえると、個人年金保険は「計画的に積立を続け、税制メリットを生かしながら老後の生活費を補完したい」人に適した選択肢といえます。生活防衛資金や他の運用枠を確保したうえで長期的な資産形成の一環として活用すれば、老後のキャッシュフローに安定感をもたらす手段となるでしょう。
養老保険
養老保険とは、「保障」と「貯蓄」の両方の機能を備えた生命保険です。契約期間中に万が一亡くなった場合には「死亡保険金」が支払われ、無事に満期を迎えた場合には「満期保険金」として同じ金額が受け取れるのが大きな特徴です。 そのため、老後資金の準備やお子さまの教育資金づくりなど、将来に備えながら万が一にも備えられる保険として活用されています。貯金感覚で利用できる点から、計画的に資金を準備したい方に適しています。 ただし、保障と貯蓄の両方を兼ね備えているため、保険料は定期保険よりも高めに設定されている点には注意が必要です。しっかりと目的と費用のバランスを考えて加入することが大切です。
学資保険
学資保険とは、子どもの教育資金を計画的に準備するための保険商品で、一定期間保険料を支払うことで、子どもの進学時期(中学・高校・大学入学など)に合わせて祝い金や満期保険金が受け取れる仕組みになっています。保険であるため、契約者(通常は親)に万が一のことがあった場合でも、以後の保険料の支払いが免除され、満期時には予定どおりの給付金が支払われる点が大きな特徴です。 貯蓄機能と保障機能が組み合わさっており、「教育費を積み立てながら万一に備えたい」と考える家庭に人気があります。ただし、途中解約すると元本割れするリスクがあるため、長期的な資金計画としての活用が前提となります。初心者の方にとっては、預貯金とは違う形で将来の教育資金を準備できる手段のひとつとして、選択肢に入れて検討する価値があります。
定期保険
定期保険とは、あらかじめ決められた一定の期間だけ保障が受けられる生命保険のことです。たとえば10年や20年といった契約期間のあいだに万が一のことがあれば、保険金が支払われますが、その期間を過ぎると保障はなくなります。保障期間が限定されているため、保険料は比較的安く設定されています。特に子育て世代や住宅ローンを抱えている方など、特定の期間だけ万が一の保障を重視したい場合に適しています。貯蓄性はなく、純粋に「保障のための保険」である点が特徴です。
医療保険
医療保険とは、病気やケガによる入院・手術などの医療費を補償するための保険です。公的医療保険と民間医療保険の2種類があり、日本では健康保険や国民健康保険が公的制度として提供されています。一方、民間医療保険は、公的保険でカバーしきれない自己負担分や特定の治療費を補填するために活用されます。契約内容によって給付金の額や支払い条件が異なり、将来の医療費負担を軽減するために重要な役割を果たします。
がん保険
がんと診断されたときや治療を受けたときに給付金が支払われる民間保険です。公的医療保険ではカバーしきれない差額ベッド代や先進医療の自己負担分、就業不能による収入減少など、治療以外の家計リスクも幅広く備えられる点が特徴です。通常は「診断一時金」「入院給付金」「通院給付金」など複数の給付項目がセットされており、加入時の年齢・性別・保障内容によって保険料が決まります。 更新型と終身型があり、更新型は一定年齢で保険料が上がる一方、終身型は加入時の保険料が一生続くため、長期的な負担の見通しを立てることが大切です。がん治療は医療技術の進歩で入院期間が短くなり通院や薬物療法が中心になる傾向があるため、保障内容が現在の治療実態に合っているかを確認し、必要に応じて保険の見直しを行うと安心です。
就業不能保険
就業不能保険とは、病気やけがで働けなくなり、収入が得られなくなった場合に、一定期間ごとに保険金が支払われる民間の保険商品です。この保険は、入院や自宅療養などで仕事を続けられない状況が長引いたときに、生活費やローン返済などの家計の負担を軽減するために設けられています。 公的な障害年金制度ではカバーしきれない部分を補う目的があり、自営業者やフリーランスなど、収入の保障が不安定な人に特に注目されています。保障内容や支払期間、免責期間などは契約ごとに異なるため、自分の職業やライフスタイルに合わせて選ぶことが大切です。
満期保険金
満期保険金とは、保険契約で定められた期間が終了したときに、契約者や被保険者に支払われるお金のことをいいます。たとえば、10年や20年などの一定期間保険料を払い続け、満期になったときにその保険が「満了」すると、あらかじめ決められた金額が支払われます。 このお金は、死亡や病気などのリスクに備えるだけでなく、貯蓄のように将来の資金づくりにも役立つという特徴があります。特に学資保険や養老保険などでよく使われる仕組みです。
返戻率
返戻率とは、生命保険や学資保険などの貯蓄型保険において、支払った保険料の総額に対して、満期や解約時に受け取れる金額(解約返戻金や満期保険金)がどのくらいの割合で戻ってくるかを示す指標です。たとえば、200万円の保険料を支払って、満期時に220万円を受け取れる場合、返戻率は110%となります。 この数値が100%を上回れば「支払った保険料より多く戻る」、下回れば「元本割れ」ということになります。返戻率は商品選びの際の比較指標としてよく使われ、特に学資保険や個人年金保険など、将来の資金準備を目的とした保険において注目されます。 ただし、返戻率が高い商品は契約条件が厳しかったり、途中解約に弱かったりする場合もあるため、利率だけでなくライフプラン全体を見据えて判断することが大切です。保険を「貯蓄」としても考える初心者にとって、返戻率は理解しておくべき基本的な指標です。
流動性
流動性とは、資産を「現金に変えやすいかどうか」を表す指標です。流動性が高い資産は、短時間で簡単に売買でき、現金化しやすいという特徴があります。例えば、上場株式や国債は市場で取引量が多く、いつでも売買できるため、流動性が高い資産とされています。 一方、不動産や未上場株式のように、売買相手を見つけるのが難しかったり、取引に時間がかかったりする資産は、流動性が低いといえます。 投資をする際には、自分が必要なときに資金を取り出せるかを考えることが重要です。特に初心者は、流動性が高い資産を選ぶことで、急な資金需要にも対応しやすく、リスクを抑えることができます。
元本割れ
元本割れとは、投資で使ったお金、つまり元本(がんぽん)よりも、最終的に戻ってきた金額が少なくなることをいいます。たとえば、100万円で投資信託を購入したのに、解約時に戻ってきたのが90万円だった場合、この差額10万円が損失であり、「元本割れした」という状態です。 特に、価格が変動する商品、たとえば株式や投資信託、債券などでは、将来の価格や分配金が保証されているわけではないため、元本割れのリスクがあります。「絶対に損をしたくない」と考える方にとっては、このリスクを正しく理解することがとても重要です。金融商品を選ぶときには、利回りだけでなく元本割れの可能性も十分に考慮しましょう。
必要保障額
必要保障額とは、万一の際に残された家族が現在と同等の生活水準を維持しながら、将来の教育費や住宅費といった支出も含めて安心して暮らしていけるよう、生命保険などで準備すべき金額を指します。具体的には、遺族の生活費、子どもの教育資金、住宅ローンの残債、葬儀費用などの「必要資金」から、公的遺族年金、勤務先の死亡退職金、既存の貯蓄や保険などの「準備済み資金」を差し引くことで算出します。 この必要保障額は、家族構成や年齢、子どもの進学予定、住宅ローンの残り期間など、個々のライフプランによって大きく異なります。たとえば、子どもが小さいうちは教育費や生活費の負担が長期にわたるため保障額は大きくなりがちですが、成長とともに必要な保障額は徐々に減少していきます。また、配偶者の就労状況や資産形成の進捗によっても必要な金額は変動します。 そのため、保険を一度加入したら終わりではなく、ライフステージの変化に応じて定期的に見直すことが重要です。保障が過剰であれば保険料の無駄払いになり、逆に不足していればいざというときに家族が困ることになります。こうしたリスクを避けるためにも、保険はライフプラン全体の中での位置づけとして考えることが不可欠です。 保険加入を検討する際には、営業担当者の提案を鵜呑みにせず、自分の生活設計に照らして必要な保障内容を見極めることが大切です。保障の目的や期間、公的制度とのバランス、そして家計や資産運用との整合性を踏まえた設計にすることで、無理なく持続可能な保険の活用が実現できます。必要に応じて、ライフプランニングに精通した中立的な専門家に相談し、現状の見直しと将来設計を行うのも有効な方法です。
個人年金保険料控除
個人年金保険料控除とは、一定の条件を満たす個人年金保険に加入し、その保険料を支払った場合に受けられる所得控除の制度です。確定申告や年末調整で申告すると、支払った保険料のうち所定の計算式で算出した額が所得から差し引かれ、その分だけ所得税や住民税が軽減されます。2012年以降に契約した新制度では、控除できる上限額が所得税で年間4万円、住民税で年間2万8,000円と定められ、一般・介護医療・個人年金の各保険料控除を合わせた適用限度額は所得税で12万円までとなっています。将来の年金づくりを行いながら節税も図れるため、長期的な資産形成を目指す人にとって利用価値の高い制度です。
NISA
NISAとは、「少額投資非課税制度(Nippon Individual Saving Account)」の略称で、日本に住む個人が一定額までの投資について、配当金や売却益などにかかる税金が非課税になる制度です。通常、株式や投資信託などで得られる利益には約20%の税金がかかりますが、NISA口座を使えばその税金がかからず、効率的に資産形成を行うことができます。2024年からは新しいNISA制度が始まり、「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の2つを併用できる仕組みとなり、非課税期間も無期限化されました。年間の投資枠や口座の開設先は決められており、原則として1人1口座しか持てません。NISAは投資初心者にも利用しやすい制度として広く普及しており、長期的な資産形成を支援する国の税制優遇措置のひとつです。
iDeCo(イデコ/個人型確定拠出年金)
iDeCo(イデコ)とは、個人型確定拠出年金の愛称で、老後の資金を作るための私的年金制度です。20歳以上65歳未満の人が加入でき、掛け金は65歳まで拠出可能。60歳まで原則引き出せません。 加入者は毎月の掛け金を決めて積み立て、選んだ金融商品で長期運用し、60歳以降に年金または一時金として受け取ります。加入には金融機関選択、口座開設、申込書類提出などの手続きが必要です。 投資信託や定期預金、生命保険などの金融商品で運用し、税制優遇を受けられます。積立時は掛金が全額所得控除の対象となり、運用時は運用益が非課税、受取時も一定額が非課税になるなどのメリットがあります。 一方で、証券口座と異なり各種手数料がかかること、途中引き出しが原則できない、というデメリットもあります。
高額療養費制度
高額療養費制度とは、1ヶ月間に医療機関で支払った自己負担額が一定の上限額を超えた場合、その超過分については後から払い戻しを受けられる公的な医療費助成制度です。日本の公的医療保険制度では、治療費の自己負担割合は原則3割(高齢者等は1〜2割)とされていますが、重い病気や手術、長期入院などで医療費がかさむと、家計への影響が大きくなります。高額療養費制度は、そうした経済的負担を軽減するために設けられており、「所得区分に応じた月ごとの上限額」を超える分について、申請によって払い戻しを受けることができます。 さらに、事前に健康保険の窓口で「限度額適用認定証」を取得して医療機関に提示すれば、病院の窓口で支払う額自体を、最初から自己負担限度額までに抑えることも可能です。これにより、退院後の申請を待たずに、現金の一時的な負担を大きく減らすことができます。 この制度の上限額は、70歳未満・70歳以上で異なり、さらに被保険者の所得区分(年収目安)に応じて細かく設定されています。例えば、年収約370万〜770万円程度の方(一般的な所得区分)であれば、1ヶ月あたりの自己負担限度額は「約8万円+(総医療費−26.7万円)×1%」となり、想定以上の医療費負担が発生しても、上限を超えた分は保険者から還付されます。 資産運用の観点では、この制度の存在によって、突発的な医療費リスクの一部を公的にカバーできるため、「民間医療保険や緊急時資金の準備」を過度に厚くする必要がない可能性があります。 つまり、医療費リスクへの備えを公的制度・民間保険・現金準備のバランスで考える際、この制度の適用範囲を正しく理解しておくことが、保険の選択や生活防衛資金の適切な設定に役立ちます。特に、高所得者層や自営業者は制度上の上限額が比較的高めに設定されている点や、支給までにタイムラグがあることも踏まえ、制度と現金の備えの両面から検討することが重要です。
割戻金
割戻金とは、共済や協同組合型の保険で決算後に剰余が生じた場合、その余剰を組合員や契約者に払い戻すお金のことです。営利企業の配当と異なり、非営利組織が掲げる「構成員への利益還元」という理念に基づいており、掛金が安いままでも実際の保障コストがさらに低く済めば、その差額が割戻金として戻ってきます。 これにより加入者は、当初の掛金だけでなく実質的な負担額も小さく抑えられ、家計の防衛力を高めながら保障を維持できます。また、割戻金の有無や金額は毎年の事業成績に左右されるため、共済を選ぶ際には過去数年の割戻実績を確認することが、長期的なコストパフォーマンスを判断するうえで大切です。
遺族厚生年金
遺族厚生年金とは、厚生年金に加入していた人が亡くなった場合に、その遺族に支給される公的年金のことです。対象となるのは、主に配偶者(特に一定年齢以上の妻)、子ども、父母、孫、祖父母などで、生計を同じくしていたことが条件とされます。 遺族基礎年金が子どもがいる世帯を中心に支給されるのに対し、遺族厚生年金は子どもがいなくても一定の条件を満たせば支給されるため、対象範囲がやや広いのが特徴です。支給額は、亡くなった人の厚生年金の納付記録や報酬額に基づいて計算されるため、個人差があります。また、遺族基礎年金と併用して受け取れる場合もあり、特に現役世代の死亡リスクに備える重要な保障制度のひとつとされています。家計の柱を失ったときに、遺族の生活を長期にわたって支える仕組みです。
遺族基礎年金
遺族基礎年金とは、国民年金に加入していた人が亡くなったときに、その人に生計を維持されていた一定の家族(主に子どもがいる配偶者や子ども自身)に支給される年金です。これは公的年金制度のひとつで、生活保障を目的としており、主に子育て世帯を対象にしています。たとえば、夫が亡くなり、子どもを育てる妻がいる場合、その妻に遺族基礎年金が支給されます。受給の条件には、亡くなった人が保険料を一定期間納付していたことや、受け取る側に対象となる子どもがいることなどが含まれます。支給額は定額で、子どもの人数に応じた加算もあります。子どもが一定年齢に達すると支給は終了します。家計を支える人を失ったときに、遺族の生活を一定期間支援する大切な制度です。
J-FLEC認定アドバイザー
J-FLEC認定アドバイザーとは、金融リテラシーの向上を目的とする団体「J-FLEC(ジャパン・ファイナンシャル・リテラシー・アセスメント・コンソーシアム)」が認定する、金融教育の専門知識を持ったアドバイザーのことです。この資格を持つ人は、家計の見直しや資産形成、金融商品の選び方などについて、正しい知識に基づいたアドバイスができると認められています。投資初心者やお金に関する判断に自信がない方が、信頼できる相談相手として活用できる存在です。特に中立的な立場でアドバイスを行うことが求められており、特定の商品を売ることが目的ではない点が大きな特徴です。