
団体信用生命保険(団信)とは?住宅ローンの仕組み・加入条件・種類別の保障内容を解説
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公開:
2025.09.22
更新:
2025.09.22
住宅ローンを組む際に多くの人が加入する団体信用生命保険(団信)は、契約者に万一のことがあった場合に残債をゼロにして家族の生活を守る重要な仕組みです。
ただし受取人は金融機関であり、保障は死亡や高度障害が中心という点を見落としがちです。近年はがん団信や三大疾病特約など、金利に0.1〜0.3%上乗せして保障を広げる選択肢も登場しています。
この記事では、制度の基本から費用負担の目安、特約や審査の注意点までを整理し、適切な選択に役立つ知識をお届けします。
サクッとわかる!簡単要約
この記事を読むと、団信の仕組みや受取人、保障範囲、加入条件の基本を短時間で理解できます。
さらに、がん団信や三大疾病特約など金利上乗せの具体例(0.1〜0.3%)や、借入額3,000万円での月負担目安といった数字をもとに費用感を把握できます。告知審査や年齢制限、借り換え時の再審査といった注意点も整理されており、生命保険の見直しやワイド団信の検討など、実際に取るべき行動のヒントが得られます。
目次
団体信用生命保険(団信)とは?住宅ローンとセットで加入する生命保険の基本
保険金は誰が受け取る?金融機関が受取人となりローン返済に充当
フラット35の団信(機構団信)には保障範囲が異なるタイプがある
団信と一般の生命保険との違いは?保障の重複と見直しのポイント
目的で使い分け|団信は「家」、生命保険は「家族の生活」を守る
団信の加入条件と審査|年齢制限や健康状態の告知ポイントを解説
団信に加入できる年齢は?健康状態・借入額も影響する3つの条件
選択肢②:団信なしで借りられる住宅ローン(フラット35など)を選ぶ
ワイド団信や審査に関する注意点|病名だけで判断されるわけではない
ケース1:単独収入の家庭は「基本団信+生命保険」で生活費もカバー
ケース2:収入差のある共働き夫婦は「夫婦連生団信」でリスクを軽減
ケース3:収入が同程度の共働きなら「夫婦連生団信+疾病特約」も検討
ケース4:自営業者は「基本団信+全疾病保障」で就業不能に備える
団体信用生命保険(団信)とは?住宅ローンとセットで加入する生命保険の基本
団体信用生命保険(団信)は、住宅ローン契約者が返済中に亡くなったり、重い障害を負ったりした場合に備える保険です。この記事では、団信の基本的な仕組み、保険金の受取人、そして保障される範囲について、誤解されやすいポイントも含めて分かりやすく解説します。
団信の仕組み|万一の際、ローン残高がゼロになる保険
団体信用生命保険(団信)は、住宅ローンの返済中に契約者が死亡または所定の高度障害状態になった際、保険金でローン残高を完済するための生命保険です。住宅ローン契約時に金融機関を通じて加入するのが一般的で、以下の点が特徴です。
- 契約形態:金融機関が保険契約者と保険金受取人になり、住宅ローンを借りる人が被保険者となります。万一の場合、保険金は金融機関へ直接支払われ、ローンの返済に充てられます。
- 保障範囲:基本的には死亡と高度障害が保障対象となり、ローン残高がゼロになります。近年は、がんや3大疾病(がん・急性心筋梗塞・脳卒中)なども保障する特約付きの商品が増えています。
- 加入条件:民間の住宅ローンでは、多くの場合で加入が必須条件です。保険料は金利に含まれているため別途支払う必要がなく、加入している自覚がないケースもあります。
- メリット:契約者に万一のことがあっても、残された家族に住宅ローンの返済義務が残りません。住まいを失う心配がなくなるため、安心してマイホームを取得できる心強い制度です。
保険金は誰が受け取る?金融機関が受取人となりローン返済に充当
団信は住宅ローンと密接に関係しており、多くの金融機関で加入が融資の条件となっています。保険金は家族ではなく金融機関が受け取り、保険会社から支払われた保険金でローン残高が一括返済されます。その結果、借入人や遺族は返済義務を免れ、ローンは完済となります。
保障期間はローンの返済期間と同一で、完済と同時に保障も終了します。ただし、保険金は自動的に支払われるわけではありません。保障の対象となる事態が発生したら、遺族などが金融機関へ請求手続きをする必要があります。
また、団信の保険料は金利に含まれ、年齢や性別を問わず一律です。そのため、一般の生命保険とは異なり、生命保険料控除の対象にはなりません。
団信は必須?民間ローンとフラット35の違いを比較
住宅ローンは、種類によって団信への加入が必須か任意かが異なります。多くの民間金融機関のローンでは加入が原則必須ですが、住宅金融支援機構が提供するフラット35では任意加入となっています。ここでは、両者の違いとフラット35の団信制度について解説します。
加入義務の違い|民間ローンは原則必須、フラット35は任意
多くの民間金融機関の住宅ローンでは、団信への加入が必須です。健康状態に関する告知審査に通過しなければ、ローン契約を結べません。保険料は金利に組み込まれていることが多く、別途支払う必要はありません。そのため、健康上の理由で加入できないと、融資そのものを受けられない可能性があります。
一方、長期固定金利のフラット35では、団信への加入は任意です。健康上の理由などで加入が難しい人でもローンを組めるのが大きな違いです。ただし、現在では団信込みの金利が基本となり、加入しない場合は金利が年0.2%程度引き下げられる仕組みになっています。例えば、団信付きの金利が年1.5%なら、加入しない場合は年1.3%程度になるイメージです。
フラット35の仕組みや注意点については以下記事で詳しく解説しています。
フラット35の団信(機構団信)には保障範囲が異なるタイプがある
フラット35で任意加入できる団信は「機構団信」と呼ばれ、保障範囲が異なる複数のタイプから選べます。
- 新機構団信(基本タイプ):死亡または所定の高度障害状態になった場合に、ローン残高の返済が不要になる保障です。保障内容は一般的な団信と同等で、費用は当初の金利に含まれています。
- 新3大疾病付機構団信:基本保障に加え、「がん・急性心筋梗塞・脳卒中」の3大疾病にも対応したタイプです。がんと診断された場合や、心筋梗塞・脳卒中で所定の状態になった場合にローン残高がゼロになります。保障が手厚い分、金利が年0.24%程度上乗せされます。
心筋梗塞・脳卒中の保障適用には、「60日以上の労働制限が続くこと」などの条件が付く点には注意が必要です。
なお、民間金融機関でも、がん団信や3大疾病団信など、機構団信と同様に金利を上乗せすることで保障を充実させた特約付き商品が提供されています。
団信なしのリスクと金利上乗せの正しい考え方
フラット35の団信は任意加入のため、不要だと考える人もいるかもしれません。しかし、団信に加入しない場合、契約者に万一のことがあると、家族に住宅ローンだけが残ってしまいます。特に家族がいる方は、団信に代わる生命保険などで万一に備える必要があります。
また、特約付き団信の金利上乗せを「損」だと考えるのも早計です。団信の保険料は年齢にかかわらず一律のため、高齢で加入する人ほど割安になる場合があります。さらに、繰り上げ返済をすれば、将来支払うはずだった利息(保険料相当分)も減るため、結果的に負担を抑えることにも繋がります。
例えば、借入額3,000万円で金利が0.2%上乗せされた場合、月々の負担増は約2,500円から3,000円程度です。このコストで大きな安心を得られると考えれば、決して高すぎるとは言えないでしょう。
団信と一般の生命保険との違いは?保障の重複と見直しのポイント
団信は生命保険の一種ですが、一般の生命保険とは目的や仕組みが大きく異なります。ここでは、団信と個人向け生命保険の主な違いを整理し、住宅ローン契約時に既存の保険を見直す際のポイントを解説します。
目的で使い分け|団信は「家」、生命保険は「家族の生活」を守る
団信と一般の死亡保険は、保障の目的が根本的に異なります。主な違いは以下の5点です。
- 受取人:団信は金融機関ですが、生命保険は遺族など指定した個人です。
- 用途:団信の保険金はローン返済に限定されますが、生命保険は生活費や教育費など自由に使うことができます。
- 保障額:団信はローン残高に応じて減少しますが、生命保険は契約時に定めた一定額が保障されます。
- 保障期間:団信はローン返済期間中のみ有効ですが、生命保険は定期や終身など契約内容に応じた期間、保障が続きます。
- 保険料:団信は金利に含まれ一律ですが、生命保険は年齢や健康状態に応じて個別に設定され、生命保険料控除の対象にもなります。
これらの違いから、団信は住宅ローン返済に特化した保険と言えます。その目的はローン残債をなくすことであり、家族の生活費を直接保障するものではありません。
そのため、住宅ローンを組む際は、すでに加入している生命保険の保障内容が団信と重複していないか確認することが大切です。例えば、3,000万円の住宅ローンを組む方が団信に加入すれば、万一の際にローンは完済されます。もしこの方が、ローン返済を想定して3,000万円の死亡保険に加入していた場合、団信と保障が重なるため、死亡保険の保障額を減額するなどの見直しが可能です。
ただし、団信はローン完済と共に保障がなくなります。将来的に家族に残す資金が必要な場合は、生命保険を減額しすぎないよう注意しましょう。
団信加入後の生命保険の見直し方|不要になるケースとは?
「住宅ローンを組んだら、生命保険は不要になるのでは?」と考える人もいますが、一概にそうとは言えません。生命保険の必要性は、世帯の状況によって異なります。
子どもや扶養家族がいる場合、団信で住宅費の心配がなくなっても、その後の生活費や教育費は別途必要です。特に収入を一人で支えている世帯では、遺族年金だけでは不十分な場合が多く、生命保険で備える必要があります。
一方で、夫婦共働きで子どもがいない世帯などでは、片方の収入がなくなっても、もう一方の収入で生活を維持できる場合があります。この場合、団信で住宅ローンがなくなれば大きな経済的不安は解消されるため、追加の死亡保険は不要と判断できるかもしれません。
大切なのは、団信への加入を機に、既存の生命保険を見直すことです。すぐに全ての保険を解約するのではなく、団信でカバーできる部分とできない部分を整理し、家族にとって本当に必要な保障額を再計算しましょう。場合によっては、死亡保険を減額したり、毎月定額が受け取れる収入保障保険に切り替えたりすることで、保険料を節約しつつ合理的な備えができます。
団信の加入条件と審査|年齢制限や健康状態の告知ポイントを解説
団信に加入するためには、年齢や健康状態などいくつかの条件をクリアする必要があります。ここでは加入条件の全体像から、実際の告知審査の流れ、そして万一加入できない場合の対策について解説します。団信の審査は住宅ローン審査と並行して行われるため、事前に要件を理解し備えておきましょう。
団信に加入できる年齢は?健康状態・借入額も影響する3つの条件
団信に加入するためには、主に「年齢」「健康状態」「借入条件」の3つの要件を満たす必要があります。特に年齢と健康状態は、希望する保障内容や住宅ローンそのものの契約可否に直接影響するため、事前に確認しておくことが重要です。
1. 年齢制限:加入時と完済時の年齢に上限あり
加入時とローン完済時の年齢には上限が設けられています。民間の多くの住宅ローンでは借入時年齢はおおむね満18〜65歳・完済時年齢は満80歳未満が一般的で、フラット35の新機構団信は『加入時満15歳以上満70歳未満』です。
例えば、60歳で35年ローンを組むと完済時年齢が上限を超えるため、借入期間の短縮などが必要です。また、がん保障などの特約付き団信では、「加入は50歳まで」など、より厳しい年齢制限が設けられている場合があります。
2. 健康状態:過去の病歴や現在の治療状況を告知
団信は生命保険の一種であるため、加入時に健康状態の告知が必須です。過去の病歴や現在の治療状況によっては、加入を断られる(=住宅ローンを利用できない)可能性もあります。
告知書では、最近の通院状況や過去数年以内の大きな病気・手術の有無、具体的な病名(心臓病、糖尿病、うつ病など)について問われ、その内容に基づいて保険会社が加入可否を判断します。
3. 借入条件:ローン契約と同時に加入、途中加入は不可
団信への加入は、原則として住宅ローン契約時の一度きりです。後から途中加入することは基本的にできないため、ローン申込時点で条件を満たしている必要があります。
また、借入額や返済期間も審査に影響します。極端に高額な借入や長期の返済期間は、完済時年齢の制約に抵触しやすくなるほか、保険会社のリスク判断がより慎重になる傾向があります。
審査で見られる告知内容|正直な申告が重要になる理由
団信の告知審査は、住宅ローン契約における重要なプロセスです。告知書の記入から審査結果の通知まで、一連の流れと各段階でのポイントを解説します。特に、事実をありのままに伝える正直な申告が、将来の安心を守る上で最も大切です。
1. 告知書の記入:健康状態をありのまま申告
住宅ローン契約時、「申込書兼告知書」に自身の健康状態を記入します。主な質問は「過去3か月以内の治療歴」や「過去数年以内の大きな病歴・手術歴」などです。該当する項目がなければ比較的短時間で済みますが、ある場合は病名や治療内容などを詳しく記載します。現状が安定していることなどを補足すると、審査の判断材料になります。
2. 保険会社での審査:告知内容に基づき引受可否を判断
提出された告知書をもとに、保険会社が審査を行います。告知事項がなければ数日から1週間程度で完了しますが、持病や治療歴がある場合は、診断書の提出などを求められ、審査が2〜3週間以上かかることもあります。健康面に不安がある方は、融資実行までのスケジュールに余裕を持たせ、早めに金融機関に相談して事前審査を依頼すると安心です。
3. 審査結果の通知:承認、加入不可(拒否)のいずれか
審査の結果は「承認」または「加入不可(拒否)」として通知されます。承認されれば、無事に団信へ加入できます。しかし、多くの民間ローンでは団信加入が融資の条件であるため、加入不可の場合はローン契約そのものが実行されません。稀に特定の疾病を保障対象外とする「条件付承認」もありますが、ほとんどは加入できるかできないかの二者択一です。
4. 告知のポイント:虚偽申告は絶対に避ける
告知書には、事実を正確に記入することが最も重要です。もし持病を隠して加入できたとしても、後に事実が発覚すれば告知義務違反となり、保険金が支払われません。その結果、家族に多額のローンだけが残ってしまう最悪の事態も起こりえます。「このくらいなら大丈夫だろう」といった自己判断はせず、質問されている項目には正直に回答しましょう。
健康診断は必要?審査にかかる期間の目安
団信の審査では、必ずしも健康診断書の提出が求められるわけではありません。告知書の内容が基本となりますが、審査にかかる期間は告知内容によって変動します。ここでは、健康診断の要否と審査期間の目安について解説します。
団信の加入手続きでは、新たに健康診断を受けたり、診断書を提出したりする必要は基本的にありません。告知書による自己申告が原則です。ただし、告知内容によっては、現在治療を受けている主治医などが作成した診断書の追加提出を求められることがあります。
審査期間は、告知事項がなければ1週間以内、ある場合は2〜4週間程度が目安です。この審査は住宅ローンの本審査と並行して進められます。融資実行日までの期間に余裕がない場合は、事前に自身の健康状態(過去の入院歴、治療中の病気など)を整理し、必要であれば金融機関の担当者に伝えておくとスムーズです。
団信の保障タイプ・特約の選び方|おすすめの種類を徹底比較
団信には、基本となる死亡・高度障害保障に加え、がんや三大疾病に備える特約など、保障範囲が異なる様々なタイプがあります。それぞれ保障内容やコストが異なるため、ご自身の健康への考え方や家計の状況に合わせて選ぶことが重要です。ここでは、主な保障タイプ別に特徴と、どのような人に向いているかを解説します。
基本団信|死亡・高度障害のみのシンプルな保障
基本団信は、特約が付かない最も標準的な団信です。保障範囲は「死亡」および「所定の高度障害状態」に限られます。ローン返済中に契約者がこれらの状態になった場合、保険金でローン残高が完済されます。高度障害とは、両目の失明や言語機能の永久的な喪失、常時介護を要する状態などが該当します。
このタイプは、最低限の保障で保険料負担を抑えたい人に適しています。多くの金融機関では金利の上乗せなしで付帯できるため、コストをかけずに万一の死亡リスクにだけ備えたい方に向いています。
がん団信|がんと診断されたらローン残高が0円に
がん団信は、基本保障に加えて、がんと診断された場合にもローンが完済される特約付きの団信です。医師によって所定のがん(悪性新生物)と診断が確定した時点で、保険金が支払われます。
費用は、住宅ローン金利に年0.1%程度の上乗せで提供されることが多く、比較的少ない負担で手厚い保障を備えられます。例えば、借入額3,000万円の場合、月々の負担増は2,500円程度です。がんの家系で不安がある方や、働き盛りの世代には有力な選択肢となるでしょう。
がん団信の注意点|対象外のがんや90日間の待機期間も
がん団信を検討する際は、メリットだけでなく以下の点も理解しておく必要があります。
- 対象外のがんがある:上皮内がんなど、ごく早期のがんは保障の対象外となるのが一般的です。
- 90日間の待機期間:契約から90日以内に診断されたがんは保障されません。加入直後の発症は対象外となる点に注意が必要です。
- 再発時の扱い:一度保険金が支払われてローンが完済されると、団信の契約も終了します。その後にがんが再発しても、保障はありません。
- 医療費はカバーしない:あくまでローン返済のための保険であり、治療費や収入減少を直接補填するものではありません。
がん団信は、低コストで高額なローン残高をカバーできる強力な保障ですが、医療保険の代わりにはなりません。治療費なども含めて手厚く備えたい場合は、民間のがん保険との組み合わせを検討するとよいでしょう。
三大疾病・全疾病保障|より広い範囲をカバーする特約の選び方
がん以外の重大な病気やケガによる長期療養リスクに備えたい場合は、さらに保障範囲の広い特約があります。
- 三大疾病保障:がん・急性心筋梗塞・脳卒中に罹患し、所定の状態になった場合にローンが免除されます。後遺症が残りやすい病気に備えたい方に向いており、金利は年0.2%前後の上乗せが一般的です。
- 七大・八大疾病保障:三大疾病に加え、高血圧・糖尿病・慢性腎不全などの生活習慣病まで保障範囲を広げたものです。保障が手厚い分、金利の上乗せ幅も大きくなる傾向があります。
- 全疾病保障:精神疾患などを除く全ての病気やケガが原因で、長期間働けない状態が続いた場合にローンが免除されます。自営業者など、休業が収入減に直結する方にとって心強い保障です。
保障範囲が広がるほど安心感は増しますが、コストも上昇します。ご自身の職業や家族歴、家計とのバランスを考え、必要なリスクをカバーできる特約を選びましょう。
夫婦連生団信|共働き世帯におすすめのペアローン向け保障
夫婦共働きで住宅ローンを組む場合、夫婦のどちらか一人に万一のことがあっても、ローン全額が完済される「夫婦連生団信」という選択肢があります。
通常の団信では、契約者本人の債務分しか保障されません。しかし夫婦連生団信に加入していれば、夫婦のどちらか一方が死亡または高度障害状態になった際に、ペアローンや連帯債務の残高すべてがゼロになります。
夫婦二人の収入を前提にローンを組むことが多い現代の共働き世帯にとって、返済リスクをなくせる非常に心強い保障です。
ただし、利用できる金融機関が限られることや、金利が年0.1〜0.2%程度上乗せされる点には注意が必要です。例えば、「フラット35の『デュエット(ペア連生団信)』では金利が新機構団信付きに対して年+0.18%上乗せされます(利用可否や条件は商品により異なります)。
夫婦の収入バランスや、片方の収入が途絶えた場合の返済シミュレーションを行い、必要性を判断することをおすすめします。
ペアローンの特徴や固有のリスクについては以下記事で詳しく解説しています。
団信の費用はいくら?金利上乗せの仕組みと月々の保険料目安
団信の保険料は住宅ローンの金利に含まれることが多く、そのコストが実際いくらになるのかは気になるところでしょう。「月々の負担額は?」「特約を付けると総支払額はどれだけ増える?」といった観点から、団信の費用を具体的に見ていきます。
月々の保険料はいくら?金利上乗せによる負担額の目安
団信の保険料は単独で支払うわけではないため見えにくいですが、金利への上乗せ分から月々の負担額を計算できます。
- 借入3,000万円・金利上乗せ0.1%の場合:年間の追加利息は約3万円で、月々約2,500円の負担増。
- 借入3,000万円・金利上乗せ0.2%の場合:年間の追加利息は約6万円で、月々約5,000円の負担増。
- 借入2,000万円・金利上乗せ0.2%の場合:年間の追加利息は約4万円で、月々約3,300円の負担増。
一般的に、基本団信は金利上乗せなし、がん団信は+0.1%、3大疾病保障は+0.2%程度が多いため、特約を追加すると月々数千円の負担が増えるとイメージしておくと良いでしょう。返済が進んでローン残高が減れば、実質的な保険料負担も下がっていきます。
総支払額で比較|特約を付けると負担はどれくらい増える?
住宅ローンの総支払額で比較すると、団信のコスト感がより明確になります。
例えば、借入額3,000万円を35年返済する場合で見てみましょう。
- 金利1.0%(団信なし相当):総利息は約556万円
- 金利1.2%(団信あり・特約込み相当):総利息は約675万円
この差額約119万円が、35年間で支払う保険料の総額に相当します。一見大きな額に思えますが、長期にわたって安心を得るためのコストと捉えることができます。
また、繰上返済で完済が早まれば、支払う利息総額は減るため、実質的な保険料負担も軽減されます。金利に保険料が含まれるタイプの団信は、繰上返済によって保険料も節約できるメリットがあると言えます。
繰上返済や金利変動に関する注意点
団信の費用に関して、誤解されやすいポイントを2つ解説します。
一つ目は、繰上返済時の保険料の扱いです。繰上返済をしても、過去に支払った保険料が戻ってくることはありません。しかし、返済期間が短縮されることで、将来支払うはずだった保険料を払わずに済むため、結果的に支払総額を節約できます。「保険料がもったいない」と考えるより、「これ以上保険料を払わなくて済む」と捉えるのが適切です。
二つ目は、金利の上乗せ幅です。特約による金利上乗せは、基本的に完済まで一定です。ただし、変動金利ローンの場合は、基準となる金利が変動すれば、それに伴って保険料相当の利息負担額も増減する点には注意しましょう。
長期金利の上昇が住宅ローンに与える影響は以下Q&Aでも説明しています。
団信の審査に落ちた・入れない場合の3つの選択肢
健康上の理由などで団信に加入できない、あるいは審査に通らないと言われた場合でも、住宅購入を諦める必要はありません。いくつかの代替策や選択肢が存在します。この章では、団信への加入が難しいケースにおける具体的な対処法を紹介します。
選択肢①:引受基準が緩和された「ワイド団信」に申し込む
一つ目の選択肢は、引受基準を緩和した「ワイド団信」の利用です。持病や既往歴がある方向けに設計されており、一般の団信審査に落ちた人でも加入できる可能性があります。
糖尿病、うつ病、心筋梗塞といった病歴がある場合でも、ワイド団信なら加入できる可能性があります。もちろん無条件ではなく、病状が安定していることなどが条件となりますが、一般の団信よりは門戸が広いと言えます。
ただし、引受リスクが高い分、住宅ローン金利は年0.2〜0.3%程度上乗せされます。保障内容は死亡・高度障害を対象とする一般的な団信と同じです。健康に不安がある方にとっては心強い制度ですが、あくまで選択肢の一つとして検討しましょう。
なお、ワイド団信はすべての金融機関で扱っているわけではないため、利用を考える場合は、初めから取扱実績のある金融機関を選ぶとスムーズです。
選択肢②:団信なしで借りられる住宅ローン(フラット35など)を選ぶ
二つ目の選択肢は、団信に加入せずに住宅ローンを借りる方法です。代表的なのが、加入が任意であるフラット35です。団信に加入しない場合、金利が年0.2%程度引き下げられ、返済負担を軽くできるメリットがあります。
しかし、団信に入らないリスクはご自身で備えなければなりません。万一の際、家族にローン返済の義務が残るため、団信の代わりとなる生命保険への加入が強く推奨されます。「団信には入れないが、引受基準緩和型の生命保険なら入れる」というケースもあります。
また、頭金を増やして借入額を抑えたり、繰上返済を積極的に行ったりして、ローン残高を早期に減らすことも有効なリスク対策です。
既往歴別・団信審査のポイント|糖尿病・うつ病・高血圧など
団信審査で特に注意が必要な代表的な既往歴と、審査で見られるポイントを解説します。ご自身の状況と照らし合わせ、事前準備の参考にしてください。
- 糖尿病:合併症の有無やヘモグロビンA1cの数値が重視されます。投薬で良好にコントロールされていれば、一般団信に通る可能性もあります。
- 高血圧症:降圧薬で数値を安定させられていれば、問題にならないことが多いです。ただし、心疾患など他の病気を併発している場合は審査が厳しくなります。
- 心疾患・脳卒中:既往歴があると審査は非常に厳しくなります。発症から5年以上経過し、再発なく安定している場合などに、ワイド団信で加入できる可能性があります。
- がん:完治してからの経過年数が重要です。診断から5年以内は厳しいですが、近年はがん経験者向けの団信も登場しています。
- 精神疾患(うつ病など):完治後、長期間にわたって服薬や通院がない状態であれば、審査の対象となる可能性があります。現在治療中の場合は加入が難しいのが実情です。
ワイド団信や審査に関する注意点|病名だけで判断されるわけではない
団信の審査について、誤解されやすいポイントを解説します。
まず、ワイド団信は一般の団信より加入しやすいですが、誰でも無条件に入れるわけではありません。あくまで「加入のハードルが下がる」だけであり、病状が悪化している場合など、審査基準によっては加入できないこともあります。
また、団信の審査は、病名だけで機械的に判断されるわけではありません。保険会社は、病状の深刻度や治療によるコントロール状況、完治からの経過年数などを総合的に見ています。例えば、高血圧でも数値が安定していれば問題視されないケースは多いです。内容次第で加入できる可能性は十分にあるため、病名だけで諦めず、正直に告知した上で審査を待つことが大切です。
家族構成・働き方別の団信プランの選び方
団信の仕組みや種類を理解した上で、ご自身の状況に最適なプランはどれか、迷う方もいるかもしれません。ここでは、家族構成や働き方に応じた5つのケースを想定し、それぞれにおすすめの団信構成を提案します。ご自身の状況に近いケースを参考に、最適な選択肢を見つけてください。
ケース1:単独収入の家庭は「基本団信+生命保険」で生活費もカバー
一家の収入を支える方が一人でローンを組むこのケースでは、基本団信に加えて、必要に応じて別途生命保険を手厚くすることが推奨されます。なぜなら、団信で住宅ローンが完済されても、残された家族の生活費まではカバーできないからです。団信で住居費の不安は解消されるため、生命保険は生活費や教育費に絞って必要な保障額を確保すると、保険料を抑えつつ合理的な備えができます。
ケース2:収入差のある共働き夫婦は「夫婦連生団信」でリスクを軽減
夫婦の収入に差がある共働き世帯がペアローンを組む場合は、夫婦連生団信が非常に有効な選択肢です。収入の多い方に万一のことがあると、残された配偶者の収入だけでローンの返済が困難になる可能性があります。夫婦連生団信に加入していれば、どちらか一方に何かあってもローン全額が完済されるため、残された側は安心して生活を維持できます。
ケース3:収入が同程度の共働きなら「夫婦連生団信+疾病特約」も検討
夫婦の収入が同程度で、連帯債務者としてローンを組む場合も、夫婦連生団信がおすすめです。どちらか一方の収入が途絶えると返済計画が大きく崩れるリスクを解消できるためです。さらに、共働きで生活習慣病などが気になる場合は、三大疾病保障などの特約を付帯させることで、病気による長期の療養で働けなくなった場合にも備えられます。
ケース4:自営業者は「基本団信+全疾病保障」で就業不能に備える
自営業の方は、会社員に比べて病気やケガで働けなくなった際の公的保障が手薄になる傾向があります。
休業が収入減少に直結するため、就業不能リスクへの備えが重要です。そのため、基本団信に加えて全疾病保障特約を付帯させると安心です。この特約があれば、長期休業した場合にローンが免除されるため、収入の心配をせずに療養に専念できます。
就業不能時の備え方については以下記事で詳しく解説しています。
ケース5:健康に不安があるなら「ワイド団信」や「フラット35+生命保険」
健康上の理由で団信の審査に通るか不安な場合は、複数の選択肢があります。一つは、団信加入が任意であるフラット35を利用し、代わりに民間の生命保険(収入保障保険など)で万一に備える方法です。もう一つの選択肢として、加入条件が緩和されたワイド団信を扱う金融機関に申し込むことも考えられます。金利は多少高くなりますが、保障を得られる安心感があります。
最終的にどのプランを選ぶかは、ご家庭のリスクに対する考え方や価値観によって異なります。それぞれの保障内容とコストを正しく理解した上で、ご自身にとって納得のいく選択をしてください。
団信の手続きと注意点|申込から契約、完済・借り換え時まで
ここでは、団信の具体的な手続きの流れと、契約後の完済時や借り換え時の扱いについて説明します。団信は住宅ローン契約と並行して進められるため、全体のライフサイクルを把握しておきましょう。
申込から契約までの流れと準備しておくこと
団信の手続きは、住宅ローンの申し込みと同時に進められます。大まかな流れは以下の通りです。
- 住宅ローン仮審査:この段階では通常、団信の審査は行われません。ただし、健康状態に不安がある場合は、この時点で金融機関に相談し、団信の事前審査を依頼することも可能です。
- 住宅ローン本審査申込:物件契約後、ローンの本審査を申し込む際に、団信の申込書(告知書)を合わせて提出します。
- 本審査期間:金融機関によるローンの審査と並行して、保険会社による団信の審査が行われます。期間は1〜2週間程度が目安ですが、告知内容によっては追加資料を求められ、さらに時間がかかることもあります。
- 契約・融資実行:住宅ローン契約の締結と同時に、団信の契約も正式に成立します。融資が実行されると、ローンの返済と共に団信の保障が開始されます。
手続きに必要な準備は、主に告知書を正確に記入するための情報整理です。通院歴や手術歴、服用中の薬の名前などを事前にメモしておくとスムーズです。
契約内容の確認方法と保管しておくべき書類
団信に加入した後は、基本的に完済まで同じ保障内容が続きます。契約内容は、ローン実行時に受け取る「団信加入通知書」や「約款」で確認できます。これらの書類は、保障内容を証明するものとして大切に保管しましょう。
一度契約した団信の保障内容を、後から変更することは原則としてできません。保障内容を変えたい場合は、別の住宅ローンへ借り換えを行い、新たな団信に加入し直す必要があります。その際は、改めて健康状態の告知と審査が行われます。
もしもの時やローン完済時の手続きで慌てないために
ローン返済中や完済時に必要な手続きについて、あらかじめ確認しておくと安心です。
- ローンを完済した時:住宅ローンを完済すると、団信の契約も自動的に終了します。特別な手続きは基本的に不要です。
- 契約者が亡くなった時:遺族や関係者は、速やかに借入先の金融機関へ連絡してください。保険金の請求手続きは、金融機関が窓口となってサポートしてくれます。
- 連帯保証人がいる場合:団信によってローンが完済されれば、連帯保証人の返済義務も消滅します。
- 保険金が支払われない場合:重大な告知義務違反などがあった場合、保険金が支払われないことがあります。ローン債務はそのまま残るため、正直な告知が極めて重要です。
住宅ローン借り換え時の注意点|団信は再審査が必要
住宅ローンを借り換える際は、団信も新たに契約し直す必要がある点に注意が必要です。以前の団信はローン完済と共に終了し、借り換え先の金融機関で、その時点の健康状態で再度審査を受けることになります。
もし、住宅ローン契約時よりも健康状態が悪化していると、新たな団信に加入できず、借り換え自体ができない可能性があります。金利の低下メリットだけでなく、団信の保障を失うリスクも考慮して、借り換えは慎重に検討しましょう。
なお、借り換えによって保障が途切れる「空白期間」は、通常発生しません。新しいローンの実行と同時に古いローンを完済し、保障がスムーズに引き継がれるように手続きが進められます。
この記事のまとめ
団信は住宅ローンの残債を守るための仕組みであり、受取人が金融機関、保障が完済までで減額型という前提を理解することが重要です。その上で、基本型か特約付か、夫婦連生型かを家族構成や職業状況に応じて選ぶ必要があります。健康状態や審査に不安がある場合は、フラット35やワイド団信といった選択肢も検討に値します。加入後は生命保険の重複を見直し、疑問や不安が残る場合は金融機関や専門家への相談を早めに行うことで、安心して最適な判断を下せます。

MONO Investment
投資のコンシェルジュ編集部は、投資銀行やアセットマネジメント会社の出身者、税理士など「金融のプロフェッショナル」が執筆・監修しています。 販売会社とは利害関係がないため、主に個人の資産運用に必要な情報を、正確にわかりやすく、中立性をもってコンテンツを作成しています。
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団体信用生命保険(団信)
団体信用生命保険とは、住宅ローンを組んだ人が亡くなったり高度障害になったりした場合に、その時点のローン残高が保険金で返済される保険です。多くの場合、住宅ローンを借りる際に金融機関が加入を条件とすることがあり、略して「団信(だんしん)」とも呼ばれます。 この保険に加入しておけば、万が一のことがあった際に遺族がローンを引き継ぐ必要がなくなり、家に住み続けることができるため、大きな安心材料になります。保障の範囲は、死亡や高度障害に限らず、がんや三大疾病、就業不能までカバーするタイプもあり、ライフスタイルに応じて選ぶことができます。
フラット35
フラット35とは、住宅金融支援機構と民間金融機関が提携して提供する、最長35年間の全期間固定金利型の住宅ローンです。最大の特徴は、借入時に決まった金利が返済終了まで変わらない点にあります。これにより、将来の金利上昇による返済額の増加リスクを回避することができ、長期の資金計画を立てやすくなるメリットがあります。 主にマイホームの新築・購入・リフォームに利用され、一定の技術基準や住宅性能(例:省エネ性、耐震性)を満たす住宅が対象です。また、所得制限がなく、自営業者やフリーランスの方にも利用しやすいローンとして知られています。金融機関ごとに取り扱い条件や金利は異なりますが、公的性格を持つ制度として、住宅取得支援の重要な選択肢となっています。
機構団信
機構団信とは、住宅金融支援機構が提供する住宅ローンに付帯できる団体信用生命保険のことを指します。借入者が死亡または高度障害となった場合、保険金によって残りの住宅ローンが完済されるため、遺された家族は返済の負担から解放され、安心して住み続けることができます。 主にフラット35などの住宅ローンで利用され、加入は任意ですが、多くの借入者がリスクに備えるために選択しています。保険料は金利に含まれる形で支払うのが一般的で、毎月の返済に自然に組み込まれる仕組みになっています。 ただし、健康状態によっては加入を断られる場合や、条件付きでの加入となる場合もあるため注意が必要です。住宅ローン契約の前に、加入可否や保障内容、金利への影響をしっかり確認しておくことが大切です。
特約(がん団信・三大疾病保障・全疾病保障 など)
特約とは、住宅ローンに付帯する団体信用生命保険(団信)に追加できる保障のことを指します。基本の死亡保障だけではカバーしきれない病気やケガ、就業不能などのリスクに対応するために設けられており、住宅ローン返済が困難になる事態に備える役割を果たします。 代表的なものとして、がんと診断されると残高が免除される「がん団信」、がん・急性心筋梗塞・脳卒中のいずれかで所定の状態に該当した場合に保障される「三大疾病保障」、さらに病気やケガによる就業不能もカバーする「全疾病保障」があります。ほかにも、介護状態に認定された場合の「介護保障」、共働き世帯向けにどちらか一方に万一があった場合も返済を免除する「夫婦連生型」、健康状態に不安がある人でも加入しやすい「ワイド団信」、一定の条件で返済を支援する「失業特約」など、種類は多岐にわたります。 これらの特約は安心感を高める一方で、加入すると住宅ローン金利に0.1〜0.3%程度の上乗せが発生することが一般的です。例えば4,000万円を35年返済する場合、上乗せ金利によって総支払額が100万円以上変わることもあり、保障内容とコストのバランスを慎重に考える必要があります。 また、特約には「診断された時点で保障されるのか」「一定期間の就業不能が条件なのか」など、支払い事由の定義が商品ごとに異なります。対象外となる疾病や免責期間、就業不能の範囲などをよく確認しないと、想定通りの保障を受けられないこともあります。そのため、既に加入している生命保険や医療保険、所得補償保険などとの重複を整理し、不足している部分を補う観点で検討するのが効果的です。 特に資産形成の初期段階ではローン残高が大きく、純資産が十分でないため手厚い保障が有効ですが、ローン残高より資産が多くなった段階では必要性が下がり、特約を減らす判断も合理的です。特約は「住宅ローンという大きな負債に伴うリスクをどうカバーするか」という観点で位置づけ、資産運用計画全体の安全性と効率性を高めるために選択するものといえます。
ワイド団信
ワイド団信とは、住宅ローンを組む際に加入する団体信用生命保険(団信)の一種で、持病や過去の病歴がある人でも比較的加入しやすく設計された保険です。通常の団信では健康状態に関する審査が厳しく、条件に合わないと住宅ローンが借りられないことがありますが、ワイド団信では告知内容のハードルが低めに設定されており、より多くの人が住宅ローンを利用できるように配慮されています。 その分、保険料が高くなる傾向がありますが、住宅を購入したいという希望を持ちながら、健康面の不安がある人にとって大きな助けとなります。資産運用の観点では、住宅ローンは長期的な家計の支出と密接に関係するため、こうした保障内容を理解しておくことは重要です。
ペアローン
ペアローンとは、夫婦やカップルなどが、それぞれ個別に住宅ローンを組んで、同じ物件を共同で購入するために利用するローンの仕組みです。2人がそれぞれローン契約を結ぶため、借入可能額が大きくなり、希望する物件を購入しやすくなるというメリットがあります。 また、それぞれが住宅ローン控除を受けられる可能性があるため、節税面でも有利になることがあります。ただし、ローンの契約は個別に行われるため、どちらか一方が返済できなくなった場合には、もう一方に大きな負担がかかることがあります。ペアローンを利用する際は、将来のライフプランやリスクも含めて十分な話し合いが必要です。
連帯債務
連帯債務とは、複数の人が一つの借金や義務に対して、それぞれが全額の支払い責任を負うという契約の形です。たとえば、夫婦で住宅ローンを組む場合などに使われることが多く、どちらか一方が支払えなくなったとしても、もう一方に全額の返済義務が発生します。 このように、債権者にとっては誰か一人に請求すればよいため安心ですが、債務者側にとってはお互いの経済状況や信頼関係が重要になります。連帯債務は、単に借金を分け合う「分割債務」とは違い、それぞれが全体の責任を持つという点に注意が必要です。特に住宅ローンや不動産投資の資金調達で関係してくることが多いため、仕組みをよく理解しておくことが大切です。
繰り上げ返済
繰り上げ返済は、ローンや債務に対して予定された支払いスケジュールよりも早く、元本の一部または全部を返済することを指します。この方法は、住宅ローン、自動車ローン、学生ローンなど、さまざまなタイプの借入れに適用されることがあります。繰り上げ返済を行う主な目的は、支払う利息の総額を減らし、ローンの期間を短縮することです。 繰り上げ返済は、追加の資金が手に入った場合や、より良い投資先がない場合に特に有効です。早期に借入金を返済することで、将来の利息負担が減少し、長期的な財務的な余裕が生まれます。しかし、全てのローンが繰り上げ返済に対応しているわけではなく、場合によっては繰り上げ返済手数料が発生することもあります。この手数料は、金融機関が予定していた利息収入の一部を補填するために設定されることが多いです。 繰り上げ返済を検討する際には、手数料の有無、返済後の金融状況、その他の投資機会との比較など、様々な要因を考慮することが重要です。適切な計画と分析を行うことで、繰り上げ返済が個人の財務目標に合致するかどうかを判断することができます。
生命保険料控除
生命保険料控除とは、個人が支払った生命保険料に応じて、所得税や住民税の課税所得額を一定金額まで減らすことができる税制上の優遇制度です。この控除によって、納める税金が軽減されるため、実質的に保険料の一部が戻ってくる効果があります。 対象となる保険は、「一般生命保険」「介護医療保険」「個人年金保険」の3つの区分に分かれており、それぞれに控除限度額が設けられています。控除を受けるには、保険会社から発行される控除証明書を年末調整や確定申告の際に提出する必要があります。保険による万一への備えと、節税効果の両方を得られる制度として、多くの人に活用されています。初心者にとっても、生命保険を契約する際にはこの控除制度の存在を知っておくことで、より効果的な保険選びや家計管理につなげることができます。