
ペアローンはやめたほうがいい?メリット・デメリットと連帯債務との違いや離婚時の注意点を徹底解説
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公開:
2025.09.04
更新:
2025.09.04
共働き世帯の増加と住宅価格の高騰を背景に、借入可能額を広げられるペアローンが注目を集めています。二人それぞれが契約者となるため、住宅ローン控除の活用や資金計画の柔軟性に魅力があります。しかし同時に、契約が二本化することで諸費用が増えたり、収入減や離婚、片方の死亡といった想定外の事態で債務整理が難しくなるリスクも潜んでいます。本記事では、ペアローンの仕組みから税務・費用・リスクまでを整理し、他のローン方式との比較や実務上の注意点を含め、後悔しない判断に必要な視点を提供します。
サクッとわかる!簡単要約
この記事を読むと、ペアローンは借入枠拡大と住宅ローン控除の活用に利点がある一方、契約二本化による諸費用増、収入減・離婚・死亡時の負担、返済割合と持分不一致の贈与税リスク、借り換えや一本化の難しさといった実務課題が明確になります。仕組み・費用・税務の要点、向く家庭と避けるべきケース、収入合算・連帯債務・単独ローンの比較、連生団信や民間保険の使い分け、家計ルールと数値シミュレーションの勘所、フラット35の取り扱い、万一時の初動まで把握でき、可否判断と金額設計の基準が得られ、後悔しない準備が整います。
目次
通常の団信では不十分?片方のローンが残るリスクと夫婦連生団信の役割
ペアローンはやめたほうがいい?後悔につながる9つのデメリット
デメリット① 手数料や印紙税が2人分に。諸費用は単独ローンの倍になることも
デメリット③ 離婚時に泥沼化しやすい|共有名義の売却・一本化が困難に
デメリット④ 片方が死亡しても残債は半分。残された家族に返済負担が残る
デメリット⑤ 借り換え・一本化の審査が厳しい。うかつな資金移動は贈与税の対象に
デメリット⑥ 「返済割合」と「持分割合」のズレが税務トラブルを招く
デメリット⑦ 金利タイプを分けると、金利上昇リスクが片方に偏る
デメリット⑧ 共有名義のため、住み替えや売却の意思決定が遅れがち
デメリット⑨ 管理の手間が2倍に。心理的なプレッシャーも大きい
デメリットだけじゃない!ペアローンを選ぶ3つのメリットと賢い使いどころ
メリット② 夫婦それぞれが住宅ローン控除を使えるため、世帯の節税効果が高い
メリット③ 「固定金利」と「変動金利」を組み合わせ、金利変動リスクを分散できる
あなたは大丈夫?ペアローンが向いている夫婦・向いていない夫婦の特徴
向いていない人:収入の変動リスクや離婚の可能性が少しでもある夫婦
ペアローン以外の選択肢は?収入合算・連帯債務など代替案を徹底比較
代替案① 収入合算(連帯保証型):手続きはシンプルだが、控除や団信は1人分
代替案② 連帯債務+夫婦連生団信:控除も団信も2人分。ペアローンの弱点を克服
代替案③ 単独ローン+頭金:最もシンプルに贈与税を回避しつつ共有名義にする方法
フラット35はペアローン不可。収入合算か連帯債務での申し込みが基本
ペアローンの借り換え・一本化は可能?審査の壁と現実的な選択肢
離婚が決まったらどうする?不動産の売却・名義変更の正しい手順
契約前に必ずやるべき!ペアローンの返済シミュレーションと夫婦のルール作り
無理のない返済プランの鍵。「収入合算後の返済負担率」の決め方
ペアローンの仕組みとは?費用や他のローンとの違いを比較
ペアローンは夫婦がそれぞれ契約を結ぶ仕組みです。そのため諸費用が割高になる点や、収入合算や連帯債務といった他のローンとの違いを正しく理解しておく必要があります。
ペアローンとは、一つの物件に対し、夫婦がそれぞれ住宅ローンを契約する方法で、「二本立てローン」とも呼ばれます。契約や審査、返済は個別に行われ、お互いが相手の連帯保証人になるのが一般的です。
夫婦それぞれが主債務者となるため、二人とも単独でローンを組めるだけの審査基準(年収、勤続年数、健康状態など)を満たす必要があります。
契約が2本になる「ペアローン」の仕組みと手数料・諸費用
ペアローンは契約が2本になるため、手数料や印紙税といった諸費用が2人分かかります。単独ローンに比べて初期費用が膨らみやすい点に注意が必要です。
ペアローンは「1物件に対しローン2本」という構造のため、契約時の諸費用が2人分かかる点に注意が必要です。具体的には、以下のような費用がそれぞれのローン契約ごとに発生します。
- 融資手数料(金融機関への事務手数料)
- ローン保証料(保証会社を利用する場合の保証料)
- 印紙税(2本の契約書それぞれに収入印紙が必要)
- 団体信用生命保険料(団信特約料、または金利上乗せ分)
- 火災保険料(物件の火災保険は一つでも、ローン契約者ごとに加入すると負担増)
- 抵当権設定費用(司法書士報酬)
これらの諸費用を合計すると、物件価格の10%前後になることもあります。単独ローンなら5〜10%程度で済む費用が、二重計上によって想定以上になりがちです。金融機関によって費用体系は異なるため、事前に見積明細を必ず確認しましょう。
また、ペアローンでは返済口座も2つ必要になるのが一般的です。毎月の引き落としが2回になるなど、手間や管理コストも単独ローンに比べて増えることになります。
収入合算・連帯債務・ペアローンの違いを整理
夫婦で住宅ローンを組む方法はペアローンだけではありません。契約が一本で済む「収入合算」や「連帯債務」との仕組みや責任範囲の違いを知り、自分たちに合った形を選ぶことが大切です。
収入合算(連帯保証型)
夫婦の収入を合算して審査を受ける方式で、多くの銀行で採用されています。契約は1本のみで、主債務者に対して配偶者が連帯保証人となります。手続きがシンプルな一方、住宅ローン控除や団体信用生命保険(団信)の対象は主債務者だけに限定されます。
連帯債務
フラット35などで採用される方式で、夫婦二人が同一の契約上で債務者となります。両者に返済義務があり、それぞれ住宅ローン控除を利用できます。ただし、団信は主債務者のみ加入可とされることが多く、死亡時も相手に返済義務が残る場合がある点に注意が必要です。
ペアローン
夫婦がそれぞれ主債務者として別々のローンを契約する方式です。通常は互いに連帯保証人となります。二人とも住宅ローン控除を使え、団信にも個別に加入できます。ただし、契約や諸費用は2本分となり、管理の手間も増えます。
契約のシンプルさを重視するなら「収入合算」、責任とメリットを分け合いたいなら「連帯債務」や「ペアローン」が選択肢になります。特に住宅ローン控除や団信の扱いは将来のリスクや家計への影響が大きいため、借入可能額だけでなく制度面の違いも理解して比較することが重要です。
通常の団信では不十分?片方のローンが残るリスクと夫婦連生団信の役割
ペアローンの団信は自身のローンしか保障しないため、片方に万一のことがあると残された側に返済負担が残ります。このリスクを解消するのが「夫婦連生団信」です。
団体信用生命保険(団信)とは、ローン契約者が死亡・高度障害になった場合に残高が完済される保険です。ペアローンでは夫婦それぞれが自身のローンに対して団信に加入します。
そのため、もし夫が死亡した場合は夫のローンだけが完済され、妻のローン返済は続きます。この「片方のローンが残ってしまう」点が、ペアローンの大きな弱点です。
そこで登場したのが「夫婦連生団信」です。これは、夫婦のどちらか一方に万一のことがあった場合に、二人のローン残高すべてがゼロになる特別な団信です。大きな安心材料になる一方、保険料が割高で、取り扱う金融機関が限られる点には注意が必要です。
ペアローンを検討する際は、この夫婦連生団信の有無やコストも必ず確認しましょう。加入しない場合は、民間の生命保険で備えるなど、万一のリスク管理を慎重に設計することが大切です。
ペアローンはやめたほうがいい?後悔につながる9つのデメリット
ペアローンは魅力的に見えますが、「やめたほうがいい」と言われることもあります。安易に選ぶと後悔につながりかねない、9つの具体的なデメリットとリスクを解説します。ペアローンを検討する際は、長期的な視点でご自身のライフプランへの影響を考えることが重要です。
デメリット① 手数料や印紙税が2人分に。諸費用は単独ローンの倍になることも
ペアローンは契約が2本になるため、手数料や印紙税といった諸費用が2人分かかります。契約後の管理の手間やコストも2倍になる点に注意が必要です。
ペアローンは契約手続きが2倍になるため、初期費用が割高になりがちです。融資手数料や印紙税など、ローンの本数に応じて発生する費用は2倍になります。諸費用は数十万円単位になるため、2本分となると軽視できません。
さらに、契約後の管理コストや手間も2重になります。毎月の返済や確定申告の手続きなどが夫婦2人分必要になり、こうした煩雑さが心理的な負担になることもあります。
デメリット② 産休・育休で片働きに。世帯収入の減少に弱い
ペアローンは夫婦二人の収入を前提とするため、どちらかの収入が途絶えると返済負担が一気に重くなります。産休や育休、病気や失業で一方の収入が減少すれば、もう一方だけで2本のローンを返済することになり、家計が破綻しかねません。単独ローンならリスクは一人分で済みますが、ペアローンでは二人分のリスクを背負う点が大きな違いです。
こうした事態を避けるには、借入可能額いっぱいまで借りず、余裕ある返済計画を立てることが不可欠です。将来の収入減に備えて、一定の貯蓄を確保しておくことも重要です。
デメリット③ 離婚時に泥沼化しやすい|共有名義の売却・一本化が困難に
ペアローンで購入した住宅は共有名義となるのが一般的で、離婚時の財産分与は非常に複雑になります。
一方が住み続ける場合には、もう一方のローンを引き受けるために借り換えが必要です。しかし、一人分の収入で審査に通るのは難しく、現実的に成立しないケースが多いです。
住宅を売却する場合も、共有名義のため双方の同意がなければ進められません。さらに、売却額がローン残高を下回る「オーバーローン」状態では、住宅を手放しても負債だけが残るリスクがあります。
このように、ペアローンは離婚時に整理が難しく、対立が長期化しやすい仕組みです。唯一の現実的な対策は、協力関係を保ちながら早期に売却して清算することですが、それ自体が大きなハードルとなります。
デメリット④ 片方が死亡しても残債は半分。残された家族に返済負担が残る
ペアローンの大きな弱点は、団体信用生命保険(団信)の保障範囲です。加入者が亡くなった場合、その人のローンは完済されますが、もう一方のローンはそのまま残ります。
例えば夫婦で3,000万円ずつ借りていれば、一方が亡くなっても清算されるのは3,000万円のみ。残された配偶者は、収入が減る中で残り3,000万円の返済を続けなければなりません。
このリスクに備えるには、どちらかが亡くなった場合でも残高が全額完済される「夫婦連生団信」や、民間の生命保険を活用することが重要です。ペアローンを選ぶ場合は、こうした補完策を組み合わせて家族の生活を守る必要があります。
デメリット⑤ 借り換え・一本化の審査が厳しい。うかつな資金移動は贈与税の対象に
ペアローンは契約が2本あるため、借り換えや一本化が容易ではありません。借り換えには夫婦それぞれが再度審査を受ける必要があり、収入や勤務状況が悪化していれば通過は難しくなります。特に一本化を目指す場合は、一人で倍近い借入を背負う形となり、審査のハードルはさらに高まります。
さらに注意すべきは、夫婦間での安易な返済の肩代わりです。例えば妻のローンを夫が年間110万円を超えて返済すれば、税務上は贈与とみなされ、贈与税が発生する可能性があります。
このように、ペアローンは借り換えの自由度が低く、資金移動にも税務リスクが伴います。長期的に安定した返済計画を立て、借り換えに頼らずに対応できる資金設計を心がけることが重要です。
デメリット⑥ 「返済割合」と「持分割合」のズレが税務トラブルを招く
ペアローンでは、実際の返済負担割合と不動産の所有権割合(持分割合)を一致させるのが原則です。この二つが食い違うと、差額分が贈与と見なされ、贈与税の課税対象になる恐れがあります。
本来、持分割合は購入資金を誰がどれだけ負担したかに応じて決めるべきものです。しかし「夫婦だから半分ずつ」と形式的に設定すると、実態とのズレが生じやすくなります。例えば夫が7割、妻が3割を返済するにもかかわらず、登記を5対5にすると、夫から妻への贈与と解釈されるリスクがあるのです。
不動産を取得する際は、頭金やローン負担額に合わせて正確に持分割合を設定することが不可欠です。一度登記すると変更は困難なため、最初の段階で誤りのない設計を行うことが重要です。
デメリット⑦ 金利タイプを分けると、金利上昇リスクが片方に偏る
ペアローンでは夫婦それぞれが異なる金利タイプを選べますが、この自由度が裏目に出ることがあります。金利が上昇すると、変動金利を選んだ側だけ返済額が増え、家計全体の負担が偏る可能性があるためです。
例えば、夫が固定金利、妻が変動金利を選んだ場合、将来金利が上昇すれば妻の返済額だけが膨らみ、家計のバランスが崩れかねません。逆に金利が安定すれば、固定金利を選んだ夫が割高に感じ、不公平感につながることもあります。
金利タイプや返済期間を自由に組み合わせられる点はペアローンの魅力ですが、最終的には「世帯全体としてリスクをどう最適化するか」という視点が欠かせません。夫婦で将来の金利変動シナリオを共有し、納得感のある選択をすることが重要です。
デメリット⑧ 共有名義のため、住み替えや売却の意思決定が遅れがち
ペアローンで購入した住宅は共有名義となるため、将来の住み替えや売却といった「出口戦略」の自由度が低くなります。売却には夫婦双方の合意が不可欠で、意見が分かれると手続きが進まず、決断が遅れるリスクがあります。
さらに、ペアローンには2本の抵当権が設定されるため、市場で敬遠されやすく、売却に時間がかかることもあります。急な転勤やライフスタイルの変化があっても、共有名義の制約が柔軟な対応を妨げる点は大きなデメリットです。
そのため、将来住み替えや転勤の可能性がある場合には、ペアローンを選ぶ前に「長く住み続ける覚悟があるかどうか」を判断基準の一つにすることが重要です。
デメリット⑨ 管理の手間が2倍に。心理的なプレッシャーも大きい
ペアローンは、数値に表れない管理面・心理面での負担が大きくなります。毎月の返済管理や確定申告の手続きは二人分必要で、繰上返済の際も「どちらを優先するか」といった判断を常に迫られます。
また、「二人分のローンを抱えている」という事実自体が心理的な重圧となりやすく、収入減や離婚といった事態が重なれば、夫婦関係にまで影響を及ぼす可能性があります。実際に「負担が偏って後悔した」「離婚時の対応で苦労した」といった声も少なくありません。
こうした見えにくいコストまで含めて、夫婦で納得して管理できるかどうかを慎重に検討することが欠かせません。
デメリットだけじゃない!ペアローンを選ぶ3つのメリットと賢い使いどころ
デメリットを理解した上で、ペアローンならではのメリットと、それが活きる「使いどころ」を見ていきましょう。リスク管理をすれば、二人でローンを組むことが有効な選択肢になります。
メリット① 借入可能額が増え、資産価値の高い物件を狙える
ペアローン最大のメリットは、夫婦二人の収入を合算することで借入可能額を大きくできる点です。個人の収入だけでは難しかった資産価値の高い物件も、選択肢に入ります。
夫婦それぞれがローンを組むため、世帯としての総借入額を拡大でき、例えば一人の収入では手が届かなかった都心のマンションなど、立地や資産性の高い住宅を確保できる可能性が広がります。
資産価値の高い住宅は、将来の売却で有利になるだけでなく、日々の生活環境の質を高めることにもつながります。ただし、借入額が増える分、返済負担も重くなるため、無理のない返済計画を前提に利用することが欠かせません。
メリット② 夫婦それぞれが住宅ローン控除を使えるため、世帯の節税効果が高い
ペアローンでは、夫婦それぞれが自分のローン残高に応じて住宅ローン控除を受けられます。単独ローンでは一人分しか活用できない控除枠を、二人分に広げられる点が大きなメリットです。
例えば、夫が2,000万円、妻が1,000万円のローンを組んだ場合、それぞれに控除が適用されるため、単独で3,000万円を借りるよりも合計の節税額が大きくなる可能性があります。
ただし、控除額は各自の収入や納税額に依存します。将来どちらかが働かなくなり所得税を納めなくなると、その人の控除枠は活用できません。諸費用の増加と控除による節税効果を比較し、世帯全体で本当に得になるかを見極めることが重要です。
メリット③ 「固定金利」と「変動金利」を組み合わせ、金利変動リスクを分散できる
ペアローンでは、夫婦それぞれが異なる金利タイプや返済期間を選べます。これにより「固定金利」と「変動金利」を組み合わせるなど、家計に合わせたリスク分散が可能です。
例えば「夫は安定性を重視して固定金利、妻は低金利を狙って変動金利」といった組み合わせなら、金利が上昇しても固定金利の返済額は変わらず、逆に金利が低いままなら変動金利の恩恵を受けられます。単独ローンでは実現しにくい戦略的なリスク管理ができるのが特徴です。
ただし、このメリットを最大限活かすには、夫婦で将来のライフプランや金利見通しを共有し、家計全体の最適なバランスを見極めることが欠かせません。
長期金利の変化が住宅ローンに与える影響は以下Q&Aで説明しています。
あなたは大丈夫?ペアローンが向いている夫婦・向いていない夫婦の特徴
ペアローンは、すべての夫婦におすすめできるわけではありません。ご自身の世帯の状況がペアローンに向いているのか、それとも別の方法が安全なのか。具体的な特徴を参考に、考えてみましょう。
向いている人:共働きが続き、将来のライフプランが明確な夫婦
ペアローンは、夫婦ともに長期的な収入が安定しており、ライフプランについてもしっかり合意できている場合、有力な選択肢になります。具体的な条件を見ていきましょう。
1.夫婦とも長期的に安定した収入が見込める
定年までフルタイムで働く意思があり、雇用の安定性も高い場合、ペアローンの前提である「二人で完済する」計画が現実的になります。特に出産後も継続して働く予定があるなら、計画通り返済できるでしょう。
2.二人とも十分な年収と信用力がある
夫婦ともに正社員で勤続年数も長く、ローン審査に問題がないことが重要です。年収合計が高い「パワーカップル」などは、ペアローンを活用しやすいと言えます。
3.単独の年収では希望の物件に届かない
高額な物件を希望しており、どちらか一方の収入だけでは借入額が足りない場合、ペアローンで補う意義があります。「この物件を買うにはあと数千万円足りない」といったケースです。
4.住宅ローン控除のメリットを最大限に活かせる
夫婦ともに十分な課税所得があり、二人分の控除枠を使い切れる場合は、世帯全体で大きな節税効果が期待できます。
5.貯蓄や保険でリスク管理ができている
十分な貯蓄があり、万一の収入減にも備えられている場合や、連生団信や生命保険で死亡リスクをカバーできている場合は、ペアローンの弱点を補うことができます。
結論として、ペアローンは「夫婦2人で借りる力と返す力があり、かつそうする必要性がある」場合に向いています。
向いていない人:収入の変動リスクや離婚の可能性が少しでもある夫婦
反対に、将来の収入や夫婦関係に少しでも不確実な要素がある場合は、ペアローンは避けるのが賢明です。リスクがメリットを上回る可能性が高いでしょう。
1.どちらかが離職する可能性がある
出産を機に退職する予定がある、収入が不安定、といった場合は危険です。二人の収入が前提のローンなので、片方でも崩れると返済計画が破綻しかねません。
2.夫婦関係や将来設計に不安がある
離婚時の財産整理が極めて大変なため、関係性に不安がある場合はおすすめできません。また、将来どこに住むかといったビジョンが一致していない場合も、大きな責任を共有するのはリスクです。
3.どちらかの審査や健康状態に懸念がある
夫婦のどちらかがローン審査の基準をギリギリ満たせない場合や、団信の加入に必要な健康状態に不安がある場合は、無理にペアローンを選ぶべきではありません。
4.あえてペアローンを組む必要がない
実はどちらか一人でも希望額を借りられるのに、「控除が二人分使えるから」という理由だけでペアローンを選ぶのは本末転倒です。手間とリスクを増やすだけになりかねません。
5.家計管理やお金の話が苦手
ローンの管理が二重になるため、家計管理が苦手だと混乱しがちです。お金について日頃から話し合えない夫婦の場合、状況が変化した際にトラブルになる可能性があります。
要するに、ペアローンの弱点である「収入減・離婚・死亡」といったリスクに対処できない要素がある夫婦には向いていません。特にライフプランが固まっていない場合は慎重になるべきです。
ペアローン以外の選択肢は?収入合算・連帯債務など代替案を徹底比較
ペアローンが合わないと感じた場合でも、夫婦で協力して住宅を購入する方法は他にもあります。それぞれの仕組みとメリット・デメリットを比較し、ご自身の家庭に最適な選択肢を見つけましょう。
代替案① 収入合算(連帯保証型):手続きはシンプルだが、控除や団信は1人分
「収入合算」は、一人が契約者、もう一人が連帯保証人になる方法です。手続きはシンプルですが、住宅ローン控除や団体信用生命保険(団信)といったメリットは一人分に限られます。
これは、夫婦の収入を合算してローン審査を受ける方法です。多くの銀行では、片方を主債務者、もう片方を連帯保証人とする形式を採用しています。
メリットは、契約が1本で済むため諸費用が抑えられ、手続きがシンプルな点です。連帯保証人はローン契約者ではないため、団信の加入も不要です。
一方、デメリットは住宅ローン控除や団信の保障が主債務者しか受けられない点です。また、ローン契約は一人なのに不動産を共有名義にすると、贈与税が発生するリスクにも注意が必要です。
結論として、夫婦の収入差が大きい場合や、手続きを複雑にしたくない場合に有効な選択肢と言えるでしょう。
代替案② 連帯債務+夫婦連生団信:控除も団信も2人分。ペアローンの弱点を克服
「連帯債務」は、夫婦が二人で一つのローンを契約する方法です。ペアローンのように二人とも控除を受けられ、特別な団信を付ければ死亡保障も万全になります。
この方式では、夫婦がともに債務者として返済義務を負います。ペアローンと同様に、夫婦それぞれが住宅ローン控除を利用できるのが大きなメリットです。
しかし、通常の団信は主債務者しか加入できず、ペアローンと同様のリスクを抱えます。そこで有効なのが、夫婦のどちらかに万一のことがあった場合に残高がゼロになる「夫婦連生団信」です。
この「連帯債務」と「夫婦連生団信」の組み合わせは、控除と保障の両方を二人分確保できる、非常に強力な手段です。ただし、保険料の負担が増える点や、ペアローン同様に離婚時の整理が難しい点はデメリットとして残ります。
共働きで、長期的に安定した返済が見込める夫婦にとっては、魅力的な選択肢と言えるでしょう。
代替案③ 単独ローン+頭金:最もシンプルに贈与税を回避しつつ共有名義にする方法
どちらか一人の収入でローンを組む「単独ローン」も有力な選択肢です。手続きが最もシンプルでリスク管理もしやすく、もう一方が頭金を出すことで安全に共有名義にもできます。
どちらか一人の年収だけで希望額を借りられるなら、単独ローンは手続きや管理が簡単で、諸費用も抑えられる最善策の一つです。団信も一人分で済むため、万一の際はローン全額が完済されます。
この場合、もう一方が頭金を一部負担すれば、その出資割合に応じて不動産の持分を登記することで、贈与税を発生させずに共有名義にできます。
デメリットは、住宅ローン控除が一人分しか使えないことです。しかし、無理に控除目的でペアローンを組むより、諸費用やリスクを抑えられる単独ローンの方が合理的なケースも多いです。
フラット35はペアローン不可。収入合算か連帯債務での申し込みが基本
全期間固定金利の「フラット35」は、夫婦で利用する場合、ペアローン(二本立て契約)は選べません。収入合算か連帯債務のどちらかで申し込むのが基本ルールです。
フラット35では、一つの物件に二つの抵当権を設定するペアローン形式が認められていません。
そのため、夫婦で利用したい場合は、契約が一本で済む「収入合算」か「連帯債務」で申し込むことになります。連帯債務で申し込めば、夫婦それぞれが住宅ローン控除の対象となり、機構が提供する「デュエット(夫婦連生団信)」で万一の備えも可能です。
フラット35は審査基準が比較的緩やかで、共働き夫婦に広く利用されています。ペアローンにこだわりたい場合は民間銀行のローン、フラット35を利用したい場合は連帯債務、と覚えておくとよいでしょう。
フラット35について詳しくは以下の記事で解説しています。
ペアローンの税務・制度で押さえるべき3つのポイント
ペアローンを検討する上で避けて通れないのが、税金や制度の知識です。特に「住宅ローン控除」「贈与税」そして「夫婦以外の関係性」という3つのポイントを押さえておきましょう。
住宅ローン控除を夫婦で最大限活用するための適用条件
ペアローンでは夫婦それぞれが住宅ローン控除を受けられるのがメリットですが、適用には条件があります。控除を最大限活用するため、正しい知識を身につけておきましょう。
控除を受けるには、主に以下の条件をすべて満たす必要があります。
- 居住要件:契約者本人が住んでいること(購入後6ヶ月以内に入居)。
- 所得要件:年間の合計所得金額が2,000万円以下であること。
- 借入期間:返済期間が10年以上のローンであること。
- 床面積:建物の床面積が50㎡以上であること。
これらの要件を満たせば、夫婦それぞれが年末ローン残高に応じた税額控除を受けられます。手続きは、初年度は確定申告、2年目以降は年末調整で行います。
ただし、注意点もあります。一つは、育休などで一時的に収入がなくなり所得税を納めていない年は、控除も受けられない点です。もう一人の控除枠を融通することもできません。
また、2022年以降の税制改正で控除率が0.7%に引き下げられています。節税効果を過信せず、あくまでメリットの一つとして総合的に判断してください。
贈与税を回避する「返済負担」と「不動産持分」の正しい決め方
ペアローンでは、お金を出した人と不動産の所有権を持つ人がずれると、贈与と見なされるリスクがあります。意図せず贈与税を課されないよう、注意点を押さえましょう。
負担割合と持分割合が一致しない
実際の資金負担(頭金やローン返済)と、登記上の所有持分割合は一致させるのが鉄則です。例えば、夫が7割、妻が3割を負担するなら、持分も7対3で登記します。これが異なると、差額分が贈与と見なされる可能性があります。
ローンの肩代わりや繰上返済
夫婦間であっても、相手のローン返済を肩代わりすると贈与と見なされます。特に、片方が働かなくなり、もう一方がローンを全額払うようなケースでは、年間の肩代わり額が110万円を超えると贈与税の対象となるため注意が必要です。
離婚に伴う清算
離婚時に財産分与として不動産やローンを整理する場合、その内容が一方に不相当に偏っていると贈与と見なされることがあります。財産分与協議書などで、取り決めの内容を明確に残しておくことが重要です。
以上の事態を避けるため、最初に持分と負担の割合を正確に設定することが最も重要です。
なお、生活費のやり取りは贈与にあたりませんが、住宅ローン返済は「通常の生活費」とは認められにくいのが実情です。もし資金計画が複雑になる場合は、税理士などの専門家に相談しましょう。
親子ペアローンや事実婚・同性パートナーでも組める?
ペアローンは法律婚の夫婦を基本としますが、金融機関によっては親子や事実婚、同性パートナーでも利用できる場合があります。ただし、特有のリスクや注意点を理解しておくことが不可欠です。
親子でペアローンを組むと、借入可能額が増え、親子それぞれが控除や団信を利用できるメリットがあります。二世帯住宅を建てる際などに利用されますが、親の年齢によっては返済期間が短くなる点や、将来の相続で揉める可能性に注意が必要です。
次に、事実婚や同性パートナーの場合、近年はローンを組める金融機関が増えています。
ただし、法律婚でないカップルは税制や法律上、他人として扱われる点に注意が必要です。特に相続では大きなリスクが伴います。例えば、片方が亡くなってもう片方に法定相続権はありません。対策として遺言書が有効ですが、相続税の配偶者控除も適用されないため、税負担は重くなります。
また、関係を解消する場合も、法律婚のような法的な整理手続きがないため、事前に公正証書などで財産の取り決めをしておくといった対策が考えられます。
いずれのケースでも、法律婚の夫婦とは異なるリスクがあるため、より慎重な計画と専門家への相談をおすすめします。
もしもの時の対処法|借り換え・離婚・死亡時にやるべきこと
ペアローン利用中に、金利上昇や離婚、死亡といった事態に直面することもあります。もしもの時に慌てないよう、借り換えの現実的な選択肢や、離婚・死亡時の初動と手続きを解説します。
ペアローンの借り換え・一本化は可能?審査の壁と現実的な選択肢
ペアローンの借り換えや一本化は、単独ローンよりハードルが高くなります。なぜ難しいのか、そしてどのような選択肢が現実的なのかを具体的に見ていきましょう。
ペアローンを、そのまま他の銀行のペアローンに借り換える場合、夫婦二人ともが改めて審査に通る必要があります。収入が上がっていれば問題ありませんが、どちらかが転職していたり、年齢が上がっていたりすると、審査は厳しくなる傾向があります。
次に、片方のローンだけを借り換えることは、抵当権の問題から基本的に困難です。
ローンを一本化する借り換えは、さらに難易度が上がります。一人で倍近い額を借りることになるため、審査で求められる年収が大幅に上がるためです。
また、一本化は贈与税のリスクも伴います。相手の持分を買い取る形になるため、夫婦間であっても原則として課税対象となる可能性があります。
以上の理由から、ペアローンの借り換えは簡単ではありません。現実的な対策としては、無理に借り換えを目指すよりも、繰上返済で元本を減らしていく方が堅実と言えます。また、まずは現在借りている銀行に金利引き下げの交渉をしてみるのも一つの手です。
贈与税の課税ルールなどについては以下記事で詳しく解説しています。
離婚が決まったらどうする?不動産の売却・名義変更の正しい手順
ペアローンは、離婚時の財産整理が複雑になりやすいのが大きなデメリットです。住宅とローンをどうするのか、冷静に話し合い、正しい手順で進める必要があります。
まず最初にすべきは、金融機関への連絡です。離婚協議中であることや、住宅ローンをどうしたいかという意向を早めに伝えておくことが、スムーズな手続きの第一歩です。
次に、住宅とローンの今後の方針を決めます。選択肢は主に「家を売却してローンを完済する」か、「どちらか一方が住み続ける」の二つです。
①家を売却して、ローンを完済する場合
売却には夫婦双方の同意が不可欠です。売却額でローンを完済できるかを確認し、もし売却益が出れば財産分与で分け、ローンが残る場合はその負担割合も決めておく必要があります。
売却手続きでは、夫婦二人分のローンを同時に完済し、抵当権を抹消する流れになります。離婚して関係性が悪化していても、最後まで協力して手続きを進めなければなりません。
②どちらか一方が住み続ける場合
この場合、出て行く側の持分とローンを、住み続ける側が引き継ぐ必要があります。しかし、金融機関は基本的に債務者の変更を認めないため、実務上は「新規ローンで借り換えて一本化する」ことになります。
そのため、住み続ける側には、一人で残りのローン全額を借りられるだけの収入が求められます。この審査のハードルは非常に高く、現実的でないケースも少なくありません。手続きも煩雑なため、弁護士など専門家の助けを借りるのが賢明です。
片方が亡くなった場合の手続きは?団信の請求と相続の注意点
配偶者に万一のことがあった場合、まずは団体信用生命保険(団信)の手続きを速やかに行いましょう。その後のローン返済や、不動産の相続についても注意すべき点があります。
亡くなった方のローンは、団信の保険金で完済されます。まずは銀行に連絡し、保険金請求の手続きを進めましょう。
故人のローン完済後、残された配偶者のローンはそのまま残ります。返済が家計を圧迫する場合は、返済期間の延長などを銀行に相談してみましょう。
不動産の所有権については、亡くなった方の持分が相続の対象となります。法律上、配偶者と子で分け合うことになりますが、不動産を共有すると将来の売却などが難しくなるため、通常は遺産分割協議で配偶者がすべて相続する形を目指します。
もし、残ったローンの返済が困難な場合は、最終的に売却も検討せねばなりません。無理をして返済を滞らせる前に、早めに銀行に相談し、任意売却などの手続きを進めることが大切です。
結論として、離婚や死亡といった非常事態では、早めに金融機関へ相談することと、必要に応じて専門家のサポートを受けることが解決の鍵となります。
契約前に必ずやるべき!ペアローンの返済シミュレーションと夫婦のルール作り
ペアローンで後悔しないためには、契約前の計画がすべてです。ここでは、無理のない返済プランを立てるための「シミュレーション」と、夫婦で守るべき「運用ルール」の作り方を解説します。
無理のない返済プランの鍵。「収入合算後の返済負担率」の決め方
ペアローンの返済計画では、まず夫婦間の負担割合を決めることが重要です。現在の収入比率だけでなく、将来のライフプランも考慮して、公平で持続可能なルールを作りましょう。
まず基本となるのが、それぞれの収入割合に応じてローン負担額を決めることです。例えば収入比が7対3の夫婦なら、ローン負担も7対3に設定するのが公平で、不満が出にくいでしょう。
次に、将来の働き方の変化を織り込む視点も大切です。将来、一方が時短勤務や退職を考えているなら、その人の返済比率はあらかじめ低めに設定しておくと安全です。
また、頭金やボーナス払いの扱いも事前に話し合っておきましょう。特に頭金の出資比率とローン負担の比率が大きくずれないように注意が必要です。
最後に、これらの負担割合や支払い方法について、夫婦間できちんとルールとして明文化しておくと、将来のトラブルを予防できます。
収入減・金利上昇も想定。後悔しないためのシミュレーション方法
ペアローンは変数が多いため、契約前には様々な角度からシミュレーションを行うべきです。特に重要な5つのシミュレーションで、家計が破綻しないかを徹底的に検証しましょう。
1.基本的な返済計画シミュレーション
まずは、無理のない返済額になっているかを確認します。世帯手取り月収に対する返済額の割合は、20%程度に収めるのが安心です。
2.金利変動シミュレーション
変動金利で組む場合は、将来金利が1〜2%上昇しても返済を続けられるか、必ず試算しておきましょう。
3.収入減少シミュレーション
「妻が育休を取得」「夫が病気で休職」など、起こりうる収入減のシナリオを想定し、貯蓄で乗り切れるかを確認します。
4.繰上返済シミュレーション
「5年後に100万円繰り上げる」など、繰上返済の計画も立てておくと、将来の見通しがより明確になります。
5.最悪のケースを想定したシミュレーション
「失業」「大幅な金利上昇」といった悲観的なシナリオでも破綻しないかを確認し、もし厳しそうなら借入額そのものを見直しましょう。
これらのシミュレーション結果をもとに、夫婦で家計のルールを決めておくと、計画的に返済を進められます。
団信だけでは不十分?連生団信や民間保険でリスクに備える
ペアローンでは、通常の団体信用生命保険(団信)だけでは保障が不十分です。万一のリスクに備えるため、「夫婦連生団信」と「民間の生命保険」を賢く組み合わせる方法を考えます。
ペアローンの団信は、亡くなった本人のローンしか保障しません。そのため、残された配偶者には返済負担が残るという弱点があります。この弱点を補うには、主に二つの方法があります。
一つは「夫婦連生団信」に加入することです。これは、夫婦のどちらかに万一のことがあった場合に、二人のローン残高すべてがゼロになる保険です。最もシンプルで強力な備えですが、保険料は割高になります。
もう一つは、それぞれが民間の生命保険に加入する方法です。お互いを死亡保険金の受取人に指定し、ローン残高分の保障を確保します。年齢や健康状態によっては、連生団信より費用を抑えられる場合もあります。
基本的な考え方は、団信で最低限の保障を確保し、不足分を連生団信や民間の保険で補うというハイブリッドな戦略です。二人で家計を支えるペアローンだからこそ、万一の際に家を失わずに済む、盤石な備えを整えておきましょう。
この記事のまとめ
ペアローンは借入額を増やし住宅ローン控除を個別に活用できる利点がありますが、契約二本化による諸費用の増加や、収入減・離婚・死亡時に債務整理が難航するなどのリスクも大きい制度です。判断の際は、家計の返済余力や持分と返済割合の整合性、団信や連生団信・民間保険の保障範囲、借り換えや売却時の制約を確認することが不可欠です。収入合算・連帯債務・単独ローンとの比較を行い、自身のリスク許容度に照らして選択することが重要です。必要に応じて専門家に相談するのも選択肢です。

MONO Investment
投資のコンシェルジュ編集部は、投資銀行やアセットマネジメント会社の出身者、税理士など「金融のプロフェッショナル」が執筆・監修しています。 販売会社とは利害関係がないため、主に個人の資産運用に必要な情報を、正確にわかりやすく、中立性をもってコンテンツを作成しています。
投資のコンシェルジュ編集部は、投資銀行やアセットマネジメント会社の出身者、税理士など「金融のプロフェッショナル」が執筆・監修しています。 販売会社とは利害関係がないため、主に個人の資産運用に必要な情報を、正確にわかりやすく、中立性をもってコンテンツを作成しています。
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関連する専門用語
ペアローン
ペアローンとは、夫婦やカップルなどが、それぞれ個別に住宅ローンを組んで、同じ物件を共同で購入するために利用するローンの仕組みです。2人がそれぞれローン契約を結ぶため、借入可能額が大きくなり、希望する物件を購入しやすくなるというメリットがあります。 また、それぞれが住宅ローン控除を受けられる可能性があるため、節税面でも有利になることがあります。ただし、ローンの契約は個別に行われるため、どちらか一方が返済できなくなった場合には、もう一方に大きな負担がかかることがあります。ペアローンを利用する際は、将来のライフプランやリスクも含めて十分な話し合いが必要です。
収入合算
収入合算とは、住宅ローンを申し込む際に、主たる借入者の収入に加えて、配偶者や親などの収入も合算して審査してもらう方法です。これにより、単独では借入限度額に届かない場合でも、合算することでより多くの融資を受けられる可能性が高まります。 収入合算は、家計を共同で支える家族がいる場合に特に有効で、住宅の選択肢を広げる助けになります。ただし、収入を合算する相手が「連帯保証人」や「連帯債務者」となる必要があり、返済義務やリスクを共有することになるため、事前に十分な理解と話し合いが求められます。
連帯債務
連帯債務とは、複数の人が一つの借金や義務に対して、それぞれが全額の支払い責任を負うという契約の形です。たとえば、夫婦で住宅ローンを組む場合などに使われることが多く、どちらか一方が支払えなくなったとしても、もう一方に全額の返済義務が発生します。 このように、債権者にとっては誰か一人に請求すればよいため安心ですが、債務者側にとってはお互いの経済状況や信頼関係が重要になります。連帯債務は、単に借金を分け合う「分割債務」とは違い、それぞれが全体の責任を持つという点に注意が必要です。特に住宅ローンや不動産投資の資金調達で関係してくることが多いため、仕組みをよく理解しておくことが大切です。
連帯保証人
連帯保証人とは、主たる借主と同じ立場で返済義務を負う保証人のことです。通常の保証人と異なり、債権者は借主に請求する前に、いきなり連帯保証人へ全額請求することができます。また、連帯保証人は「自分の負担分だけ払えばよい」という考え方は通用せず、借主が支払えない場合は全額を肩代わりしなければなりません。 資産運用や家計管理の観点では、連帯保証人になることは大きなリスクを伴い、自分の信用情報や将来の資金計画にも直接影響するため、慎重な判断が必要です。
債務者
債務者とは、ある契約や法律上の義務に基づいて、特定の相手に対して金銭の支払いやサービスの提供などを行う責任を負っている人のことです。たとえば、借金をした人が返済すべき相手(貸した人)に対して支払い義務を負っている場合、この借りた人が債務者に該当します。債務者は、契約で定められた期日までにその義務を履行しなければならず、万が一支払いが滞れば、法的な請求や差し押さえなどを受ける可能性もあります。資産運用や相続、与信判断の場面では、債務者であるかどうかが財産の状況や信用力に大きく関係してくるため、正しく理解しておくべき重要な概念です。
団体信用生命保険(団信)
団体信用生命保険とは、住宅ローンを組んだ人が亡くなったり高度障害になったりした場合に、その時点のローン残高が保険金で返済される保険です。多くの場合、住宅ローンを借りる際に金融機関が加入を条件とすることがあり、略して「団信(だんしん)」とも呼ばれます。 この保険に加入しておけば、万が一のことがあった際に遺族がローンを引き継ぐ必要がなくなり、家に住み続けることができるため、大きな安心材料になります。保障の範囲は、死亡や高度障害に限らず、がんや三大疾病、就業不能までカバーするタイプもあり、ライフスタイルに応じて選ぶことができます。
夫婦連生団信
夫婦連生団信とは、住宅ローンを夫婦で借りる際に加入できる団体信用生命保険の一種で、夫婦のどちらか一方が亡くなった場合に、その時点で住宅ローンの残高が全額完済される仕組みの保険です。 「連生」とは「連れて生きる」という意味があり、どちらか一方ではなく、両方を保障対象とする点が特徴です。通常の団信は債務者本人が亡くなった場合にのみ保障が適用されますが、夫婦連生団信では、共同で返済しているどちらが万が一のことになっても、残された配偶者が住宅ローンの返済から解放されます。 そのため、夫婦共働きで連帯債務やペアローンを利用して住宅を購入する場合に、安心感を高める保障として利用されることが多いです。
住宅ローン控除(住宅ローン減税/住宅借入金等特別控除)
住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)とは、個人が住宅ローンを利用してマイホームを購入・新築・増改築した際に、一定の条件を満たせば、ローン残高に応じた金額が所得税から控除される制度です。控除は年末時点の住宅ローン残高の一定割合を上限として行われ、最大で13年間にわたり税負担を軽減することができます。たとえば、毎年の住宅ローン残高が多いほど、控除される所得税の金額も大きくなる仕組みです。この制度は、住宅の取得を支援し、持ち家の普及を促す目的で設けられており、対象となる住宅の広さや取得時期、所得の上限など、細かな適用条件があります。確定申告を通じて手続きを行う必要があるため、住宅購入時には制度の内容をよく確認し、早めに準備することが大切です。
贈与税
贈与税とは、個人が他の個人から金銭・不動産・株式などの財産を無償で受け取った際に、その受け取った側(受贈者)に課される税金です。通常、年間110万円の基礎控除を超える贈与に対して課税され、超過分に応じた累進税率が適用されます。 この制度は、資産の無税移転を防ぎ、相続税との整合性を保つことを目的として設けられています。特に、親から子へ計画的に資産を移転する際には活用されることが多く、教育資金や住宅取得資金などに関しては、一定の条件を満たすことで非課税となる特例もあります。 なお、現在は「暦年課税」と「相続時精算課税」の2制度が併存していますが、政府は近年、相続税と贈与税の一体化を含めた制度改正を検討しており、将来的に制度の選択肢や非課税枠、課税タイミングが見直される可能性があります。 こうした背景からも、贈与税は単なる一時的な贈与の問題にとどまらず、長期的な資産承継や相続対策の設計に深く関わる重要な制度です。税制の動向を踏まえた上で、専門家と連携しながら最適な活用方法を検討することが求められます。
持分割合
持分割合とは、ある資産や事業、法人などに対して、各所有者が保有している権利や出資の割合を示す数値のことです。例えば、会社の株式を100株発行しているうち、自分が30株を保有していれば、持分割合は30%となります。 持分割合は、配当や議決権の割合、清算時の残余財産の分配比率など、所有者としての経済的・法的な権利を決める重要な基準となります。資産運用や企業経営では、持分割合を理解しておくことで、収益配分や意思決定への影響度を正しく把握できます。
オーバーローン
オーバーローンは、特に不動産や自動車の購入時によく見られる現象で、購入する物件や商品の価値を超える金額を借入れることを指します。この状況は、買い手が元手として持ち合わせている現金が少ない場合や、物件の価格交渉がうまくいかず、購入価格が市場価格を上回った際に発生することがあります。 オーバーローンにはリスクが伴います。たとえば、資産価値が借入額よりも下落した場合、いわゆる「水面下の負債」が生じ、売却時にローン残高が資産価値を上回ることになり、売却によって借金が完済されない可能性があります。また、オーバーローンは返済負担も大きくなりがちで、借り手の財政状態を圧迫することにもつながります。 このため、オーバーローンは慎重に検討すべき選択肢であり、借り手は自身の返済能力や将来の資産価値の見込みを十分に評価することが求められます。また、オーバーローンに対する法的な規制や条件は地域や金融機関によって異なるため、契約前には詳細をよく確認することが重要です。
フラット35
フラット35とは、住宅金融支援機構と民間金融機関が提携して提供する、最長35年間の全期間固定金利型の住宅ローンです。最大の特徴は、借入時に決まった金利が返済終了まで変わらない点にあります。これにより、将来の金利上昇による返済額の増加リスクを回避することができ、長期の資金計画を立てやすくなるメリットがあります。 主にマイホームの新築・購入・リフォームに利用され、一定の技術基準や住宅性能(例:省エネ性、耐震性)を満たす住宅が対象です。また、所得制限がなく、自営業者やフリーランスの方にも利用しやすいローンとして知られています。金融機関ごとに取り扱い条件や金利は異なりますが、公的性格を持つ制度として、住宅取得支援の重要な選択肢となっています。
繰り上げ返済
繰り上げ返済は、ローンや債務に対して予定された支払いスケジュールよりも早く、元本の一部または全部を返済することを指します。この方法は、住宅ローン、自動車ローン、学生ローンなど、さまざまなタイプの借入れに適用されることがあります。繰り上げ返済を行う主な目的は、支払う利息の総額を減らし、ローンの期間を短縮することです。 繰り上げ返済は、追加の資金が手に入った場合や、より良い投資先がない場合に特に有効です。早期に借入金を返済することで、将来の利息負担が減少し、長期的な財務的な余裕が生まれます。しかし、全てのローンが繰り上げ返済に対応しているわけではなく、場合によっては繰り上げ返済手数料が発生することもあります。この手数料は、金融機関が予定していた利息収入の一部を補填するために設定されることが多いです。 繰り上げ返済を検討する際には、手数料の有無、返済後の金融状況、その他の投資機会との比較など、様々な要因を考慮することが重要です。適切な計画と分析を行うことで、繰り上げ返済が個人の財務目標に合致するかどうかを判断することができます。
公正証書
公正証書とは、公証人という法律の専門家が法律に基づいて作成する公式な文書のことをいいます。これは、契約内容や遺言などを法的に強い効力をもって証明するために用いられ、文書の信頼性を高める役割を果たします。たとえば、金銭の貸し借りに関する契約を公正証書にしておくと、返済が滞った場合に裁判を経ずに強制執行(差し押さえなど)を行うことができるようになります。 このように、公正証書には「証明力」と「執行力」があり、将来のトラブルを防ぐために非常に有効です。資産運用や相続、離婚時の財産分与、贈与契約など、法的な取り決めを明確にしておきたい場面で利用されます。初心者にとっても、「書面で約束を残す」ことの重要性を理解するうえで、知っておくと安心な制度です。
任意売却
任意売却とは、住宅ローンの返済が困難になった場合に、抵当権者(金融機関)など関係債権者の同意を得て、競売の実施前に市場で売却し、売却代金で抵当権等を抹消する手続きです。 通常は抵当権を抹消できない限り自由に売却できませんが、任意売却では売却価格がローン残高を下回っても、債権者が残債の取り扱い(無担保化・分割返済など)に合意すれば売却が可能です。複数の担保権や差押えがある場合は、原則として全ての債権者の同意が必要になります。 この方法を利用することで、競売よりも高い価格で売れる可能性があり、生活再建の足がかりにもなります。さらに、引っ越しの時期や条件などもある程度調整できるため、精神的な負担も軽減されます。不動産投資や住宅購入後のリスク管理を考える上でも、任意売却という選択肢を知っておくことは非常に重要です。