
ナスダック総合指数とは?構成銘柄や時系列の推移や投資方法と注意点を徹底解説
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公開:
2025.07.09
更新:
2025.07.10
ナスダック総合指数(Nasdaq Composite Index)は、米国株式市場の中でも特に成長企業の動向を映す鏡として、世界中の投資家から注目されています。アップルやマイクロソフト、エヌビディアといったハイテク巨頭をはじめ、約3,000社におよぶ多彩な企業群の株価が集約されるこの指数は、単なる数字ではなく、イノベーションの潮流そのものを表しています。本記事では、ナスダック市場と指数の違いから始まり、その構成や計算方法、歴史的な暴落・回復の局面までを体系的に解説します。これを読むことで、単なる「米国株ブームの象徴」ではない、ナスダック総合指数の真の姿が見えてくるはずです。
サクッとわかる!簡単要約
本記事を読むことで、指数の構成や市場との違い、歴史的暴落から復活までの軌跡をひも解き、ナスダック指数がなぜ魅力的であり、同時にリスクも孕んでいるのかを明らかにします。読むことで、単なる「チャートの数字」ではない、投資対象としての本質が見えてくるでしょう。
取引所(NASDAQ)と指数(ナスダック総合指数)は別物
まず押さえておきたいのは、「ナスダック市場(NASDAQ)」と「ナスダック総合指数」は異なるということです。
ナスダック市場(NASDAQ)とは?:新興企業向けの電子株式取引所
1971年に創設されたナスダック市場は、世界初の電子株式取引所として、新興企業向けの市場として発展してきました。その名称は「全米証券業協会自動株価報告システム(National Association of Securities Dealers Automated Quotations)」に由来し、創設当初からハイテクやIT関連の企業を中心に多くの上場を集めてきました。
かつてはニューヨーク証券取引所(NYSE)と比べて上場審査のハードルが相対的に低く、成長段階にある企業でも参入しやすいとされていましたが、近年ではナスダック市場でも基準の厳格化が進み、その差は次第に縮小しています。それでもなお、イノベーション志向の企業にとって重要な上場先である点は変わっていません。
ナスダック総合指数(Nasdaq Composite Index)とは?:ナスダック市場に上場した株式の値動きを反映した株価指数
上記のナスダック市場に上場している、ほぼ全ての普通株式の値動きを反映した株価指数です。市場全体の動向を示す指標であり、市場の特性を反映してIT・ハイテク企業の割合が高くなっています。
ナスダック総合指数の構成銘柄は2,500超、ITセクターが約5割を占めるのが特徴
ナスダック総合指数は、大型IT企業から小規模なベンチャー企業まで、米国内外の2,500を超える多様な銘柄で構成されています。
その計算には「時価総額加重平均型」という方法が用いられます。これは、各企業の株価に発行済株式数を掛け合わせた「時価総額」、つまり企業の規模が大きいほど、指数全体への影響力も大きくなる仕組みです。そのため、アップルやマイクロソフトといった巨大企業の株価動向が指数を大きく左右する一方、時価総額の小さい企業の株価が動いても、全体への影響は限定的になります。
この指数は1971年2月5日に基準値100で算出が開始され、50年以上の歴史を経て、現在では1万ポイントを超える水準にまで成長しました。
なお、よく比較される「NASDAQ100指数」は、この中から金融業を除いた時価総額上位100社のみに絞った指数です。それに対して、このナスダック総合指数は名前の通り、市場全体の動きをより幅広く示す指標であると押さえておきましょう。
ナスダック総合指数とナスダック100の違いについては以下Q&Aでも解説しています。
ナスダック総合指数を含む代表的指数(インデックス)の一覧とその提供者(プロバイダー)の解説はこちらの記事をご参照ください。
歴史でたどるナスダック総合指数の推移|過去の暴落と成長の軌跡
ナスダック総合指数の歴史を振り返ると、その道のりは決して平坦ではありません。むしろ、急激な上昇と破壊的な下落を繰り返しながらも、それらを乗り越えて力強く成長してきた、まさに波乱万丈の軌跡といえます。ここでは、ナスダック指数の性格を形作った3つの主要局面を取り上げ、その特徴を整理していきます。
2000年代:ITバブル崩壊とリーマン・ショックという二つの試練
ナスダックの歴史において、最も象徴的な下落局面が2000年と2008年に訪れました。いずれも世界的なインパクトをもたらし、指数に深刻な打撃を与えました。
2000年:ITバブルの崩壊
1990年代後半、インターネットの普及によって新たな産業革命への期待が高まりました。ナスダック指数はこの熱狂を背景に、1995年からのわずか5年で約5倍に急騰。しかし2000年3月をピークに過熱感が一気に冷め、バブルは崩壊。指数はピーク時の約80%近くも下落し、多くの投資家に損失をもたらしました。
2008年:リーマン・ショック
ITバブルから立ち直りつつあった市場に、再び大規模な衝撃が走ります。2008年、リーマン・ブラザーズの破綻をきっかけとした世界的な金融危機により、株式市場は急落。ナスダック指数も直近の高値から半値以下にまで下落し、ITバブル時の水準を回復するまでには実に15年を要しました。
2010年代:GAFAの躍進とコロナ禍を乗り越えたV字回復
2度の深刻な下落を経て、2010年代はナスダック市場の成長期が到来しました。Google、Apple、Facebook(現Meta)、Amazonといった巨大IT企業が急成長を遂げ、指数は長期的な上昇トレンドを形成しました。
2020年には、新型コロナウイルスの世界的流行により、経済活動が一時停止し、ナスダック指数も一時的に30%以上下落。しかし、FRBの金融緩和策や「巣ごもり需要」の拡大が追い風となり、ハイテク株が市場を牽引。指数は急落前の水準をわずか数カ月で回復し、2021年11月には16,000ポイントを突破して過去最高値を更新しました。
2020年代:インフレと金利上昇を乗り越え、AIブームで再加速
2022年には、世界的なインフレと急速な利上げにより、市場全体が調整局面に入り、ナスダック指数も大きく下落しました。しかし、インフレ鈍化や利上げ停止観測が広がる中、生成AI(Generative AI)の急速な進化が投資家心理を好転させました。
特にNVIDIAなどの半導体・AI関連銘柄が急騰し、再びナスダック市場を牽引。指数は力強い回復トレンドに転じ、長期的な成長基調を取り戻しつつあります。
ナスダック総合指数はハイリスク・ハイリターンを象徴する存在
これまでの歴史が示すように、ナスダック総合指数は「上がる時は大きく上がり、下がる時も大きく下がる」ハイリスク・ハイリターンの性質を持っています。しかし、最も注目すべきは、暴落はあくまで一時的な現象であり、指数は常にその後の成長によって過去の高値を更新してきたという事実です。
このダイナミックな値動きこそが、ナスダック指数の本質です。投資においては短期的な変動にとらわれず、長期的な視点で市場の構造変化や企業の成長性を見極めていくことが重要です。
よくある質問(FAQ)
この記事のまとめ
ナスダック総合指数は、上昇・下落の振れ幅が大きい一方で、長期的にはイノベーションの波に乗って力強く成長してきたことがわかりました。ナスダック市場と指数の違いを理解し、構成銘柄や過去の暴落、そしてそれを乗り越えた回復の流れを知ることで、この指数が持つ本質的な「成長性と変動性」を具体的に捉えられたはずです。なお、実際に資産配分や投資戦略を検討する際は、ご自身の目的やリスク許容度に応じて、中立的な専門家に相談することをおすすめします。長期投資を成功に導くためには、正しい知識と信頼できる伴走者が欠かせません。

MONO Investment
投資のコンシェルジュ編集部は、投資銀行やアセットマネジメント会社の出身者、税理士など「金融のプロフェッショナル」が執筆・監修しています。 販売会社とは利害関係がないため、主に個人の資産運用に必要な情報を、正確にわかりやすく、中立性をもってコンテンツを作成しています。
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ナスダック総合指数
ナスダック総合指数とは、アメリカの株式市場「NASDAQ(ナスダック)」に上場しているすべての銘柄を対象に算出される株価指数のことです。ハイテク企業や新興企業が多く上場している市場の動きを広く反映するため、特にIT・テクノロジー関連企業の株式動向を把握するうえで重要な指標となります。アップル、マイクロソフト、グーグル(アルファベット)など、世界を代表する企業が多く含まれており、指数の値動きは世界の投資家から注目されています。 この指数は時価総額加重平均型で、企業の規模が大きいほど指数への影響も大きくなります。初心者の方には、「アメリカのIT・ハイテク株がどう動いているかを見る温度計」と考えるとわかりやすいでしょう。株式市場全体のセンチメントやリスク志向を判断する材料としても使われます。
NASDAQ(ナスダック)
NASDAQ(ナスダック)とは、アメリカの代表的な株式市場の一つで、特にハイテク企業をはじめとする成長企業が多く上場していることで知られています。正式名称は「National Association of Securities Dealers Automated Quotations」で、その頭文字をとってNASDAQと呼ばれています。 ニューヨーク証券取引所(NYSE)と並ぶ主要市場であり、アップル、マイクロソフト、アマゾンなどの大手テクノロジー企業を含む多くの企業が上場しています。NASDAQは電子取引を採用しており、取引スピードや透明性が高いのが特徴です。また、証券会社(マーケットメーカー)が仲介する「ディーラー市場」としての特性も持っています。 NASDAQには「NASDAQ Global Select Market」「NASDAQ Global Market」「NASDAQ Capital Market」の3つの市場区分があり、企業の規模や条件によって異なります。また、「NASDAQ総合指数」はNASDAQ全体の動向を示し、「NASDAQ100指数」は時価総額の大きい非金融セクターの100銘柄で構成される指数として、世界中の投資家に注目されています。
時価総額加重平均
時価総額加重平均とは、企業の株価や指数を計算する際に、それぞれの企業の「時価総額」、つまり市場で評価された企業の価値に応じて比重(ウェイト)をかけて平均を出す方法のことです。 たとえば、株式指数でこの方式を用いると、時価総額が大きい企業の株価の動きが、指数全体により大きな影響を与えます。この方法は、より実際の市場規模に沿った指標となるため、投資家や資産運用の現場でよく使われます。日経平均株価は株価の単純平均ですが、TOPIX(東証株価指数)はこの時価総額加重平均を採用しており、日本市場の全体的な動きをより正確に表しているとされています。
ITバブル
ITバブル(またはドットコムバブル)とは、1990年代後半から2000年ごろにかけて、インターネット関連企業の株価が急激に上昇し、その後崩壊した現象を指します。 特にアメリカでは、「.com(ドットコム)」と名前の付く企業への期待が過熱し、業績がほとんど出ていない企業の株価までが高騰しました。代表的な例として、Pets.comや当時のYahoo!などがあります。 しかし、企業の実態が追いついていないことが明らかになると、多くの株価が急落し、2000年以降バブルは崩壊しました。 この出来事は、投資において「期待だけで動く市場の危うさ」や「実体価値とのバランスの重要性」を教えてくれる代表的な歴史的事件の一つです。バブル崩壊後も生き残った企業(Amazonなど)は、その後大きな成長を遂げました。
リーマンショック
リーマンショックとは、2008年9月にアメリカの大手投資銀行「リーマン・ブラザーズ」が経営破綻したことをきっかけに、世界中の金融市場が混乱に陥った出来事を指します。この破綻はサブプライムローン問題に端を発しており、多くの金融機関が不良資産を抱え、信用不安が一気に広がった結果、株価の暴落や企業倒産、失業率の上昇といった深刻な経済危機を招きました。 日本を含む多くの国でも景気後退が起こり、個人投資家の資産が大きく目減りするなど、資産運用に大きな影響を与えました。リーマンショックは、金融リスク管理の重要性や、世界経済のつながりの強さを改めて認識させるきっかけとなり、今も金融教育やリスク分散の必要性を語る際によく引き合いに出されます。
GAFAM
GAFAMとは、アメリカの巨大IT企業5社の頭文字を組み合わせた略称で、具体的には以下の企業を指します。 - G:Google(現在の親会社名はAlphabet) - A:Apple - F:Facebook(現在の親会社名はMeta Platforms) - A:Amazon - M:Microsoft これらの企業は、インターネット、スマートフォン、クラウド、SNS、検索エンジン、電子商取引など、現代のデジタル経済のあらゆる分野で支配的な地位を占めています。そのため、GAFAMは単なる企業グループではなく、世界経済や株式市場の動向に大きな影響を与える存在とみなされています。 GAFAMの株価はS&P500やナスダック100といった主要株価指数の中でも特に大きなウェイトを占めており、その動きは指数全体、さらには世界中の投資家の心理に影響を与えます。また、革新的な技術やサービスを次々に生み出しており、成長株としても注目される存在です。 投資の観点では、成長性の高い一方で、バリュエーションの高さや規制リスク(独占禁止法など)にも注意が必要とされるため、個別投資やETF経由での投資を検討する際に理解しておくべき重要なグループです。
ETF(上場投資信託)
ETF(上場投資信託)とは、証券取引所で株式のように売買できる投資信託のことです。日経平均やS&P500といった株価指数、コモディティ(原油や金など)に連動するものが多く、1つのETFを買うだけで幅広い銘柄に分散投資できるのが特徴です。通常の投資信託に比べて手数料が低く、価格がリアルタイムで変動するため、売買のタイミングを柔軟に選べます。コストを抑えながら分散投資をしたい人や、長期運用を考えている投資家にとって便利な選択肢です。
投資信託
投資信託は、多くの投資家から集めた資金を一つの大きな資金としてまとめ、運用の専門家が株式や債券などに投資・運用する金融商品です。運用によって得られた成果は、各投資家の投資額に応じて分配される仕組みとなっています。 この商品の特徴は、少額から始められることと分散投資の効果が得やすい点にあります。ただし、運用管理に必要な信託報酬や購入時手数料などのコストが発生することにも注意が必要です。また、投資信託ごとに運用方針やリスクの水準が異なり、運用の専門家がその方針に基づいて投資先を選定し、資金を運用していきます。
為替リスク
為替リスクとは、異なる通貨間での為替レートの変動により、外貨建て資産の価値が変動し、損失が生じる可能性のあるリスクを指します。 たとえば、日本円で生活している投資家が米ドル建ての株式や債券に投資した場合、最終的なリターンは円とドルの為替レートに大きく左右されます。仮に投資先の価格が変わらなくても、円高が進むと、日本円に換算した際の資産価値が目減りしてしまうことがあります。反対に、円安が進めば、為替差益によって収益が増える場合もあります。 為替リスクは、外国株式、外貨建て債券、海外不動産、グローバルファンドなど、外貨に関わるすべての資産に存在する基本的なリスクです。 対策としては、為替ヘッジ付きの商品を選ぶ、複数の通貨や地域に分散して投資する、長期的な視点で資産を保有するなどの方法があります。海外資産に投資する際は、リターンだけでなく、為替リスクの存在も十分に理解しておくことが大切です。
ボラティリティ
ボラティリティは、投資商品の価格変動の幅を示す重要な指標であり、投資におけるリスクの大きさを測る目安として使われています。一般的に、値動きが大きい商品ほどそのリスクも高くなります。 具体的には、ボラティリティが大きい商品は価格変動が激しく、逆にボラティリティが小さい商品は価格変動が穏やかであることを示します。現代ポートフォリオ理論などでは、このボラティリティを標準偏差という統計的手法で数値化し、それを商品のリスク度合いとして評価するのが一般的です。このため、投資判断においては、ボラティリティの大きい商品は高リスク、小さい商品は低リスクと判断されます。