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アッパーマス層とは?特徴と30代・40代の割合、資産の守り方・増やし方
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公開:
2025.04.17
更新:
2026.10.15
「アッパーマス層」という言葉を目にして、自分の資産も該当するのか、同年代と比べてどの程度の水準なのか、気になったことはありませんか。アッパーマス層は純金融資産3,000万円以上5,000万円未満の世帯を指しますが、年収や預貯金の残高だけでは判断できず、住宅ローンなどの負債も考慮する必要があります。この記事では、アッパーマス層の定義や世帯数・割合、年収・年代別の特徴から、資産の守り方・増やし方、準富裕層を目指す方法まで具体的に解説します。
アッパーマス層とは?野村総合研究所による定義と5つの階層
アッパーマス層は、野村総合研究所が世帯の資産規模を5つに分けた区分の1つです。法律や行政が定めた基準ではなく、民間の調査会社による推計上の分類である点を押さえておきましょう。
| 階層 | 世帯の純金融資産保有額 | 世帯数 | 純金融資産総額 | 総世帯に占める割合(編集部算出) |
|---|---|---|---|---|
| 超富裕層 | 5億円以上 | 11.8万世帯 | 135兆円 | 約0.2% |
| 富裕層 | 1億円以上5億円未満 | 153.5万世帯 | 334兆円 | 約2.8% |
| 準富裕層 | 5,000万円以上1億円未満 | 403.9万世帯 | 333兆円 | 約7.3% |
| アッパーマス層 | 3,000万円以上5,000万円未満 | 576.5万世帯 | 282兆円 | 約10.3% |
| マス層 | 3,000万円未満 | 4,424.7万世帯 | 711兆円 | 約79.4% |
出典:野村総合研究所「野村総合研究所、日本の富裕層・超富裕層は合計約165万世帯、その純金融資産の総額は約469兆円と推計」
※割合は編集部算出(2026年10月12日)。分母はNRIが推計した5階層の世帯数の合計(5,570.4万世帯)で、小数第2位を四捨五入しています。
2023年時点のアッパーマス層は576.5万世帯で、およそ10世帯に1世帯の計算です。純金融資産の総額は282兆円と推計され、5階層の合計(1,795兆円)の約15.7%を占めます(編集部算出)。なお、この推計は2025年2月13日に公表されたものです。

出典:株式会社野村総合研究所
「純金融資産」とは:金融資産の合計から負債を差し引いた額
NRIは、預貯金、株式、債券、投資信託、一時払い生命保険や年金保険など、世帯として保有する金融資産の合計額から負債を差し引いた額を「純金融資産保有額」としています。貯金や投資の残高をそのまま足した金額ではなく、借入れを引いた後の手残りで見る点が最大の特徴です。
- NRIのリリースは負債の内訳を列挙していないため、住宅ローンを含むと明記されているわけではありません。ただ、住宅ローンも借入れである以上、自己判定では負債に含めて計算するほうが実態に近いと考えられます。
世帯単位で判定し、自宅などの不動産は含めない
区分は個人ではなく世帯単位です。共働きの夫婦なら、2人分の預貯金や投資信託、勤務先の持株会などを合算して考えます。
また、定義が「金融資産の合計」から始まるため、自宅の土地・建物や車、貴金属などの実物資産は含まれません。評価額の高い持ち家に住んでいても、手元の金融資産が少なく住宅ローンが残っていれば、純金融資産では3,000万円に届かないこともあります。
準富裕層・マス層との違い
アッパーマス層の1つ上は、純金融資産5,000万円以上1億円未満の準富裕層、1つ下は3,000万円未満のマス層です。境界は金額だけで決まるため、株価の上下や、収入からの貯蓄・ローン元本の返済の積み重ね、大きな支出によって、同じ世帯でも層をまたいで移動することがあります。
- 3つの層は所得や職業で分かれているわけではありません。「準富裕層を目指すべきか」という問いも、資産の使い道や時期によって答えが変わる点を踏まえて考える必要があります。
境界付近にいる世帯は、相場の動きだけで層が入れ替わることも珍しくありません。株価の下落で一時的にマス層に戻ったとしても、それは資産形成の失敗ではなく、値動きのある資産を持っている以上は起こり得る変化です。どの層にいるかを毎年確認して一喜一憂するよりも、数年単位で純金融資産が計画どおりに増えているかを見るほうが、判断を誤りにくくなります。
アッパーマス層の世帯数と割合の推移:2023年は576.5万世帯に減少
NRIは2005年以降、2年おきの時点について世帯数と資産規模を推計しています。アッパーマス層と、1つ上の準富裕層の推移を並べました。
| 推計年 | アッパーマス層の世帯数 | アッパーマス層の純金融資産総額 | 総世帯に占めるアッパーマス層の割合(編集部算出) | 準富裕層の世帯数 |
|---|---|---|---|---|
| 2005年 | 701.9万世帯 | 246兆円 | 約14.3% | 280.4万世帯 |
| 2007年 | 659.8万世帯 | 254兆円 | 約13.3% | 271.1万世帯 |
| 2009年 | 639.2万世帯 | 225兆円 | 約12.8% | 269.8万世帯 |
| 2011年 | 638.4万世帯 | 254兆円 | 約12.7% | 268.7万世帯 |
| 2013年 | 651.7万世帯 | 264兆円 | 約12.4% | 315.2万世帯 |
| 2015年 | 680.8万世帯 | 282兆円 | 約12.9% | 314.9万世帯 |
| 2017年 | 720.3万世帯 | 320兆円 | 約13.4% | 322.2万世帯 |
| 2019年 | 712.1万世帯 | 310兆円 | 約13.2% | 341.8万世帯 |
| 2021年 | 726.3万世帯 | 332兆円 | 約13.4% | 325.4万世帯 |
| 2023年 | 576.5万世帯 | 282兆円 | 約10.3% | 403.9万世帯 |
出典:野村総合研究所「野村総合研究所、日本の富裕層・超富裕層は合計約165万世帯、その純金融資産の総額は約469兆円と推計」
※割合は編集部算出。各年の分母は、NRIが推計した5階層の世帯数の合計です。
アッパーマス層は2005年以降600万〜700万世帯台で推移してきましたが、2023年は576.5万世帯と、2021年から約21%減りました。同じ期間に準富裕層は325.4万世帯から403.9万世帯へ約24%増加しています(いずれも編集部算出)。
2023年にアッパーマス層が減った背景
NRIは、2023年は株価の急騰でリスク性資産の価値が大きく増え、円安で外貨建て資産の価値も高まったとしています。準富裕層の一部が富裕層へ移ったことも、富裕層以上が増えた要因に挙げました。
アッパーマス層の減少理由について、NRIは個別に説明していません。ただし、アッパーマス層から準富裕層になった人の中にも、株価の上昇で運用資産が増えた「いつの間にか富裕層」が一定数いるとみられる、との記述があります。
- もっとも、準富裕層以上の世帯の増加を合計しても約95.3万世帯で、アッパーマス層の減少(約149.8万世帯)には届かず、要因は特定できません。相場が下がれば逆の動きも起こり得る点は押さえておきたいところです。
お金を増やす方法だけでなく、減らさないための方法を把握することも大切です。詳しくは、こちらの記事も参考にしてみてください。
アッパーマス層の特徴:年収や職業ではなく「純金融資産」で決まる
アッパーマス層には、決まった年収や職業の条件はありません。年収と資産の関係を統計で確かめたうえで、NRIの調査から読み取れる特徴を整理します。
年収の基準はない:世帯年収別に見た金融資産3,000万円以上の割合
J-FLEC(金融経済教育推進機構)の「家計の金融行動に関する世論調査」では、世帯の年間手取り収入別に金融資産の保有額が集計されています。金融資産3,000万円以上の世帯の割合を抜き出しました。
| 世帯の年間手取り収入(税引後) | 金融資産3,000万円以上の世帯の割合 | 金融資産保有額の中央値 |
|---|---|---|
| 300万円未満 | 7.6% | 100万円 |
| 300万〜500万円未満 | 14.3% | 550万円 |
| 500万〜750万円未満 | 16.9% | 800万円 |
| 750万〜1,000万円未満 | 22.9% | 1,200万円 |
| 1,000万〜1,200万円未満 | 29.4% | 1,520万円 |
| 1,200万円以上 | 50.3% | 3,000万円 |
出典:金融経済教育推進機構「家計の金融行動に関する世論調査 2025年」(二人以上世帯・各種分類別データ)
※金融資産を保有していない世帯を含む割合です。この調査の金融資産は負債を差し引く前の金額で、3,000万円以上には金融資産5,000万円以上の世帯も含まれます。
- 手取り収入が多いほど3,000万円以上の割合は高くなりますが、手取り1,200万円以上の世帯でも半数近くは3,000万円未満です。逆に手取り500万円未満の世帯にも、3,000万円以上を持つ世帯が一定数あります。年収は資産を積み上げる力の1つにすぎず、貯蓄の期間や支出、相続、運用の結果によって資産は大きく変わると考えられます。
参考までに、国税庁の「民間給与実態統計調査」によると、2025年(令和7年分)に1年を通じて勤務した給与所得者の平均給与は487万円でした。給与が1,000万円を超える人は約6.6%です(編集部算出)。これは個人の給与で、世帯の手取り収入とは異なる点に注意が必要です。
出典:国税庁「令和7年分 民間給与実態統計調査 調査結果報告」
NRIが指摘する「いつの間にか富裕層」の特徴
NRIは、近年の株価上昇で運用資産が急増し、富裕層になった層を「いつの間にか富裕層」と名付けました。40代後半から50代の一般の会社員が中心で、従業員持株会や確定拠出年金、NISAを通じて資産を増やした人が多いとされています。NRIは、アッパーマス層から準富裕層になった人の中にもこの層が一定数いるとみており、資産が積み上がりつつある世帯にとって参考になります。
「いつの間にか富裕層」「スーパーパワーファミリー」に見る資産形成の特徴
- 給与収入の範囲で以前と変わらない生活を続けている会社員が多い
- 持株会・確定拠出年金・NISAなどの活用と株価の上昇で資産が増えている
- 資産が急に増えた一方で、分散の方針や金融商品の特性を十分に理解していない場合がある
- スーパーパワーファミリー(都市部の大企業共働き世帯)は、昇給で世帯年収が2,000万円を超える40歳前後から資産が積み上がりやすい
出典:野村総合研究所「野村総合研究所、日本の富裕層・超富裕層は合計約165万世帯、その純金融資産の総額は約469兆円と推計」
NRIは、都市部に住む世帯年収3,000万円以上の大企業共働き世帯を「スーパーパワーファミリー」と呼んでいます(世帯年収1,500万円以上を目安とする共働き世帯は「パワーファミリー」)。
20〜30代は教育費や住宅ローンの支払いに苦労し、40歳前後から金融資産が急速に積み上がる姿が示されました。年代によって資産の増え方が大きく変わることは、アッパーマス層を考えるうえでも前提になります。
パワーカップル・パワーファミリーの定義や年収の目安、資産形成のポイントは、こちらの記事で整理しています。あわせて参考にしてみてください。
30代・40代のアッパーマス層はどのくらい?年代別の金融資産保有状況
NRIの推計には年代別の内訳がありません。そこで、J-FLECの2025年調査から、世帯主の年代別に金融資産の保有状況を確認します。
| 世帯主の年代 | 平均値(二人以上世帯) | 中央値(二人以上世帯) | 金融資産非保有(二人以上世帯) | 2,000万〜3,000万円未満(二人以上世帯) | 3,000万円以上(二人以上世帯) | 3,000万円以上(単身世帯) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 20歳代 | 525万円 | 125万円 | 21.6% | 4.1% | 4.1% | 0.7% |
| 30歳代 | 1,096万円 | 311万円 | 17.6% | 4.6% | 7.9% | 3.4% |
| 40歳代 | 1,486万円 | 500万円 | 18.8% | 8.2% | 13.1% | 9.9% |
| 50歳代 | 1,908万円 | 700万円 | 18.2% | 8.1% | 18.8% | 10.4% |
| 60歳代 | 2,683万円 | 1,400万円 | 12.8% | 12.4% | 27.2% | 15.6% |
| 70歳代 | 2,416万円 | 1,178万円 | 10.9% | 12.3% | 25.2% | 17.5% |
| 全体 | 1,940万円 | 720万円 | 15.7% | 9.3% | 18.8% | 9.6% |
出典:金融経済教育推進機構「家計の金融行動に関する世論調査 2025年」(二人以上世帯・単身世帯の各種分類別データ)
※調査時期は2025年6月20日〜7月2日、二人以上世帯5,000世帯・単身世帯2,500世帯のインターネットモニター調査です。最上位の区分は「3,000万円以上」で一括されており、3,000万〜5,000万円未満だけの割合は公表されていません。
60歳代までは年代が上がるにつれて3,000万円以上の割合が高くなり、60歳代の二人以上世帯では27.2%に達します。一方、平均値と中央値の差が大きく、一部の資産の多い世帯が平均を押し上げている点は見落とせません。同年代と比べるなら、平均値よりも中央値や分布で見るほうが実感に近いでしょう。
この数字をアッパーマス層の割合として読む前に、次の4点を押さえておく必要があります。
- J-FLECの調査の金融資産は負債を差し引く前の金額で、NRIの純金融資産とは定義が異なる
- 現金や日常的な出し入れ・引落しに備えた預貯金、事業用の金融資産は含めない前提で回答されている
- 3,000万円以上の割合には、金融資産5,000万円以上の世帯も含まれる
- 年代は世帯主の年齢で、単身世帯は回答者本人の年齢
同年代の数字と比べて「自分は上位か下位か」を気にする方は少なくありません。ただ、統計上の位置と、家計として資産が足りているかどうかは別の問題です。特に30〜40代は、金融資産の額が同じでも、住宅ローンの残高、子どもの人数や教育方針によって、この先必要になるお金が大きく変わります。
比べるときは、まず世帯の金融資産から負債を差し引いた純金融資産を出し、中央値と照らし合わせたうえで、目標額は自分の世帯の支出計画から逆算することをおすすめします。
30代:3,000万円以上は二人以上世帯で7.9%、単身世帯で3.4%
30歳代の二人以上世帯で金融資産3,000万円以上は7.9%、中央値は311万円でした。単身世帯では3.4%、中央値は100万円です。30代でこの水準にある世帯は、同年代のなかでは少数派といえます。
30代は住宅購入や出産が重なりやすく、手元の金融資産があっても住宅ローンの残高が大きい時期です。金融資産が3,000万円を超えていても、ローンを差し引くとマス層に当たる世帯は少なくないと考えられます。この年代では「層」の判定よりも、教育費や住居費をライフプランに織り込んだうえで、毎月の積立を続けられるかが判断の軸になるでしょう。
40代:3,000万円以上は二人以上世帯で13.1%
40歳代の二人以上世帯では、3,000万円以上が13.1%、2,000万〜3,000万円未満が8.2%でした。単身世帯でも3,000万円以上が9.9%と、30代から大きく上がっています。
- 40代は収入が伸びやすい反面、子どもの進学費用のピークと住宅ローンの返済が重なりやすい時期です。家計調査では、世帯主が40〜49歳の二人以上世帯の約3分の2が負債を抱えています。純金融資産で3,000万円以上の世帯は、J-FLECの割合より少なくなるとみられます。教育費・住宅ローン・老後資金のどれを優先するかを、時期ごとに分けて考える段階です。
子どもの教育費がいつ・いくら必要になるかは、こちらの記事で学校段階別に解説しています。
50代以降:資産を「増やす」から「取り崩しに備える」へ
二人以上世帯の50歳代で3,000万円以上は18.8%、60歳代では27.2%です。退職金を受け取ったり、住宅ローンの返済が終わって貯蓄に回せる額が増えたりすることで純金融資産は増えやすい一方、取り崩しの開始が近づき、値下がりから回復を待てる期間は短くなります。
- アッパーマス層であっても、老後の生活費や年金額によって必要な資産は世帯ごとに異なります。純金融資産3,000万円が老後に十分かどうかは、年金の見込額と支出から逆算しなければ判断できません。
老後資金の必要額を自分の条件で見積もる手順は、こちらの記事のシミュレーションを参考にしてください。
住宅ローンがあるとアッパーマス層に入らない?負債を差し引く判定の考え方
住宅ローンを負債に含めて自己判定すると、その残高は判定に大きく影響します。総務省の家計調査から、年代別の貯蓄と負債の水準を確認しましょう。
| 世帯主の年齢 | 貯蓄現在高 | 負債現在高 | 貯蓄-負債(編集部算出) | 負債保有世帯の割合 |
|---|---|---|---|---|
| 40歳未満 | 994万円 | 1,882万円 | ▲888万円 | 64.3% |
| 40〜49歳 | 1,381万円 | 1,483万円 | ▲102万円 | 67.0% |
| 50〜59歳 | 1,756万円 | 743万円 | 1,013万円 | 53.7% |
| 60〜69歳 | 2,843万円 | 234万円 | 2,609万円 | 26.5% |
| 70歳以上 | 2,471万円 | 81万円 | 2,390万円 | 10.4% |
| 平均 | 2,059万円 | 675万円 | 1,384万円 | 37.5% |
出典:総務省統計局「家計調査報告(貯蓄・負債編)2025年(令和7年)平均結果(二人以上の世帯)」
※貯蓄・負債とも、ゼロの世帯を含めた平均値です。家計調査の貯蓄は預貯金・生命保険・有価証券などの合計で、NRIの純金融資産とは対象の範囲や推計方法が異なります。
家計調査によると、50歳未満の各年齢階級では、平均で負債が貯蓄を上回る「負債超過」です。二人以上の世帯全体では、負債の約9割(91.9%)を住宅・土地のための負債が占めています。30〜40代は、金融資産の額だけを見ると上位に見えても、ローンを差し引くと位置づけが大きく変わる年代といえます。
住宅ローンの有無で判定がどう変わるか(編集部試算)
同じ金融資産額でも、負債の残高によって層が入れ替わる例を試算しました。
| ケース | 金融資産の合計 | 負債の残高 | 純金融資産 | NRIの区分に当てはめた場合 |
|---|---|---|---|---|
| A:住宅ローンなし | 3,500万円 | 0円 | 3,500万円 | アッパーマス層 |
| B:住宅ローンあり | 3,500万円 | 2,000万円 | 1,500万円 | マス層 |
| C:住宅ローン完済が近い | 4,500万円 | 800万円 | 3,700万円 | アッパーマス層 |
| D:持ち家の評価額は高いがローンが多い | 1,200万円 | 3,000万円 | ▲1,800万円 | マス層 |
※編集部試算(2026年10月12日)。NRIの定義に沿って、金融資産の合計から負債の残高を差し引いて計算しています。住宅ローンを負債に含めるのは編集部の前提で、自宅などの不動産の評価額は加えていません。
ケースBは金融資産だけならアッパーマス層ですが、ローンを差し引くとマス層に当たります。ケースDのように持ち家の評価額がいくら高くても、純金融資産の計算には入りません。自己判定では、勤務先の持株会や確定拠出年金の残高も金融資産に含め、カードの分割払いや車のローンも負債に加えておくと実態に近づきます。
繰上返済か、運用を続けるか:判断の前提をそろえる
手元資金で繰上返済しても、金融資産と負債が同じ額だけ減るため、その時点の純金融資産は変わりません。差が出るのは、繰上返済で減るローン利息と、運用を続けた場合のリターンの違いです。どちらが合理的になり得るかは、ローン金利と運用で見込むリターン、手元資金の余裕、住宅ローン控除の残り期間などで変わります。
繰上返済に回した資金は、原則として引き出せません。教育費や生活防衛資金を確保したうえで、残りの資金の振り分けを比べると無理がありません。
アッパーマス層の資産の守り方:生活防衛資金・リスク許容度・インフレ
資産が3,000万円を超えると、増やす手段に目が向きがちです。ただ、まずは「減らさない」ための前提を整えておくと、相場が下がった局面でも計画を続けやすくなります。
生活防衛資金を先に分けておく
生活防衛資金は、病気や失業、急な出費に備えて、毎月の生活費の数か月分以上を値動きの小さい預貯金などで確保しておくお金です。必要な額は収入の安定性や家族構成で変わり、会社員か自営業かでも目安が異なります。
- この資金が足りないまま投資の比率を高めると、相場の下落と急な出費が重なったときに、値下がりした資産を売らざるを得ません。純金融資産の額にかかわらず、守るお金と増やすお金を分けることが出発点になります。
世帯別の生活防衛資金の目安と預け先は、こちらの記事で解説しています。
リスク許容度:下落時に売らずに続けられる割合か
リスク許容度は、資産がどの程度値下がりしても生活や計画に支障が出ないか、という度合いです。純金融資産が大きいほど許容度も大きいとは限らず、使う時期が近い資金が多い世帯では低くなります。
たとえば3,000万円のうち半分を株式に投資している場合、株価が3割下がれば評価額は450万円減る計算です。この減少に耐えて積立を続けられるかを、金額で確かめておくと判断しやすくなります。
年齢・収入・資産額などからリスク許容度を確かめる方法は、こちらの記事でまとめています。
インフレと預貯金:お金の実質的な価値も意識する
総務省の消費者物価指数によると、2026年8月の総合指数は前年同月比1.9%の上昇でした。物価が上がる局面では、預貯金の額面が変わらなくても、そのお金で買えるモノやサービスは減っていきます。
とはいえ、インフレへの備えを理由に預貯金のすべてを値動きのある資産に移すと、生活防衛資金まで価格変動にさらされます。預貯金は「安全だが実質価値が目減りし得る資産」、株式や投資信託は「インフレに強い可能性があるが値下がりもある資産」と、性質の違いで役割を分けて考えることが大切です。
インフレの仕組みと家計を守る考え方は、こちらの記事を参考にしてください。
出典:総務省統計局「消費者物価指数(CPI)全国 2026年8月分(最新の月次結果の概要)」
アッパーマス層の資産の増やし方:NISA・iDeCoと資産配分の考え方
守る前提が整ったら、税制優遇のある制度と資産配分の考え方で、増やす部分を設計します。ここでは特定の商品ではなく、制度の条件と判断軸に絞って見ていきましょう。
NISA:年間360万円・生涯1,800万円の非課税枠
2024年からのNISAは、つみたて投資枠が年120万円、成長投資枠が年240万円で、合計で年間360万円まで投資できます。つみたて投資枠の対象は、長期の積立・分散投資に適した一定の投資信託に限られ、積立投資での購入が前提です。
非課税で保有できる上限は簿価(取得額)で生涯1,800万円(うち成長投資枠は1,200万円)で、非課税期間は無期限です。売却した場合は、翌年以降に売却分の簿価だけ枠が復活します。整理・監理銘柄や、信託期間20年未満・毎月分配型の投資信託などは成長投資枠の対象外です。
- 課税口座で上場株式などの売却益を得た場合は、所得税15%・住民税5%に復興特別所得税を加えた20.315%が課税されます。夫婦それぞれが枠を使えば世帯で簿価最大3,600万円まで非課税で保有できるため、アッパーマス層の資産規模なら、枠の使い方が手取りの差に直結しやすいといえるでしょう。
NISAの2つの投資枠と非課税の仕組みは、こちらの記事で詳しく解説しています。
出典:国税庁「No.1463 株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)」
iDeCo:2026年12月から拠出限度額が引き上げ予定
iDeCoは掛金が全額所得控除になる一方、原則として60歳まで引き出せない制度です。60歳までの加入期間などが10年に満たない場合、受け取りを始められる年齢は最長65歳まで遅くなります(60歳以上で初めて加入した場合は加入から5年後)。
2025年の年金制度改正により、2026年12月1日から拠出限度額が引き上げられる予定です。2026年12月分(2027年1月引き落とし)の掛金から新しい限度額になり、増額には加入者自身の手続きが要ります。
2026年12月1日施行予定のiDeCoの主な改正
- 会社員・公務員(第2号加入者)は、企業年金と共通の拠出限度額に一本化し、企業年金の掛金との合計で月額6.2万円に引き上げ(企業年金のない会社員はiDeCoだけで月6.2万円まで)
- 自営業者など(第1号加入者)は、国民年金基金との共通拠出限度額を月額7.5万円に引き上げ
- 一定の要件を満たす60歳以上70歳未満の人も加入・拠出を続けられるように
出典:国民年金基金連合会「iDeCoの加入資格・掛金・受取方法等」
出典:国民年金基金連合会「iDeCoの拠出限度額の引き上げにあわせてiDeCo掛金額変更をご希望の方へ、お手続きのご案内」
所得税率が高い人ほど、所得控除による節税の効果は大きくなる仕組みです。受け取り時は、一時金なら退職所得控除、年金なら公的年金等控除の対象となり、課税の有無は受け取り方と金額で変わります。また60歳まで資金が拘束されるため、教育費や住宅資金など手前で使う予定のお金とは分けて考える必要があります。
iDeCoの改正内容とメリット・デメリットはこちらの記事で整理しているので、あわせてご覧ください。
資産配分とリバランス:金融資産全体で考える
資産が増えるほど、どの銘柄や商品を選ぶかよりも、預貯金・債券・株式などにどの割合で置くかが長期的な結果を左右します。NISA・iDeCo・課税口座・持株会・預貯金を別々に見るのではなく、世帯の金融資産全体で配分を確認することがポイントです。
あらかじめ目標の配分を決めておき、年1回など定期的に確認してずれを元に戻す「リバランス」のルールを持っておくと、上昇局面で取りすぎ、下落局面で売りすぎる行動を抑えやすくなります。NRIが「いつの間にか富裕層」について指摘するように、資産が急に増えた世帯ほど、分散の方針を言葉にしておく意味は大きいでしょう。
資産配分の決め方と年代別の目安は、こちらの記事で解説しています。
不動産投資・クラウドファンディング・FXを検討する前に
アッパーマス層向けの情報では、不動産投資や不動産クラウドファンディング、FXなどが紹介されることもあります。いずれも選択肢になり得ますが、元本割れや換金しにくさ、借入れを伴うリスクを理解したうえで検討するものです。
- 不動産は純金融資産に含まれないため、頭金・諸費用の支払いと借入れの増加で、純金融資産は購入額と諸費用の合計に近い額だけ減る
- FXなどのレバレッジ取引は、相場の動き次第で預けた資金を上回る損失が出るおそれがある
- クラウドファンディングは途中で換金できない商品が多く、元本が保証されない
- 生活防衛資金とコアとなる分散投資が整っていない段階では、損失が家計に直結しやすい
これらは資産形成の中心ではなく、コアとなる分散投資を補う「サテライト」として位置づけるのが基本です。検討する場合は、失っても生活や将来の計画に影響しない金額を先に決め、その範囲内にとどめることをおすすめします。また、高い利回りを強調する勧誘ほど、リスク、手数料、換金の条件を契約前に確認してください。
不動産クラウドファンディングやFXの仕組みと注意点は、こちらの記事で詳しく解説しています。
アッパーマス層の資産状況別に見た判断の目安
ここまでの論点を、資産状況の前提ごとに整理しました。どれが正解かではなく、自分の前提に近い行を探して、合理的になり得る選択肢と注意点を確かめてください。
| 資産状況・前提 | 合理的になり得る選択肢 | 確認しておきたい点 |
|---|---|---|
| 金融資産は3,000万円超だが、住宅ローン残高も大きい | 純金融資産で現状を把握し、繰上返済と運用継続を金利・期間で比べる | 繰上返済した資金は戻らない、住宅ローン控除の残り期間 |
| 生活防衛資金が手元に足りず、資産の大半が株式や投資信託 | 預貯金を積み増し、値動きのある資産の比率を見直す | 急な出費と下落が重なったときに売らずに済むか |
| 資産の大半が預貯金で、インフレが気になる | NISAなどで長期・分散の積立を少額から検討する | 元本割れがあり得ること、使う時期が近いお金は投資に回さない |
| 5〜10年以内に教育費や住み替えなど大きな支出がある | その分は値動きの小さい資産で確保し、残りで運用を考える | 支出の時期と金額の見積もり |
| NISAの枠を使い切りつつあり、iDeCoは未加入 | iDeCoの活用や、課税口座での運用継続を比べる | iDeCoは原則60歳まで引き出せない、2026年12月の改正内容 |
| 50代以降で、取り崩しの開始が近い | 取り崩しの順番と時期を決め、資産配分を安定寄りに見直す | 年金の見込額、退職金の受け取り方 |
| 個別株・不動産投資・FXなどに関心がある | 生活防衛資金とコアの分散投資を整えたうえで、損失を許容できる範囲に限る | 借入れやレバレッジの有無、換金のしやすさ |
※編集部作成。個別の状況によって合理的な選択肢は異なり、特定の商品や手法を推奨するものではありません。
同じアッパーマス層でも、住宅ローンや支出の予定が違えば優先順位は変わります。表の1行目から順に、自分に当てはまる前提を確かめていくと、次に検討すべきことを絞りやすくなるでしょう。
準富裕層を目指す場合の年数の目安
準富裕層を目標にするかどうかは、世帯の価値観や資産の使い道によって答えが変わります。目安として、純金融資産3,500万円から5,000万円に届くまでの年数を、積立額と利回りの前提を変えて試算しました。
| 年間の積立額(純増額) | 利回り0% | 利回り年2% | 利回り年4% |
|---|---|---|---|
| 120万円 | 13年 | 8年 | 6年 |
| 240万円 | 7年 | 5年 | 4年 |
※編集部試算(2026年10月12日)。資産全体が毎年一定の利回りで増え、年末に積立額を加える前提で、税金・手数料・物価変動は考慮していません。実際の運用では利回りは毎年変動し、元本を下回る年もあります。
積立額が同じでも、すでにある3,500万円にも利回りがかかるため、利回りの前提が変わるだけで到達年数は大きく変わります。ただ、高い利回りを前提にするほど値下がりの幅も大きくなりやすいため、試算の年数は「この前提が続いた場合」の目安として扱うのが適切です。目標額を急ぐよりも、使う時期から逆算して無理のない前提を置くことが大切です。
資産が3,000万円を超えた後の、リスク許容度別のモデルポートフォリオと年代別の運用戦略は、こちらの記事で解説しています。1,000万円を超えたときの運用の考え方を解説した記事も、あわせて参考にしてみてください。
この記事のまとめ
アッパーマス層は、世帯の純金融資産が3,000万円以上5,000万円未満の階層であり、年収や職業ではなく、金融資産から負債を差し引いた金額によって区分されます。大切なのは、資産階層や同年代との比較だけで判断せず、自分のライフプランに合った資産管理を行うことです。まずは世帯全体の純金融資産を計算し、生活防衛資金や将来の支出予定を確認しましょう。そのうえで、資産配分や積立額を見直し、準富裕層への到達も視野に入れながら、無理のない資産形成を進めていきましょう。

金融系ライター
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1,000記事以上の執筆実績あり。
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1,000記事以上の執筆実績あり。
関連する専門用語
アッパーマス層
アッパーマス層とは、一般的な大衆(マス)よりもやや高い資産や収入を持つ層のことを指し、富裕層とまではいかないものの、一定以上の経済的ゆとりを持った個人のグループを意味します。金融機関やマーケティングの分野では、主に資産運用や高付加価値商品のターゲットとして位置づけられることが多く、日本国内では、金融資産を1,000万円〜5,000万円程度保有している人々がこの層に含まれるとされることが一般的です。アッパーマス層は、将来的に富裕層へと成長する可能性を秘めた層ともいわれており、ライフプランや相続対策、税金に対する意識も比較的高い傾向があります。投資初心者の方にとっても、自分の資産状況を見直す際に、この言葉をひとつの目安として知っておくと、将来の資産形成のイメージがつかみやすくなります。
相続
相続とは、人が亡くなった際に、その人が所有していた財産や権利、さらには借金などの義務を、配偶者や子どもなどの相続人が引き継ぐことを指します。相続の対象となるのは、不動産、預貯金、有価証券などの資産に加え、住宅ローンや借入金などの負債も含まれるため、慎重な対応が求められます。 相続が発生すると、まずは誰がどの財産をどの程度受け取るかを決める「遺産分割」の手続きが必要になります。この分配は、民法で定められた割合に基づく「法定相続」によって進めることもあれば、亡くなった方が遺言書を残していた場合は、その内容に従って行われることもあります。 資産運用の観点では、相続によって得た財産をいかに管理し、長期的に活かしていくかが重要なテーマとなります。たとえば、相続した不動産を売却して資産を分散投資に振り向けるケースや、相続した株式をそのまま長期保有する戦略など、相続後の運用方針によって将来の資産価値が大きく変わる可能性もあります。 また、相続には相続税の申告・納付期限や、不動産の名義変更、金融機関での手続きなど、時間的制約と法的手続きが伴うため、早めの準備と専門家のサポートが不可欠です。資産を次世代へスムーズに引き継ぎ、無駄なコストやトラブルを避けるためにも、生前からの対策と継続的な資産設計が求められます。
ポートフォリオ
ポートフォリオとは、資産運用における投資対象の組み合わせを指します。分散投資を目的として、株式、債券、不動産、オルタナティブ資産などの異なる資産クラスを適切な比率で構成します。投資家のリスク許容度や目標に応じてポートフォリオを設計し、リスクとリターンのバランスを最適化します。また、運用期間中に市場状況が変化した場合には、リバランスを通じて当初の配分比率を維持します。ポートフォリオ管理は、リスク管理の重要な手法です。
分散投資
分散投資とは、資産を安全に増やすための代表的な方法で、株式や債券、不動産、コモディティ(原油や金など)、さらには地域や業種など、複数の異なる投資先に資金を分けて投資する戦略です。 例えば、特定の国の株式市場が大きく下落した場合でも、債券や他の地域の資産が値上がりする可能性があれば、全体としての損失を軽減できます。このように、資金を一カ所に集中させるよりも値動きの影響が分散されるため、長期的にはより安定したリターンが期待できます。 ただし、あらゆるリスクが消えるわけではなく、世界全体の経済状況が悪化すれば同時に下落するケースもあるため、投資を行う際は目標や投資期間、リスク許容度を考慮したうえで、計画的に実行することが大切です。
リバランス
リバランスとは、ポートフォリオを構築した後、市場の変動によって変化した資産配分比率を当初設定した目標比率に戻す投資手法です。 具体的には、値上がりした資産や銘柄を売却し、値下がりした資産や銘柄を買い増すことで、ポートフォリオ全体の資産構成比率を維持します。これは過剰なリスクを回避し、ポートフォリオの安定性を保つためのリスク管理手法として、定期的に実施されます。 例えば、株式が上昇して目標比率を超えた場合、その一部を売却して債券や現金に再配分するといった調整を行います。なお、近年では自動リバランス機能を提供する投資サービスも登場しています。
iDeCo(イデコ/個人型確定拠出年金)
iDeCo(イデコ)とは、個人型確定拠出年金の愛称で、老後の資金を作るための私的年金制度です。20歳以上65歳未満の人が加入でき、掛け金は65歳まで拠出可能。60歳まで原則引き出せません。 加入者は毎月の掛け金を決めて積み立て、選んだ金融商品で長期運用し、60歳以降に年金または一時金として受け取ります。加入には金融機関選択、口座開設、申込書類提出などの手続きが必要です。 投資信託や定期預金、生命保険などの金融商品で運用し、税制優遇を受けられます。積立時は掛金が全額所得控除の対象となり、運用時は運用益が非課税、受取時も一定額が非課税になるなどのメリットがあります。 一方で、証券口座と異なり各種手数料がかかること、途中引き出しが原則できない、というデメリットもあります。







