扶養内の年収はいくらまで?パート主婦・アルバイト学生・フリーランスごとの条件、外れる影響を解説

扶養内の年収はいくらまで?パート主婦・アルバイト学生・フリーランスごとの条件、外れる影響を解説
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公開:
2025.11.17
更新:
2025.11.17
扶養内で働く場合、税法上と社会保険上の2つの扶養制度に基づき、年収の上限が異なります。年収が扶養内から外れてしまうと、税負担や保険料負担、手取り額に大きな影響を与えるため、注意が必要です。パート主婦・学生・フリーランスなど立場別に扶養内の年収上限を整理し、交通費や賞与、残業代の扱いを含めて、手取りを増やす対策を実践しましょう。
サクッとわかる!簡単要約
この記事を読めば、扶養内で働くうえで欠かせない税法上の「123万円・160万円・201万円の壁」や、社会保険上の「106万円・130万円の壁」を理解できます。世帯全体の手取り収入を増やすためにも、「扶養内」の定義を理解しましょう。読了後には、扶養内で働ける年収や具体的なメリット、自分の立場でどこまで働けるかを正確に判断できます。
扶養内とは?基本を理解する
「扶養内」とは、家計の主な稼ぎ手である配偶者や親の「扶養」に入ることです。扶養には「税法上の扶養」と「社会保険上の扶養」の2種類があり、それぞれ異なる基準と仕組みを持っています。
税法上の扶養とは
税法上の扶養とは、所得税や住民税の計算において、一定の所得以下の親族を扶養していると認められる制度です。扶養に入ることで、納税者(扶養している側)が配偶者控除や扶養控除を受けられ、税負担が軽減されます。
配偶者の給与収入が年間123万円以下であれば、配偶者控除として最大38万円の控除が適用されます。2025年から配偶者特別控除の満額控除を受けられる上限が150万円から160万円に引き上げられました。
160万円を超えても201万6,000円までは、配偶者特別控除を受けることが可能です(控除額は段階的に減少)。
- 税法上の扶養は、1月1日から12月31日までの年間収入で判断されます。源泉徴収票や確定申告書に記載される収入額が基準となるため、年末調整や確定申告時に正確な金額を把握しておくことが重要です。
社会保険上の扶養とは
社会保険上の扶養とは、健康保険や厚生年金保険において、被保険者(扶養する側)の家族として認定される制度です。扶養に入ると、自分で社会保険料を支払わなくても、健康保険証が発行され、国民年金の第3号被保険者として扱われます。
社会保険上の扶養に入るための主な条件は、年収が130万円未満であることです。60歳以上または障害者の場合は180万円未満が基準となります。さらに、被保険者の年収の2分の1未満であることも求められます。
- 扶養に入ると、健康保険料や厚生年金保険料を支払う必要がありません。国民年金の第3号被保険者として、保険料の納付義務がないにもかかわらず、将来の年金受給資格を得られます。医療費も3割負担で医療機関を受診でき、出産育児一時金などの給付も受けられます。
ただし、企業規模が一定以上で、週の所定労働時間が20時間以上などの条件を満たすと、年収106万円以上で自身の社会保険に加入する義務が発生します。この場合、配偶者の扶養から外れることになります。
扶養内と扶養外のメリット・デメリットについては、こちらのQ&Aも参考にしてみてください。
パート主婦にとっての扶養内収入
パート主婦が扶養内で働く場合、配偶者の税負担軽減と自身の社会保険料負担回避という2つの観点から、年収の壁を意識する必要があります。
年収の壁に関しては、こちらの記事で詳しく解説しています。あわせて参考にしてみてください。
税法上の扶養に入る条件(123万円、150万円、201万円の壁)
パート主婦の税法上の扶養には、123万円、150万円、201万円という3つの重要な壁があります。これらの壁を超えると、配偶者控除や配偶者特別控除の適用が変わり、世帯全体の税負担に影響します。
| 年収の壁 | 本人への影響 | 配偶者(扶養者)への影響 | 控除額 |
|---|---|---|---|
| 123万円 | 所得税が発生 (123万円超の部分に5%) | 配偶者控除→配偶者特別控除に切替 | 38万円(満額) |
| 160万円 | 所得税・住民税の負担増加 | 配偶者特別控除は満額維持 | 38万円(満額) |
| 201万円 | 所得税・住民税のさらなる負担増 | 配偶者特別控除が消失 | 0円 |
税法上の扶養から外れると、世帯主の課税所得が増えます。つまり、「世帯主の税負担が増える=世帯全体の手取り収入が減る」という事態が起こります。
社会保険上の扶養に入る条件(106万円、130万円の壁)
社会保険の扶養では、106万円と130万円という2つの壁が存在します。これらの壁を超えると、自身で健康保険と厚生年金に加入する義務が発生し、保険料の負担が始まります。
| 年収の壁 | 適用条件 | 保険料負担(年額目安) | 月収目安 |
|---|---|---|---|
| 106万円 | 従業員51人以上の企業 週20時間以上勤務 月額賃金8.8万円以上 2か月超の雇用見込み 学生以外 | 約15万円 (健康保険+厚生年金) | 約8.8万円 |
| 130万円 | すべての人に適用 (年収見込額で判定) | 約18万円 (健康保険+厚生年金) または 約27万円 (国保+国民年金) | 約10.8万円 |
社会保険上の扶養に関しては、パート主婦の勤務先が「特定適用事業所」かどうかで変わります。特定適用事業所の場合は106万円の壁、特定適用事業所以外の場合は130万円の壁を意識しなければなりません。
扶養内パートの年末調整については、こちらのQ&Aをご覧ください。
アルバイト学生にとっての扶養内収入
学生がアルバイトで働く場合、親の扶養控除を維持することで世帯全体の税負担を抑えることができます。特に19歳以上23歳未満の大学生は「特定扶養親族」として控除額が大きいため、扶養を外れると親の税負担が増加します。
税法上の扶養に入る条件(123万円、150万円、188万円の壁)
アルバイト学生が税法上の扶養内で働くためには、年齢に応じて年収要件が異なります。
| 区分 | 対象年齢 | 年収要件 | 所得控除額 | 扶養控除の扱い |
|---|---|---|---|---|
| 扶養親族(配偶者以外の親族) | 16歳以上 | 123万円以下 | 38万円 | 扶養控除の対象 |
| 特定扶養親族 | 19~22歳 | 150万円以下 | 63万円 | 満額の扶養控除が適用 |
| 特定扶養親族 | 19~22歳 | 150万円超188万円以下 | 3~63万円 | 段階的に扶養控除が適用 |
2025年より、19歳以上23歳未満(特定扶養親族)の年収上限が103万円から150万円に拡大されました。また、150万円超~188万円までは段階的に控除額が減額される「特定親族特別控除」が新設されました。
なお、特定親族特別控除についてはこちらのQ&Aで詳しく解説しています。あわせてご覧ください。
社会保険の扶養に入る条件(130万円の壁)
学生の社会保険の扶養にも130万円の壁がありますが、106万円の壁については学生の適用除外があるため、多くの学生は影響を受けません。
| 年収の壁 | 備考 |
|---|---|
| 106万円 | 夜間・通信制は除外対象外 |
| 130万円 | 親の健康保険から外れる |
| 150万円(2025(令和7)年10月1日以降) | 親の健康保険から外れる |
社会保険上の扶養内にいるための条件は、月収に換算すると約10.8万円が目安です。夏休みだけ集中して働いて一時的に月収が高くなっても、年間を通じて130万円未満であれば扶養を継続できるケースが一般的です。
なお、扶養認定日が2025(令和7)年10月1日以降で、扶養認定を受ける方が19歳以上23歳未満の場合は、現行の「年間収入130万円未満」が「年間収入150万円未満」に変わりました。
フリーランス・個人事業主の扶養内収入
フリーランスや個人事業主が扶養内で働く場合、給与所得者とは異なる計算方法を理解する必要があります。最も大きな違いは、収入から必要経費を差し引いた「所得」で扶養判定が行われる点です。
「所得」に基づいて判断する
フリーランスや個人事業主の所得は「事業所得」または「雑所得」として計算されます。給与所得とは異なり、収入金額から必要経費を差し引いた金額が所得となります。必要経費には、材料費、通信費、交通費、減価償却費など、事業を行うために直接必要な支出が含まれます。

- 収入とは、クライアントから受け取った報酬の総額です。所得とは収入から必要経費を差し引いた金額で、税金の計算や扶養判定の基礎となります。この違いを理解していないと、扶養の範囲を誤って判断してしまいます。
たとえば、年間の報酬が100万円で、必要経費が30万円かかった場合、事業所得は70万円(100万円−30万円)です。
税法上の扶養:合計所得金額58万円以内
税法上は合計所得金額58万円以内が配偶者控除の条件です。社会保険上は年収130万円未満が扶養の条件ですが、フリーランスの場合、経費を差し引く前の収入で判断される点に注意が必要です。
税法上の扶養に入るためには、合計所得金額が58万円以内である必要があります。フリーランスの場合、事業所得(収入−必要経費)が58万円以内であれば、配偶者控除や扶養控除の対象となります。青色申告特別控除を適用する場合は、特別控除後の所得で判断します。
たとえば、以下のケースで考えてみましょう。
- 年間収入120万円
- 必要経費50万円
この場合、事業所得は70万円です。この時点では58万円を超えていますが、青色申告特別控除65万円を適用すれば、所得は5万円(70万円−65万円)となり、扶養の範囲内に収まります。
社会保険の扶養:(130万円の壁)
社会保険上の扶養に入れるかどうかは、「今後1年間の見込み収入」で判断します。
ただし、健康保険組合・協会けんぽによって「収入とみなす範囲」が異なります。事業収入から必要経費を差し引いた後の金額(実質的な所得)で判断されるケースがあるため、詳細は保険者に問い合わせなければわかりません。
多くの健康保険組合では、経費を差し引く前の収入総額で判断します。一部の健康保険組合では、経費を差し引いた所得で判断する場合もあるため、配偶者の加入している健康保険組合に確認が必要です。
経費を差し引く前の収入で判断する場合、年間収入が130万円未満であれば扶養に入れます。月額換算では、108,333円未満が目安です。フリーランスの収入は月によって変動するため、過去数か月の平均収入や今後の見込み収入で判断されます。
フリーランスとして扶養内で働く方法については、こちらのQ&Aもご覧ください。
交通費・賞与・残業代の扱いと注意点
扶養内で働く際、基本給だけでなく交通費、賞与、残業代などの各種手当が年収に含まれるかどうかは、税法上と社会保険上で異なります。この違いを理解していないと、「123万円以内に抑えたつもりが超えていた」「交通費を計算に入れ忘れて130万円を超えた」といった事態が発生します。
交通費:税法上は含み社会保険上は含まない
通勤手当や交通費は、扶養判定において税法上と社会保険上で扱いが大きく異なります。税法上は一定額まで非課税となり年収に含まれませんが、社会保険上はすべて年収に含まれるため、扶養の判定に大きな影響を与えます。
| 項目 | 税法上の扶養 | 社会保険上の扶養 |
|---|---|---|
| 非課税限度額 | 公共交通機関:月15万円まで マイカー通勤:距離に応じて月2,000円~31,600円 | 全額が収入 |
| 計算例 | 月給8万円+交通費5,000円 →年収96万円として計算 | 月給8万円+交通費5,000円 →年収102万円として計算 |
税法上は非課税でも、社会保険上は収入として扱われる点に注意が必要です。交通費の支給を受けている場合、交通費も含めた金額で130万円に収まっているか確認しましょう。
賞与:税法上も社会保険上も年収に含む
賞与(ボーナス)は、税法上も社会保険上も年収に含まれます。年2回の賞与がある場合、その金額によっては扶養の範囲を超えてしまう可能性があるため、年間の収支計画に必ず含めて考える必要があります。
- 企業業績や個人評価で変動するため予測が難しいものの、扶養内で働きたいと考えている方は、賞与を織り込んだうえで収入が扶養内に収まるかどうかを検討しなければなりません。
残業代:年収の壁の種類によって異なる
残業代や深夜手当、休日出勤手当などの割増賃金は、扶養判定で複雑な扱いとなります。
- 123万円と130万円の壁:収入に含まれる
- 106万円の壁:収入に含めない
123万円と130万円の壁の算定では、残業代も計算にカウントします。繁忙期の残業で予想以上に年収が増える可能性があるため、注意が必要です。
副業・ダブルワークと扶養内収入
副業やダブルワークで複数の収入源がある場合、すべての収入を合算して扶養の範囲内に収める必要があります。メインの勤務先だけで123万円以内に抑えていても、副業の収入を加えると超えてしまうと、扶養から外れる点に注意が必要です。
- A社で年収90万円
- B社で年収80万円
- 合計170万円
以上のケースでは、年収が160万円となるため、税法上では配偶者控除の適用が受けられません(配偶者特別控除が適用)。さらに、社会保険上の扶養からも外れるため、自分自身で社会保険に加入する必要があります。
扶養内でのダブルワークをする方法については、こちらのQ&Aも参考にしてみてください。
雇用保険・失業保険と扶養内の関係
扶養内で働く場合でも、一定の条件を満たすと雇用保険への加入義務が発生します。ただし、失業保険を受け取りながら扶養に入れるケースは、ほとんどありません。
扶養内でも条件を満たせば雇用保険に加入する
雇用保険は、労働者が失業した場合に生活を支援し、再就職を促進するための社会保険制度です。パートやアルバイトであっても、週の所定労働時間が20時間以上で、31日以上の雇用見込みがある場合、雇用保険への加入が義務となります。扶養内で働いていても、この条件を満たせば雇用保険に加入します。
失業保険受給中は扶養に入れないのが一般的
失業保険(雇用保険の基本手当)を受給する場合、多くの場合で扶養から外れます。失業給付の日額が3,612円以上になると、年収換算で約132万円(3,612円×365日)となり、130万円の壁を超えるためです。失業給付は非課税のため税法上の扶養には影響しませんが、社会保険の扶養判定には影響します。
失業保険と扶養の関係
- 多くの場合で失業給付の日額は3,612円以上となるため、失業保険を受給中は扶養からはずれなければならない、と理解しておきましょう。
年末調整での手続き
年末調整は、扶養内で働く人とその家族にとって重要な手続きです。配偶者控除や扶養控除を正しく申告することで、世帯全体の税負担が軽減されます。扶養する側(扶養者)と扶養される側(被扶養者)の両方で手続きが必要であり、それぞれの役割を理解しておくことが大切です。
扶養者が勤務先で行う手続き
扶養者(配偶者や親など、扶養する側)は、自分の勤務先で年末調整の手続きを行います。配偶者控除や扶養控除を受けるためには、「給与所得者の扶養控除等申告書」と「給与所得者の配偶者控除等申告書」を提出する必要があります。これらの書類に被扶養者の情報を正確に記入し、期限内に提出しましょう。
年末調整では、被扶養者の年間収入見積額を記載します。12月の給与が確定する前に提出するため、11月までの給与明細をもとに年間収入を予測します。見積額が実際の収入と大きく異なる場合、翌年に確定申告で修正が必要になるため、できるだけ正確に記入することが重要です。
扶養控除等申告書の提出
「給与所得者の扶養控除等申告書」は、所得税の控除を受けるために提出する書類です。この申告書には、扶養親族(16歳以上の子どもや親など)の氏名やマイナンバー、年間の合計所得金額の見積額を記入します。扶養親族が複数いる場合は、全員分を記入する必要があります。
特定扶養親族(19歳以上23歳未満の大学生など)は控除額が大きいため、該当する場合は必ずチェックを入れましょう。控除額は一般の扶養親族が38万円に対し、特定扶養親族は63万円です。
扶養控除等申告書は、通常その年の最初の給与支払日の前日までに提出しますが、年末調整の際に改めて翌年分を提出します。すでに提出済みの場合でも、扶養親族の状況に変更があれば、年末調整時に修正して再提出する必要があります。
配偶者控除等申告書の記入
「給与所得者の配偶者控除等申告書」は、配偶者控除または配偶者特別控除を受けるために提出する書類です。この申告書には、配偶者の氏名、生年月日、マイナンバー、年間の合計所得金額の見積額を記入します。配偶者の所得金額に応じて、自動的に控除額が計算される仕組みです。
配偶者の給与収入が123万円以下の場合、配偶者控除として38万円の控除が受けられます。123万円を超えても160万円以下であれば、配偶者特別控除として同額の38万円が控除されます。160万円を超えると控除額が段階的に減少し、201万6,000円を超えると控除はゼロになります。
年末調整では、複数の書類を正確に記載しなければなりません。詳細は、こちらの記事を参考にしてみてください。
被扶養者が行う手続き
被扶養者(扶養される側)も、自分の勤務先で年末調整の手続きを行います。扶養内で働いている場合でも、「給与所得者の扶養控除等申告書」を勤務先に提出する必要があります。
年末調整の際、勤務先には「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出します。この申告書には、自分が誰かの扶養に入っているという情報は記載しませんが、源泉徴収の計算に必要な基礎情報を提供するために提出が必要です。
複数の勤務先で働いている場合、「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出できるのは1か所だけです。収入が最も多い勤務先(主たる給与の支払者)に提出し、それ以外の勤務先には提出しません。主たる給与の支払者で年末調整を受け、それ以外の収入が年間20万円を超える場合は、確定申告を行います。
扶養内で働いているパート従業員の年末調整については、こちらのQ&Ade詳しく解説しています。
扶養内に入れる年収を超えたときの手続きと流れ
扶養の壁を超えて働くことを決めた場合、または予期せず超えてしまった場合、適切な手続きを速やかに行う必要があります。税法上の扶養と社会保険上の扶養では手続きが異なり、それぞれで必要な書類や提出先も変わります。
手続きが遅れると、医療費の全額自己負担や年金の未納期間が発生する可能性があるため注意が必要です。
扶養から外れる手続きをする
扶養から外れるための手続きは、税法上と社会保険上で異なります。税法上の扶養から外れる場合、配偶者や親の勤務先で年末調整時に申告内容を修正します。
社会保険上の扶養から外れる場合、配偶者の勤務先で「被扶養者異動届」を提出し、健康保険証を返却する必要があります。両方の手続きを適切に行いましょう。
扶養を外れるタイミングは、収入が基準額を超えることが確定した時点です。税法上は年末調整または確定申告で精算されますが、社会保険上は基準額を超えた月の翌月から扶養を外れます(曖昧な場合は所属健保の認定日に従います)。たとえば、10月に月収が108,333円を超え、今後も継続する見込みとなった場合、11月から扶養から外れる手続きを行います。
勤務先の社会保険に加入する(社会保険の加入要件を満たす場合)
扶養を外れた後、勤務先が社会保険の加入要件を満たす場合、勤務先の健康保険と厚生年金に加入します。
| 事業所区分 | 加入対象のパート条件 | 主な加入条件 |
|---|---|---|
| 特定適用事業所 | 週20時間以上勤務のパート従業員 | ・月額賃金8.8万円以上(年収約106万円以上) ・雇用期間2か月超の見込み ・学生以外 ・常時被保険者51人以上の企業で適用 |
| 特定適用事業所以外 | 事業主が任意で加入させる場合を除く原則加入対象外 | ・正社員と同様に1週間・1か月所定労働時間の4分の3以上の場合は加入義務対象 ・短時間労働者は基本加入対象外(任意適用可能) |
パートやアルバイトであっても、所定の条件を満たす場合は、社会保険への加入が義務です。社会保険に加入すると、健康保険料と厚生年金保険料が給与から天引きされます。
国民健康保険に加入する(社会保険の加入要件を満たさない場合)
勤務先で社会保険の加入要件を満たさない場合、国民健康保険と国民年金保険に加入しなければなりません。
配偶者の扶養から外れ、自分の勤務先でも社会保険に加入できない場合、国民健康保険と国民年金に自分で加入手続きを行う必要があります。
なお、手続きを行う場所は市区町村の窓口で、期限は扶養を外れた日から14日以内です。
扶養から外れたあとに扶養内に戻る方法
一度扶養を外れても、収入が減って再び基準額以下になれば、扶養に戻ることができます。退職や労働時間の短縮、失業給付の受給終了などで収入が減った場合、配偶者の扶養に再び入れます。
今後1年間の収入見込額が130万円未満である
社会保険の扶養に再び入るための条件は、今後1年間の収入見込額が130万円未満であることです。過去の収入ではなく、将来の見込みで判断されるため、退職や労働時間の短縮によって収入が減った時点で、扶養に戻れます。
たとえば、年収150万円で働いていたものの10月末で退職した場合、11月以降の収入見込みはゼロとなります。この場合、11月から配偶者の扶養に戻れます。
扶養に戻るために必要な手続き
扶養に戻る手続きは、配偶者の勤務先で行います。配偶者が「健康保険被扶養者異動届」を勤務先に提出し、扶養に戻る理由(退職、労働時間短縮など)を記載します。
添付書類として、退職証明書や雇用保険の離職票、直近3か月分の給与明細などが必要です。健康保険組合によって必要書類が異なるため、事前に確認しましょう。
国民健康保険に加入していた場合、扶養に戻る際に資格喪失の手続きが必要です。配偶者の健康保険証が発行されてから、市区町村の窓口で国民健康保険の資格喪失届を提出します。
国民健康保険証を返却し、扶養に戻った日以降の保険料が精算されます。手続きが遅れると、二重に保険料を支払うことになるため、注意しましょう。
国民年金も第1号被保険者から第3号被保険者に戻ります。配偶者の勤務先で被扶養者異動届を提出すると、自動的に国民年金の種別変更も行われます。
国民年金保険料の納付書が届いている場合、扶養に戻った日以降の分は支払う必要がありません。誤って支払った場合は、年金事務所で還付申請できます。
タイミングの注意点
扶養に戻るタイミングは、収入が基準額を下回ることが確定した日です。退職の場合は退職日の翌日、労働時間短縮の場合は契約変更日です。このタイミングに合わせて、配偶者の勤務先で手続きを開始しましょう。手続きが完了すると、新しい健康保険証が発行されます。
扶養に戻る手続きが遅れると、国民健康保険と配偶者の健康保険の両方で保険料が発生する期間が生じます。たとえば、10月末で退職したにもかかわらず、扶養に戻る手続きが12月になった場合、11月と12月の国民健康保険料を支払う必要があります。速やかに手続きを行い、二重負担を避けましょう。
税法上の扶養に戻る場合、配偶者や親の年末調整で申告し直します。年の途中で扶養に戻った場合でも、年末調整時に正しい所得見積額を記入すれば問題ありません。不明点があれば、勤務先に担当者に確認しましょう。
扶養内で働くメリット
扶養内で働くメリットは、社会保険料の負担がなく、配偶者や親の税負担も軽減できる点です。
年収130万円未満で働く場合、健康保険料と厚生年金保険料を支払う必要がないため、年間約18万円から20万円の負担を回避できます。
社会保険料を節約できる
扶養内で働く場合、健康保険料と厚生年金保険料を支払う必要がありません。配偶者の扶養に入っていれば、保険料負担ゼロで健康保険に加入でき、医療機関を3割負担で受診できます。国民年金も第3号被保険者として、保険料を支払わずに年金受給資格を得られます。
社会保険料の負担額は、年収の14%~15%程度です。年収130万円の場合、健康保険料が年間約6.5万円、厚生年金保険料が年間約11.9万円で、合計約18.4万円の負担となります。月額換算で約1.5万円の差となり、家計への影響は小さくありません。
- 扶養内で働けば、配偶者が支払っている社会保険料だけで、家族全員が健康保険の給付を受けられます。出産育児一時金、傷病手当金(配偶者本人のみ)、高額療養費制度など、さまざまな給付が受けられるため、医療費の負担も軽減されます。
配偶者控除の適用で世帯主の税負担を軽減できる
配偶者の年収が123万円以下の場合、納税者(配偶者を扶養する側)は配偶者控除として38万円の所得控除を受けられます。所得税率10%の場合、年間3.8万円の所得税が軽減されます。住民税も同様に控除が適用されるため、合計の節税額は約7.6万円です。
世帯主の税負担を軽減できれば、世帯全体の手取り収入がアップするため、経済的な余裕が生まれるメリットが期待できます。
扶養内で働くデメリット
扶養内で働くデメリットは、収入に上限があるため、働きたいだけ働けない点です。
スキルアップやキャリア形成の機会も限られるため、長期的には収入やキャリアの成長が制限される可能性があります。また、将来受け取れる年金額が少なくなるため、老後の生活設計にも影響します。
収入の上限制限を気にする必要がある
扶養内で働く場合、年収を所定の金額以内に抑える必要があります。繁忙期に残業を頼まれても断らざるを得ない、シフトを増やしたくても調整が必要など、働き方に制約が生じます。
特に年末が近づくと、年間収入の累計を気にしながら働くことになり、ストレスを感じるかもしれません。
将来の年金額が少額になる
扶養内で働き、配偶者の社会保険の扶養に入っている期間は、国民年金の第3号被保険者となります。この期間は、保険料を支払わずに国民年金の受給資格を得られますが、将来受け取れるのは基礎年金のみです。
一方、厚生年金に加入して働いた期間があれば、基礎年金に加えて報酬比例部分の年金を受け取れます。たとえば、年収150万円で10年間厚生年金に加入した場合、65歳から年間約9万円の報酬比例年金が上乗せされます。加入期間が長いほど、年金額は増加する仕組みです。
厚生年金に加入していれば、障害年金や遺族年金の給付も手厚くなります。障害を負った場合、基礎年金のみよりも厚生年金に加入していたほうが、給付額が大きくなります。配偶者が亡くなった場合の遺族年金も、厚生年金の加入期間が長いほど給付額が増えます。将来のリスクに備える意味でも、厚生年金への加入は有意義です。
障害年金や遺族年金については、こちらの記事もあわせてご覧ください。
キャリア形成が難しい
扶養内で働く場合、労働時間や収入に制限があるため、責任のある仕事や専門的なスキルを要する業務を任されにくくなります。短時間勤務では、プロジェクトの中心メンバーになることが難しく、キャリアアップの機会が限られるでしょう。
パートやアルバイトとして働く場合、正社員と比べて研修や教育の機会が少ない傾向があります。新しいスキルを学ぶ機会が限られるため、転職や再就職の際に不利になる可能性があります。
- 結果的に、自分の人的資本を最大限に生かしきれず、「扶養に入ることによる節税額<逸失利益」になるかもしれません。つまり、長期的にみると損失となってしまう可能性があり得ます。
年収が一時的に超えて扶養から外れる場合の対策
年収の壁を一時的に超えてしまった場合でも、政府による支援策を活用すれば、扶養を継続できる可能性があります。厚生労働省が実施している「年収の壁・支援強化パッケージ」は、人手不足による労働時間の延長で一時的に130万円を超えた場合、事業主の証明があれば扶養を継続できる制度です。
年収の壁・支援強化パッケージは、2023年10月から2026年3月までの時限措置です。この支援策では、人手不足による労働時間の延長などで一時的に年収130万円を超えた場合、事業主が「一時的な収入変動」であることを証明すれば、連続2回まで(最大2年間)扶養を継続できる制度です。
利用するには、事業主が「一時的な収入変動に係る事業主の証明書」を作成し、被保険者(配偶者)の勤務先に提出します。この証明書には、収入が増えた理由、今後の収入見込み、一時的な事情であることの説明が記載されます。事業主の協力が必要なため、事前に相談しましょう。
この記事のまとめ
扶養内で働く際は、税法上と社会保険上の基準が異なることを理解することが重要です。年収の壁を意識し、手取り額や将来の年金額とのバランスを見極めましょう。
扶養を外れる際や戻る際の手続き、年末調整での申告内容を正しく理解すれば、無駄な税金や保険料を防ぎ、世帯全体で最適な働き方を選べます。迷ったときは、ファイナンシャルプランナーに相談してみてはいかがでしょうか。

金融系ライター
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1,000記事以上の執筆実績あり。
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1,000記事以上の執筆実績あり。
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税法上の扶養
税法上の扶養とは、家族などを経済的に支えている人が、税金の計算においてその家族を「扶養している」と申告することで、所得控除を受けられる仕組みのことです。実際の生活費を支援している場合でも、税法上で一定の条件を満たしていないと「扶養」として認められない場合があります。 たとえば、子どもや配偶者、親などの年間所得が一定以下であることや、生計が同じであることなどが条件です。扶養控除が適用されると、所得税や住民税が軽減され、手取り収入が増えることになります。資産運用においては、こうした税制優遇を理解し、家族全体での節税や収支バランスを考えることが、効率的な家計管理につながります。
社会保険上の扶養
社会保険上の扶養とは、健康保険や年金などの社会保険制度において、家族を扶養していると認められることで、その家族が保険料を支払わずに保険の適用を受けられる仕組みのことです。たとえば、会社員の配偶者や子どもが一定の収入以下であれば、その家族を「扶養家族」として申請することができます。 扶養に入った家族は、保険料を払わなくても健康保険証を持つことができ、医療費の助成なども受けられます。税金上の扶養とは異なり、収入の基準や生計の状況が細かく定められているため、両方の扶養条件を正しく理解しておくことが大切です。資産運用や家計設計をする際には、この制度を活用することで支出を抑え、手元資金の効率的な活用につながります。
配偶者控除
配偶者控除とは、納税者に配偶者がいる場合、一定の条件を満たせば所得税や住民税の計算において課税所得を減らすことができる制度です。具体的には、配偶者の年間所得が一定額以下であれば、納税者の所得から一定金額を差し引くことができるため、結果として支払う税金が少なくなります。この制度は、家計全体の負担を軽減するためのもので、特にパートタイムや扶養内で働く配偶者がいる世帯にとって重要な意味を持ちます。なお、配偶者の収入が一定額を超えるとこの控除が使えなくなるため、「○○万円の壁」といった表現で語られることもあります。資産運用やライフプランを考える際には、税金の仕組みを理解しておくことが大切であり、配偶者控除はその中でも身近で影響の大きい制度のひとつです。
配偶者特別控除
配偶者特別控除とは、配偶者の年収が一定額以下である場合に、納税者の所得から一定の金額を差し引くことができる制度です。この控除を受けることで、所得税や住民税の負担が軽くなります。配偶者控除との違いは、配偶者の所得がある程度ある場合でも段階的に控除が受けられる点にあります。 たとえば、配偶者がパートなどで年間150万円程度まで収入がある場合でも、この制度を活用することで節税が可能です。資産運用においては、世帯全体の手取り額を増やす工夫のひとつとして意識される制度で、特に夫婦で家計を管理する際に重要な視点になります。
扶養控除
扶養控除とは、所得税や住民税を計算する際に、扶養している家族がいる場合にその人数や年齢に応じて課税対象となる所得から一定の金額を差し引くことができる制度です。これにより、税金の負担が軽くなります。対象となるのは、16歳以上の子どもや親などで、生計を共にしており、年間の所得が一定額以下であることが条件です。 子どもが16歳未満の場合は扶養控除の対象にはなりませんが、別途「児童手当」などの支援があります。控除額は扶養親族の年齢や学生かどうかなどによって異なり、たとえば「特定扶養親族(19歳以上23歳未満の子ども)」はより大きな控除額が認められています。税負担を軽減し、家族を支える世帯への配慮を目的とした制度です。
所得控除
所得控除とは、個人の所得にかかる税金を計算する際に、特定の支出や条件に基づいて課税対象となる所得額を減らす仕組みである。日本では、医療費控除や生命保険料控除、扶養控除などがあり、納税者の生活状況に応じて税負担を軽減する役割を果たす。これにより、所得が同じでも控除を活用することで実際の税額が変わることがある。控除額が大きいほど課税所得が減少し、納税者の手取り額が増えるため、適切な活用が重要である。
給与所得控除
給与所得控除とは、サラリーマンや公務員など給与を受け取って働いている人が、税金を計算する際に自動的に差し引かれる控除のことを指します。給与を得るためには通勤費や仕事に必要な支出がかかるため、それを一律に見積もって税負担を軽減する仕組みになっています。 実際の経費を一つひとつ証明する必要がなく、収入金額に応じてあらかじめ決められた金額が控除されます。そのため、給与所得者は自営業者のように細かい経費計算をせずとも、一定の負担軽減が自動的に適用されます。投資や家計管理を考えるうえでは、給与所得控除を差し引いた後の「課税所得」が税金計算の基礎になるため、自分の可処分所得を把握する上で理解しておくことが大切です。
社会保険料
社会保険料とは、健康保険や厚生年金保険、雇用保険など、社会保険制度を運営するために加入者が負担するお金のことです。会社員の場合は、給与から天引きされ、事業主と従業員が半分ずつ負担する仕組みになっています。 自営業者やフリーランスの場合は、国民健康保険や国民年金の保険料を自分で納めます。社会保険料は、病気やケガ、老後の生活、失業といった生活上のリスクに備えるためのもので、将来の給付を受けるための重要な拠出です。資産運用の観点からは、社会保険料は毎月のキャッシュフローに影響する固定費であり、長期的なライフプラン設計や可処分所得の把握に欠かせない要素です。
社会保険
社会保険とは、国民の生活を支えるために設けられた公的な保険制度の総称で、健康保険、厚生年金保険、雇用保険、介護保険などが含まれます。労働者や事業主が保険料を負担し、病気や高齢による収入減少、失業時の経済的支援を受けることができます。社会全体でリスクを分担し、生活の安定を図る仕組みです。 また、社会保険は万が一の備えとして機能し、資産運用においては「公的保障の不足分をどのように補うか」を考える前提となる存在です。
厚生年金
厚生年金とは、会社員や公務員などの給与所得者が加入する公的年金制度で、国民年金(基礎年金)に上乗せして支給される「2階建て構造」の年金制度の一部です。厚生年金に加入している人は、基礎年金に加えて、収入に応じた保険料を支払い、将来はその分に応じた年金額を受け取ることができます。 保険料は労使折半で、勤務先と本人がそれぞれ負担します。原則として70歳未満の従業員が対象で、加入・脱退や保険料の納付、記録管理は日本年金機構が行っています。老後の年金だけでなく、障害年金や遺族年金なども含む包括的な保障があり、給与収入がある人にとっては、生活保障の中心となる制度です。
公的年金
公的年金には「国民年金」と「厚生年金」の2種類があり、高齢者や障害者、遺族が生活を支えるための制度です。この制度は、現役で働く人たちが納めた保険料をもとに、年金受給者に支給する「世代間扶養」の仕組みで成り立っています。 国民年金は、日本に住む20歳以上60歳未満のすべての人が加入する制度です。保険料を一定期間(原則10年以上)納めると、65歳から老齢基礎年金を受け取ることができます。また、障害を負った場合や生計を支える人が亡くなった場合には、障害基礎年金や遺族基礎年金を受け取ることができます。 厚生年金は、会社員や公務員が対象の制度で、国民年金に追加で加入する形になります。保険料は給与に応じて決まり、支払った分に応じて将来の年金額も増えます。そのため、厚生年金に加入している人は、国民年金だけの人よりも多くの年金を受け取ることができ、老齢厚生年金のほかに、障害厚生年金や遺族厚生年金もあります。 公的年金の目的は、老後の生活を支えるだけでなく、病気や事故で障害を負った人や、家計を支える人を亡くした遺族を支援することにもあります。財源は、加入者が納める保険料と税金の一部で成り立っており、現役世代が高齢者を支える「賦課方式」を採用しています。しかし、少子高齢化が進むことで、この仕組みを今後も維持していくことが課題となっています。公的年金は、すべての国民が支え合い、老後の安心を確保するための重要な制度です。
雇用保険
雇用保険とは、労働者が失業した際に一定期間、給付金を受け取ることができる公的保険制度です。日本では、労働者と事業主がそれぞれ保険料を負担しており、失業給付だけでなく、教育訓練給付や育児休業給付なども提供されます。 この制度は、収入が途絶えた際の生活資金を一定期間補う役割を果たし、資産の取り崩しを抑えるという意味でも、資産運用と補完的な関係にあります。雇用の安定を図るとともに、労働市場のセーフティネットとして重要な位置を占めています。
国民年金
国民年金とは、日本に住む20歳以上60歳未満のすべての人が原則として加入しなければならない、公的な年金制度です。自営業の人や学生、専業主婦(夫)などが主に対象となり、将来の老後の生活を支える「老齢基礎年金」だけでなく、障害を負ったときの「障害基礎年金」や、死亡した際の遺族のための「遺族基礎年金」なども含まれています。毎月一定の保険料を支払うことで、将来必要となる生活の土台を作る仕組みであり、日本の年金制度の基本となる重要な制度です。
失業保険
失業保険とは、正式には「雇用保険の基本手当」と呼ばれ、働いていた人が離職し、一定の条件を満たして失業状態になったときに生活を支えるために支給される給付金のことです。 この制度は、雇用保険に加入していた人が対象となり、仕事を失った後も再就職までの間、一定期間収入を確保できるように設けられています。受給するためには、ハローワークで求職の申し込みを行い、失業認定を受ける必要があります。また、自己都合退職か会社都合退職かによって、給付開始までの待機期間や受給日数が変わるのも特徴です。失業保険は一時的な収入支援だけでなく、再就職に向けた活動を促す役割も担っています。
勤労学生控除
勤労学生控除とは、学生がアルバイトやパートで収入を得ている場合に、一定の条件を満たすと所得税や住民税の負担を軽減できる制度です。学業と仕事を両立する学生を支援する目的で設けられています。 通常、学生でも所得が一定額を超えると税金が発生します。目安は以下の通りです。 - 所得税:給与収入が103万円を超えると課税対象 - 住民税:おおむね100万円を超えると課税対象 勤労学生控除を適用すると、これらの課税ラインが上がり、年収120万円前後までなら所得税・住民税がかからないケースもあります。 控除額は所得税で27万円、住民税で26万円です。課税所得からこの金額を差し引いて税額を計算します。たとえば給与収入が120万円の場合でも、基礎控除と勤労学生控除を合わせることで課税所得がゼロとなり、税金がかからないことがあります。 この控除を受けるには、次の3つの条件をすべて満たす必要があります。 - 合計所得金額が75万円以下であること(給与収入で130万円以下相当) - 給与所得以外の所得が10万円以下であること - 学校教育法に定める学校の学生・生徒であること(大学・短大・高校・専修学校など) 控除の適用は、年末調整または確定申告で申告することで受けられます。 なお、勤労学生控除は扶養控除と同一人物に対して併用できません。勤労学生控除を受けるほどの所得(給与収入103万円超)になると、所得基準上すでに親の扶養控除の対象外となります。一方で、勤労学生控除を受けている本人が自分の子どもなどを扶養している場合には、その子に対して扶養控除を適用することは可能です。 学業と両立しながら働く学生にとって、課税のしくみを理解し、勤労学生控除で非課税枠を広げることが、手取りを最大化する第一歩といえるでしょう。
特定扶養親族
特定扶養親族とは、納税者に扶養されている16歳以上23歳未満の子どもや親族のことを指します。主に大学生などの学生が該当します。この区分は、扶養控除の中でも控除額が高く設定されており、所得税や住民税の負担を軽くする効果があります。 たとえば、自分の子どもが大学に通っていて仕送りをしているような場合、その子どもを「特定扶養親族」として申告することで、税金が軽くなります。資産運用を考える際には、こうした税制上の優遇を理解し、手取り収入を最大化する工夫も大切な視点になります。
被扶養者異動届
被扶養者異動届とは、健康保険における扶養家族の状況に変化があったときに提出する届け出書類です。たとえば、扶養していた家族が就職して収入を得るようになった場合や、結婚や死亡などで扶養関係がなくなった場合に必要になります。また、新たに扶養家族を追加する場合にも、この異動届を使うことがあります。 この届け出をすることで、健康保険の管理機関が正確な加入者情報を把握でき、適正な保険給付の運用が可能になります。提出を忘れると、不要な保険給付を受けてしまい、後から返還を求められることもあるため、変化があったときは速やかに提出することが大切です。
年末調整
年末調整とは、会社員や公務員などの給与所得者が1年間に納めるべき所得税の額を、年末に雇用主が計算し直して精算する手続きのことです。通常、毎月の給与からあらかじめ見込みで所得税が源泉徴収されていますが、年末に実際の収入や各種控除(配偶者控除、扶養控除、保険料控除など)を反映させて正確な税額を算出し、過不足を調整します。 税金を払いすぎていた場合には還付され、足りなかった場合は追加で徴収されることがあります。年末調整によって、多くの給与所得者は確定申告をしなくても納税が完結する仕組みになっており、手間の軽減と課税の公平性を両立させる重要な制度です。ただし、自営業者や副業収入がある人、医療費控除や住宅ローン控除を受けたい人などは、年末調整だけでは対応できず、別途確定申告が必要になります。
源泉徴収票
源泉徴収票とは、会社などに雇われて働いている人が1年間にどれくらいの給料をもらい、どれだけの税金を払ったのかをまとめた書類です。年末に勤務先から発行され、所得税や住民税の計算、確定申告などに使われます。 この書類を見ることで、自分の年収や天引きされた税金の額を正確に把握できます。資産運用を考えるうえでも、自分の収入や税金の状況を把握することはとても重要です。たとえば、NISAやiDeCoなどの非課税制度を活用する際や、住宅ローン控除を受けるときにもこの書類が必要になることがあります。
青色申告特別控除
青色申告特別控除とは、個人事業主やフリーランスが青色申告を行う際に受けられる税制上の特典の一つで、一定の要件を満たせば所得から最大65万円(電子申告を行う場合など)の控除を受けられる仕組みです。帳簿を正しく作成し、期限内に申告することが条件で、簡易な場合は10万円の控除も認められています。 この控除を利用することで課税所得を減らすことができ、結果として所得税や住民税の負担を軽くできます。個人で事業を行う人にとっては節税効果が大きいため、資産形成や資金繰りの安定に役立ちます。初心者にとっては「きちんと帳簿をつけて青色申告をすれば、税金が安くなる仕組み」と理解すると分かりやすいでしょう。
必要経費
必要経費とは、収入を得るために直接かかった費用のことを指し、確定申告などで所得から差し引くことができる支出です。たとえば、フリーランスや自営業者が事業を行う際に使った交通費、通信費、仕入れ代、人件費、事務所の家賃などが該当します。 これらは税務上、所得を正しく計算するために必要な項目とされており、収入から必要経費を差し引いた残りが「課税所得」となります。必要経費として認められるには、「収入を得るために必要だった」という合理的な理由があり、領収書や記録で裏付けられることが求められます。 正しく計上することで税負担を適正化でき、節税にもつながるため、特に個人事業主や副業をしている人にとっては重要な考え方です。
事業所得
事業所得とは、個人が営む事業から得られる所得のことで、主に農業、漁業、製造業、販売業、サービス業、フリーランスなどの継続的な事業活動によって生じる利益を指します。売上から必要経費を差し引いた残りが事業所得となり、確定申告を通じて所得税の計算に反映されます。事業所得は、給与所得や不動産所得と並ぶ所得区分のひとつで、青色申告や白色申告といった制度を活用することで、税金の計算上有利になる場合があります。 特に青色申告では、複式簿記による記帳や帳簿の保存を条件に、青色申告特別控除や赤字の繰越控除などの優遇が受けられるため、税務上のメリットが大きいといえます。
国民健康保険
国民健康保険とは、自営業者やフリーランス、退職して会社の健康保険を脱退した人、年金生活者などが加入する公的医療保険制度です。日本ではすべての国民が何らかの健康保険に加入する「国民皆保険制度」が採用されており、会社員や公務員が加入する「被用者保険」に対して、それ以外の人が加入するのがこの国民健康保険です。 市区町村が運営主体となっており、加入・脱退の手続きや保険料の納付、医療費の給付などは、住民票のある自治体で行います。保険料は前年の所得や世帯の構成に応じて決まり、原則として医療機関では医療費の3割を自己負担すれば診療を受けられます。病気やけが、出産などの際に医療費の支援を受けるための基本的な仕組みであり、フリーランスや非正規労働者にとっては重要な生活保障となる制度です。
高額療養費制度
高額療養費制度とは、1か月に医療機関で支払った自己負担額が一定の上限を超えた場合、その超過分が払い戻される公的な医療費助成制度です。日本では公的医療保険により治療費の自己負担割合は原則3割(高齢者などは1〜2割)に抑えられていますが、手術や長期入院などで医療費が高額になると家計への影響は大きくなります。こうした経済的負担を軽減するために設けられているのが、この高額療養費制度です。 上限額は、70歳未満と70歳以上で異なり、さらに所得区分(年収の目安)によって細かく設定されています。たとえば、年収約370万〜770万円の方(一般的な所得層)では、1か月あたりの自己負担限度額は「約8万円+(総医療費−26.7万円)×1%」となります。これを超えた分は、後から申請によって保険者から払い戻しを受けることができます。 また、事前に健康保険の窓口で「限度額適用認定証」を取得し、医療機関に提示しておけば、病院の窓口で支払う金額そのものを最初から自己負担限度額までに抑えることも可能です。これにより、退院後の払い戻しを待たずに現金の一時的な負担を軽減できます。 同じ月に複数の医療機関を受診した場合や、同一世帯で同じ医療保険に加入している家族がいる場合には、世帯単位で医療費を合算して上限額を適用することもできます。さらに、直近12か月以内に3回以上この制度を利用して上限を超えた場合、4回目以降は「多数回該当」となり、上限額がさらに引き下げられる仕組みもあります。なお、払い戻し申請から実際の支給までには1〜2か月程度かかるのが一般的です。 資産運用の観点から見ると、この制度によって突発的な医療費リスクの一部を公的にカバーできるため、民間の医療保険や緊急時資金を過剰に積み上げる必要がない場合もあります。医療費リスクへの備えは、公的制度・民間保険・現金準備のバランスで考えることが大切です。特に高所得者や自営業者の場合は、上限額が比較的高めに設定されている点や支給までのタイムラグを踏まえ、制度と現金の両面から備えておくと安心です。
出産育児一時金
出産育児一時金とは、健康保険に加入している人が出産したときに、出産にかかる経済的負担を軽減するために支給されるお金のことです。出産に直接かかる費用は高額になることがあるため、国の制度として一定額が支給される仕組みになっています。原則として、1児につき一律の金額が支給され、双子や三つ子の場合は人数分が加算されます。 この制度は公的医療保険に加入していれば、被保険者本人でなくても、たとえば扶養されている配偶者が出産した場合でも受け取ることができます。手続きは加入している健康保険組合を通じて行い、多くの場合は医療機関との直接支払い制度により、実際に自分でお金を立て替えずに利用できる仕組みになっています。
年収の壁
年収の壁とは、一定の年収を超えると税金や社会保険料の負担が発生し、手取り収入がかえって減ってしまうように見える現象を指します。特にパートやアルバイトで働く人にとって重要な考え方であり、代表的なものに「103万円の壁」「106万円の壁」「130万円の壁」「150万円の壁」などがあります。 これらは扶養控除の適用や社会保険加入の条件と関わっており、家計における実際の可処分所得に大きく影響します。投資や資産運用を考えるうえでも、世帯の手取り額を正しく理解することが出発点となるため、年収の壁を把握して働き方や収入計画を調整することが重要です。
報酬比例年金
報酬比例年金とは、厚生年金保険に加入している人が受け取る年金のうち、その人の働いていた期間中の収入に応じて計算される部分のことを指します。具体的には、加入していた年数と収入(標準報酬月額など)に基づいて年金額が決まり、収入が高かった人ほど将来受け取る年金も多くなります。 この仕組みにより、長く働いてたくさん保険料を納めた人が、それに見合った年金を受け取れるようになっています。これは基礎年金(国民年金)とは異なり、サラリーマンや公務員などの厚生年金加入者が対象です。投資とは直接関係しませんが、老後の生活設計において重要な収入源となるため、資産運用を考える際にも理解しておくことが大切です。



