就業不能保険の必要保障額は、どのように考えればよいですか?
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2025/06/25 09:54
男性
30代
就業不能保険に加入するとき、給付金を高く設定しすぎると保険料負担が重く、低すぎると生活が立ち行きません。固定支出と公的保障、貯蓄のバランスを踏まえた適切な保障額はどのように計算すればよいのでしょうか?
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
就業不能保険に加入する際、給付金の金額は「高すぎると保険料が負担になり、低すぎると生活が維持できない」というトレードオフがあります。
適切な保障額を決めるには、固定支出・公的保障・貯蓄(生活防衛資金)を踏まえ、不足額を合理的に見積もることが重要です。
基本的な算出式は以下の通りです。
必要保障額(給付金)=月々の固定支出 − 公的保障・他収入 − 貯蓄で補える分
まず「固定支出」には、就業不能中も確実にかかる費用を含めます。次に、会社員であれば傷病手当金や失業手当、共働き家庭であれば配偶者の収入などを見積もります。なお、フリーランスや自営業者の場合は、傷病手当金などの公的保障が受けられないことが多く、公的支援はゼロに近くなります。
加えて、「生活防衛資金」として確保している貯蓄が何か月分の固定支出をカバーできるかも確認します。
たとえば、月30万円の固定支出に対し、傷病手当金などで月15万円の収入が見込め、貯蓄で6か月分(180万円)を補える場合、1年間の就業不能に備えるには次のように計算します:
(30万円 × 12か月)−(15万円 × 12か月)−180万円 = 60万円
→ 月額換算:5万円の保障が必要
「どのくらいの期間、どの程度の赤字が発生するか」を試算し、不足分を補う金額を給付額として設定することが肝要です。加入前には、収支のシミュレーションを行い、自分にとって無理のない保障設計をすることが、賢い選択につながります。
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固定費とは、家計や事業の活動量にかかわらず一定額で発生する支出を指し、家賃や住宅ローン、保険料、サブスクリプションの月額料金などが代表例です。会計学では年払いや半年払の保険料、固定資産税のように周期的に発生する費用も固定費に含めます。一方、電気代や水道代、携帯電話の従量課金部分のように使用量で増減する支出は変動費として区別するのが一般的です。 資産運用を始める前に固定費を正確に把握しておくと、毎月の可処分所得から変動費を差し引いた「投資に回せる余裕資金」が明確になります。また、通信プランの見直しや不要な保険・サブスクの解約などで固定費を削減すれば、その効果は長期間持続するため資産形成を加速できます。ただし、解約手数料や補償の減少など将来のリスクと削減額を比較し、総合的なコストメリットを確認したうえで判断することが重要です。
月額給付金
月額給付金とは、国や保険会社などが特定の条件を満たした個人に対して、毎月決まった金額を継続的に支給するお金のことです。これは、年金や保険、あるいは一部の投資商品における仕組みとして利用されることがあります。 たとえば、老後の生活資金として公的年金から受け取るお金や、民間の個人年金保険に加入している場合に得られる給付金などが該当します。毎月一定の金額が入ることで、将来の生活設計が立てやすくなるというメリットがあります。特に資産運用においては、元本を取り崩すことなく定期的に収入を得られる仕組みとして注目されます。
必要保障額
必要保障額とは、万一の際に残された家族が現在と同等の生活水準を維持しながら、将来の教育費や住宅費といった支出も含めて安心して暮らしていけるよう、生命保険などで準備すべき金額を指します。具体的には、遺族の生活費、子どもの教育資金、住宅ローンの残債、葬儀費用などの「必要資金」から、公的遺族年金、勤務先の死亡退職金、既存の貯蓄や保険などの「準備済み資金」を差し引くことで算出します。 この必要保障額は、家族構成や年齢、子どもの進学予定、住宅ローンの残り期間など、個々のライフプランによって大きく異なります。たとえば、子どもが小さいうちは教育費や生活費の負担が長期にわたるため保障額は大きくなりがちですが、成長とともに必要な保障額は徐々に減少していきます。また、配偶者の就労状況や資産形成の進捗によっても必要な金額は変動します。 そのため、保険を一度加入したら終わりではなく、ライフステージの変化に応じて定期的に見直すことが重要です。保障が過剰であれば保険料の無駄払いになり、逆に不足していればいざというときに家族が困ることになります。こうしたリスクを避けるためにも、保険はライフプラン全体の中での位置づけとして考えることが不可欠です。 保険加入を検討する際には、営業担当者の提案を鵜呑みにせず、自分の生活設計に照らして必要な保障内容を見極めることが大切です。保障の目的や期間、公的制度とのバランス、そして家計や資産運用との整合性を踏まえた設計にすることで、無理なく持続可能な保険の活用が実現できます。必要に応じて、ライフプランニングに精通した中立的な専門家に相談し、現状の見直しと将来設計を行うのも有効な方法です。
公的保障
公的保障とは、国や地方自治体が法律に基づいて国民に提供する社会保障制度全般を指します。具体的には年金、健康保険、介護保険、雇用保険、労災保険などが含まれ、病気や失業、老後など人生のさまざまなリスクに対し、最低限の生活を維持するための金銭的給付やサービスを行います。 民間の保険や個人の資産形成よりも先に機能する「土台」として位置づけられるため、資産運用を考える際には、まず自分が受けられる公的保障を把握し、不足分を民間保険や貯蓄で補うという順序が大切です。